課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。

(1) 経営理念および行動準則

 積水化学グループは、経営に対する理念を体系化している。企業活動の根底にある考え方や方針を示す「社是」、社是をうけて中長期で当社グループが目指す姿を示した「グループビジョン」、グループビジョンを実現していくための具体的な「経営戦略」により構成されている。

 

①社是「3S精神」

 当社の社章は、創業当時の社名「積水産業」の頭文字の「S」3つを化学記号ベンゼン環の中に配置して、

「水」という文字をかたどったものである。1959年11月、当社は、このマークに「3S精神」という明確な定義づけを行い、社是として制定した。

 「企業活動を通じて社会的価値を創造する(Service)」「積水を千仞の谿に決するスピードをもって市場を変革する(Speed)」「際立つ技術と品質で社会からの信頼を獲得する(Superiority)」の3S精神は、積水化学グループの理念体系の根幹をなすものであり、約2万6千名の全社員の間で、しっかりと共有されている。

 

<社是「3S精神」>

・Service  :企業活動を通じて社会的価値を創造する

・Speed   :積水を千仞の谿に決するスピードをもって市場を変革する

・Superiority:際立つ技術と品質で社会からの信頼を獲得する

 

②グループビジョン

 積水化学グループは、ステークホルダーの期待に応え、社会的価値を創造し、事業を通して社会に貢献することを目指している。

 地球規模での人口増加や気候変動、先進国を中心とする高齢化、都市基盤の老朽化などに加え、これらすべてに関連する資源エネルギー問題がこれまで以上に喫緊な社会的課題になりつつある中、グループがこれまで蓄積してきた「住・社会のインフラ創造」と「ケミカルソリューション」の分野に関する経験・知見を活用して、これらの社会課題の解決に資する価値を創造し続けることを目指している。

 

<グループビジョン>

積水化学グループは、際立つ技術と品質により、「住・社会のインフラ創造」と「ケミカルソリューション」のフロンティアを開拓し続け、世界のひとびとのくらしと地球環境の向上に貢献します。

 

③積水化学グループ企業行動指針

 積水化学グループは、グループの役員・従業員が従うべき行動指針である「積水化学グループ企業行動指針」を定め、日々の事業活動を通じて社会的信頼を高め、より一層魅力ある会社を目指している。

 

<企業行動指針>

1 社会の発展に役立つ事業活動を行う。

2 個人の能力を最大限に発揮し、活力ある組織をつくる。

3 お客様・取引先・株主・地域など広く社会から信頼される企業をめざす。

4 あらゆる企業活動において法およびその精神を遵守し、誠実に行動する。

5 よき企業市民として、サステナブルな視点で地球環境問題と社会貢献に取り組む。

 

(2) グループビジョンを実現するための経営戦略

 積水化学グループは、社是「3S精神」の下、グループビジョンに掲げる「住・社会のインフラ創造」と「ケミカルソリューション」を両輪として成長していくため、長期ビジョン「Vision 2030」、ならびに2020年度から2022年度までの3か年を対象期間とした中期経営計画「Drive 2022」を策定し、以下の取り組みを推進している。

 

①長期ビジョン「Vision 2030

 長期ビジョン「Vision 2030」では、積水化学グループがイノベーションを起こし続けることにより、「サステナブルな社会の実現に向けてLIFEの基盤を支え『未来につづく安心』を創造していく」という強い意志を込めたビジョンステートメント「Innovation for the Earth」を掲げている。レジデンシャル(住まい)、アドバンストライフライン(社会インフラ)、イノベーティブモビリティ(エレキ/移動体)、ライフサイエンス(健康・医療)の4つの事業領域を設定し、「ESG経営を中心においた革新と創造」を戦略の軸にして現有事業の拡大と新領域への挑戦に取り組み、2030年の業容倍増を狙う。

 

<ESG経営>

 積水化学グループの「ESG経営」では、「サステナブルな社会の実現」と「当社グループの持続的な成長」の両立の実現を目指し、その鍵となる以下の3つのステップをステークホルダーとともに取り組んでいる。

