当社グループにおけるリスク管理の体制と枠組みは、「危機管理方針」に基づいており、危機管理委員会において、当社グループに関する経営リスクの抽出・評価を行い、重大リスクの未然防止策や危機発生時の対応策等を策定するなど、グループ各社が連携してリスク管理やリスク対応力の向上に努めています。そして、経営会議及び取締役会において、事業及び投資に係るリスクの総合的かつ多面的な検討のほか、重点的に管理すべきリスクの評価・管理などをそれぞれ行っております。
財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況(以下「経営成績等」という。)に重要な影響を与える可能性があると当社グループが認識しているリスクのうち、投資者の判断に重要な影響を与える可能性があると考えられる主な事項は、以下のとおりです。ただし、これらのリスクは必ずしもそれぞれ独立して存在するものではなく、ある事象の発生に伴って、ほかの様々なリスクが増大する可能性があります。また、記載したリスク以外にも投資者の判断に重要な影響を与える事項が発生する可能性があります。
なお、以下の(1)から(5)までの各区分に記載のリスクの順序は、当該リスクが現実化した場合の影響度やその蓋然性をそれぞれ5段階評価(下図参照)の上、経営会議及び取締役会において総合的に評価した結果に応じた順序としております。また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
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影響度評価 |
蓋然性評価 |
5 |
高い |
高い |
4 |
やや高い |
やや高い |
3 |
中 |
中 |
2 |
やや低い |
やや低い |
1 |
低い |
低い |
(1) 経営環境に関するリスク
① 事業環境の変動(影響度評価:4、蓋然性評価:4)
当社グループを取り巻く事業環境において、国内外の経済情勢や業界再編等の変動が、当社グループの経営成績等に重要な影響を与える可能性があります。
特に、化学品事業のうち機能性材料の製品群は、中間原材料であり、最終製品の市況の変化により、当社グループの経営成績等に重要な影響を与える可能性があります。当該リスクへの対応策として、各担当部門において、業界、市況及びユーザーの動向を可能な限り確認し、速やかに必要な情報を関係部門と共有することなどにより、それぞれの対応に遅れが出ないよう注力しております。
また、不動産事業では、経済情勢や事業環境の変化等に伴うテナントからの賃料収入の減少により、当社グループの経営成績等に重要な影響を与える可能性があります。当該リスクへの対応策として、リニューアルやリノベーションを行うことで常に商業施設としての価値の維持・強化に努めております。
なお、新型コロナウイルス感染症が経済活動に与える影響は依然不透明ですが、影響の大きい機能性材料を中心に情報収集の頻度・確度を高めることにより、現有シェアを堅持するとともに、コロナ禍からの回復期における需要の高まりにも対応できるよう、関係部門との有機的な連携を高めて対応することが重要と考えております。
② エネルギーコスト(影響度評価:3、蓋然性評価:5)
当社グループが生産・販売にあたって購入する石油・ガスの価格は、中東情勢や世界経済の変動の影響を受け、急激な価格変動を起こすことがあります。これらの価格が急激に上昇することによりエネルギーコストが高騰した場合、製品価格への転嫁が遅れることなどにより、当社グループの経営成績等に重要な影響を与える可能性があります。また中長期的には、気候変動問題解決のため環境規制の強化策として、炭素税等が導入された場合、エネルギーコストの上昇につながる可能性があります。当該リスクへの対応策として、エネルギー管理の徹底・強化及びエネルギーのベストミックスに関する取り組みなどを行っておりますが、状況によっては当社グループの生産・販売活動への影響を十分に回避できない可能性があります。なお、当社グループは、脱炭素社会・カーボンニュートラルの実現に貢献するため、気候関連財務情報開示タスクフォース(以降、TCFD)提言に基づいた情報開示を行っております。今後シナリオ分析を進め情報開示を拡充していくとともに、策定したロードマップに沿って、脱炭素エネルギーの調達や省エネルギー施策などへの投資・資源配分を通じて気候変動問題への対応に努めてまいります。
③ 為替レートの変動(影響度評価:3、蓋然性評価:4)
当社グループが購入する主要原料の多くが輸入品であるため、為替レートの変動の影響を受ける場合があります。当該リスクへの対応策として、為替レートの動向・見通しを確認しつつ、購入の時期、数量を見極め、適宜調整するなどしておりますが、これにより当該リスクを完全に回避できる保証はなく、為替レートが大きく円安に振れ、それが継続した場合、コスト上昇分を吸収しきれないことや競争激化などで価格転嫁できないことにより、当社グループの経営成績等に重要な影響を与える可能性があります。
