業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

① 当期の経営成績

売上高は510億82百万円(前期比69.8%増)となりました。

遺伝子組換え天然型ヒト成長ホルモン製剤「グロウジェクト®」は、販売数量は増加しましたが、2021年4月の薬価改定の影響を受けました。同じく薬価改定があった腎性貧血治療薬は減収幅が大きかったものの、2021年5月に薬価収載された「イズカーゴ®点滴静注用10mg」が大きく寄与したことなどにより、主力製品の売上合計は前期を上回りました。

また、アストラゼネカ株式会社の新型コロナウイルスに対するワクチンの原液の国内製造を受託したこと、契約金収入が前期より増加したことなどにより、売上高合計で前期に比べて大幅な増収となりました。

利益面におきましては、売上高増収に伴う売上総利益の増加(前期比82.4%増)の一方で、販売費及び一般管理費が前期比47.7%増となったことにより、営業利益は199億33百万円(前期比141.1%増)、経常利益は205億12百万円(前期比141.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は145億7百万円(前期比110.5%増)となり、いずれも増益、過去最高を記録しました。

積極的な研究活動および臨床試験の進捗に応じた開発活動の結果、研究開発費は33.9%増加し71億75百万円(前期比18億15百万円増)となりました。

なお、2021年9月に武田薬品工業株式会社とハンター症候群に対する次世代治療薬JR-141の特定地域における共同開発と事業化に向けた契約を締結いたしました。今回の契約により、当社グループはグローバルスペシャリティファーマとしてさらなる一歩を踏み出しました。

 

 

前連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

増減

金額(百万円)

金額(百万円)

売上高

30,085

51,082

69.8

営業利益

8,269

19,933

141.1

経常利益

8,488

20,512

141.6

親会社株主に帰属する当期純利益

6,892

14,507

110.5

営業利益の増減要因は以下の通りです。

・主力製品の寄与による売上高の増加       20,996百万円

・売上原価の増加                △2,648百万円

・売上高増加に伴う販売費・一般管理費の増加   △4,868百万円

・研究開発費の増加               △1,815百万円

 

 

② 主要な売上

 

 

前連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

増減

金額(百万円)

金額(百万円)

ヒト成長ホルモン製剤

 グロウジェクト®

13,256

12,945

△2.3

ムコ多糖症Ⅱ型治療剤

 イズカーゴ®点滴静注用

3,003

腎性貧血治療薬

 エポエチンアルファBS注「JCR」

 ダルベポエチンアルファBS注「JCR」

7,087

3,278

3,809

5,875

2,876

2,998

△17.1

△12.2

△21.3

再生医療等製品

 テムセル®HS注

2,441

3,497

43.2

ファブリー病治療薬

 アガルシダーゼベータBS点滴静注「JCR」

 

470

 

711

 

51.3

契約金収入

6,406

10,571

65.0

AZD1222原液

404

14,375

3,458.3

(注)1 契約金収入は共同開発および事業化に向けた契約が締結されたこと等に由来します。

2 医薬品売上高は前連結会計年度23,263百万円、当連結会計年度26,032百万円であります。

 

③ 研究開発の状況

[ライソゾーム病治療薬]

・当社では現在、17種類を超えるライソゾーム病治療薬について独自の血液脳関門通過技術「J-Brain Cargo®」を適用した新薬の研究開発に重点的に取り組んでおります。

 

・血液脳関門通過型ハンター症候群治療酵素製剤パビナフスプ アルファ(開発番号:JR-141)については、2021年5月に日本での販売を開始いたしました(製品名「イズカーゴ®点滴静注用10mg」)。また、ブラジル連邦共和国では2020年12月にブラジル国家衛生監督庁(ANVISA)に製造販売承認申請を行いました。その他の地域では、2021年2月に米国食品医薬品局(FDA)よりFast Track(※1)の指定を、2021年10月には欧州医薬品庁(EMA)よりPRIME(※2)の指定をそれぞれ受けております。2022年2月にはグローバル臨床第3相試験において最初の被験者への投薬が開始されております。

