当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
また、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。
(1) 重要な会計方針および見積り
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成しております。
連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」に記載しております。
連結財務諸表の作成にあたっては、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるために、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの財政状態又は経営成績等に重要な影響を及ぼす会計上の見積りおよび判断は、以下のとおりであります。
・のれん及び無形資産
のれん及び無形資産の減損テストにおける使用価値は、将来キャッシュ・フローの見積額を資金生成単位ごとに設定した加重平均資本コスト等を基礎とした割引率を用い、現在価値に割り引いて算定しております。将来キャッシュ・フローの見積りには、対象となる無形資産に関する開発品の上市時期、研究開発活動の成功確率、製品及び開発品の収益予測等の計画等、多くの前提条件が含まれておりますが、これらの前提条件や割引率は、将来発生する事象によっては影響を受ける可能性があります。
・引当金
引当金は、期末日における将来の債務の決済時期及び決済に必要と予想されるキャッシュ・フロー等に関する最善の見積りに基づいて算定しております。特に、米国で販売している製品に適用される売上割戻引当金の見積りに用いられる将来の販売数量や割戻率等は、将来発生する事象によっては影響を受ける可能性があります。
・条件付対価の公正価値
企業結合により生じた条件付対価は、特定の開発品の開発進捗や販売後の売上収益に応じて支払う対価等であり、その公正価値は、それらが達成される可能性や時間的価値を考慮して算定しております。特定の開発品の開発進捗や将来の売上収益の予測等及び割引率等は、将来発生する事象によっては影響を受ける可能性があります。
・新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による影響
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行に伴い、日本を含む各国・地域において情報提供活動の制限や臨床試験の遅延など、当社グループの事業活動に様々な影響が生じております。
当社グループは、製品の安定供給に努めるとともに、患者さん、関係者および従業員の安全を最優先に事業活動を進めてまいりますが、今後もこの状況が続けば、事業活動がさらなる影響を受ける可能性があり、その場合は、連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。
(2) 経営成績
当連結会計年度の世界経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が続くなか、ワクチン接種の進展により経済活動制限措置が緩和されたことを受け、全体として持ち直しの傾向が見られましたが、世界的なサプライチェーンの混乱やエネルギー価格の上昇などにより回復ペースは鈍化し、ウクライナ情勢その他の地政学的リスクの高まりにより不確実性が増しています。わが国経済についても、新型コロナウイルス感染症の影響により一進一退の状況で推移し、依然として先行きは不透明な状況が続いています。
医薬品業界においては、先発医薬品の価格抑制や後発医薬品の使用促進、新薬開発の難易度の高まりおよび研究開発費の高騰に加え、予防・複合型ソリューションの普及、異業種の参入などにより、事業の予見性がさらに低下しています。
このような状況のもと、当社グループは、事業環境の変化を踏まえ、2021年5月に、2018年度を起点とする5か年の「中期経営計画2022」の経営目標の見直しを行い、新たな目標のもと事業活動を進めてまいりました。当連結会計年度においても、新型コロナウイルス感染症によるさまざまな影響が当社グループの事業活動に生じましたが、従業員の感染防止を徹底しつつ、従来どおりの事業活動を継続させ、医薬品の安定供給の責任を果たすことを最優先に取り組みました。また、リモートワークの推進など、生産性向上に向けた取組にも引き続き注力しました。
日本においては、注力領域である精神神経領域および糖尿病領域における製品価値の最大化に注力しました。精神神経領域では、前連結会計年度に上市した「ラツーダ」の市場浸透を図り、糖尿病領域では、「トルリシティ」、「エクア」および「エクメット」の販売拡大を図るとともに、当連結会計年度に販売を開始した「ツイミーグ」の早期の市場浸透を図るべく、情報提供活動に注力しました。
