当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、経営成績等)の状況の概要及び経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において判断したものです。
注:以下、「実質」とは為替変動の影響を除く増減率を表示しています。
当期は、前期に引き続き新型コロナウイルス感染症が世界中の社会や経済、人々の暮らしに大きな影響をもたらした1年でした。
花王グループは、人々の生活様式や消費行動、販売チャネル構造の変化、さらには世界的な原材料価格の高騰等に対応しましたが、特に日本でのインバウンド需要の消滅や繰り返された緊急事態宣言の発出等により市場の回復が大幅に遅れた影響を受けました。
当社グループの主要市場である日本のトイレタリー(化粧品を除くコンシューマープロダクツ)市場は、前期並みに推移しました。一方、化粧品市場は、小売店の販売実績や消費者購入調査データによると、前期並みに推移しましたが、感染症拡大前の水準までには回復していません。
このような中、当社グループの売上高は、前期に対して 2.7%増 の 1兆4,188億円 (実質 0.3%増 )となりました。営業利益は、将来の成長に向けた戦略転換のために、ベビー用紙おむつ事業の減損損失45億円、棚卸資産整理損25億円を計上したこともあり、 1,435億円 (対前期 321億円減 )、営業利益率は 10.1% となりました。税引前利益は 1,500億円 (対前期 240億円減 )、当期利益は、 1,114億円 (対前期 167億円減 )となりました。
基本的1株当たり当期利益は 230.59円 となり、前期の 262.29円 より 31.70円減少 (前期比 12.1%減 )しました。
当社グループが経営指標としているEVA(経済的付加価値)は、NOPAT(税引後営業利益)が減少し、前期を 171億円下回り 451億円 となりました。
また、当期は花王グループ中期経営計画「K25」をスタートさせました。これは次なる成長のための土台づくりです。花王グループは「未来の命を守る」を新たに宣言し、生命、生活、生態を守るために欠かせない企業となることを目指していきます。
(詳細は「花王統合レポート2021」www.kao.com/content/dam/sites/kao/www-kao-com/jp/ja/corporate/investor-
relations/pdf/reports-fy2021j-all-001_01.pdf)
当期の海外連結子会社等の財務諸表項目(収益及び費用)の主な為替の換算レートは、次のとおりです。
注:[ ]内は前期の換算レート
〔セグメント別の概況〕
第1四半期で実施した報告セグメントの変更の概要は以下のとおりです。(参照80ページ 第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表に関する注記事項 6.セグメント情報)。
1.ハイジーン&リビングケア事業を新設し、従来、ファブリック&ホームケア事業に分類していたファブリック ケア製品、ホームケア製品に加え、ヒューマンヘルスケア事業のサニタリー製品を組み入れています。
2.ヘルス&ビューティケア事業を新設し、従来、スキンケア・ヘアケア事業に分類していたスキンケア製品、 ヘアケア製品に加え、ヒューマンヘルスケア事業に分類されていたパーソナルヘルス製品を組み入れています。
3.ライフケア事業を新設し、従来、ファブリック&ホームケア事業に分類されていた業務用衛生製品に加え、ヒューマンヘルスケア事業に分類されていた健康飲料を組み入れています。
4.上記1~3のセグメントの再編により、前期の売上高及び営業利益を組み替えて表示しています。
セグメントの業績
販売実績
(億円、増減率%)
注:コンシューマープロダクツ事業は、外部顧客への売上高を記載しており、ケミカル事業では、コンシューマープロダクツ事業に対する売上高を含めています。地域別の売上高は、販売元の所在地に基づき分類しています。
売上高に占める海外に所在する顧客への売上高の割合は、前期の38.2%から42.0%となりました。
コンシューマープロダクツ事業
売上高は、前期に対して0.7%減の1兆1,437億円(実質2.6%減)となりました。
当期は、前期に引き続き新型コロナウイルス感染症の拡大によって生活者の嗜好や生活様式、販売チャネルの変化等が、様々な形で事業環境に大きな影響をもたらしました。このような状況の中、コアブランドへの集中投資やデジタル化の推進、Eコマースの強化等に積極的に取り組みました。しかし、世界的な原材料価格の高騰や物流の混乱も発生し、経営環境は厳しい状況が続きました。
以上の結果、日本の売上高は、前期に対して、5.3%減の7,681億円となりました。
アジアの売上高は、7.2%増の2,147億円(実質0.3%増)となりました。米州の売上高は、15.1%増の962億円(実質10.8%増)となり、欧州の売上高は、14.5%増の646億円(実質5.9%増)となりました。
営業利益は、1,126億円(対前期346億円減)となりました。
当社は、〔ハイジーン&リビングケア事業〕、〔ヘルス&ビューティケア事業〕、〔ライフケア事業〕、〔化粧品事業〕を総称して、コンシューマープロダクツ事業としております。
〔ハイジーン&リビングケア事業〕
