(1) 経営成績等の状況の概要
① 業績
当連結会計年度におけるわが国経済は、各種政策の効果により持ち直しの動きが見られたものの、依然として厳しい状況にありました。海外においても、新型コロナウイルス感染症の感染再拡大が経済活動に与える影響に加え、地政学リスクの高まりや金融資本市場の変動等にも留意する必要があり、先行き不透明な状況が続きました。
化学工業におきましても、需要回復の動きは見られたものの、原燃料価格の上昇や物流網の混乱等により、引き続き厳しい事業環境にありました。
このような情勢下におきまして、当社グループは、基礎化学品事業、精密化学品事業および鉄系事業の収益力を強化するとともに、当社の強みであるフッ素関連技術を活かした新規製品の開発に取り組んでまいりました。
当期の売上高は、主に精密化学品事業部門が増収となったため、622億86百万円と前期に比べ103億59百万円、19.9%の増加となりました。損益につきましては、経常利益は、111億45百万円と前期に比べ55億62百万円、99.6%の増加となり、親会社株主に帰属する当期純利益は、77億62百万円と前期に比べ41億57百万円、115.3%の増加となりました。
なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しております。この結果、従来の会計処理と比べ、売上高は242百万円減少し、売上原価は203百万円減少し、営業利益、経常利益及び税金等調整前当期純利益はそれぞれ38百万円減少しております。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(会計方針の変更)」をご参照ください。
(無機製品)
か性ソーダおよび塩酸は、販売価格は低下したものの販売数量の増加により、前期に比べ増収となりました。
(有機製品)
有機製品につきましては、トリクロールエチレンは、価格修正効果により、前期に比べ増収となりました。パークロールエチレンは、販売数量は減少したものの価格修正効果により、前期に比べ増収となりました。
以上の結果、基礎化学品事業部門の売上高は、79億66百万円となり、前期に比べ21億90百万円、37.9%の増加となりました。営業損益につきましては、営業損失69百万円となりました(前期は営業損失2億40百万円)。
(特殊ガス製品)
半導体・液晶用特殊ガス類につきましては、三フッ化窒素は、販売数量は減少したものの価格修正効果により、前期に比べ増収となりました。六フッ化タングステンは、販売数量は増加したものの販売価格の低下により、前期に比べ減収となりました。ヘキサフルオロ-1,3-ブタジエンは、販売価格は低下したものの販売数量の増加により、前期に比べ増収となりました。
(電池材料製品)
電池材料の六フッ化リン酸リチウムは、販売数量の増加と価格修正効果により、前期に比べ増収となりました。
以上の結果、精密化学品事業部門の売上高は、490億00百万円となり、前期に比べ86億66百万円、21.5%の増加となりました。営業損益につきましては、営業利益100億42百万円となり、前期に比べ46億71百万円、87.0%の増加となりました。
複写機・プリンターの現像剤用であるキャリヤーは、販売数量の増加により、前期に比べ増収となりました。鉄酸化物は、着色剤の販売増加により、前期に比べ増収となりました。
以上の結果、鉄系事業部門の売上高は、25億80百万円となり、前期に比べ7億52百万円、41.2%の増加となりました。営業損益につきましては、営業利益5億39百万円となり、前期に比べ3億33百万円、161.3%の増加となりました。
商事事業につきましては、当期より収益認識に関する会計基準を適用した影響等により、前期に比べ減収となりました。
以上の結果、商事事業部門の売上高は、8億37百万円となり、前期に比べ15億76百万円、65.3%の減少となりました。営業損益につきましては、営業利益1億94百万円となり、前期に比べ41百万円、27.4%の増加となりました。
化学設備プラントおよび一般産業用プラント建設の売上高は、請負工事の増加により前期に比べ増収となりました。
以上の結果、設備事業部門の売上高は、19億01百万円となり、前期に比べ3億25百万円、20.7%の増加となりました。営業損益につきましては、営業利益3億79百万円となり、前期に比べ1億35百万円、55.3%の増加となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末(以下「前期末」という)に比べ30億33百万円増加し、263億72百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により獲得した資金は、111億76百万円となりました(前年同期は119億84百万円の資金の獲得)。これは主に、税金等調整前当期純利益が111億60百万円、減価償却費が66億80百万円となったことにより増加した一方で、売上債権の増加額が32億86百万円、棚卸資産の増加額が24億17百万円となったことにより減少したものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用した資金は、111億20百万円となりました(前年同期は98億72百万円の資金を使用)。これは主に、精密化学品事業の成長投資及び維持投資に伴う有形固定資産の取得によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により獲得した資金は、24億16百万円となりました(前年同期は43億50百万円の資金の獲得)。これは主に、長期借入れによる収入が89億88百万円となった一方で、長期借入金の返済による支出が53億09百万円となったことによるものであります。なお、長期借入れによる収入につきましては、主に精密化学品事業の成長投資及び維持投資に使用予定であります。
③ 生産、受注及び販売の状況
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.金額は、基本的に販売価格によっておりますが、設備事業の金額は、当連結会計年度の製造費用によっております。
当連結会計年度の設備事業の受注状況を示すと、次のとおりであります。
(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
