(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しております。
これに伴い、遡及修正前の数値で前年同期との比較分析を行っております。
詳細は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」に記載のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における日本及び世界経済は、前年に引き続き新型コロナウイルス感染症の影響を受け、厳しい状況となりました。相次ぐ変異株の出現に対して、各国が新型コロナウイルス感染症との共存における経済活動の回復を模索している状況が続いており、各国でのワクチンの普及や各種政策の効果により、基調としては、景気は回復傾向を辿りました。一方、長期化する半導体の供給不足など世界的なサプライチェーンの混乱や原油・原材料価格の上昇、米国などの金融引き締め策への転換の動きは、経済活動に多方面で大きな影響を与えています。更にウクライナ情勢の地政学的リスクから深刻なインフレが長期化する懸念があり、依然として先行き不透明な状況が続いております。
当社グループと関連の深い建築・土木市場においては、官公庁工事は堅調に推移しておりますが、民間工事の需要は新型コロナウイルス感染症の影響による設備投資低迷の影響を受けております。また、アジア・アフリカにおきましては地域により感染の再拡大が発生するなど、現地経済活動への影響が継続しております。
このような経営環境のもと当社グループでは、2020年6月に公表した「中期経営計画2020~2022」において、2030年頃を見据えた「2030ビジョン」実現のために、①思い切った経営資源の戦略的投入、②既存事業基盤の再構築と新たな価値の創造、③持続可能な企業価値向上のための経営基盤の強化の基本方針のもとに、事業環境が良好な建設用資機材の製造・販売事業を中心として収益性・生産性を向上させ、同時に本中期経営計画終了後の飛躍的な成長のための施策を実施しております。
当連結会計年度の売上高は、社会全体における新型コロナウイルス感染症の対応が長期化したことにより、建築用資材の製造・販売事業における建築金物分野の需要回復が遅延、また海外への渡航が制限され現地活動が困難となりましたが、一方で建設用資機材の製造・販売事業が好調だった前期をさらに上回り、新型コロナウイルス感染症の影響による売上高のマイナス分を補填したことより、売上高は増加、利益面では大幅な増益を達成しました。
a.財政状態
当連結会計年度末の資産合計は前連結会計年度末に比べ52百万円増加し236億65百万円となりました。内訳は、流動資産が前連結会計年度末に比べ2億68百万円増加し157億93百万円、有形固定資産が前連結会計年度末に比べ1億50百万円増加し64億36百万円、無形固定資産が前連結会計年度末に比べ27百万円減少し2億13百万円、投資その他の資産が前連結会計年度末に比べ3億39百万円減少し12億21百万円となりました。
当連結会計年度末の負債合計は前連結会計年度末に比べ10億93百万円減少し137億11百万円となりました。内訳は、流動負債が前連結会計年度末に比べ8億52百万円減少し95億10百万円、固定負債が前連結会計年度末に比べ2億41百万円減少し42億円となりました。
当連結会計年度末の純資産合計は前連結会計年度末に比べ11億46百万円増加し99億53百万円となりました。
b.経営成績
当連結会計年度の売上高は、社会全体における新型コロナウイルス感染症の対応が長期化したことにより、建築用資材の製造・販売事業における建築金物分野の需要回復が遅延、また海外への渡航が制限され現地活動が困難となりましたが、一方で建設用資機材の製造・販売事業が好調だった前期をさらに上回り、新型コロナウイルス感染症の影響による売上高のマイナス分を補填し、上積みとなりました。その結果、売上高は241億50百万円(前期比5.9%増)と増収となりました。
利益面では、高粗利製品の売上増加および既存製品等の利益率改善、新型コロナウイルス感染症の拡大に対する移動制限等の影響により経費が抑えられたこと等により、営業利益19億82百万円(前期比67.2%増)、経常利益19億92百万円(前期比66.0%増)となりました。また、投資有価証券売却益を特別利益として計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益16億14百万円(前期比155.3%増)となりました。
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2021年3月期 |
2022年3月期 |
前期比 |
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公表期初予想 |
実績と予想 |
売上高 (百万円) |
22,801 |
24,150 |
+1,349 |
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23,000 |