売上高は、前期に対して1.3%減の4,968億円(実質2.8%減)となりました。
ファブリックケア製品は、日本では、コロナ禍で清潔意識が高まる中、市場は伸長しましたが、衣料用洗剤と柔軟仕上げ剤で競合との激しい競争がありました。衣料用洗剤「アタック」は改良品を発売するとともに、集中的にマーケティング投資をすることで、ブランドイメージが向上し、トップシェアを維持しました。
ホームケア製品は、日本では台所用漂白剤や住居用洗浄剤等の衛生関連製品において、前期に発生した特需の反動により市場全体が縮小した影響を受けましたが、浴室用洗剤では、お風呂掃除が楽になり時短にもつながる新製品「バスマジックリン エアジェット」を9月に発売し、シェアを大きく獲得しました。アジアでは安心、衛生の分野を強化するため新しく「マジックリン」の消毒剤を6月に発売し、衛生関連製品を中心に順調に推移しました。
サニタリー製品は、生理用品「ロリエ」は、ほぼ横ばいに推移しました。日本では外出自粛の影響で市場が縮小し売り上げは減少しましたが、中国ではEコマースの強化等により順調に売り上げとシェアを伸ばしました。ベビー用紙おむつ「メリーズ」は、インドネシアでは8月に高付加価値品を発売したこともあり、売り上げは大きく伸長しました。日本ではプレミアム価格の新製品が順調に推移しました。中国では上期にブランド価値向上のための施策を行い、8月には成長著しいスーパープレミアム市場に新製品を投入して、ブランド再生のための改革を進めました。また、中国での生活者ニーズや事業環境の変化に迅速かつ効果的に対応するため、現地生産を強化する方針に変更しました。これにより、日本の生産設備に係る減損損失を45億円計上しました。
営業利益は、原材料価格高騰や特需の反動減に伴う費用追加及び減損損失等により、518億円(対前期278億円減)となりました。
〔ヘルス&ビューティケア事業〕
売上高は、前期に対して2.2%減の3,545億円(実質4.2%減)となりました。
スキンケア製品は、日本では前期に急速に拡大したハンドソープや手指消毒液の市場が大きく縮小したため、売り上げは減少しましたが、コロナ禍前の2019年度に比べてシェアは大きく伸長しました。またUVケア製品等のシーズン品は、日本及びアジアの外出自粛や天候不順の影響を大きく受けました。米州ではコロナ対策と経済の両立を図る政策により市場は回復傾向にある中、外出機会増加に向けた新しい提案等を実施しましたが、売り上げは前期をわずかに下回りました。
ヘアケア製品では、日本のマス向け製品は、新製品を発売し市場の活性化に努めましたが、十分に差別化を図ることができず売り上げは減少しました。またヘアサロン向け製品の売り上げは、大きく伸長しました。米州では、Eコマースで「Oribe(オリベ)」が好調に推移しました。欧州では、市場が徐々に回復しています。
パーソナルヘルス製品の売り上げは、インバウンド需要が減少した影響を受けましたが、日本で巣ごもり需要により入浴剤が好調に推移し、ほぼ前期並みとなりました。
営業利益は、日本の特需の反動減や天候不順による減収等により、497億円(対前期108億円減)となりました。
〔ライフケア事業〕
売上高は、前期に対して1.7%増の530億円(実質1.0%増)となりました。
業務用衛生製品は、日本では、衛生管理や感染症対策が特に必要な医療関連施設や飲食店等で、手指消毒液等の継続的な需要がありましたが、外出・移動制限や飲食店等の休業要請・時短営業が大きく影響し、売り上げは前期を下回りました。米州では顧客への取扱量の拡大や対象業界の景気回復によって、前期を大きく上回りました。
健康飲料は、特定保健用食品「ヘルシア」が、巣ごもり需要を背景にEコマースで売り上げを伸ばしましたが、度重なる緊急事態宣言の延長等により市場が縮小し、売り上げは前期に比べて減少しました。
営業利益は、36億円(対前期11億円減)となりました。
〔化粧品事業〕
売上高は、前期に対して2.5%増の2,393億円(実質0.6%減)となりました。
日本では、構造改革を強力に推進する中、オンラインカウンセリングや自社運営のEコマースの始動等顧客とブランドとの絆づくりに注力しました。また、コロナ禍でマスクの着用が常態化している生活の中での新提案や様々なデジタル施策により、「KATE」がメイクブランドでトップシェアを獲得する等ヒット商品も誕生させましたが、インバウンド需要の消滅や繰り返す緊急事態宣言等により市場回復が遅れた影響を大きく受けました。アジアでは、中国で「フリープラス」や「キュレル」がEコマースを中心に引き続き好調に推移したほか、海南島での免税取引を開始する等、プレステージ化粧品の展開を本格的に始動させました。欧州では、OMO(Online Merges with Offline)の推進により「モルトンブラウン」や「SENSAI」の売り上げが大きく伸長しました。
営業利益は、75億円(対前期51億円増)となりました。
ケミカル事業
売上高は、前期に対して16.7%増の3,143億円(実質12.9%増)となりました。対象業界の回復を捉えるとともに、油脂誘導体製品等が堅調に推移しました。
油脂製品では、殺菌や洗浄用途等の油脂誘導体製品が堅調に推移したことに加えて、天然油脂価格の上昇に伴う販売価格の改定に継続して努めたこともあり、売り上げは伸長しました。
機能材料製品は、自動車関連分野等での需要回復の動きを捉え、さらに原料価格上昇に伴う販売価格の改定も進めて、売り上げは伸長しました。また、廃PETを用いた高耐久アスファルト改質剤等のESG視点の製品を積極的に展開しました。
