事業等のリスク

2【事業等のリスク】

当社グループの戦略・事業その他を遂行する上でのリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を以下に記載いたします。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)新型コロナウイルス感染症のパンデミックに係るリスク

新型コロナウイルス感染症が世界的に猛威を振るう中、各国において治療薬及びワクチンの研究開発が進められております。複数の治療薬やワクチンが早期に承認され流通することによって、感染拡大前の日常に戻る兆しが見えつつあります。しかしながら、ウイルスの新規変異株の出現もあり、一度感染抑制に成功したとされる国においても再度感染拡大が認められるなど、世界的に予断を許さない状況が続いております。

当社グループにおいては、本事象による当社グループ事業への影響について注意深く精査しております。2020年3月中旬より、当社グループ従業員に対して可能な限り在宅勤務とすること、マスク着用、手洗いやうがいの徹底、検温といった予防策や、2週間に1度の抗原検査、ワクチン職域接種の実施、社内新型コロナウイルス対策チームからの定期的な情報発信による感染予防に関する注意喚起を講じております。幸い、研究開発、生産を含むすべての事業活動は正常に稼働しており、新型コロナウイルス感染症を原因とする社内業務の停滞や遅延は発生しておりません。今後も、研究、生産活動に影響を及ぼす可能性を重視し、予防策を徹底してまいります。

研究開発の進捗における新型コロナウイルス感染症の影響については、進行中または準備中の臨床試験を含め、本文書作成時点までにおいて遅延等のリスクの顕在化はありません。しかしながら、グローバルでの臨床試験を複数行っており、海外薬事当局での諸手続き等への影響も懸念されますので、引き続き状況を注視してまいります。

製品や原材料、製造用資材について、新型コロナウイルス感染症が調達先の製造活動に悪影響を及ぼすことで、入手困難となるリスクがあります。当社では、常に資材在庫を適切にコントロールし、必要時には薬事的な対応を行う体制を整えることで、有事においても医薬品の供給不安を最小限に抑える体制を整備しており、本文書作成時点において顕在化しているリスクはありません。

今後、新型コロナウイルス感染症の拡大によって当社グループの事業活動に影響が及ぶ可能性があります。社会情勢が大きく変化するなか、中長期的に安定した経営を行うために、機動的かつ安定的な資金調達手段を確保する必要があります。そのため、運転資金を確保することを目的として、2020年4月および5月にバックアップラインとして各金融機関との間で、既存の当座借越枠に加え、コミットメントライン契約を締結しております。

 

(2)コンプライアンスに関するリスク

医薬品産業等は、医薬品等の有効性及び安全性を担保するために様々な法規制を受けます。さらに、法規制の範囲に限らず製薬企業が高い倫理観を以て事業活動にあたることが重要です。当社グループでは、社内規範と企業倫理に沿った経営並びに法令遵守のためコンプライアンス委員会を設置し、コンプライアンス行動基準の制定と従業員へのハンドブックの配布および研修を通じてコンプライアンス周知・啓発を行っております。加えて、薬機法に基づく法令遵守ガイドラインが施行されており、当社はその体制として法令遵守担当取締役を含む責任役員を選任したほか社内研修等を実施しております。

しかしながら、社会規範あるいは企業倫理に反する行為が認められ社会的信用が失墜することにより、結果的に当社グループの業績及び財政状態に重要な影響を受ける可能性があります。

 

(3)特定製品への依存のリスク

当社グループの販売品目のうち、ヒト成長ホルモン製剤の売上高が総売上高に占める割合は、当連結会計年度において25.3%になります。ヒト成長ホルモンは主に小児成長障害に使用される医薬品であることから、日本国内における少子化の影響を受けます。市場統計によれば、ヒト成長ホルモン市場は各社の新たな適応追加や疾患啓発活動の結果、これまでのところ拡大を続けてきましたが、将来的には減少に転じる可能性が高いと認識しております。また、ヒト成長ホルモン市場における競合品として持続性製剤の参入もあり、当社品シェアへの影響も想定されます。したがって、これらの不確定要因が当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

さらに、本製剤の大部分は当社グループとPHC株式会社で共同開発した専用注入器グロウジェクター®Lを使用しなければ、自己注射することができません。グロウジェクター®L はPHC株式会社が製造し、同社とはリスク管理も含めた契約を締結しており、繰り返し使用できる機器(耐用年数3年)であることから、同社の生産に支障が生じた場合であっても、業績への影響は低いと認識しております。ただし、長期にわたり支障を生じた場合は、新規患者の獲得や機器の更新が滞り、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、J-Brain Cargo®(血液脳関門通過技術)を用いた新薬「イズカーゴ®点滴静注用10mg」を2021年5月に発売し、当連結会計年度において計画を上回る売上となりました。当製品については、他社とのアライアンスを実現することで海外における上市を計画しております。さらに、イズカーゴ®に引き続き、J-Brain Cargo®技術を基盤とした複数の研究開発を着実に進捗させ、ヒト成長ホルモン製剤への依存状態から脱却することを目指しております。