 イ)環境・CS品質・人材の「3つの際立ち」と「ガバナンス」の磨き上げ

 ロ)3つのアプローチ(量を増やす・質を高める・持続的に提供する)で社会課題解決を加速

 ハ)4つの事業領域で「未来につづく安心」という価値の創出・拡大

 このESG経営を加速するため、全社主要施策について中長期目標を定めるとともに、今中期経営計画ではESG投資枠400億円を設定し、重大インシデントにつながるリスク軽減に向けた取り組みやDX(デジタル変革)・人材・環境など経営基盤の強化を推進する。

 

②中期経営計画「Drive 2022

<中期経営計画「Drive 2022」の全体像>

 長期ビジョンに基づいて策定した中期経営計画「Drive 2022」では、積水化学グループの業容倍増に向け、持続可能な「成長」「改革」「仕込み」にドライブをかけることを基本方針とし、①成長と改革、②長期への仕込み、③ESG基盤強化の3つの重点課題をESG経営の実践により、グローバルに推進する。

 

 <中期経営計画の事業目標>

 

2022年度目標

中期経営計画

中期増分

売上高

12,200億円

+907億円

営業利益(率)

1,100億円(9.0%)

+222億円(+1.2%)

親会社株主に帰属する当期純利益

700億円

+111億円

ROIC(投下資本利益率)

8.6%

+0.9%

ROE(自己資本利益率)

10.6%

+0.9%(10%超維持)

 

海外売上高(比率)

3,200億円(26%)

+453億円

EBITDA
(利払い前・税引き前・減価償却前利益)

1,700億円

+368億円

 

<基本戦略>

 中期経営計画「Drive 2022」の基本戦略は、ESG経営を実践し持続的に企業価値を向上させることのできる企業体制の構築を追求すること、長期ビジョンの第一歩として①成長と改革②長期への仕込み③ESG基盤強化の3つの重点課題(Drive)に取り組むこと、さらに融合施策とデジタル変革により取り組みを加速させることにある。

 イ)成長と改革(現有事業Drive)

  ・成長戦略:全社売上高約900億円の増分を獲得する

  ・構造改革:全社営業利益率10%レベルの収益性を確保する

  ・DX:推進体制を強化し、成長戦略・構造改革をサポートする

 ロ)長期への仕込み(新事業Drive)

 各ドメインにおいて新領域の事業基盤を構築する

  ・アドバンストライフライン:BR実証開発本格化

  ・イノベーティブモビリティ:航空機分野参入・拡大

  ・レジデンシャル:まちづくり事業拡大

  ・ライフサイエンス:次なる柱の獲得

 ハ)ESG基盤の強化(経営基盤Drive)

  ・持続経営力の強化に向けたKPIとして、ROICを導入

  ・資本効率向上と長期的な調達コスト低減により、持続経営力を高める

 

<投資・財務戦略>

 中期経営計画「Drive 2022」の3年間に獲得するキャッシュに加え、適切かつ機動的な資金調達を行うため、投資枠5,000億円を設定する。戦略投資は前中期経営計画比2倍以上となる4,000億円に引き上げ、うち3,000億円をM&A投資枠として設定し、技術やノウハウ、グローバルの販路獲得などに活用する。また、環境負荷低減、働き方改革、デジタル変革などにより長期的に資本コストを抑制し、企業価値向上に寄与するESG投資枠400億円を設定している。

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<株主還元>

 中期経営計画「Drive 2022」では、株主の皆様への「剰余金の配当等に関する基本方針」の内容を見直し、株主還元のコミットを強化・明確化した。連結配当性向35%以上、総還元性向50%以上(D/Eレシオ(負債資本倍率)が0.5以下の場合)としつつ、DOE(自己資本配当率)3%以上を確保し、業績に応じ、かつ安定的な配当政策を実施する。

 

③サステナビリティ貢献製品による「持続可能な開発目標(SDGs)」への貢献

 気候変動などの社会課題が深刻化し、持続可能な社会の実現に貢献することを企業に求める声が高まってきていることを背景に、グループビジョンの中で「世界のひとびとのくらしと地球環境の向上に貢献する」ことを掲げる企業として、積水化学グループはさまざまな製品や事業を通じて、持続可能な社会の実現のために2030年までに世界が成し遂げるべき「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に向けた企業活動を推進している。
 中でも、自動車向け遮音・遮熱中間膜や太陽光発電システム搭載住宅、管路更生SPR工法といった、地球および社会環境における課題解決への貢献度が高い製品をサステナビリティ貢献製品と認定し、連結売上高に占めるサステナビリティ貢献製品比率を高めている。