④ 原材料の確保(影響度評価:4、蓋然性評価:4)
当社グループが購入する原料、資材、燃料等は、海外の需給バランスの影響を受けるものが多くあり、当該リスクへの対応策として、国内外の複数の取引先からの購入を行い、当社工場や国内の外部倉庫等に需要に応じた一定量の在庫を維持するなど、原材料価格の変動リスクを低減するための調整、及び原材料の安定調達に努めております。しかし、戦争、暴動、テロ、自然災害、新型コロナウイルス等の感染症や伝染病、気候変動その他環境規制、ストライキ等により供給が中断及び制限された場合は、当社グループの経営成績等に重要な影響を与える可能性があります。
⑤ 風評等(影響度評価:1、蓋然性評価:1)
当社グループの商品・サービス等に関連した、悪意のある風評・風説(以下「風評等」という。)や、不正確または不十分な情報に基づくネガティブな報道等に起因する風評等が、それが事実であるか否かにかかわらず、当該商品・サービス等に対する信頼を毀損し、それが当社グループ全体に対する社会的信用にも影響を与えるような場合には、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。当該リスクへの対応策として、風評被害への対応マニュアル等を定めておりますほか、平時から関係部門が風評等に関する情報の把握に努めております。
(2) 経営戦略に関するリスク
① 技術革新(影響度評価:5、蓋然性評価:4)
当社グループの製品のうち、機能性材料の主要販売先は、技術革新の激しい業界であり、新規技術が開発されることにより、市場構造が急速に変化する場合があります。それに伴って、当社製品の競争力が著しく低下し、当社グループの経営成績等に重要な影響を与える可能性があります。また、水処理薬剤など、上記以外の業界向け製品についても、競争力の高い代替製品の出現が、同様の影響を与える可能性があります。これらのリスクへの対応策として、将来の技術革新の方向性を注視し、次世代の技術に必要とされる機能性材料の開発などを進めてまいります。
② 研究開発(影響度評価:4、蓋然性評価:3)
当社グループは、「研究開発は企業価値向上の原動力」と位置づけ、新製品・新技術の研究開発に注力しております。しかしながら、当社グループの研究開発は、新規事業の創出のための研究を含んでいるため、研究開発期間が長期間にわたる場合があり、また、研究開発活動の結果が目標と大きく乖離するような場合には、競争力が低下し、当社グループの経営成績等に重要な影響を与える可能性があります。当該リスクへの対応策として、研究マネジメントの徹底により、研究開発の案件ごとに進捗状況や見通しを厳しく管理し、必要に応じて当該研究開発案件の継続可否、方向修正等の判断を行うこととしております。
(3) 事業運営に関するリスク
① 自然災害及び感染症(影響度評価:5、蓋然性評価:5)
当社グループでは、自然災害及び感染症に関するリスクへの対応策として、自然災害や新型インフルエンザ等の感染症への対策等を定めておりますが、事業継続計画(BCP)の想定を超える大規模な地震や大雨、高潮等の自然災害や新型インフルエンザ等の未知の感染症による製造の中断、物流ルートの寸断などにより、製品の供給が長期間にわたって滞った場合、当社グループの経営成績等に重要な影響を与える可能性があります。
なお、新型コロナウイルス感染症に対しては対策本部を設置し、役職員の健康状況の把握や各事業拠点の情報収集、感染の未然防止策の実施に努めるとともに、政府及び自治体の指針・指示に従って事業活動を継続しております。関係部門との連携強化や感染防止策等の継続により、今後とも事業継続に努めてまいります。
② 事故等による操業停止(影響度評価:5、蓋然性評価:2)
当社グループは、組織的な労働安全衛生体制及び保安防災管理体制の構築・運用ならびに設備の保全・保守等の対応策により、労働災害及び生産設備等の事故防止に取り組んでおります。しかしながら、重篤な労働災害や重大な火災・爆発・漏洩事故等の不測の事態が発生することを完全に防止することはできません。これらのリスクが顕在化し、当社グループのいずれかの設備における一時的または長期にわたる操業の停止があった場合、製品によっては代替生産が難しいものもあるため、供給に支障をきたす可能性があり、当社グループの経営成績等に重要な影響を与える可能性があります。
③ 情報セキュリティ(影響度評価:4、蓋然性評価:3)