+1,150 |
営業利益 (百万円) |
1,185 |
1,982 |
+796 |
|
1,112 |
+869 |
営業利益率 (%) |
5.2% |
8.2% |
+3.0 |
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4.8% |
+3.4 |
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
(建設用資機材の製造・販売事業)
この事業では、「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」への対応が進められているなか、橋梁更新工事や豪雨災害などの対策工事が進められております。そのようななか、当連結会計年度におきましては、輸出は低調でしたが、落橋防止装置等橋梁耐震補強製品の販売および河川災害用ブロック等の販売が好調に推移し、売上高は前期を大きく上回りました。利益面では、増収効果に加え利益率の高い製品の販売が増加したため、増益となりました。
この結果、この事業の売上高は132億52百万円(前期比8.2%増)、営業利益16億31百万円(前期比38.7%増)となりました。
(建築用資材の製造・販売事業)
この事業では、前年から引き続き新型コロナウイルス感染症の拡大の影響が大きく残っております。当連結会計年度におきましては、セパレーター・吊りボルト等を中心とした建築金物分野の売上は新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、低調に推移しております。一方、鉄骨工事分野においては繰越案件も多いなか、前期並みの売上となっております。また利益面では、製品販売および鉄骨工事の利益率改善に努めました。
この結果、この事業の売上高は81億86百万円(前期比1.2%減)、営業利益4億86百万円(前期比52.3%増)となりました。
(建設コンサルタント事業)
この事業では、フランス語圏での強みを生かして、アジア・アフリカ圏をはじめとする各国での道路・橋梁建設や公共性の高い設備機材整備、環境改善等についてのコンサルタント事業を展開しております。また、新規分野として国内外におけるBIM/CIM適用事業支援業務への参画を目指して参ります。当連結会計年度におきましては、新型コロナウイルス感染症の感染再拡大による影響はあるものの、国によっては現地活動が再開できる状況となっております。当連結会計年度の期首から収益認識の会計基準への変更により、進捗度等に基づき売上を計上しており、前期比で増収増益となっております。
この結果、この事業の売上高は7億3百万円(前期比117.9%増)、営業利益は46百万円(前期は1億46百万円の営業損失)となりました。なお、会計方針の変更による前期比の増減額は以下の通りです。
(単位:百万円)
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売上高 |
営業利益 |
|
前期比のうち会計方針変更による増減額 |
+325 |
+116 |
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上記以外 |
+55 |
+76 |
|
前期比増減額 |
+380 |
+193 |
(補修・補強工事業)
この事業では、社会インフラ老朽化対策における橋梁、トンネルの補修・補強工事を推し進めております。国土強靱化対策等が進捗しており、受注環境は引続き良好に推移しております。
当連結会計年度期間におきましては、工事現場における新型コロナウイルス感染症の影響はほとんどなく予定通りに進捗し、前年並みの売上高となりました。また利益面では、高利益の工事が減少したことにより、前期比で減益となっております。
この結果、この事業の売上高は20億6百万円(前期比3.2%増)、営業利益2億11百万円(前期比8.4%減)となりました。
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2021年3月期 |
2022年3月期 |
前期比 |
|
公表期初予想 |
実績と予想
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建設用資機材の |
売上高 (百万円) |
12,249 |
13,252 |
+1,003 |
|
11,656 |
+1,596 |
製造・販売事業 |
営業利益 (百万円) |
1,176 |
1,631 |
+454 |
|
1,012 |
+618 |
|
営業利益率 (%) |
9.6% |
12.3% |
+2.7 |
|
8.7% |
+3.6 |
|
|
|
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|
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建築用資材の |
売上高 (百万円) |