 

・血液脳関門通過型ムコ多糖症Ⅰ型治療酵素製剤(開発番号:JR-171)については、現在、日本・ブラジル・米国において臨床第1/2相試験を実施しており、2022年3月までに計画した全例の登録を完了しております。なお、2021年2月にFDAより、2021年3月に欧州委員会(EC)よりオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)の指定を受けております。また、2021年9月にFDAよりFast Trackの指定を受けており、米国における臨床開発の迅速化、優先審査や早期承認が期待されます。

 

・血液脳関門通過型ムコ多糖症ⅢA型治療酵素製剤(開発番号:JR-441)については、2022年1月にECよりオーファンドラッグの指定を受けており、欧州(EU)領域における開発促進のための様々なインセンティブを受けることができます。現在、2023年上半期のグローバル臨床試験開始に向けた取り組みを進めております。

 

・その他のJ-Brain Cargo®を適用したライソゾーム病治療薬(ポンペ病治療薬(開発番号:JR-162)、スライ症候群治療薬(開発番号:JR-443)、サンフィリッポ症候群B型治療薬(開発番号:JR-446))についても、研究開発を順次行うとともにグローバル展開を推進してまいります。また、新たに2022年3月にGM2ガングリオシドーシス治療薬(開発番号:JR-479)について、開発に着手することを決定いたしました。

 

・また、上記の他、2022年3月に武田薬品工業株式会社と、複数のライソゾーム病についてJ-Brain Cargo®技術を用いた遺伝子治療に関する共同研究開発契約を締結いたしました。これは、J-Brain Cargo®技術そのものを様々なモダリティに応用可能であることを示す第一歩となるものです。

[再生医療等製品]

・「テムセル®HS注」の新たな適応拡大として新生児低酸素性虚血性脳症(開発番号:JR-031HIE)に対する臨床第1/2相試験を実施しております。

 

・帝人株式会社との共同開発であった他家(同種)歯髄由来幹細胞(DPC)を用いた急性期脳梗塞を適応症とする再生医療等製品(開発番号:JTR-161/JR-161)については、2022年4月に共同開発を終結することで合意いたしました。

 

[ヒト成長ホルモン製剤]

・「グロウジェクト®」の効能追加としてSHOX異常症(開発番号:JR-401X)に対する臨床第3相試験を実施しております。

 

・遺伝子組換え持続型成長ホルモン製剤(開発番号:JR-142)の臨床第2相試験を実施しております。

 

※1 FDA Fast Track制度

重篤な疾患を治療するために、アンメットメディカルニーズを満たす治療薬の開発を促進し、審査を迅速化することを目的とした制度。ファストトラック制度に指定された医薬品は、開発計画についてFDAと頻繁にミーティングを行うほか、関連する基準を満たす場合に優先審査および早期承認の対象となる。

※2 EMA PRIME (PRIority MEdicines)

アンメットメディカルニーズを対象とした医薬品の開発支援を強化するために開始したスキーム。PRIMEによって早期かつ積極的な支援を受けることで医薬品の申請を迅速に行うことが可能となり、また迅速審査の対象になる可能性がある

 

④ キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ44億72百万円増加して307億33百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況および主な要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果得られた資金は、92億89百万円(前連結会計年度比10億52百万円の収入減)となりました。これは主に、売上債権の増加額74億2百万円、法人税等の支払額25億17百万円があった一方で、税金等調整前当期純利益の計上額194億4百万円があったことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は、32億50百万円(前連結会計年度比40百万円の支出減)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出113億33百万円があった一方で、助成金の受取額81億67百万円があったことによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は、21億79百万円(前連結会計年度比104億83百万円の支出増)となりました。これは主に、配当金の支払額21億69百万円があったことによるものであります。

