業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 ① 財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度における当社グループを取り巻く事業環境は、国内外における新型コロナウイルス感染症の収束と拡大の繰り返しにより社会経済活動が安定せず、物流網の混乱や原油価格上昇に端を発した材料費の高騰等、厳しい状況が続きました。自動車生産におけるサプライチェーン混乱による供給不足の状況は、未だ解決の見通しが立っていません。

 このような情勢のなかで当社グループは、コスト低減の徹底とグループを挙げた品質管理体制の強化に取り組むとともに、需要が見込まれる分野・地域への拡販を推進し、収益の確保に努めてまいりました。

 以上の結果、当連結会計年度の売上高は53,514百万円となりました。前年度は自動車安全部品事業において主要顧客の生産調整に伴う販売低迷等、新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けたこともあり、前年度比2,266百万円の増収となりましたが、半導体不足の解消や部品の生産・調達の完全正常化には至らず、自動車関連売上の回復は限定的なものとなっています。

 損益面におきましては、物流費の大幅な増加や原材料費の高騰があったものの、営業利益は536百万円と前年度比177百万円増加しました。なお、前年度においては海外連結子会社の外貨建債務等の評価による為替差損69百万円が発生しましたが、当連結会計年度では為替差益221百万円を計上した結果、経常利益は671百万円となり、前年度比251百万円の増益となりました。また、連結納税制度導入による税負担の軽減等により、親会社株主に帰属する当期純利益は510百万円で、前年度比944百万円の大幅な増益となりました。

 なお、当連結会計年度より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しております。この結果、当連結会計年度の売上高が33百万円、売上原価が9百万円、売上総利益が23百万円増加しております。詳細は、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」に記載のとおりであります。

 以下、各事業セグメント別に概況をご報告申し上げます。

 当社は、事業本部制を基礎とした製品・サービス別のセグメントから構成されており、「自動車安全部品事業」「機能製品事業」の2つを報告セグメントとしております。
 

 a.自動車安全部品事業

 当連結会計年度においては、シートベルト関連、エアバッグ関連、内装品関連とも、第1四半期において受注が大幅に回復しましたが、第2四半期においては半導体不足や、新型コロナウイルス感染症の影響拡大による急激な減産を余儀なくされる等、生産状況が週単位で大きく変動しました。年度後半においては、回復基調で推移しましたが半導体不足の影響があり増産には至りませんでした。

 この結果、当事業の売上高は35,718百万円と前年度比2,123百万円の増収となりました。損益面におきましては、原材料費高騰に加えて、生産変動に起因する航空便による出荷や海上運賃の高止まり等で物流費が大幅に増加し、営業損失は877百万円となりましたが前年度比では401百万円の改善となりました。

 b.機能製品事業

 パルテム関連は、ライフライン(下水道・上水道・ガス等)の管路更生分野において、新型コロナウイルス感染症の影響もあるなか主力の下水道分野は順調に推移しましたが、鋼材をはじめとする原材料費の高騰により利益面は伸び悩み、売上は増加、利益は横這いとなりました。

 防災関連は、災害対策用排水ホースは想定を大きく上回ったものの、消防用ホース、防災関連資機材がともに期を通じて低調で、売上・利益ともに減少しました。

 産業資材関連は、トラックの大幅減産の影響で物流省力化分野が減少したものの、高機能資材織物(タイミングベルト関連)は増収となり、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた前年に対して全般に好調に推移しました。利益面では、品質不具合対応の経費を計上したことにより、減益となりました。

 この結果、当事業の売上高は17,764百万円と前年度比143百万円の増収となりましたが、損益面におきましては営業利益は2,556百万円と前年度比288百万円の減益となりました。

 c.その他

 当事業の売上高は32百万円、営業利益は9百万円となりました。

 

 ② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は2,181百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,392百万円減少しました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果使用した資金は1,021百万円(前連結会計年度は3,487百万円の獲得)となりました。主な内訳は、減価償却費1,842百万円、棚卸資産の増加2,435百万円、法人税等の支払額933百万円等であります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は4,190百万円(前連結会計年度は1,019百万円の使用)となりました。主な内訳は、有形固定資産の取得による支出4,276百万円、有形固定資産の売却による収入250百万円等であります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果獲得した資金は1,738百万円(前連結会計年度は221百万円の使用)となりました。主な内訳は、長期借入れによる収入3,700百万円、短期借入金の増加227百万円、長期借入金の返済による支出2,174百万円等であります。

 

 ③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

前年同期比(%)

自動車安全部品事業(百万円)

35,992

107.3

機能製品事業(百万円)

16,338

109.7

合計(百万円)

52,331

108.1

 (注)金額表示の基準は、販売価額によります。

 

 

b.受注実績

 当連結会計年度における受注実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

機能製品事業

10,921

155.5

4,280

220.1

 (注)機能製品事業のパルテム部門以外は主として見込生産を行っており、受注に基づく生産は、ほとんど行っておりません。

c.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

前年同期比(%)

自動車安全部品事業(百万円)

35,718

106.3

機能製品事業(百万円)

17,764

100.8

その他(百万円)

32

99.7

合計(百万円)

53,514

104.4

 (注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

マツダ(株)

19,258

37.6

19,954

37.3

スズキ(株)

4,658

9.1

4,932

9.2

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

① 当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当連結会計年度の売上高は、新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けた前連結会計年度比2,266百万円と大幅に増加し、53,514百万円となりましたが、感染拡大前の水準には戻っておりません。自動車安全部品事業においては、通年では大きく回復していますが、サプライチェーンの混乱が継続し、期中において大きく受注が変動しました。

 営業利益は、前連結会計年度比177百万円増加し、536百万円となりました。自動車安全部品事業においては、受注変動に対して可能な限り対応を講じましたが、コストアップの大きな要因となり、物流費の高止まりや原材料価格の上昇もあり、改善は小幅にとどまりました。機能製品事業においては、主力のパルテム関連工事は期末に大きく挽回しましたが、トラック生産の減少を受けて物流省力化分野が苦戦する等、産業資材事業が低調で、前連結会計年度比減益となりました。

 経常利益は、海外子会社の外貨建債務に関わる為替差益等により、前連結会計年度比251百万円増加し、671百万円となりました。

 当連結会計年度から連結納税制度を導入しており、国内子会社と芦森工業単体で課税所得と損金を相殺する等により、税負担が大きく減少し、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度比944百万円増加し、510百万円となりました。

 当連結会計年度末の総資産は、50,283百万円と前連結会計年度末に比べ3,428百万円増加しました。2019年に本社・大阪工場土地の一部を売却しましたが、譲渡先事情によりこれを買い戻したことにより、有形固定資産が3,148百万円増加、また、受注変動の影響で棚卸資産が2,688百万円増加しています。また、これに伴い、手元資金の圧縮に努めましたが、有利子負債が2,331百万円増加しています。

 純資産は親会社株主に帰属する当期純利益510百万円の計上により利益剰余金が509百万円増加し17,263百万円と前連結会計年度末に比べ972百万円増加しました。自己資本比率は34.3%と、前連結会計年度末の34.7%から0.3%下落しました。

 

 セグメントごとの経営成績の詳細は「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性について

 キャッシュ・フローの分析については「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

(資本の財源及び資金の流動性について)

 当連結会計年度では4,762百万円の設備投資を行っております。うち、自動車安全部品事業に1,232百万円を支出しております。生産拠点拡大のための工場建設といった大型投資は一巡しましたが、商品力向上のための金型投資や国内の老朽化した生産設備の更新等は継続して行ってまいりますので、資金需要は今後も続き、資金調達については借入で賄ってまいります。