当社グループの事業活動における情報システム・ネットワークへの依存度は年々高まっており、その対応策として、シンクライアント化、クラウドの利用等、セキュリティの高度化等により、システムやデータの保護に努めておりますが、自然災害等に伴う停電やコンピューターウイルスへの感染、ハッキング等により、ネットワーク障害、情報漏洩が発生する可能性があります。これらのリスクが顕在化した場合、事業活動に支障をきたし、当社グループに対する社会的信用に影響を与える場合があるほか、多額のコストが発生し、当社グループの経営成績等に重要な影響を与える可能性があります。また、当社グループは、システムの運用やメンテナンス等の一部を第三者に委託しているため、システムの不具合等について、当社グループのみでは対処できない可能性があります。加えて、情報インフラの構築、運用、拡張に係るシステム投資や維持費用が、将来大幅に増加する可能性があります。
④ 製造物責任(影響度評価:4、蓋然性評価:2)
当社グループでは、製造する各種製品の販売にあたり、製造物責任に関するリスク検討を確実に実施することで、製造物責任に関する問題の未然防止を図っております。しかしながら、すべての製品について欠陥がなく、製造物責任に関する問題が発生しないという保証はありません。製造物責任に基づく損害賠償については、PL保険に加入し、万一の事態に備えておりますが、賠償額が保険の補償範囲を超える大規模な製造物責任につながるような製品の欠陥が発生した場合には、当社グループの経営成績等に重要な影響を与える可能性があります。当該リスクへの対応策として、品質保証体制を整備し、品質方針に基づく品質管理を徹底しておりますほか、関係部門が平時から潜在的な訴訟リスクの把握に努めております。
⑤ 内部統制(影響度評価:2、蓋然性評価:1)
当社グループは、財務報告の信頼性を確保するための体制を整備・運用するとともに、継続的な改善により内部統制システムの強化に努めております。しかしながら、内部統制システムが有効なものであっても、役職員の悪意または重大な過失に基づく行動など、様々な要因により機能しなくなる可能性があります。
また当社グループは、業務の有効性と効率性を確保するための体制についても整備・運用するとともに、継続的な改善を図っております。しかしながら、内部統制システム構築時点では想定していなかった非定型な取引や事業・社会環境等の変化に、当社グループ内の組織・機能が適切に対応できず、構築された業務プロセスが十分に機能しない可能性があります。
これらの事象に適切に対処できない場合、将来的に法令違反等の問題が発生する可能性があり、それに伴い、当社グループの社会的信用の失墜により事業に影響が生じる、または課徴金や罰金、損害賠償等の支払いが生じることにより、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。
以上のとおり、内部統制システムには本質的に内在する固有の限界があるため、その目的が完全に達成されることを保証するものではありませんが、これらリスクへの対応策として、コンプライアンス教育を含む不正防止策の強化・徹底及びその不断の見直しによる改善のほか、平時より業務プロセスの機能不全につながるような潜在的リスクの把握に努めております。
(4) 経理・財務に関するリスク
① たな卸資産(影響度評価:2、蓋然性評価:4)
当社グループのたな卸資産の評価方法は、総平均法による原価法(収益性の低下に基づく簿価切下げの方法)であります。当社グループが保有するたな卸資産について、市場価格の下落等により多額の簿価切下げが発生し、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。当該リスクへの対応策として、各担当部門において販売計画、製品在庫、原料在庫及び原料購入の適正化等をそれぞれ実施しております。
② 有価証券の減損(影響度評価:2、蓋然性評価:3)
当社グループは、株式市場の変動の影響を受ける有価証券を保有しております。当社グループが保有する有価証券の市場価格の大幅な下落等により、減損損失が発生し、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。当該リスクへの対応策として、保有目的が純投資目的である株式については、株式市場の変動を踏まえ機動的に売却できる体制としているほか、保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式については、定期的に保有の合理性を検証し、適宜縮減する方針としております。
③ 固定資産の減損(影響度評価:3、蓋然性評価:2)
当社グループは、「固定資産の減損に係る会計基準」を適用しております。将来、当社グループが保有する固定資産について、経営環境の著しい悪化等による収益性の低下や市場価格の下落等により減損損失が発生し、当社グループの経営成績等に重要な影響を与える可能性があります。当該リスクへの対応策として、定期的に減損テストを実施することにより、潜在的な減損リスクの把握に努めておりますほか、販売計画の適正化、減損が必要な事態となる前の売却等の見極めに努めております。また、必要に応じて不動産鑑定評価などを実施しております。
④ 繰延税金資産(影響度評価:2、蓋然性評価:2)