北米においては、サノビオン社が、グローバル戦略品である「ラツーダ」の一層の売上拡大に引き続き取り組むとともに、大塚製薬と当社を含む3社間で2021年9月に締結した共同開発および販売に関するライセンス契約のもと、精神神経領域における新薬候補化合物の開発を推進しました。
スミトバント社においては、その子会社であるマイオバント社が、米国において、前連結会計年度に販売を開始した「オルゴビクス」および当連結会計年度に販売を開始した「マイフェンブリー」について、ファイザー社とのコ・プロモーションのもと、早期の市場浸透に注力しました。同じくスミトバント社の子会社であるユーロバント社が、「ジェムテサ」の販売を当連結会計年度に米国で開始しました。
中国においては、住友制葯(蘇州)有限公司が、前連結会計年度の新型コロナウイルス感染症の影響による低迷から回復した「メロペン」に加え、「ラツーダ」等の売上拡大に向けた販売活動に取り組みました。
(業績管理指標として「コア営業利益」を採用)
当社グループでは、IFRSの適用にあたり、会社の経常的な収益性を示す利益指標として、「コア営業利益」を設定し、これを当社独自の業績管理指標として採用しています。
「コア営業利益」は、営業利益から当社グループが定める非経常的な要因による損益(以下「非経常項目」)を除外したものとなります。非経常項目として除かれる主なものは、減損損失、事業構造改善費用、企業買収に係る条件付対価公正価値の変動額などです。
当連結会計年度の当社グループの連結業績は、以下のとおりです。
(単位:億円)
■ 売上収益は、5,600億円 (前連結会計年度比 8.5%増 )となりました。
精神神経領域における大塚製薬との共同開発・販売提携に伴う契約一時金を計上したことや、マイオバント社およびユーロバント社の新製品の寄与により、北米セグメントが増収となったことに加え、中国セグメントでも伸長したことにより、増収となりました。
■ コア営業利益は、585億円 (前連結会計年度比 15.9%減 )となりました。
増収により売上総利益は増加しましたが、マイオバント社およびユーロバント社における販売活動の本格化や、無形資産の償却費の増加等により、販売費及び一般管理費が大きく増加したことから、コア営業利益は減益となりました。
■ 営業利益は、602億円 (前連結会計年度比 15.4%減 )となりました。
条件付対価公正価値の減少による費用の戻入がありましたが、営業利益も減益となりました。
■ 税引前当期利益は、830億円 (前連結会計年度比 6.6%増 )となりました。
当連結会計年度末の円安による為替差益の計上により、金融収益から金融費用を差し引いた金融損益が大幅な増益となったことから、税引前当期利益は増益となりました。
■ 当期利益は、406億円(前連結会計年度比10.2%増)となりました。
税引前当期利益が増益となったことにより、当連結会計年度利益も増益となりました。
■ 親会社の所有者に帰属する当期利益は、564億円 (前連結会計年度比 0.3%増 )となりました。
当期利益から、非支配持分に帰属する損失を控除した親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度と比べて微増となりました。
なお、親会社の所有者に帰属する当期利益の売上収益に対する比率は10.1%となりました。
(セグメント業績指標として「コアセグメント利益」を採用)
セグメント別の業績では、各セグメントの経常的な収益性を示す利益指標として、「コアセグメント利益」を設定し、当社独自のセグメント業績指標として採用しています。
「コアセグメント利益」は、「コア営業利益」から、グローバルに管理しているため各セグメントに配分できない研究開発費、事業譲渡損益などを除外したセグメント別の利益となります。
セグメント別の経営成績は次のとおりです。
<日本>
■ 売上収益は、1,499億円 (前連結会計年度比 1.7%減 )となりました。
前連結会計年度に販売を開始した「ラツーダ」は順調に売上を伸ばしましたが、薬価改定の影響や長期収載品の売上の減少などにより、減収となりました。
■ コアセグメント利益は、196億円 (前連結会計年度比 19.2%減 )となりました。
売上総利益の減少に加え、当連結会計年度に販売を開始した「ツイミーグ」の販売関連費用などにより販売費及び一般管理費が増加し、減益となりました。
<北米>
■ 売上収益は、3,198億円 (前連結会計年度比 13.6%増 )となりました。
大塚製薬との共同開発および販売に関するライセンス契約に伴う一時金の計上に加え、「オルゴビクス」、「マイフェンブリー」および「ジェムテサ」の売上や、前連結会計年度にファイザー社との間で締結した共同開発および共同販売に関する契約から生じる収益認識などの増収が、「ラツーダ」や独占販売期間が終了した慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療剤「ブロバナ」などの減収の影響を上回り、増収となりました。
■ コアセグメント利益は、1,054億円 (前連結会計年度比 9.8%減 )となりました。