 一方、当連結会計年度末の有利子負債は長期短期合わせて16,557百万円と総資産50,283百万円の33%を占めておりますので、財務内容悪化の懸念から個々の投資案件につきまして採算性や将来の財務内容への影響等を十分検討して実施してまいります。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

 当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項) 4.会計方針に関する事項」に記載しておりますが、連結財務諸表に与える影響が大きいと考えられる項目は以下のとおりであります。

 

 (a)貸倒引当金

 当社グループの保有する債権に係る損失が見込まれる場合、その損失に充てる必要額を見積り、引当金を計上しております。一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を勘案し、回収不能見込額を計上しております。

 貸倒懸念債権等特定の債権の回収可能性の評価は、将来の不確実な経済条件の変動などによる影響を受け、債務者の財務状況等が悪化した場合には、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する貸倒引当金及び貸倒引当金繰入額の金額に影響を与える可能性があります。

 (b)固定資産の減損

 当社グループでは、固定資産の簿価について、それが回収できなくなる可能性を示す兆候がある場合は、減損の要否を判定しております。この判定は、連結グループ個社単位で行うこととしており、事業用資産については、製品グループを考慮して資産グループを決定し、共用資産については、会社全体をグルーピングの単位として将来キャッシュ・フローの見積りを行い、この見積りに基づいて行っております。また、事業の用に供していない遊休資産については、個別物件ごとにグルーピングを行っており、個別に比較可能な正味売却価額に基づいて行っております。将来キャッシュ・フローの見積りについては、合理的に算定された事業計画及び回収可能価額に基づいて行っておりますが、将来の予測不能な予算策定上の前提条件等の変化によって見積りが変更されることにより、将来キャッシュ・フロー及び回収可能価額が減少し、減損損失が発生する可能性があります。

 (c)繰延税金資産の回収可能性

 繰延税金資産の回収可能性は、将来の税負担を軽減する効果を有するかどうかで判断しており、当該判断にあたっては、収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性があるかどうかを判断しております。

 収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性を判断するにあたり、一時差異解消見込年度における課税所得を見積っておりますが、この課税所得は、過去の推移を基礎として、合理的に算定された事業計画に基づいて、見積りを行っております。

 当該見積りについて、将来の予測不能な前提条件の変動等により見直しが必要となった場合には、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する繰延税金資産及び法人税等調整額の金額に影響を与える可能性があります。

 

④ 経営方針・経営戦略・経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況について

 当社は、2022年から3ヵ年に亘る「第123~125期(2023年3月期~2025年3月期)中期経営計画」を策定いたしました。

 前回の「第120~122期(2020年3月期~2022年3月期)中期経営計画」期間におきましては、自動車安全部品事業の低迷と新型コロナウイルス感染症の影響で業績が大きく悪化し、目標数値を取り下げることとなりました。今回の中期経営計画では、豊田合成(株)との協業により自動車安全部品事業を黒字化し、機能製品事業の収益を新型コロナウイルス感染症拡大前の水準に戻すことにより、前中期経営計画の目標数値に再度チャレンジすることとしています。

 また、当社は、東京証券取引所の新市場区分において「プライム市場」を選択しました。現時点におきましては、流通株式時価総額、一日平均売買代金が上場維持基準に適合しておりませんが、今回の中期経営計画の数値目標の達成により、これらを満たすことができると考えています。また、「プライム市場」上場会社としてガバナンスを一層充足させ、持続可能な社会への取組みをビジネスチャンスと捉えて、これを加速させます。

 次期につきましては、売上高57,000百万円、営業利益1,300百万円、経常利益1,250百万円、親会社株主に帰属する当期純利益1,000百万円を見込んでおります。

                                       (単位:百万円)

 

2022年3月期

実績

2023年3月期

計画

増減

増減率(%)

売上高

53,514

57,000

3,486

6.5

営業利益

536

1,300

764

142.5

(営業利益率)

1.0%

2.3%

1.3

経常利益

671

1,250

579

86.3

親会社株主に対する当期純利益

510

1,000

490

96.1

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