(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりである。
① 財政状態及び経営成績の状況
積水化学グループの長期ビジョン「VISION 2030」に基づき策定した、中期経営計画「Drive 2022」の2年目となる2021年度は、COVID-19の影響に加え、半導体不足や物流の停滞による生産遅延などの影響があったが、国内外の自動車・エレクトロニクス・建築市況、国内の新設住宅着工数などで一定の回復があり、増収となった。
また、原材料・部材価格は想定を大きく上回って高騰しているものの、販売数量の拡大、売値の改善、コスト削減により挽回し営業増益となった。
その結果、売上高は前年度比9.6%増の1,157,945百万円、営業利益は32.1%増の88,879百万円、経常利益は54.8%増の97,001百万円と過去最高益を更新、親会社株主に帰属する当期純利益は米国の炭素繊維強化プラスチック(CFRP)等複合材成型品を手掛ける連結子会社について減損損失を計上したことにより、前年度比10.8%減の37,067百万円となった。
なお、ロシア・ウクライナ情勢については、対象地域内に事業拠点を設置しておらず、対象地域向けの売上も少ないため、業績への影響は軽微であった。
なお、当連結会計年度より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準29号 2020年3月31日)等を適用している。詳細は、「第5[経理の状況]1[連結財務諸表等]の[注記事項](会計方針の変更)」に記載のとおりである。
セグメントごとの経営成績は次のとおりである。
イ)住宅事業
当連結会計年度の売上高は前連結会計年度比6.2%増の515,191百万円、営業利益は前連結会計年度比15.6%増の35,318百万円となった。当連結会計年度は、新築住宅、リフォームの受注が回復したほか、まちづくり事業や不動産事業が寄与し増収となった。営業利益は部材価格高騰の影響を受けたが、販売数量の拡大とコスト削減が寄与し増益となった。
新築住宅事業では、分譲・建売住宅が好調に推移し、受注が前年度を上回った。施策面では、セキスイハイム誕生50周年記念プロジェクトの発信により、ブランド強化を図った。体験・体感型施設の展開や、WEB集客、オンラインセミナー・商談の強化に加え、引き続き需要が堅調な分譲・建売住宅の拡販に注力した。商品面では、当社製セルを採用した大容量蓄電池搭載の新商品「新スマートパワーステーションFR GREENMODEL」の発売や、抗ウイルス対応フィルターを採用した換気・空調システム導入など、スマート&レジリエンスやニューノーマル対応を進めた。
リフォーム事業は、顧客との接触機会が回復したことで、受注が前年度を上回った。定期診断の拡充に加え、体感型ショールームの展開および活用により、外壁塗装・バスなど提案型商材の拡販に努めた。
まちづくり事業では4件の新規プロジェクトの販売を開始した。
不動産事業では買取再販ブランド「Beハイム」の事業拡大に注力した。
ロ)環境・ライフライン事業
当連結会計年度の売上高は前連結会計年度比3.5%増の211,776百万円、営業利益は前連結会計年度比25.0%増の14,061百万円となった。当連結会計年度は、COVID-19の影響により国内の非住宅建築市況が低調であったことに加え、海外での物件遅延の影響を受けた。また原材料価格は想定を上回って高騰したが、堅調な国内住宅市況、国内外の旺盛な半導体などの設備投資需要を受け、販売数量を拡大するとともに売値改善を着実に進め増収増益となった。
配管・インフラ分野は、COVID-19による物件遅延や、国内非住宅(建築関連)向けの需要低迷の影響を受けたが、国内住宅市況、国内外プラント(半導体・液晶)向け販売が堅調に推移し、売上高は前期を上回った。また原材料価格の高騰に対応した着実な売値改善を実施した。
建築・住環境分野は、戸建・集合住宅、リフォーム向け販売が順調に推移し、売上高は前期を上回った。
機能材料分野は、まくらぎ向け合成木材の販売において、国内の需要低迷や海外での物件遅延などの影響を大きく受けた。米国の成形用プラスチックシートは、医療機器・鉄道向けを中心とした用途への展開が進捗した。液体輸送用容器は、医療向けなどの販売が堅調に推移した。これらにより構造改革(事業譲渡)影響を除いた分野全体の売上高は前期を上回った。
ハ)高機能プラスチックス事業
当連結会計年度の売上高は前連結会計年度比15.8%増の358,809百万円、営業利益は前連結会計年度比46.4%増の42,351百万円となった。当連結会計年度は、半導体不足や輸送コンテナ不足の影響を受けたが、自動車、エレクトロニクスなどの市況が新型コロナウイルス感染症の影響から一定程度回復し、増収となった。営業利益は想定を上回る著しい原材料価格の高騰の影響を受けたが、高機能品を中心とした販売数量の拡大、売値の改善およびコスト削減により挽回し、増益となった。