8,284 |
8,186 |
△97 |
|
8,444 |
△257 |
製造・販売事業 |
営業利益 (百万円) |
319 |
486 |
+166 |
|
352 |
+133 |
|
営業利益率 (%) |
3.9% |
5.9% |
+2.1 |
|
4.2% |
+1.8 |
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|
|
|
|
|
|
|
建設コンサルタント |
売上高 (百万円) |
322 |
703 |
+380 |
|
750 |
△46 |
事業 |
営業利益 (百万円) |
△146 |
46 |
+193 |
|
25 |
+21 |
|
営業利益率 (%) |
- |
6.6% |
- |
|
3.3% |
+3.2 |
|
|
|
|
|
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補修・補強工事業 |
売上高 (百万円) |
1,944 |
2,006 |
+61 |
|
2,150 |
△143 |
|
営業利益 (百万円) |
230 |
211 |
△19 |
|
209 |
+2 |
|
営業利益率 (%) |
11.9% |
10.5% |
△1.3 |
|
9.7% |
0.8 |
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、税金等調整前当期純利益が23億80百万円(前期比145.1%増)や、有形固定資産の取得による支出が6億5百万円あったことなどにより、前連結会計年度末に比べ6億96百万円増加し、当連結会計年度末には49億35百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果増加した資金は、23億9百万円(前連結会計年度末は21億34百万円の増加)となりました。主な資金の増加は、税金等調整前当期純利益が23億80百万円、売上債権の減少額が8億39百万円、減価償却費およびのれん償却費が5億35百万円、主な資金の減少は、法人税等の支払額が5億6百万円、投資有価証券売却益が4億2百万円などであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果減少した資金は、3億67百万円(前連結会計年度末は6億54百万円の減少)となりました。主な資金の減少は、有形固定資産の取得による支出が6億5百万円などであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果減少した資金は、12億53百万円(前連結会計年度末は3億47百万円の減少)となりました。主な資金の減少は、長期借入金の返済による支出17億79百万円、配当金の支払額2億99百万円、社債の償還による支出1億88百万円、主な資金の増加は、長期借入れによる収入が11億10百万円などであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比(%) |
建設用資機材の製造・販売事業 (千円) |
14,861,121 |
18.77 |
建築用資材の製造・販売事業 (千円) |
5,136,296 |
5.36 |
建設コンサルタント事業 (千円) |
- |
- |
補修・補強工事業 (千円) |
- |
- |
合計 (千円) |
19,997,417 |
15.01 |
(注)金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
b.受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
受注高(千円) |
前年同期比(%) |
受注残高(千円) |
前年同期比(%) |
建設用資機材の製造・販売事業 |
14,184,950 |
13.35 |
3,260,440 |
40.03 |
建築用資材の製造・販売事業 |
8,712,999 |
△4.11 |
2,273,247 |
30.11 |
建設コンサルタント事業 |
405,296 |
△68.82 |
1,398,745 |
△17.58 |
補修・補強工事業 |
2,643,031 |
20.47 |
1,323,083 |
92.65 |
合計 |
25,946,277 |
3.40 |
8,255,516 |
27.81 |
(注)金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比(%) |
建設用資機材の製造・販売事業 (千円) |
13,252,974 |
8.20 |
建築用資材の製造・販売事業 (千円) |
8,186,871 |
△1.17 |
建設コンサルタント事業 (千円) |
703,648 |
117.95 |
補修・補強工事業 (千円) |
2,006,715 |
3.18 |
合計 (千円) |
24,150,209 |