スペシャルティケミカルズ製品では、トナー・トナーバインダーが前期の需要減から回復傾向で、半導体関連製品は堅調に推移しました。
営業利益は、296億円(対前期19億円増)となりました。
(連結財政状態)
資産合計は、前期末に比べ 384億円増加 し、 1兆7,040億円 となりました。主な増加は、 棚卸資産 304億円 、 営業債権及びその他の債権 161億円 であり、主な減少は、 現金及び現金同等物 171億円 です。
負債合計は、前期末に比べ 73億円減少 し、 7,201億円 となりました。 主な増加は、 営業債務及びその他の債務 132億円 であり、主な減少は、 退職給付に係る負債 220億円 です。
資本合計は、前期末に比べ 457億円増加 し、 9,839億円 となりました。主な増加は、 当期利益 1,114億円 、 在外営業活動体の換算差額 409億円 、 確定給付負債(資産)の純額の再測定 117億円 であり、主な減少は、配当金 686億円 、2021年2月3日開催の取締役会決議に基づく自己株式の取得500億円です。また、2021年6月23日に自己株式の消却700万株を実施しました。
なお、親会社所有者帰属持分比率は、前期末の 55.5% から 56.6% となりました。親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)は 11.6% となりました。
(連結キャッシュ・フローの状況)
注:営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの合計から、使用権資産の減価償却費等を除いたフリー・キャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローは、 1,755億円 となりました。主な増加は、 税引前利益 1,500億円 、 減価償却費及び償却費 873億円 であり、主な減少は、 法人所得税の支払額 459億円 、退職給付に係る負債の増減額 228億円 、棚卸資産の増減額 205億円 です。
投資活動によるキャッシュ・フローは、 △672億円 となりました。主な内訳は、日本の生産拠点の能力増強に加えて、伸長著しいアジアでも積極的に設備投資を行ったことによる 有形固定資産の取得による支出 600億円 、 無形資産の取得による支出 116億円 です。
財務活動によるキャッシュ・フローは、 △1,416億円 となりました。安定的かつ継続的な配当を重視しており、またEVA視点から資本効率の向上を目的として、自己株式の取得及び消却も弾力的に行っています。当期の主な内訳は、非支配持分への支払いを含めた支払配当金 687 億円、2021年2月3日開催の取締役会決議に基づく自己株式の取得500億円、 リース負債の返済による支出 213億円 です。なお、2021年3月に借入金100億円を返済し、適正な資本コスト率の維持及び成長投資のための財務基盤の強化を目的に、同額の借り入れを行いました。また、9月に借入金200億円を返済し、同様の目的で、SDGs等への貢献度合いを評価指標にして情報開示することを特徴としたポジティブ・インパクト・ファイナンスを利用して同額の借り入れを行いました。
調整後フリー・キャッシュ・フローは、 863億円 となりました。
当期末の現金及び現金同等物の残高は、為替変動による影響を含めて前期末に比べ 171億円減少 し、 3,361億円 となりました。
(4)重要な会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和51年大蔵省令第28号。以下、「連結財務諸表規則」)第93条の規定により、国際会計基準(以下、「IFRS」)に準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、採用している重要な会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表に関する注記事項 3.重要な会計方針」及び「4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりであります。
使用権資産を含む重要な資本的支出の2022年度の予定額は、約960億円であり、主に当社グループ内の資金を有効活用する予定であります。なお、計画については「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載のとおりであります。
当社グループの生産・販売品目は、産業界向けのケミカル製品から一般消費者向けのコンシューマー製品まで極めて多種多様であり、それら製品の在庫をほぼ一定の必要水準に保つように、主として見込み生産を行っております。従って、生産実績は販売実績に類似しております。生産及び販売の実績については、「(1) 経営成績の分析」に記載のとおりであります。
経営成績に重要な影響を与える要因については、「2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」、達成状況は、「(1) 経営成績の分析」に記載のとおりであります。
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