当社グループは、将来の課税所得に関する予測・仮定に基づき、繰延税金資産の回収可能性の判断を行っております。将来の課税所得の予測・仮定を変更した場合、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。また、税制改正に伴い、税率変更等が実施された場合は、繰延税金資産の計算の見直しが必要となり、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。当該リスクへの対応策として、関係部門が平時から監査法人と十分にコミュニケーションをとり、潜在的な税務リスクの把握に努めております。
(5) 法務・知財に関するリスク
① 訴訟等(影響度評価3、蓋然性評価2)
当社グループは、国内及び海外における事業活動の中で、訴訟、係争、その他の法的手続きの対象となる可能性があり、将来重要な訴訟等が提起された場合、当社グループの経営成績等に重要な影響を与える可能性があります。当該リスクへの対応策として、コンプライアンス研修を定期的に実施するほか、関係部門が平時から潜在的な訴訟リスクの把握に努め、必要に応じて外部専門家と連携するなどしております。
② 知的財産(影響度評価:3、蓋然性評価:1)
当社グループは、独自の技術やノウハウを蓄積し、競争力の強化を図ってまいりましたが、かかる技術やノウハウは、厳正な管理を行っているものの、予期しない事態により外部へ流出する可能性があります。加えて、特定の地域では、知的財産権の保護が極めて困難であるため、第三者が当社グループの知的財産を不正に使用して類似商品を製造することを効果的に防止できない可能性があります。また将来、知的財産に係る紛争が生じ、当社グループに不利な判断がなされた場合には、当社グループの経営成績等に重要な影響を与える可能性があります。当該リスクへの対応策として、関係部門が平時から潜在的な知財紛争リスクの把握に努め、必要に応じて外部専門家と連携するなどしております。また、役職員の退職にあたっては、かかる技術やノウハウが社外に流出することを防ぐため、秘密保持契約を締結するなどしております。さらに、これらのリスクへの対応策の実効性を上げるため、知的財産保護についての教育を継続して行っております。
③ 法規制等(影響度評価:3、蓋然性評価:3)
当社グループに関連する法令等に関しては、国内外において大幅な変更や規制の強化等が行われる可能性があります。特に、温室効果ガス排出の規制強化や炭素税などの新しい法規制・政策が導入される可能性があり、かかる法令の改変が、当社グループの事業活動に支障をきたした場合、当社グループの経営成績等に重要な影響を与える可能性があります。また、諸法令に基づき当社グループが受けている許認可等について、現時点においては、それら法規制等に基づく許認可等が取消しとなるような事由は発生しておりませんが、将来、何らかの理由により取消事由等に該当し、事業活動の制限や新たなコストが発生した場合、当社グループの経営成績等に重要な影響を与える可能性があります。
これらのリスクへの対応策として、関係部門がかかる法令の改変に関する最新の情報を収集し、また許認可等の状況を定期的に確認することにより、必要に応じて迅速に対応できる体制としております。
(6)気候変動問題への対応
地球(生態系)や人間・企業活動に重大な影響を及ぼす気候変動は、当社グループにとってリスクであると同時に新たな事業機会をもたらすものと考えています。持続可能な成長を目指す上で、「低炭素社会への移行」は、対処・挑戦すべき重要な経営課題の一つと認識し、SDGsやパリ協定で示された国際的な目標達成への貢献に向け、幅広いステークホルダーとの協働を通して、課題解決に取り組んでまいります。当社グループは、気候関連財務情報開示の重要性を認識し、TCFD提言を支持するとともに、今後TCFD提言に沿った情報開示の拡充に取り組んでまいります。
TCFD提言に基づく情報開示
当社グループは、行動憲章の一つに「自然と環境を守り、社会との調和を大切にする事業活動を推進し、地球環境の保全に努めます」を掲げ、共通価値の創造と中長期的な企業価値の向上に取り組んでいます。
さらに、持続可能な社会の実現に貢献するため「サステナビリティビジョン2030」を策定し、その中で「気候変動への対応」を含めた4つの戦略的優先課題(マテリアリティ)(以降、マテリアリティ)を定めるとともに、気候変動は世界に直面している重大な課題であるという認識のもと、TCFD提言に基づく情報開示を行いました。今後、提言に沿った気候変動関連の情報開示の拡充を進め、事業活動を通じて地球環境への負荷を軽減し、脱炭素社会・循環型社会・自然共生社会の構築と当社グループの企業価値向上に努めてまいります。
1.ガバナンス
社長を委員長とし、独立社外取締役を含む全取締役並びに全執行役員が出席するCSR委員会(年4回以上開催)にて、「気候変動への対応」がサステナビリティビジョン2030のマテリアリティの一つとして経営の重要課題であることを経営層全員で共有し、取り組み課題を統括する体制でレビュー及び監視を行っています。
