文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社が判断したものであります。
当社創業者が掲げる経営信条は、「商いの原点に忠実たれ」「商いの王道を歩む」であります。当社の経営理念・事業理念・行動指針等はすべてこの経営信条から生まれたものであり、当社はこの価値基準に従いビジネスを展開する方針であります。
当社の経営理念は「It's Hi Dental World 歯科医療に夢と未来を…」を主力商品のコンセプトに、徹底的な顧客サポート体制と圧倒的な開発力を備えた、ナンバーワン歯科電子カルテメーカーを目指すことであります。
当社が「夢と未来を」提供する対象は、顧客である歯科医院とその患者であり、双方の満足度を高める新しいコンピューターシステムやアプリケーションを開発し、これを手厚い顧客サポートで普及させることで業界シェア首位を目指すとともに、歯科医療全体の社会的地位の向上と歯科医院の繁栄に寄与し、もって日本経済の発展に貢献することを基本方針としております。
また当社の事業理念は「サポートなくして販売なし」「お客さまの笑顔、お客さまの満足が私たちの喜び」「顔が見え、心が触れ合う」であり、創業者の経営信条を反映させております。さらにこれを具体化した「地域密着のサポート」「精緻なサポート」「最先端の技術と知識を駆使したお客様の為の電子カルテシステムの開発」を行動指針として取り組んでおります。
当社が考える「商いの原点」とは「顔が見え、心が触れ合う」ことであり、この信条・理念を忠実に実践するためには、顧客一人一人と向き合い対話を重ね、信頼関係を構築することが重要となります。そのため当社は、短期的な事業規模の拡大や利殖を追求せず、中長期的な視点での営業拠点の拡大及び顧客数の増加を志向し、緩やかでありますが確たる土台を築いた上で成長・発展する方針です。
当社の経営戦略の根基は、末永い顧客との取引関係の構築であります。現在、2022年度(2023年9月期) を最終年度とする「東和ハイシステム株式会社 中期経営計画2021」を立案し、その達成に向けて下記のような戦略で取り組んでまいります。
(高い付加価値を意識した商品開発)
当社は、新しい技術と知識を駆使して、顧客である歯科医院及びその患者の満足度を高める商品開発に注力します。特にAI(人工知能)等を導入した商品開発や、新型コロナウイルス感染症の影響によるオンライン診療や在宅勤務での業務に対する顧客ニーズの高まりを捉えて、クラウド基盤を活用した商品・サービスの開発投資を行ってまいる所存です。
(独自サービスの提供)
当社は、創業以来、「ソフトウェア三無主義」を提唱しております。一般的なコンピューターシステム業界では、保守料による安定収益を確保するビジネスモデルが採用されておりますが、当社は歯科医院向けパッケージとして歯科電子カルテ統合システムを三無主義により今後も提供する所存です。
(営業拠点の拡充)
当社は、西日本を中心に本社を含めた23か所に営業拠点を展開しておりますが、全国的には展開の余地が残されております。そこで、顧客一人一人を個別訪問する直販体制を維持するために必要な人員の採用・育成を強化し、顧客基盤を拡大する方針です。そのためには今後、さらに東京・横浜・大阪・福岡等の大都市圏への展開に注力する所存です。
(人財の育成)
上記の営業拠点展開を実現するには、歯科業務、保険診療、自社商品及びIT機器等の幅広い知識を備えた上で、コミュニケーション能力と提案能力の高い人財が必須となります。「サポートなくして販売なし」を事業理念とする当社において、サポート可能な顧客数には上限があり、また物理的にサポートできない遠方に所在する顧客もあります。この状況を打開するためには優秀な人財を一人でも多く確保することやデジタル化、デジタルトランスフォーメーションによって営業業務の効率化を図り、労働生産性を向上させることが肝要であり、自社内での教育・育成および社内業務のデジタル化に何より注力する所存です。
(知名度の向上)
当社は2020年12月25日をもちまして東京証券取引所JASDAQ(スタンダード)に上場いたしました。上場により知名度は向上したものの、当社がより良い人財を確保し、また顧客に対する認知度を向上させるためには、当社のさらなる知名度の向上が不可欠です。そのため、広告宣伝活動やデンタルショーなどの展示会への出展を積極的に進める所存です。
(財務的安全性の堅持)
当社のビジネスモデル上、途切れのないサポートを維持することは顧客、患者及び歯科医療全体に対する責任であると認識しております。そのためには今般の感染症の蔓延等の不測の事態が勃発しても、顧客が当社の事業運営の継続性に懸念を抱かないような財務的安全性の確保が重要と考えております。現状、一定の自己資本比率を堅持できておりますが、今後も油断なく取り組む所存です。