5.92 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営成績等
1)財政状態
当連結会計年度末の総資産は前連結会計年度末に比べ52百万円増加しましたが、その内訳は、流動資産が2億68百万円の増加、固定資産が2億16百万円の減少となっております。
流動資産については、大きく増加したのは現金及び預金の6億22百万円であり、未収入金を主としたその他流動資産が2億35百万円増加しましたが、運転資本が5億16百万円減少したこと(*)により、現金及び預金が一時的に増加したものと思われます。運転資本の変動や今後未払額が支払われることにより現金及び預金は減っていくことが予想され、過剰な現預金を抱えているのではないと考えております(後述「適正な現預金の水準」の項をご参照下さい)。
固定資産のうち、工場設備の拡張・増強をはじめとする有形固定資産の増加が1億50百万円、政策保有株式を売却したことによる投資有価証券の減少等による投資その他の資産の減少が3億39百万円となっております。いずれも企業価値の向上に資する前向きな対応によるものです。
負債及び純資産については、純資産が11億46百万円増加し、負債が10億93百万円減少しましたが、負債の減少のうち最も大きかったのは借入金及び社債の8億67百万円であり、調達構造の大きく変わった形となっておりますが、調達構造としても問題ないものです。
資産の残高ベースのリスク許容度(リスク資産に対して十分なエコノミック・キャピタルを有しているか)については、有形固定資産と投資有価証券の合計額66億54百万円に対し、自己資本(純資産-非支配株主持分)99億14百万円あることより、リスク資産に対するバッファー(エコノミック・キャピタル)は十分にある状態になっていると考えております。また、有利子負債は、前連結会計年度末55億83百万円から8億69百万円減少し、自己資本比率は37.2%から4.7ポイント向上し41.9%となり、D/Eレシオも0.16改善し、0.48となりました。当連結会計年度の大幅な増益により積みあがった内部留保は財務内容の健全性の向上に大きく寄与する構造となり、調達余力の増強にも資するものとなったと判断しております。
(*)運転資本(売上債権+棚卸資産-仕入債務)は、47億70百万円から42億53百万円と5億16百万円減少しました。
リスクバッファーとしての自己資本が問題のない水準と考えられる一方で、資本の効率性の観点では、財務レバレッジを上げる余地についての分析も必要と考えております(後述「資本効率の持続的な向上」の項をご参照下さい)。当連結会計年度末での財務レバレッジは2.53であり、前連結会計年度末の2.67から0.14減少しております。今後実際に機動的な資金調達(大型の設備投資やM&A)を実施していくためには、平時には有利子負債による調達余地を残しておく必要があり、外部格付機関が発表している格付別財務指標を鑑みれば自己資本比率は望ましい水準に近づいたと考えております。従って、財務レバレッジを現時点で大きく引き上げることは優先度としては高くなく、当連結会計年度末の水準は妥当な水準と考えております。
2)経営成績
当連結会計年度は、「中期経営計画2020-2022」の2年度目に当たります。前連結会計年度との比較及び中期経営計画の計画(期初予想:2021年5月14日公表の業績予想値)との比較では下記のように分析しております。
当連結会計年度の連結売上高は、前期比では13億49百万円増加、期初予想(2021年5月14日公表の業績予想値)比では11億50百万円の超過で終わりました。落橋防止装置等橋梁耐震補強製品の販売および河川災害用ブロック等の販売が好調だった建設用資機材の製造・販売事業セグメントの売上高が前期比10億3百万円増と大きく増加し、期初予想比でも15億96百万円の超過達成となり、全体の売上高の増加を牽引しました。建設用資機材の製造・販売事業以外のセグメントでは合計で前期比3億45百万円の増加(うち会計方針の変更による増加額が3億25百万万円)に止まり、期初予想比でも4億46百万円の未達となりました。新型コロナウイルス感染症の影響により民間建築金物の需要低迷が長期化したことに伴い建築用資材の製造・販売事業が前期比で97百万円の減収、期初予想比で2億57百万円の未達となったことが大きく影響しました。
連結売上総利益は11億20百万円増加し、売上高総利益率は3.2ポイント向上しました。期初予想比でも6億60百万円の超過、売上高総利益率は1.4ポイント上回りました。増収となった建設用資機材の製造・販売事業で大幅な増益となったほか、補修・補強工事業を除く他のセグメントにおいては採算向上策や効率化策等が功奏し、増益を達成することが出来ました。
販売費及び一般管理費は、人員等の必要な強化を実施したこと等より前期比3億23百万円増加しました。計画では戦略的な先行投資を大胆に実施していくことにより前期比で5億33百万円増加する計画でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響による移動制限等により営業経費等についての支出が見送られたこと等により前期比3億23百万円の増加に止まり、期初予想比では2億9百万円少なくなりました。その中には戦略的な先行投資の位置付けである報告セグメントに帰属しない研究開発費の未達90百万円が含まれております。