 

④ダイバーシティ経営の取り組み

 長期ビジョンの実現に向け「全員が挑戦したくなる活力あふれる会社」を目指している。上司自らが各組織の長期ビジョンを部下に伝える活動を、積水化学グループの全組織で継続して展開し、ビジョンの浸透を図っている。また全グループ会社でプロジェクトを構成し、ダイバーシティ、働き方改革、健康経営といった共通の課題の解決を目指し、全社一丸となって取り組んでいる。

イ)ダイバーシティ

 女性活躍推進、両立活躍支援、シニア活躍支援に注力している。当社および社会の課題に対応するため、2021年10月に当社およびグループ会社8社にて定年延長を実施した(60歳から65歳へ)。年齢によらない活躍を支えるべく、2025年度中に全グループ会社で定年延長を完了する予定である。
ロ)働き方改革
 生産性向上や柔軟な働き方(リモートワーク、ペーパーレス等)の推進を通じ、グループ従業員の労働時間削減を図っている。またCOVID-19感染症拡大防止のため、各種インフラや制度(在宅勤務制度等)の整備を継続して推進している。これらを通じ、時間や場所に捉われない働き方を実践している。
ハ)健康経営
 健康管理(従業員のからだとこころの健康、組織の健康)を通じ、働きがい・やりがい・生産性の向上を図っている。2019年度に策定した「健康経営基本方針」に基づき、健康アプリの活用による「7つの健康習慣」応援プログラムや、メンタルヘルス研修(全従業員対象。管理職は必須参加)を展開している。

 

(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

2022年度目標

連結売上高   12,416億円

親会社株主に帰属する当期純利益 665億円

連結営業利益   1,000億円

ROE(自己資本利益率)     9.7%

 

 2022年度は、中期経営計画「Drive 2022」の最終年度となる。ESG経営の強化により持続経営力を高め、成長施策を着実に推進したいと考えている。

 ロシア・ウクライナ情勢については、業績への直接的な影響は軽微であるが、それに起因する資源不足、原材料価格の高騰長期化、欧州の自動車市況低迷などの影響を注視している。事業環境には不透明な要素があるものの、COVID-19の影響減少に伴い、グローバルの自動車・スマートフォンなどの市況、住宅着工をはじめ内需は緩やかに回復していくと見込んでいる。社会課題解決に資する高付加価値事業・製品販売の拡大を図るとともに、着実な売値の改善、固定費削減、生産最適化、事業構造改革など収益体質強化策を推進する。

 これらの取り組みにより、売上高は前年度を836億円上回る1兆2,416億円、営業利益は前年度を111億円上回る1,000億円、経常利益は前年度を29億円上回る1,000億円、親会社株主に帰属する当期純利益は前年度を294億円上回る665億円を目指し、すべてのセグメントで営業増益、全社として各段階利益の最高益更新を狙う。

 また、「ごみ」を「エタノール」に変換する技術のバイオリファイナリーの事業化、DX推進、研究開発強化など、次期中期経営計画以降のための仕込みや成長投資なども一段と加速する。

 

 

<住宅カンパニー>

 2022年度は、部材価格高騰影響の拡大など厳しい事業環境が見込まれるなか、新築住宅事業やリフォーム事業などの売上増大やコスト削減により、増収増益を目指す。

 新築住宅事業は、WEBマーケティングの強化により集客増を図るとともに、体験・体感型施設の展開・活用を推進するなど、創・育客手法の磨き上げに取り組む。加えて、スマート&レジリエンスやニューノーマルへの対応を強化した商品の投入や、分譲・建売住宅の拡販に取り組み、売上の増大を図る。また、施工の平準化などの体質強化を推進する。

