(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
当連結会計年度の当社グループの経営成績は、売上高9,758,424千円(前期比3.3%減)、営業損失234,391千円(前期は425,942千円の営業損失)、経常利益100,617千円(同71.3%減)、親会社株主に帰属する当期純損失818,700千円(前期は5,255,052千円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。
当連結会計年度においては、教育プラットフォーム事業、テストセンター事業で売上が増加した一方で、テスト等ライセンス事業、AI事業、テスト運営・受託事業での売上減少により前年比減収となりました。また、テストセンター事業の採算性の改善や、ソフトウエア開発投資の減少、役員数の削減等による販管費の減少により、前年同期比で営業損失幅は縮小しました。一方で、前期にテストセンター取引のロスシェアに関連して発生した引当金の取り崩しに伴う事業損失引当金戻入が剥落して営業外収益が減少し、経常利益は減益となりました。また、ソフトウエア等の減損損失や特別調査委員会費用の縮小により、親会社株主に帰属する当期純損失は縮小しました。
セグメント別の経営成績は、次のとおりであります。
a. テスト等ライセンス事業
テスト等ライセンス事業においては、英検Jr.の商流変更等により売上が増加した一方で、「CASEC」の売上減少等により、前年比減収となりました。また、TEAP CBT等の商流変更等により原価が増加したことにより、当該セグメントの売上高は1,268,111千円(前期比5.7%減)となり、セグメント利益は268,547千円(同54.0%減)となりました。
b. 教育プラットフォーム事業
教育プラットフォーム事業においては、公益財団法人日本英語検定協会(以下、「英検協会」という。)に提供しているスタディギアライセンス及び英ナビ広告収入が順調に拡大した一方で、新プラットフォームサービスのシステム及びコンテンツ費用増や、広告事業でダイレクトメール商品売上が伸びたことによる利益率の低下が発生しました。その結果、当該セグメントの売上高は2,593,035千円(前期比6.9%増)となりました。また、費用面では新規システム投資による減価償却費等が増加し、セグメント利益は730,042千円(同34.4%減)となりました。
c. テストセンター事業
テストセンター事業においては、受験者数が順調に増加し、売上が増加したことに加え、前年同期に影響したロスシェア契約の変更や減損損失に伴い減価償却費が減少したことによりセグメント全体の採算性が改善し、当該セグメントの売上高は2,900,522千円(前期比8.5%増)、セグメント利益は336,521千円(前期はセグメント損失497,250千円)となりました。
d. AI事業
AI事業においては、手書き文字認識「DEEP READ」のライセンス収入は安定して推移したものの、新規案件の受注減により売上が減少しました。一方で、ソフトウエア資産の減損損失に伴い減価償却費等の費用が減少し、当該セグメントの売上高は460,561千円(前期比17.7%減)、セグメント損失は76,729千円(前期はセグメント損失340,801千円)となりました。
e. テスト運営・受託事業
テスト運営・受託事業においては、大阪府の令和3年度中学生チャレンジテストを新たに受注しましたが、前年度に受注した全国学力・学習状況調査(中学校第3学年の生徒を対象とした調査)が剥落したため減収となりました。一方、費用面で関連する販管費が減少し、当該セグメントの売上高は2,706,316千円(前期比17.5%減)、セグメント利益は31,059千円(同81.8%増)となりました。
② 財政状態の状況
当連結会計年度末における財政状態は、資産は12,437,892千円(前連結会計年度末比6,534,867千円減)、負債は7,402,747千円(前連結会計年度末比5,398,647千円減)、純資産は5,035,144千円(前連結会計年度末比1,136,220千円減)となりました。
(資産)
流動資産は、前連結会計年度末に比べて5,741,518千円減少し、9,091,198千円となりました。これは、借入金の返済等により、現金及び預金が4,644,596千円減少したことなどによります。
固定資産は、前連結会計年度末に比べて791,296千円減少し、3,342,490千円となりました。これは、ソフトウエア及びソフトウエア仮勘定が547,715千円、投資有価証券が181,687千円減少したことなどによります。
繰延資産は、前連結会計年度末に比べ2,052千円減少し、4,203千円となりました。
この結果、総資産は、前連結会計年度末に比べて6,534,867千円減少し、12,437,892千円となりました。
(負債)
流動負債は、前連結会計年度末に比べて3,236,044千円減少し、5,418,496千円となりました。これは、借入金の返済等により、借入金及び社債が844,913千円、特別調査費用引当金が1,328,009千円、流動負債のその他(未払金、預り金)が578,103千円減少したことなどによります。
固定負債は、前連結会計年度末に比べて2,162,602千円減少し、1,984,250千円となりました。これは、借入金及び社債が2,128,762千円減少したことなどによります。
この結果、負債合計は、前連結会計年度末に比べて5,398,647千円減少し、7,402,747千円となりました。
(純資産)