以上の結果、営業利益は7億96百万円の増加、経常利益は7億91百万円の増加となりました。また、期初予想比でも営業利益は8億69百万円の超過、経常利益は8億92百万円の超過達成となりました。国内の建設用資機材の製造・販売事業では想定以上の追い風を確実に売上に結び付けられた一方で、新型コロナウイルス感染症の影響により建築用資材の製造・販売事業及び建設コンサルタント事業で大幅な計画未達の結果となりました。戦略的な先行投資も一部先送りになる等計数上は非常に良好な内容であるものの一部で課題の残る結果となったとみております。
親会社株主に帰属する当期純利益は9億81百万円増加、期初予想比9億25百万円超過となりました。経常利益の増加に加え、政策保有株式の売却による投資有価証券売却益を4億2百万円計上したことが増加の主因です。
各セグメント別の課題解決状況を踏まえた分析は以下の通りです。
(建設用資機材の製造・販売事業)
国土強靭化、高速道路耐震化、インフラ老朽化対応のため需要の拡大が続くと予想し、その需要を確実に
売上高に結びつける営業活動を実施しました。その成果として、ケーブル製品分野及び鉄鋼製品分野等にお
いて、前期比及び当初予想比いずれにおいても大幅な増加となりました。また、コンクリート製品分野にお
いても令和元年台風19号の災害復旧のための河川災害用ブロック等の特需に的確に対応することができまし
た。
新型コロナウイルス感染症の影響については、海外業務において、海外工事の遅延・中断や渡航制限によ
り事業がほぼ停止状態となり建設用資機材の輸出に大きな影響が生じました。
以上のような基調に加え、2022年度納入と見積もっていた案件の繰り上げ納入依頼への対応やスポットの
大型案件が売上・利益ともに大きく寄与したことにより、例年にない突出した水準となりました。
建設用資機材の製造・販売事業においては戦略的な先行投資を実施すること、新型コロナウイルス感染症
の影響による移動制限が緩和されると予想していたこと等により、経費が大幅に増加する予定でしたが、移
動制限は実質緩和されず、営業経費等についての支出が見送られたこと等により経費は想定したほど増加し
ませんでした。
以上により、当連結会計年度の売上高は前期比10億3百万円の増加、期初予想比15億96百万円の超過とな
りました。営業利益は前期比4億54百万円の増加、期初予想比6億18百万円の超過となりました。
今後につきましては、ケーブル製品分野及び鉄鋼製品分野等において良好な事業環境が続くと思われ、今
後も確実に成果に結びつけていくこと、実施した先行投資を確実に事業基盤の強化に結びつけていくことが
必要となります。また、海外事業につきましては新型コロナウイルス感染症の影響が続き、コンクリート製
品分野につきましては台風19号の災害復旧に一段落がつくとみており、事業環境としては厳しいものになる
と予想されますが、引続き利益重視で対応していきます。なお、翌連結会計年度においては、繰り上げ納入
依頼のあった案件やスポットの大型案件等当連結会計年度の増加要因が剥落すること、原材料費の高騰によ
り仕入れ価格が上昇すること、新型コロナウイルス感染症の影響によって停滞していた営業経費が復活する
ことや研究開発費等が増加することより、当連結会計年度より減収減益を想定しております。
中期経営計画の課題である需要拡大及び製品の多品種化への製造面での対応、新商品・新製品の開発にも
引続き取り組んでいく計画です。
(建築用資材の製造・販売事業)
セパレーター・吊りボルト等を中心とした建築金物分野において、新型コロナウイルス感染症拡大による
民間建築工事の中断や内装工事の減少等が続いたことより、売上高は前期比97百万円の減収、期初予想比2
億57百万円の下振れとなりました。
建築金物分野の需要回復の遅れを踏まえ、期初より案件採算の向上、経費節減に努めた結果、営業利益は
前期比1億66百万円の増益、期初予想比1億33百万円の超過となりました。
次連結会計年度においても、内装工事を中心に新型コロナウイルス感染症の影響は続くことが予想され、
鋼材価格の高騰が予想されるなど事業環境は厳しいと思われますが、引続き需要の確実な取り込み、選別受
注や生産体制の効率化等による利益率の向上に取り組んでいきます。
(建設コンサルタント事業)
当事業では、新型コロナウイルス感染症の影響により海外現地活動が中断しておりましたが、当連結会計
年度には国によっては現地活動が再開できる状況になりました。また、当連結会計年度の期首から収益認識
の会計基準への変更により、進捗度等に基づき売上を計上しております。
その結果、売上高は前期比では3億80百万円の増収、期初予想比では46百万円の未達となりました。営業
利益は前期比1億93百万円の増益、期初予想比21百万円の超過となりました。前期比のうち、会計方針の変