また、CSR委員会のワーキング組織としてサステナビリティ推進会議を設置し、関連する方針の決定やサステナビリティ目標の進捗管理・施策の審議などの具体的活動を展開しています。
活動の基本方針及び重要施策等については、取締役会及び経営会議にて審議決定しています。
2.戦略
当社グループは、気候変動に伴うリスク及び機会を事業戦略上の重要な観点の一つと認識し、IEA(国際エネルギー機関)が発表するシナリオや、政府及び国際機関が発行した将来予測に関するレポート等を参考に、TCFD提言に沿って2℃以下シナリオと4℃シナリオの分析を実施し、短中長期にわたる時間軸でのリスクへの対応策及び機会の特定を行いました。
その結果、移行リスクとしては、炭素税等のカーボンプライシングの導入による原燃料コスト上昇が事業活動に及ぼす影響が大きいと判断され、今後の施策立案の中でイノベーションの進展や社会情勢などを見極めながら経済合理性を踏まえつつ、柔軟に最適手段を選択する必要があると判断しています。物理的リスクとしては異常気象に起因する豪雨や洪水による自社拠点の操業を含むサプライチェーンへの影響が想定されるため、BCP体制を強化し事業継続力の向上により影響の低減に取り組んでいます。
なお、事業活動に及ぼす移行及び物理的リスクの財務影響度分析については、現時点では定量評価は難しいこともあり「大」「中」「小」三段階の定性分析としています。また、カーボンプライシング(炭素税等)導入による原燃料調達コストの増加のリスクがある一方、気候変動の緩和に貢献する製品及びサービスの需要増加の機会があることを把握しています。今後更に、継続的なシナリオ分析により財務影響度や評価内容の精査を深め、リスク及び機会への対応策を進めるとともに、経営戦略への統合を推し進め事業継続力の向上に努めてまいります。
3.リスク管理
当社グループは、危機管理委員会を設置し、「全社リスクマップ」に基づいた継続的な全社経営リスクの抽出及び評価を行い、重大リスクの未然防止策や危機発生時の対応策等を策定するなど、機動的かつ総合的な危機管理体制を整備しています。一方、「気候変動への対応」に関連したリスクの管理は、他の経営リスクとは時間軸が大きく異なること等から、CSR委員会のワーキング組織であるサステナビリティ推進会議が担い、シナリオ分析に基づくリスクの選別・優先順位付け・管理・評価を実施しています。危機管理委員会は、このサステナビリティ推進会議に参画し全社リスクマネジメント内で気候変動リスクの特定及び評価を行い、取締役会並びに経営会議に報告しています。
4.指標と目標
当社は、サステナビリティビジョン2030に則り、「2030年に向かって2013年度比38%以上の削減(Scope1、2)※1を目指す」そして「2050年カーボンニュートラル達成を目指す」という中長期目標を掲げ、各種の施策展開により目標達成に向け活動を推進してまいります。
当社はこれまで省エネルギー活動を積極推進する中、環境汚染の防止と低炭素化を目的として1999年から6年をかけて2005年までにすべての重油を天然ガスへ燃料転換することにより、事業活動で発生する二酸化炭素排出量を大きく削減してまいりました。今後のカーボンニュートラル達成に向け、合成メタンが社会実装された際のインフラもすでに整えております。持続可能性の観点から経済合理性を踏まえつつ、これらのインフラの有効活用など目標達成に向けた各種施策を下記ロードマップ概要に示しますが、社会の動向に対応して適宜適切に見直しながら柔軟な施策展開を図ってまいります。
今後は、早期に連結子会社を含めたグループ全体の指標並びに目標の策定、グループの活動に関連するサプライチェーン全体も含めたGHG排出(Scope3)※1への対応策(データ収集及び削減検討)等の推進など、社会全体でのカーボンニュートラル達成に向け精力的に取り組んでまいります。
※1 Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
Scope2:他社から供給された電気、熱、蒸気の使用に伴う間接排出
Scope3:Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)
※2 天然ガスの採掘から消費までの一連の工程で発生する温室効果ガスを、カーボンクレジット等で相殺することにより二酸化炭素排出量を実質ゼロとみなすことのできるLNGのこと
※3 環境省 地球温暖化対策計画(R3.10.22閣議決定)温室効果ガス削減目標 産業部門
https://www.env.go.jp/earth/211022/honbun.pdf
※4 再生エネルギー由来の電力により水を電気分解した際に得られる水素
※5 メタネーション技術を用いた合成メタン
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