エレクトロニクス分野は、スマートフォンやタブレットなどモバイル端末の市況回復に伴い液晶パネル向け製品の販売が堅調であったことに加え、非液晶分野(5G、半導体関連など)向けの拡販も順調に進捗し、売上高は前期を上回った。
モビリティ分野は、半導体不足の影響などにより自動車減産が想定より長期化したが、ヘッドアップディスプレイ向け中間膜を中心に高機能品の販売が伸長し、売上高は前期を大幅に上回った。なお、当連結会計年度に減損損失を計上したSEKISUI AEROSPACE社については、航空機需要の早期回復は見込めないため、事業構造改革を進め、医療機器向けなどへの用途拡大を引き続き推進している。
住インフラ材分野は、塩素化塩ビ(CPVC)樹脂のグローバル需要がインド・中東を中心に堅調に推移し、建築市況の回復により耐火・不燃材料の販売も堅調だったため、売上高は前期を大幅に上回った。
ニ)メディカル事業
当連結会計年度の売上高は前連結会計年度比22.4%増の88,517百万円、営業利益は前連結会計年度比59.5%増の11,180百万円となった。当連結会計年度は、国内外の生活習慣病の外来患者の需要が回復したこと、および米国でのCOVID-19検査キット拡販、医療事業の新規原薬拡販が堅調に推移したことにより、増収増益となった。
ホ)その他事業
当連結会計年度の売上高は前連結会計年度比36.9%増の4,944百万円、営業損失は前連結会計年度比1,569百万円増の10,316百万円となった。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末より57,089百万円増加し、当連結会計年度末には133,739百万円となった。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況と要因は次のとおりである。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動の結果増加した資金は105,023百万円(前連結会計年度は75,271百万円の増加)となった。これは、税金等調整前当期純利益69,859百万円、減損損失51,508百万円、減価償却費45,912百万円等の増加要因が、投資有価証券売却益25,909百万円、法人税等の支払額23,044百万円、棚卸資産の増16,835百万円等の減少要因を上回ったためである。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動の結果増加した資金は2,694百万円(前連結会計年度は58,495百万円の減少)となった。これは、投資有価証券の売却及び償還による収入45,796百万円等の増加要因が、主に重点及び成長分野を中心とした有形固定資産の取得36,997百万円、無形固定資産の取得7,617百万円等の減少要因を上回ったためである。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動の結果減少した資金は54,729百万円(前連結会計年度は19,157百万円の減少)となった。これは、配当金の支払23,176百万円(非支配株主への配当金の支払額を含む)、有利子負債の純減21,804百万円、自己株式の取得9,499百万円等があったためである。
③ 生産、受注及び販売の状況
イ)生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりである。
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前期比(%) |
住宅 |
511,169 |
1.5 |
環境・ライフライン |
213,573 |
6.2 |
高機能プラスチックス |
369,032 |
22.5 |
メディカル |
90,982 |
22.7 |
報告セグメント計 |
1,184,757 |
9.7 |
その他 |
5,613 |
42.7 |
合計 |
1,190,371 |
9.8 |
(注)金額は販売価格による概算値であり、セグメント間の内部振替前の数値によっている。
ロ)受注状況
当連結会計年度における住宅事業の受注状況を示すと、次のとおりである。
なお、住宅事業を除くセグメントで取扱う製品については、主として見込生産を行っている。
セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前期比(%) |
受注残高(百万円) |
前期比(%) |
住宅 |
399,457 |
9.1 |
185,000 |
0.1 |
ハ)販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりである。