更による増加額は、売上高で3億25百万円、営業利益で1億16百万円となっております。
当連結会計年度の期末受注残高は、前連結会計年度の期末受注残高を17.6%下回っていることより、次期
連結会計年度以降も厳しい状況が続くと思われます。
予てより課題である有償資金協力案件への参加等受注案件の多様化及びBIM/CIM適用事業支援業務への本格
参入を引続き推進していきます。
(補修・補強工事業)
国を挙げての社会インフラ老朽化対応により需要は拡大しており、環境面では良好な状況が続いておりま
すが、採算を重視した選別受注により、売上高は前期比61百万円の増収、期初予想比では1億43百万円の未
達となりました。
利益面では、新型コロナウイルス感染症の影響により発注元が追加工事を厳しく選別すること等により利
益率の低下が散見され、好採算案件は前期比では少なくなりました。引き続き選別受注による採算向上に努
めたことより、営業利益は前期比19百万円の減益、当初予想比では2百万円の超過に止まりました。
本事業は、規模の拡大は人材の数に制約されるため、人材難の環境下での飛躍的な規模の拡大には限界が
あります。そのため、地道な利益体質の強化策と並行して、ノンオーガニックな拡大を検討していきます。
以上の4つの報告セグメントのセグメント利益の合計額は、連結財務諸表上の営業利益と一致しません。差異は調整額となりますが、調整額のうち特に大きな金額となっているのが、報告セグメントに帰属しない研究開発費です。公共投資の予算規模に大きな影響を受ける建設資機材の製造・販売事業に代わる収益事業を創造していくため、当社グループは、研究開発に大変注力しております。当連結会計年度の実績は3億53百万円、売上高の1.5%となっております。
|
2018年 3月期 |
2019年 3月期 |
2020年 3月期 |
2021年 3月期 |
2022年 3月期 |
増減 |
増減率 |
研究開発費(百万円) |
208 |
250 |
336 |
346 |
353 |
+6 |
1.7% |
売上高比率 (%) |
1.0 |
1.1 |
1.5 |
1.5 |
1.5 |
- |
- |
(注)本研究開発費は、報告セグメントに帰属する研究開発費は含んでおらず、研究開発部署の人件費・経費を含む金額です。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.キャッシュ・フローの状況の分析・検討
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローは、基礎営業キャッシュ・フロー(営業キャッシュ・フローから運転資本の増減を除いたもの)と資産売却(政策保有株式の売却等)より合計22億81百万円のインフローに対し、投資(ほとんどが製造設備等に対する固定資産投資)6億55百万円と株主還元(配当金)2億99百万円に配分しました。余剰額13億26百万円と運転資本の減少による余剰分2億42百万円の合計額15億69百万円を、有利子負債の返済に9億53百万円、現金及び現金同等物、定期預金等へ6億15百万円充当しました。
新型コロナウイルス感染症の影響により支出が抑えられた側面がありますが、今後の企業価値向上のための設備投資等に重点的に投資した後においても、フリーキャッシュ・フロー(ここでは、運転資本と定期預金の増減を含まず、株主還元への配分後)は大幅なプラスになりました。
中期経営計画の最終年度である翌連結会計年度においても、キャッシュのインフローを成長投資に重点的に配分していく方針であります。
(百万円)
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2021年3月期 |
2022年3月期 |
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基礎営業キャッシュ・フロー |
1,368 |
2,067 |
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資産処分等 |
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23 |
214 |
①インフロー |
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1,392 |
2,281 |
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投資 |
固定資産 |
△593 |
△650 |
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有価証券他 |
△102 |
△4 |
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△696 |
△655 |
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株主還元 |
