課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 以下の文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)経営方針

当社グループは、「100億人・100歳時代」の豊かで持続可能な社会の実現を目標に、事業を通じた社会価値の創出、社会課題解決を目指しています。

 

豊かで持続可能な社会の実現に向けて、社会価値・非財務価値・財務価値、これら3つの価値を循環・拡大させながら、社会課題を解決していきます。社会価値は、当社グループの事業活動を通じて社会課題を解決していくことにより創出・向上を図ります。そのためには、当社グループの非財務価値を高める必要がありますが、これは①競争力の源泉である社会課題解決力と、②社会からの信頼の基盤となるESG(*)の両面を強化することで実現していきます。これらを可能にする成長の源泉・好循環の起点として財務価値の向上を図りつつ、社会価値と非財務価値からもたらされる売上・利益などを次なる成長に向けて継続的に投資します。

以上の循環によって当社グループ自身が持続的に成長し、社会と自社のサステナビリティを両立させてまいります。

 

(*)ESG:企業が長期的に成長するために重要とされる3つの観点、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の略。

 

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(2)経営戦略

(中期経営計画2023)

当連結会計年度は、「中期経営計画2023」(以下、中計2023)の2年目にあたります。中計2023の対象期間は2021年9月期から2023年9月期までの3カ年ですが、経営理念にもとづき、5年さらにはその先を見据えた戦略と位置づけて策定しました。

中計2023では、目指す企業像と社会像を定め、財務・非財務・社会の3つの価値創造を目指しています(下図参照)。

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3つの価値創造を目指すうえでの基本方針を以下のとおり定め、取り組んでいます。

①VCP(*)経営: 「価値創造プロセス」を重視した経営

②連結経営:  連結経営に基づく競争力・基盤強化

③新常態経営: ポストコロナ社会への変革の先駆け

 

(*)VCP:価値創造プロセス(Value Creation Process)の略。社会課題を起点に、その解決と未来社会の実現をゴールとして、お客様や社会への提供価値の向上と持続的成長を目指す、当社グループの価値連鎖の展開過程を意味する。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

(財務価値)

経常利益及びROEを重要な経営指標とし、本中計の目標水準を定めています。当連結会計年度には、両目標水準に1年前倒しで達しました。引き続き、企業価値並びに資本効率の向上を図ってまいります。

 

(本中計最終年度(2023年9月期)の目標水準)

●経常利益  :100億円

●ROE     :10%

 

 

(非財務価値)

当社グループでは「社会課題解決力」並びに「ESG」の観点から具体的な非財務価値の目標を定め、その達成を目指しています。

「社会課題解決力」としては「知的資本」「共創基盤」、「ESG」としては「環境」「社会」の各要素に区分のうえ、ベンチャー企業との連携・協業件数や再生可能エネルギー比率などを指標として設定し、これらの達成状況を社内取締役の変動報酬(株式報酬)の算定要素の一部に採用し、役員報酬に反映させています。

 

 

 

(社会価値)

レジリエントで持続可能な社会の実現に向けて、当社グループが特に重点的に取り組む分野で独自の社会価値目標を設定しています。具体的には、「ヘルスケア」「人財」「都市・モビリティ」「エネルギー」「情報通信」「食農」「循環」「レジリエンス(*)」の8分野です。

各分野の目標達成には中長期あるいはさらに長い期間を要することも考えられますが、当社グループは引き続き、社会価値の創出・向上に向けた具体的な取り組み、研究・提言から社会実装までの価値連鎖を強く意識した経営を推進します。

 

(*)レジリエンス:「回復力」「弾力性」を意味し、災害時など危機に直面した際の対応能力や、被害からの速やかな回復力(強靭さ)などを指す。

 

(4)経営環境

当社グループはシンクタンク・コンサルティングサービスセグメント(以下、TTC)の官公庁向け事業、ITサービスセグメント(以下、ITS)の金融・カード向け事業を基盤事業と位置づけ、これらを強みとして成長してきました。

社会課題が一層高度化・複雑化するなかで、課題解決を図るための政策立案や制度設計において、幅広く、かつ、高度な専門性や緊急性、機動力がますます求められるようになりました。TTCでは多彩な専門性と総合力で、特に社会的影響や解決の優先度が高い新型コロナ感染症関連、エネルギー、ヘルスケア、交通・移動、通信等の課題に先駆的に対応してきました。その結果、多くの官公庁事業を安定的に受託しております。あわせてポートフォリオ改革を推進し、重要な事業への重点的かつ効率的なリソース配分を進めています。