(注) 当連結会計年度のキオクシア株式会社に対する販売実績は、当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満のため記載を省略しております。
なお、新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大による影響は不確実性が大きく、当社グループの業績に与える影響額を合理的に算定することが困難ではありますが、提出日現在で入手可能な情報を基に検証等を行っております。
(固定資産の減損)
固定資産の減損損失の認識に際して用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
(繰延税金資産)
当社グループは、繰延税金資産について、回収可能性の判断にあたり、現時点で入手可能な情報に基づいた将来の課税所得を見積り、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じ課税所得が減少した場合、繰延税金資産が取り崩されて税金費用が増加する可能性があります。
(退職給付費用)
退職給付費用および債務の計算は、数理計算上で設定される前提条件に基づき算出されております。これらの前提条件には、割引率、利息費用、年金資産の長期期待運用収益率、死亡率などの要素が含まれております。実際の結果がこれらの前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、当社グループの退職給付費用および債務に影響を与える可能性があります。
② 財政状態の分析
当連結会計年度末の総資産は1,099億02百万円となり、前期末に比べ175億77百万円増加しました。
(流動資産)
流動資産は617億05百万円で、前期末に比べ110億04百万円増加しました。その主な要因は、受取手形、売掛金及び契約資産(前連結会計年度は「受取手形及び売掛金」)が31億17百万円、現金及び預金が30億44百万円、棚卸資産が25億50百万円増加したためであります。
(固定資産)
固定資産は481億96百万円で、前期末に比べ65億72百万円増加しました。その主な要因は、有形固定資産が67億90百万円増加したためであります。なお、有形固定資産の増加につきましては、主に精密化学品事業の成長投資及び維持投資によるものであります。
(流動負債)
流動負債は272億65百万円で、前期末に比べ65億27百万円増加しました。その主な要因は、支払手形及び買掛金が22億00百万円、未払法人税等が20億48百万円、流動負債のその他が17億09百万円増加したためであります。
(固定負債)
固定負債は227億27百万円で、前期末に比べ35億64百万円増加しました。その主な要因は、長期借入金が31億16百万円増加したためであります。受取手形割引高及び社債を含む有利子負債の残高は309億11百万円となり、前期末に比べ39億43百万円の増加となりました。
(純資産)
純資産合計は599億08百万円となり、前期末に比べ74億85百万円増加しました。その主な要因は、利益剰余金が親会社株主に帰属する当期純利益により68億99百万円増加したためであります。
③ 経営成績の分析
当連結会計年度の売上高は622億86百万円となり、前期に比べ103億59百万円、19.9%の増加となりました。これは、主に当社が成長基盤事業と位置付けている精密化学品事業の販売数量増加により増収となったためであります。
なお、事業別の売上の概要につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①業績」に記載のとおりであります。
売上原価は、販売数量の増加や原材料価格の上昇により40億58百万円増加しております。また、販売費及び一般管理費は人件費や租税公課等が増加しました。以上の結果、営業利益は111億64百万円となり、前期に比べ54億95百万円、97.0%の増加となりました。
営業外収益は為替差益が増加したこと等により2億32百万円増加しております。また、営業外費用は支払利息が増加したこと等により1億65百万円増加しております。以上の結果、経常利益は111億45百万円となり、前期に比べ55億62百万円、99.6%の増加となりました。
特別利益は投資有価証券売却益を計上したことにより1億31百万円増加しております。特別損失は前期に投資有価証券評価損を計上したこと等により2億87百万円減少しております。以上の結果、税金等調整前当期純利益は111億60百万円となりました。法人税等および非支配株主に帰属する当期純利益を控除した親会社株主に帰属する当期純利益は77億62百万円となり、前期に比べ41億57百万円、115.3%の増加となりました。
④ 資本の財源および資金の流動性
ア.キャッシュ・フローの分析
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
イ.資金需要
当社グループの主な資金需要は、設備投資、子会社株式の取得等の長期資金ならびに原材料の購入、製造費用、販売費及び一般管理費等の運転資金であります。
資金調達の方法及び状況ならびに資金の主要な使途を含む資金需要の動向につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(2)中長期的な会社の経営戦略と対処すべき課題 ④ 財務戦略」に記載のとおりであります。
ウ.財務政策
長期資金については自己資金のほかに金融機関からの長期借入、短期資金については自己資金のほかに金融機関からの短期借入による調達を基本としております。また、運転資金の効率的な調達・安定性に配慮し、取引銀行との間でコミットメントライン契約を締結しております。
なお、当社グループは、事業活動に必要な資金を安定的に確保することを基本方針としており、財務状況や金融・経済情勢に応じて最適と判断した手段により資金を調達しております。
⑤ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、2022年度を初年度とする第12次中期経営計画(3ヵ年)において、最終年度の連結経営指標について以下の数値目標を設定しております。
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