純資産合計は、前連結会計年度末に比べて1,136,220千円減少し、5,035,144千円となりました。これは、新株発行等に伴い資本金及び資本剰余金が16,329千円増加し、親会社株主に帰属する当期純損失の計上等により利益剰余金が801,933千円減少したことなどによります。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物は、3,441,507千円(前連結会計年度末比7,256,599千円減)となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは581,118千円の支出(前連結会計年度は665,011千円の支出)となりました。これは、減価償却費680,646千円(前連結会計年度は982,217千円)、減損損失595,849千円(前連結会計年度は2,617,010千円)などの増加要因、税金等調整前当期純損失786,867千円(前連結会計年度は4,734,365千円)、投資有価証券売却益640,781千円(前連結会計年度は3,518千円)、特別調査費用の支払額1,980,204千円(前連結会計年度は160,635千円)などの減少要因の影響によります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは3,125,434千円の支出(前連結会計年度は3,063,079千円の支出)となりました。これは、定期預金の預入による支出8,669,183千円(前連結会計年度は実績なし)、定期預金の払戻による収入6,057,180千円(前連結会計年度は実績なし)、ソフトウエア開発による無形固定資産の取得による支出1,092,687千円(前連結会計年度は2,617,210千円)などの影響によります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは3,251,757千円の支出(前連結会計年度は6,897,552千円の収入)となりました。これは、長期借入金の返済による支出2,521,019千円(前連結会計年度は502,852千円)などの影響によります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当社グループは生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。
b. 受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年10月1日 至 2022年9月30日) |
|||
受注高(千円) |
前年同期比(%) |
受注残高(千円) |
前年同期比(%) |
|
テスト運営・受託事業 |
2,589,211 |
75.1% |
413,048 |
78.2% |
(注)テスト運営・受託事業以外のセグメントについては事業の性格上、受注実績の記載に馴染まないため、記載しておりません。
c. 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年10月1日 至 2022年9月30日) |
|
金額(千円) |
前年同期比(%) |
|
テスト等ライセンス事業 |
1,268,111 |
94.3 |
教育プラットフォーム事業 |
2,593,035 |
106.9 |
テストセンター事業 |
2,882,036 |
110.7 |
AI事業 |
308,924 |
71.2 |
テスト運営・受託事業 |
2,706,316 |
82.5 |
合計 |
9,758,424 |
96.7 |
(注)最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 |
前連結会計年度 (自 2020年10月1日 至 2021年9月30日) |
当連結会計年度 (自 2021年10月1日 至 2022年9月30日) |
||
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
公益財団法人日本英語検定協会 |
4,602,826 |
45.6 |
4,866,393 |
49.9 |
文部科学省 |
1,420,864 |
14.1 |
1,582,501 |
16.2 |
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表はわが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積り・仮定設定を必要としております。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績や状況に応じて合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性が存在するため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
なお、新型コロナウイルス感染拡大の影響に関する会計上の見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載のとおりであります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 経営成績
(売上高)
当連結会計年度の売上高は9,758,424千円(前年同期比3.3%減)となりました。これはテストセンター事業の売上高が2,882,036千円(前年同期比10.7%増)と増加した以上に、AI事業の売上高が308,924千円(前年同期比28.8%減)、テスト運営・受託事業の売上高が2,706,316千円(前年同期比17.5%減)と減少したこと等によります。
(売上原価、売上総利益)
当連結会計年度の売上原価は6,771,092千円(前年同期比6.6%減)となりました。その結果、売上総利益は2,987,332千円(前年同期比5.1%増)となりました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は3,221,723千円(前年同期比1.4%減)となりました。これは内部統制強化や臨時的な経理体制構築及び監査対応費用にかかる業務委託費等が増加した一方で、役員数の削減等による販管費が削減されたこと等によります。その結果、営業損失は234,391千円(前連結会計年度は、425,942千円の営業損失)となりました。