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△299 |
△299 |
②アウトフロー |
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△995 |
△955 |
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③ネット資金(①+②) |
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397 |
1,326 |
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④運転資本 |
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765 |
242 |
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⑤有利子負債 |
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△48 |
△953 |
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⑥現金及び現金同等物、定期預金等からの調達 |
1,113 |
615 |
(注)1.前連結会計年度においては、投資の項目のインフローは少額であったため、「アウトフロー」の「投資」に含めておりましたが、上表では「資産処分等」に区分しております。
2.前連結会計年度においては、「現金及び現金同等物に係る換算差額」は、「アウトフロー」の「有価証券他」に含めておりましたが、上表では含めておりません。
b.財務戦略
当社グループの企業価値の持続的な向上を図っていく財務運営の基本方針は、以下の通りです。
・財務の健全性と成長投資を両立させることでキャッシュ・フローの持続的な増加
・長期安定的な株主還元の実施
・資本コストを上回る資本効率の向上(2023年3月期の予想ROE目標9.1%)
(適正な現預金の水準)
・当連結会計年度末の現預金の水準は、連結売上高の月商の2.6ヶ月分となっており、前連結会計年度末比増加しました。原材料費の更なる高騰に備えるために原材料・貯蔵品を増やしたものの売掛債権が一時的に大きく減少したため、運転資本需要が減少し、一時的に現預金が増加しているものと考えられます。
・グループ企業間でのキャッシュ・マネジメント・システムの運用を開始しており、資金の効率性は向上していると考えております。
・但し、当社グループは事業の性格上工事現場の進捗に売上時期が左右されること、大型プロジェクトの動向等により運転資本の振れが大きくなります。あるべき現預金の水準についてはまだ検討途上の状況であり、キャッシュ・マネジメント・システムの運用本格化、キャッシュ・コンバージョン・サイクルの短縮化の方向性を踏まえ、ベスト・プラクティスを明確にしていきたいと考えております。
(百万円)
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2020年3月期 |
2021年3月期 |
2022年3月期 |
売上高 |
22,839 |
22,801 |
24,150 |
月商 |
1,903 |
1,900 |
2,012 |
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現預金 |
3,433 |
4,549 |
5,172 |
月商比 |
1.8ヶ月 |
2.4ヶ月 |
2.6ヶ月 |
(運転資本)
・営業キャッシュ・フローの水準は、毎年運転資本の増減に大きく左右される状況となっております。より適切な管理を目指し、キャッシュ・コンバージョン・サイクルの短縮も含め、方向性を見出していきたいと考えております。「中期経営計画2020-2022」では、サプライチェーンの最適化を目指していくことになっており、将来的には運転資本の圧縮にも効果を期待しております。
(資金調達の基本方針)
・当社グループは、「中期経営計画2020-2022」の期間を既存事業基盤の再構築と成長投資の両立期と位置付けており、中期経営計画期間中に成長投資に25億円超を配分する計画となっております。中期経営計画期間中の基礎営業キャッシュ・フロー(営業キャッシュ・フローから運転資本の増減を控除したもの)の3年間の目標累計額を45億円超としており、重点的に成長投資に配分していきます。
・また、新規事業を立上げるための投資は、2023年度以降本格化するため、大規模な投資に耐えうるよう「中期経営計画2020-2022」の期間中は、デット・キャパシティをある程度維持していくことを考えており、D/Eレシオ、自己資本比率を見ながら財務規律、財務の健全性を向上させていく予定です。
・但し、M&A等により突発的に資金が必要になった場合や新規事業が予定より早く立ち上がる場合等には、その後のキャッシュ・フローを慎重に精査した上で、D/Eレシオの一時的な大幅悪化を許容する場合もあります。