 リフォーム事業は、定期診断の拡充やショールーム・WEBの活用など、営業体制強化に取り組むほか、スマート&レジリエンスやニューノーマルに対応した商材の拡販、生産性の改善により、収益の増大を図る。

 また、まちづくり、買取再販ブランド「Beハイム」などフロンティア事業の拡大に引き続き注力していく。

 

 

<環境・ライフラインカンパニー>

 2022年度は、引き続き社会課題解決に資する重点拡大製品の拡販と海外事業の拡大に注力するとともに、原材料価格高騰に対応した売値改善を着実に推進し、増収増益を目指す。また、DXによる生産性向上、生産の自動化などによる効果の早期発現を推進する。

 配管・インフラ分野は、引き続き人手不足やインフラ老朽化などの社会課題解決に資する重点拡大製品の拡販を図るとともに、遅延物件やプラント向け設備投資需要を確実に取り込み、売上拡大を図る。

 建築・住環境分野は、災害対応製品や介護向け製品のさらなる拡販を推進する。

 機能材料分野は、鉄道まくらぎ向け合成木材の海外での採用加速、成形用プラスチックシートの用途開拓、液体輸送用容器の製品拡充により、売上拡大を図る。また、合成木材については、オランダの生産工場の2022 年度完工に向けた準備を着実に進めていく。

 

 

<高機能プラスチックスカンパニー>

 2022年度は、引き続き原材料価格が高騰し事業環境も不透明な中、戦略分野においてさらなる成長施策へのシフトを推進するとともに売値の改善を徹底し、増収増益を目指す。

 エレクトロニクス分野は、堅調なスマホ市況の中、基板・半導体関連をはじめとする非液晶分野での拡販についても加速させ、引き続き増収を図る。

 モビリティ分野は、リスク要因はあるものの、引き続きヘッドアップディスプレイ用を中心とした高機能中間膜の拡販を推進し、増収を図る。

 住インフラ材分野は、海外需要は堅調に推移し、国内も回復基調にあることから、海外での塩素化塩ビ(CPVC)樹脂の拡販を推進するとともに不燃性ウレタン製品を中心に耐火材料事業の拡大を進める。また、売値改善の継続により増収を図る。

 

 

 

 

<メディカル事業>

 2022年度は、COVID-19の検査需要減少により減収となる見通しである。一方、検査事業での新血液凝固自動分析装置および高付加価値製品の拡販、医療事業での新規原薬の拡販を推進するとともに、創薬支援の新規受注獲得に努め、増益を目指す。

 

(4) 株主との建設的な対話に関する基本方針

 持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に向け、株主との対話を行うことは極めて重要である。当社は、社長および経営戦略部担当取締役を中心に、株主総会はもとより四半期毎の決算説明会や国内外の投資家面談などを積極的に行い、株主との建設的な対話に努めている。

 当社は、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に向け、株主との建設的な対話に関して、以下の基本方針を定めている。

①中長期的経営戦略の立案およびIRを統括する経営戦略部担当取締役を責任者と定め、投資家との間で建設的な対話を実現するための体制整備・取り組みを行う。

②経営戦略部担当取締役は、各カンパニー、経営管理部、法務部、広報部、その他関係部署を中心に、インサイダー情報の漏洩に留意しつつ、対話を補助する部門間での情報共有を確実に行うなど有機的な連携を確保する。

③株主との建設的な対話を促進するため、株主構造の把握に努め、また対話の手段として、以下の取り組みを実施し、対話の充実に努める。

 イ)社長や経営戦略部担当取締役などによる四半期毎の決算説明会の実施

 ロ)国内外投資家との個別面談の実施

 ハ)事業説明会や株主向け工場等施設見学会などの適宜実施

 ニ)当社ウェブサイトにおける国内外投資家へ向けた情報開示の充実(統合報告書、決算説明会資料、音声など開催模様含む)

 ホ)当社ウェブサイトにおける意見投稿機会の確保

④経営戦略部担当取締役は「企業情報開示規則」に則り、対話によって得られた投資家の意見などを取りまとめ、適時適切に取締役会などで共有し、経営に活かす。

⑤「企業情報開示規則」および「インサイダー取引規制規則」に則り、情報管理を強化していく。株主との対話においても細心の注意を払う。

 

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