(営業外収益、営業外費用及び経常利益)
当連結会計年度の営業外収益は為替差益328,579千円、投資有価証券売却益267,378千円等により730,249千円となり、営業外費用は投資事業組合管理費149,104千円、支払手数料80,000千円、持分法による投資損失75,166千円等により395,240千円となりました。その結果、経常利益は100,617千円(前年同期比71.3%減)となりました。
(特別利益、特別損失及び親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度の特別利益は投資有価証券売却益373,402千円等により389,402千円となり、特別損失は減損損失595,849千円、特別調査費用引当金繰入額234,300千円等により1,276,888千円となりました。その結果、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純損失818,700千円(前連結会計年度は、5,255,052千円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。
b. 財政状態
財政状態の状況の分析については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② 財政状態の状況」をご参照ください。
③ キャッシュ・フローの状況の分析
キャッシュ・フローの状況の分析については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
④ 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの運転資金需要につきましては、売上原価並びに販売費及び一般管理費等の営業費用であります。
設備資金需要の主なものは、テスト及びラーニングツール開発のためのソフトウエア開発及びコンテンツ開発費であります。当連結会計年度においては、これらに加えてテストセンター関連設備新設に伴い、その設備投資は1,107,744千円となりました。
翌連結会計年度の資金需要については、ソフトウエア開発及びコンテンツ開発による設備投資を中心に334百万円を予定しております。
運転資金につきましては、自己資金を基本としており、必要に応じて金融機関から短期借入を実施しております。設備投資資金につきましては、自己資金を基本としており、必要に応じて長期借入の実施、社債発行を行っております。
今後も収益構造の強化と成長性の維持のため継続的な設備投資が必要となりますので、安定的な自己資金の確保を目指してまいります。
⑤ 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおり、事業環境、事業内容、事業運営体制等、様々なリスク要因が当社グループの経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。
そのため、当社グループは常に市場動向に留意しつつ、内部管理体制を強化し、優秀な人材を確保し、市場のニーズにあったサービスを展開していくことにより、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因を分散・低減し、適切に対応を行っていく予定でおります。
⑥ 経営戦略の現状と見通し
当社グループは、英語学習におけるラーニングツール及びテストシステムの提供等によるライセンス収入を安定的な成長の礎とし、以下3つの事業領域を中長期的な成長分野と位置付け事業展開を図ってまいります。
a. 教育プラットフォーム
733万人を超える英ナビ会員データベースを土台としたメディア事業および学習サービスの展開
b. AIベース技術ライセンス
既存のソフトウエア及びシステムに、AI-OCR、自然言語処理、レコメンドエンジン、試験監視システム等のAIベースの技術を実装したサービスの展開
c. テストセンター
直営及び委託会場を併せてCBTを提供するテストセンターを全国展開し、インフラを整備の上、テストシステムの拡充を図りCBT化を加速
当社グループが属する教育ビジネス市場は、小学校の英語の必修化、英語学習の4技能化等、英語等の語学需要が高まるなど、今後も堅調な成長を維持する見込みです。また、足元の新型コロナウイルス感染症拡大によるマイナスの影響の可能性もありますが、一方で、学習やテスト受験のオンライン化、CBT化が加速化する傾向が顕著となっております。このような環境下、当社グループは、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、各施策を通じて事業展開を行い、社会貢献を目指してまいります。
⑦ 経営者の問題認識と今後の方針について
国内教育市場は、英語教育の低年齢化、大学入試制度改革における民間の英語資格・検定試験の活用は延期となったものの4技能評価に対する需要は引き続き強く、教育及びテストの両面においてICT化が不可欠となっております。当社グループはこれを事業機会と捉え、経営資源を投入してまいります。
海外においては、アジア及び米国の開発拠点の一層の効率化により、収益改善を図ってまいります。また、各国の市場動向に留意しつつ、選択と集中を意識した経営資源投入を行い、事業を展開してまいります。
経営者の問題認識については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりです。
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