 

 

⑤ 生産、受注及び販売の実績

(1)生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

生産高(百万円)

前年同期比(%)

医薬品事業

44,923

162.4

合計

44,923

162.4

(注) 金額は販売価格により表示しております。

 

(2)受注実績

 当社グループは見込生産によっており、受注生産は行っておりません。

 

(3)販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

販売高(百万円)

前年同期比(%)

医薬品事業

51,082

169.8

合計

51,082

169.8

(注) 主な相手先別の販売実績およびそれぞれの総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

販売高(百万円)

割合(%)

販売高(百万円)

割合(%)

株式会社メディセオ

6,549

21.8

7,922

15.5

キッセイ薬品工業株式会社

7,087

23.6

5,969

11.7

 

⑥ 経営成績への影響

新型コロナウイルス感染症の影響につきましては、当連結会計年度につきましては影響を受けておりません。

また、本報告書作成時点においては、パイプラインの臨床試験の遅延等は発生しておらず、製品や原材料、製造用資材についても当面の生産に必要な在庫は確保しており、大きな影響はないと判断しております。

なお、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たりましては、棚卸資産、有価証券、特許権、貸倒引当金、退職給付に係る負債および繰延税金資産などについて、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項」および「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項」に記載のとおり、資産・負債および収益・費用の数値に影響を与える見積りおよび判断を行っております。従いまして、実際の結果は、見積りの不確実性により異なる場合があります。

 新型コロナウイルス感染症の影響につきましては、収束まではある程度の期間を要すると想定しておりますが、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」に記載のとおり、当社グループの業績への影響は軽微であると判断しております。従いまして、当連結会計年度における会計上の見積りへの影響はありません。また、本報告書提出日現在において、翌連結会計年度におきましても同様であると判断しております。

 

② 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

・財政状態

 当連結会計年度末における資産合計は971億34百万円(前連結会計年度末比233億49百万円増)、負債合計は460億45百万円(前連結会計年度末比108億17百万円増)、純資産合計は510億89百万円(前連結会計年度末比125億31百万円増)となりました。

 流動資産は、現金及び預金および受取手形、売掛金及び契約資産が増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ136億42百万円増加して621億88百万円となりました。固定資産につきましては、有形固定資産が増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ97億7百万円増加して349億46百万円となりました。

 流動負債は、未払法人税等および圧縮未決算特別勘定が増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ130億25百万円増加して420億54百万円となりました。固定負債は、長期借入金が減少したことなどにより、前連結会計年度末に比べ22億8百万円減少して39億90百万円となりました。

 純資産につきましては、配当金の支払があった一方で親会社株主に帰属する当期純利益の計上などにより、前連結会計年度末に比べ125億31百万円増加して510億89百万円となりました。

 これらの結果、当連結会計年度末における自己資本比率は、前連結会計年度末に比べ0.5ポイント上昇して51.8%となりました。

 現時点では当社グループにおいて、新型コロナウイルス感染症の影響は受けておりませんが、今後の世界情勢の見通しが立たない中、当社グループがグローバルで持続的な成長を行うために、機動的かつ安定的に資金調達手段を確保する必要があり、各金融機関との間で、バックアップラインとして運転資金を確保する事を目的として、総額155億円のコミットメントライン契約を締結しております。

 

・経営成績

売上高は前連結会計年度に比べ209億96百万円(69.8%)増加して510億82百万円となりました。

主力製品であるヒト成長ホルモン製剤「グロウジェクト®」につきましては、数量ベースでは前期比で4.7%増加しましたが、2021年4月の薬価改定により販売単価は引き下げとなった影響を受け、前期比3億11百万円(2.3%)の減収となりました。2023年3月期は数量ベースでの増加により、2022年4月の薬価改定の影響を吸収して増収となることを見込んでおります。