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前期比(%) |
住宅 |
515,038 |
6.2 |
環境・ライフライン |
198,840 |
3.5 |
高機能プラスチックス |
352,365 |
16.1 |
メディカル |
88,516 |
22.4 |
報告セグメント計 |
1,154,761 |
9.7 |
その他 |
3,183 |
△8.1 |
合計 |
1,157,945 |
9.6 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去している。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
(財政状態)
当連結会計年度末の総資産は前連結会計年度末から48,778百万円増加し、1,198,921百万円となった。
イ)資産
流動資産については、前連結会計年度末より103,823百万円増加し、609,395百万円となった。主な要因は、現金及び預金が57,079百万円、棚卸資産が合計で20,928百万円、営業債権が合計で15,837百万円増加したためである。
また、固定資産については、55,045百万円減少し、589,525百万円となった。
ロ)負債
有利子負債が合計で15,610百万円減少したが、支払手形、電子記録債務、買掛金、未払費用の仕入債務等が合計で20,175百万円増加した他、未払法人税等が13,019百万円増加したことなどにより負債合計で40,417百万円増加し、496,168百万円となった。
ハ)純資産
当連結会計年度末の純資産は8,361百万円増加し、702,753百万円となった。主な要因は、配当金の支払21,531百万円、自己株式の取得9,499百万円及びその他有価証券評価差額金17,054百万円の減少があった一方で、親会社株主に帰属する当期純利益の計上37,067百万円及び為替換算調整勘定が18,860百万円増加したためである。
(経営成績)
イ)売上高及び営業利益
当連結会計年度の売上高は1,157,945百万円(前連結会計年度比+9.6%、101,385百万円増)となった。
また、当連結会計年度の営業利益は88,879百万円(前連結会計年度比+32.1%、21,578百万円増)となった。
なお、売上高及び営業利益の詳細については、「(1)経営成績等の状況の概要」に記載している。
ロ)営業外損益
営業外収益については、持分法による投資利益が2,644百万円減少した一方で、為替差益が4,273百万円増加したことなどにより、前連結会計年度と比較して2,962百万円増加した。営業外費用については、特定外壁点検保全費用の計上が4,522百万円減少したことなどにより、前連結会計年度と比較して9,810百万円減少した。
ハ)特別損益
特別利益については、投資有価証券売却益25,909百万円を計上した。
特別損失については、減損損失51,508百万円、固定資産除売却損1,544百万円の合計53,052百万円を計上した。
減損損失、固定資産除売却損の内訳については「第5[経理の状況]1[連結財務諸表等](1) [連結財務諸表]の[注記事項](連結損益計算書関係)」に記載のとおりである。
ニ)親会社株主に帰属する当期純利益
以上の結果、当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は前連結会計年度に比べて6,679百万円増加し、69,859百万円となった。税金費用と非支配株主に帰属する当期純利益を控除した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は37,067百万円となった。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析・検討内容は、「(1)経営成績等の状況の概要②キャッシュ・フローの状況」に含めて記載している。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、中期経営計画において、「負債も活用し、積極的に成長を志向する」ことを基本方針としており、資金調達については、内部資金を活用すると共に、必要に応じて借入・社債発行等による外部調達を行うこととしている。なお、外部調達に関しては、運転資金については借入金またはコマーシャル・ペーパーで、生産設備・M&A等の長期資金需要には長期借入金または普通社債の発行で調達している。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5[経理の状況]1[連結財務諸表等](1) [連結財務諸表]の[注記事項](重要な会計上の見積り)」に記載のとおりである。
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