当社は、企業価値の向上を目指すにあたり、収益力と業界シェアを重視しております。
当社が直面している経営環境は、制度、業界、顧客の3つの側面があります。
なお、新型コロナウイルス感染症が当社の経営環境に与える影響は、現時点において限定的なものではありますが、先行きは引き続き不透明な部分もあり、継続的に注視してまいります。
(制度的側面)
わが国の医療制度は、医療費財源を賄う医療保険などの医療保障制度と、病院や医師等に関する医療提供制度の両面で成立しております。このうち医療保障制度の面では、近年の少子高齢化と医療費の膨張から、保険財政の悪化が課題となっております。そこで、2年に一度、厚生労働省の諮問機関である中央社会保険医療協議会等により診療報酬の改定が行われます。特に歯科については、診療報酬の計算が年々複雑化しており、都道府県単位で解釈が相違するケースも出ております。
(業界的側面)
当社が属する歯科医療業界では、一般的に「歯科材料商」と呼ばれる代理店を通して、歯科医院の運営に必要な器具・備品等を調達することが一般的であります。そのため歯科用レセプト・コンピューターを手掛ける同業他社も、「歯科材料商」に販売業務を委託しておりました。
しかし近年、歯科用コンピューターの役割について、レセプト単独目的の使用から、電子カルテを始めとする種々のアプリケーションとの連携や、一定の条件化ではありますがオンライン診療の容認など、IT技術を歯科医院の運営に活用する素地が整ってきており、当社が提案する歯科電子カルテ統合システムの需要が高まってくると考えております。
また新型コロナウイルス感染症は、歯科治療が濃厚接触に該当するとの認識から、診療時間帯・診療スタッフの員数・診療方法などの見直しの契機となっております。そうした中で2021年10月20日に運用が開始されたオンライン資格確認等システムについての政府主導による議論が大きく進み、2022年8月10日、中央社会保険医療協議会は2023年4月からマイナンバーカードによるオンライン資格確認システムの導入を原則として義務づける療養担当規則の改正案を答申、更に2022年10月13日、政府は2024年秋にも現在使われている健康保険証の廃止を発表されるなど、医療従事者の業務量の削減や業務効率化をはじめとしたデジタル化やDX化が推し進められております。
(顧客的側面)
当社の顧客である歯科医院は全国に67,936件(JAHIS:一般社団法人保健医療福祉情報システム工業会(2022年9月30日現在))が開業されていますが、医院数は年々減少しております。主な要因としては、約2年半に亘る歯科医院の新型コロナウィルス感染リスク対策の結果、予約中心の受付や予約制限による来院患者の調整、感染を懸念する患者の通院マインドの低下などで来院患者数は大きく減少、更に物価高騰による経費の増加やオンライン資格確認等システム導入による一時的な経費負担増が加わり、歯科医院の経営が逼迫されたことや後継者不足で引退医院数が新規開業医院数を上回っていることによります。
一方で、当社は電子化を推進している又は推進する予定の医院を対象顧客と考えており、67,936件のうち6割の約41,000件を想定しております。
当社が「歯科医療に夢と未来を」をモットーに歯科医院への提案型営業を推進し、更なる成長を目指すためには、「新しい技術を取り入れた商品開発」、「人財の確保と育成」、「営業拠点の展開」に対処することが必要と考えております。
このようなニーズに対して当社は長年に亘ってマスター化された病名や処置、薬品など20万件を超える膨大な情報と180万ステップ超のプログラムを合わせた高性能な歯科電子カルテ統合システムと日立製作所のAI音声認識技術(Recwere)を連携させることで、歯科医が個々の患者への診療中に手袋を外さずに音声で電子カルテ入力ができるシステム開発を協創することを2022年2月15日に発表いたしました。
歯科医院向け統合型電子カルテシステムにおける音声入力による画面操作は初の試みとなり、そのAI・音声電子カルテシステムのプロトタイプを「日本デンタルショー」に出展しデモを交えてご紹介しました。
現在、20件弱のモニター医院で稼働及び稼働の予定をしており、稼働している医院では納品日の翌日から音声入力電子カルテを使いこなせたり、従来は2人で行う歯周検査が音声入力電子カルテがあれば1人でできるなど、大変な好評価をいただいております。今後は、さらにより使い勝手の良いシステムへ改良改善を重ね、歯科業界にとって夢であったDX化の実現に向け、来春での販売を予定しております。
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