(資本効率の持続的な向上)
・中長期的な企業価値向上を実現するために、資本効率の向上が不可欠だと考えており、当社グループは連結財務諸表における自己資本当期純利益率(ROE)を「中期経営計画2020-2022」の終了時には10%超とすることを重要な経営指標として掲げております。
・当連結会計年度末のROEは、17.3%と前連結会計年度末の7.4%より大きく向上しました。売上高当期純利益率(ROS)の大幅な上昇が要因です。
「中期経営計画2020-2022」の最終年度である翌連結会計年度の自己資本当期純利益率は9.1%と予想しており、目標値を下回りますが、経営計画以前からの傾向及び当連結会計年度の一時的要因等を勘案すれば、中期的には向上しており、資本コストも上回っていると考えております。中期経営計画期間は売上高当期純利益率(ROS)を向上させることにより自己資本当期純利益率(ROE)を引き上げることを基本に考えており、有利子負債が平時に極端に増えることのないように財務規律を運営していく必要がある(財務レバレッジを大きく上げる段階にはない)と考えております。
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(%、倍) |
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2019年3月期 |
2020年3月期 |
2021年3月期 |
2022年3月期 |
自己資本当期純利益率(ROE) |
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純利益/自己資本 |
8.2 |
3.2 |
7.4 |
17.3 |
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売上高当期純利益率(ROS) |
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純利益/売上高 |
3.1 |
1.2 |
2.8 |
6.7 |
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総資産回転率(分母平均) |
売上高/総資産 |
0.98 |
1.01 |
1.00 |
1.02 |
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財務レバレッジ |
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総資産/自己資本 |
2.68 |
2.66 |
2.67 |
2.53 |
(株主還元)
・株主還元・配当政策は経営の最重要課題の一つと認識しております。直接的な利益還元(配当)と成長投資による中長期的な株価上昇によるトータルリターンの向上を基本としています。「中期経営計画2020-2022」においても、中長期の成長に向けた投資を優先し、長期に亘る成長を確実に配当還元する方針としており、短期の業績に左右されず、株主資本の成長に合わせ配当金額が増加する株主資本配当率(*)を配当の水準を決定する際の指標としていきます。具体的には、株主資本配当率3.5%を目安としていきます。
・2022年3月期に対する配当金については、中期経営計画では想定していなかった特別利益を計上したこと等を勘案し、1株当たり配当金を大幅に増額しました。そのため、株主資本配当率は一時的に高い水準になっています。
(*)株主資本配当率=配当金総額÷期末株主資本(新株式払込金を除く)×100
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2020年3月期 |
2021年3月期 |
2022年3月期 |
親会社株主に帰属する当期純利益 |
(百万円) |
270 |
632 |
1,614 |
株主資本 |
(百万円) |
8,072 |
8,433 |
9,839 |
1株当たり配当金 |
(円) |
10 |
10 |
14 |
配当金総額 |
(百万円) |
299 |
300 |
421 |
配当性向(連結) |
(%) |
110.6 |
47.4 |
26.1 |
株主資本配当率 |
(%) |
3.70 |
3.56 |
4.28 |
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計基準は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載されているとおりであります。
当社グループの連結財務諸表の作成において、損益又は資産の状況に影響を与える見積り、判断は、過去の実績や入手可能な情報に基づいておりますが、見積りは不確実性を伴うため、実際の結果はこれらと異なる場合があります。
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