金融業界では、ICTの急速な普及・発展とともにフィンテックなどの新たな技術への対応が喫緊の課題となっています。加えて、グローバル化の進展とともに顕在化したマネーロンダリングや各種市場リスク管理等の課題に対処するため、新たな国際的金融規制やこれに応じたシステム対応が求められています。ITSでは、こうした金融業界の変化を捉えつつ、新たなシステム開発需要等を捉えて拡大しています。

さらなる成長に向けこれまで蓄積した強みを礎として、より市場規模の大きな民間企業分野における変化を予測・見通し、デジタル・トランスフォーメーション(DX)をはじめとした最先端ICTよる解決策を実現する「実装」への取り組みが必要です。

そのためには当社グループの強みの源泉たる人財並びに情報発信力を高めることや、「実装」のための様々なパートナーとの連携が重要であり、今後さらにこれらの取り組みを強化してまいります。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 人財の確保・育成

人財は、当社グループの成長の源泉となる重要な資産です。今後成長を目指すDX事業など民間分野を中心とした事業等を担う人財の確保と育成が最優先の課題と捉えています。

そのため、新卒・キャリア採用の強化、社員個々の志向に応じた育成・成長を支援する当社独自の「FLAPサイクル(*)」の導入・実践などの施策に取り組んでいます。また、複線型キャリアをベースとし、それぞれに役割を配したジョブ型の人事制度へ移行しました。引き続き、働き方改革を推進して従業員のエンゲージメントを強化・向上し、優秀な人財が存分に能力を発揮・活躍できる一層魅力的な環境を備えた企業グループを目指します。

 

(*)FLAPサイクル:自身の適性や業務に必要な要件を「知る」(Find)、スキルアップに必要な知識を「学ぶ」(Learn)、目指す方向に「行動する」(Act)、新たなステージで「活躍する」(Perform)という一連の循環で一人ひとりのキャリア形成を促す当社独自の方法論。

 

② 事業変革の加速

当社グループは、基盤事業による収益を拡大しながら成長事業に投資し、中長期的に次代のコア事業を育成していく両利き経営を推進しています。中計2023で成長事業と位置づけているDX事業、ストック型(知的資産を活用した汎用サービス提供)事業、海外事業への取り組みをさらに進捗させるため、基盤事業について、選択と集中を進め、品質・生産性向上を図る改革を加速し、リソースのポートフォリオ転換を図ります。

 

③ 研究・提言力、研究開発の強化

研究・提言活動は、VCP経営における価値連鎖の起点であり、さらなる強化が必要と認識しています。そのため、「時間」「人」「ネットワーキング」の観点からリソース投入(投資)を強化します。具体的には、国内外の研究機関・大学などと積極的に共同研究・提言や人財交流などをさらに進めます。

また、成長事業の一つに位置づけたストック型事業は、開発したサービス事業等の拡大に伴って利益率を高められる“投入人員に依存しない”事業収益構造を目指すものです。その実現には新事業開発等のための継続的な研究開発投資が不可欠であり、新たなアプリケーションやAIエンジン、ソフトウェアへの開発投資を進めてまいります。

 

④ 事業基盤の強化

成長事業の拡大には、当社グループ内のみならず、グループ外のパートナーとの連携・協業を推進し、事業基盤を強化することが必要です。そのため、出資や共同企業体(JV)の設立、M&Aなど、資本を活用する戦略的投資を実行し、オーガニックとノンオーガニックの両方で成長を追求してまいります。2022年4月には専任組織としてコーポレートベンチャーオフィスを設置、先端技術を有するスタートアップ企業との協業にも一段と注力しています。

 

⑤ 新たな事業や事業拡大に応じたリスク対応力の強化

事業ポートフォリオ改革や質的な変革に伴い、従来にない大型事業の遂行機会が増加しており、プロジェクトマネジメントの重要性が高まっています。また、新事業の取り組みにおいては、当社グループにとって対応経験・知見の蓄積がないリスクに直面する可能性があり、リスクの早期把握・迅速な対応が求められます。

品質の維持・向上のため、個別案件の管理に加えて、社員の教育や技術向上、リスク管理機能の強化に努めてまいります。

 

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