2021年5月に薬価収載された「イズカーゴ®点滴静注用10mg」につきましては、販売開始以降、順調に市場への浸透が進んでおり、当初見込みを上回る売上高を計上しました。2023年3月期も増収を見込んでおります。

腎性貧血治療薬につきましては、短期型腎性貧血治療薬「エポエチンアルファBS注JCR」・持続型腎性貧血治療薬「ダルベポエチンアルファBS注JCR」の売上高はいずれも減少し、腎性貧血治療薬合計では58億75百万円(前期比12億12百万円・17.1%減)となりました。2023年3月期も減収を見込んでおります。

 

再生医療等製品「テムセル®HS注」につきましては、需要に合わせた供給体制の増強を実施し、安定在庫を確保できるようになったため、当連結会計年度の売上高は前期比10億55百万円(43.2%)の増収となりました。2023年3月期も引き続き増収を見込んでおります。

国産初のライソゾーム病治療薬であるファブリー病治療薬「アガルシダーゼベータBS点滴静注JCR」につきましては、販売開始以降、徐々に市場への浸透が進んでおり、当連結会計年度は前期比で増収となっております。また、2022年4月より住友ファーマ株式会社に販売業務を移管することで販売体制をより一層強化し、2023年3月期も引き続き増収を見込んでおります。

また、2020年12月より、アストラゼネカ株式会社から新型コロナウイルスワクチン(AZD1222)原液の国内製造を受託し、当連結会計年度における売上高は143億75百万円となりました。なお、当該事業については製造を既に終了しております。

契約金収入につきましては、新たなライセンス契約の締結などに伴い、前期比41億65百万円(65.0%)の増収となりました。2023年3月期も新たな契約締結を計画しており、さらに増収となる見込みです。

一方で、研究開発費につきましては71億75百万円と前期比18億15百万円(33.9%)の増加となりました。研究開発費は2020年に公表しました3ヵ年中期経営計画「変革」のガイダンスで対売上高比率20%を目安に投資を行うと示しておりますが、効率的な研究開発を行った結果、当連結会計年度における対売上高比率は14.0%となりました。2023年3月期につきましては、2021年5月に薬価収載された「イズカーゴ®点滴静注用10mg」に続く、J-Brain Cargo®を適用した一連のライソゾーム病治療薬について、将来の成長に向けて積極的にグローバルで開発を行う計画であり、90億円(当期比25.4%増・対売上高比20%)の研究開発費を見込んでおります。

 

③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a.当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析

「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ④キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

b.当社グループの資本の財源および資金の流動性

・資金需要の主な内容

当社グループにおきましては、原材料等の仕入れ、研究開発費、人件費および販売費などの運転資金、ならびに生産および研究開発を目的とする設備投資に主たる資金需要が生じます。

なお、研究開発費につきましては、対売上高比率20%を目安に投資を行っております。

また、株主還元についても、経営上の重要な施策の一つとして位置づけております。剰余金の配当等につきましては、将来の利益の源泉となる新薬開発や経営体質強化のための内部留保を確保しつつ、業績およびキャッシュ・フローの状況を勘案しながら継続的かつ安定的な配当を行うことを基本方針としており、ご期待に応える株主還元と財務の健全性のバランスを重視し、配当性向につきましては30%を目安としております。

・資金調達

これらの資金需要に対しましては、営業活動によるキャッシュ・フローからの充当を基本とし、不足する場合は金融機関からの借入金による調達を実施しております。

当連結会計年度末時点の現金及び現金同等物残高は307億33百万円となっており、事業遂行に必要な資金を十分確保しております。

なお、現時点では当社グループにおいて、新型コロナウイルス感染症の影響は受けておりませんが、今後の世界情勢の見通しが立たない中、当社グループがグローバルで持続的な成長を行うために、機動的かつ安定的に資金調達手段を確保する必要があり、各金融機関との間でバックアップラインとして運転資金を確保する事を目的として、当連結会計年度に総額155億円のコミットメントライン契約を締結しております。

 

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