増収により売上総利益は増加しましたが、マイオバント社およびユーロバント社における販売活動の本格化や、無形資産の償却費の増加等により販売費及び一般管理費が増加したため、減益となりました。
<中国>
■ 売上収益は、383億円 (前連結会計年度比 37.6%増 )となりました。
「メロペン」の売上増加の影響が大きく、増収となりました。
■ コアセグメント利益は、196億円 (前連結会計年度比 48.0%増 )となりました。
増収による売上総利益の増加により、増益となりました。
<海外その他>
■ 売上収益は、122億円 (前連結会計年度比 29.3%減 )となりました。
輸出を中心とした売上の減少により、減収となりました。
■ コアセグメント利益は、33億円 (前連結会計年度比 62.6%減 )となりました。
減収による影響が大きく、減益となりました。
上記報告セグメントのほか、当社グループは、食品素材・食品添加物および化学製品材料、動物用医薬品などの販売を行っており、これらの 売上収益は399億円 (前連結会計年度比 8.0%増 )、コアセグメント利益は 35億円(前連結会計年度比2.3%減)となりました。
(3) 生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 金額は販売価格により換算したものであります。
2 セグメント間取引については相殺消去しております。
② 仕入実績
当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は仕入価格によっております。
③ 受注状況
当社グループの生産は見込生産で、受注生産は行っておりません。
④ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
(4) 財政状態
資産については、非流動資産では、有価証券の評価の変動等によるその他の金融資産の減少等により、前連結会計年度末に比べ398億円減少しました。
流動資産は、営業債権及びその他の債権や現金及び現金同等物の増加等により、前連結会計年度末に比べ397億円増加しました。
これらの結果、資産合計は前連結会計年度末とほぼ同額の1兆3,080億円となりました。
負債については、引当金の増加がありましたが、営業債務及びその他の債務や未払法人所得税が減少した結果、前連結会計年度末に比べ255億円減少し、6,344億円となりました。なお、社債及び借入金は合計で2,690億円となり、前連結会計年度に比べ48億円減少しました。
親会社の所有者に帰属する持分は、利益剰余金やその他の資本の構成要素が増加したことにより、前連結会計年度末に比べ273億円増加し、6,079億円となりました。また、非支配持分は、前連結会計年度末に比べ19億円減少しました。
これらの結果、資本合計は前連結会計年度末に比べ254億円増加し、6,736億円となりました。
なお、当連結会計年度末の親会社所有者帰属持分比率は46.5%となりました。
(5) キャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローは、 312億円の収入 となりました。 税引前当期利益は増加しましたが、営業債務及びその他の債務、その他の金融負債の減少や前受収益の減少等により、 前連結会計年度に比べ 1,044億円収入が減少 しました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、投資の取得による支出や固定資産の取得による支出が、投資有価証券の売却による収入を上回ったことなどにより、183億円の支出となりました。なお、前連結会計年度は、旧茨木工場の売却に伴うキャッシュの増加要因があったため、前連結会計年度に比べ272億円収入が減少しました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、214億円の支出となりました。前連結会計年度には、長期借入金への借り換えや社債の発行による資金調達に伴い短期借入金の返済を実施したことや、当連結会計年度は非支配持分からの子会社持分取得による支出が減少したことにより、前連結会計年度に比べ358億円支出が減少しました。
上記の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は 2,030億円 となり、前連結会計年度末に比べ 93億円増加 しました。
当社グループの資本の財源および資金の流動性は、以下のとおりです。
当社グループは、営業活動によるキャッシュ・フローのほか、銀行借入などにより、必要資金を調達し、買収で取得した開発品への先行投資などを行っております。
当社グループの財務活動の方針は、自己資金に加えて、必要に応じて借入によるレバレッジの活用などにより必要資金を確保することであります。
現金及び現金同等物に短期貸付金等を加えた運用資金は 2,349億円であり、流動比率(流動資産/流動負債)は179.4%であります。
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