(4)安定供給・設備投資に関するリスク

当社グループでは、国民皆保険制度の下、全国の患者さんに平等かつ安定的に医薬品を供給する責務があると認識しております。そのため、供給不安のリスク対策として、製造に必要な資材および原料の確保状況を定期的に確認し、それらの供給元の事業状況を把握しつつ、可能な限りダブルソース化を図っております。また、GLPやGMP等のガイドラインを遵守するなど、品質保証体制を徹底しております。しかしながら、当社グループの製造施設等や原材料供給元において、技術的もしくは法規制上の問題、大規模災害による影響、国際紛争による政治的混乱等が発生することにより、製品の安定供給に支障が発生する可能性があります。特に、昨今の新型コロナウイルス感染症やロシア・ウクライナ情勢の状況によって、世界的に天然資源、建材、電子部品等の供給不足の影響がある中、今後、新規施設建設計画や研究・生産機器等の発注納期について、影響を受ける可能性は否定できません。その動向によっては、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(5)法規制に関するリスク

当社グループの事業は、関連法規の厳格な規制を受けており、各事業活動の遂行に際して種々の許認可等を受けております。これらの許認可等を受けるための諸条件および関連法令の遵守に継続的に努めており、現時点においては当該許認可等が取り消しとなる事由は発生しておりません。しかしながら、法令違反等によりその許認可等が取り消しとなる場合等には、規制の対象となる製商品の回収、または製造および販売を中止することを求められる場合もあり、これらにより当社グループの事業に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)薬価制度に関するリスク

また、当社グループが取り扱う医療用医薬品の薬価は、医療制度が国民皆保険を前提としていることから、健康保険法の規定に基づき、厚生労働大臣の定める薬価基準収載価格とされております。薬価基準の改定頻度が高まることや、競合品との競争激化など、薬価改定による売上低下のリスクが存在します。当社は、製品固有の価格リスクを継続的に評価し、製品価値に見合った仕切価の設定を行うなど、対応を行っております。

 

(7)研究開発に係るリスク

当社グループは、希少疾病領域での積極的な研究開発活動に取り組んでいますが、医薬品は所轄官庁の定めた有効性と安全性に関する厳格な審査により承認されてはじめて上市することが可能となります。したがって、研究開発の途上において、当該開発品の有効性もしくは安全性が承認に必要とされる基準を満たさない懸念があることが判明し、研究開発の中止もしくは遅延を要する場合は、研究開発費の回収や期待される収益の確保が困難もしくは遅延するリスクがあります。そのような場合は当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループの売上高は、主に医薬品・医療機器・再生医療等製品の製造販売のほか、開発投資や技術ライセンスに基づく契約金収入により構成されております。また、これら契約金収入は営業利益等の各利益に大きな影響を及ぼすことがあります。したがって、パイプラインの研究開発に中止・遅延を要する事象が発生した場合、当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)グローバル展開に向けた活動のリスク

当社グループでは、J-Brain Cargo®という技術基盤を活用し、希少疾病を適応とした革新的医薬品を提供することで、グローバルスペシャリティファーマを目指しております。その先駆けとして、2021年度にはイズカーゴ®のグローバル展開活動として他のグローバル企業との業務提携を完了し、海外における迅速な上市に向けた臨床試験および当局との交渉を実施中です。グローバル業務提携においては、両社間で適切なガバナンス体制を構築し、適時的に合意・意思決定を行うこととしております。

しかしながら、各国固有の法規制・特許・医療制度等において事業展開のリスクが異なります。両社間の契約上規定のない事案あるいは想定外の事態が発生することで、事業の進捗や、提携先の企業から得られるロイヤリティの見込時期もしくは有無に変動が生じるリスクがあり、この規模によっては業績への影響を受ける可能性があります。

 

(9)競合品に係るリスク

当社グループの製品およびパイプラインには、いずれも競合となりうる他社の開発品目が存在します。これら競合品目の開発が進捗し、発売された場合、当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)人的リソースに係るリスク

近年の売上高の増加と研究開発の進捗に伴い研究開発部門、生産部門を中心に人的リソースを拡充しております。今後も複数のパイプラインのグローバル臨床試験、上市を見込んでいることから、引き続き人的リソースの拡大傾向が継続するものと認識しております。近年では、グローバル経験のある人材の確保に取り組み、さらにグローバルに活躍できる人材の教育計画を立案するなど、将来のJCRを牽引する人材を育む取り組みを進めております。しかしながら、人材の採用が困難になる場合あるいは離職率が上昇する場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)副作用の発現リスク

現在のパイプラインには人体にとっては未知の物質に相当する融合たんぱく質であるものが含まれています。新規医薬品では未知の副作用の発生は常にリスクとして認識すべきものと考えられます。また、一般的に、人体は未知の物質に対して抗原抗体反応により体内より排除する機構を持っていることから、これらの薬物が抗原抗体反応を惹起することにより好ましくない副作用の発現リスクが存在します。現在までの臨床試験において、特段留意が必要なリスクは顕在化しておりませんが、今後、長期に投与した際に看過できない副作用が発現した場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)知的財産権の侵害リスク

当社グループの血液脳関門通過技術については、競争力のある形で知的財産権の確保に努めております。近年では、米国ArmaGen社を買収することで、米国等におけるJ-Brain Cargo®(血液脳関門通過技術)に関する知的財産権を取得したため、現段階において当該技術に関して他社の知的財産権を侵害するリスクは低いものと判断しております。しかしながら、血液脳関門通過技術を有した他社製品が開発されている状況にあり、将来において知的財産権を巡る訴訟が起こる場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)訴訟に関するリスク

当社グループは製造物責任(PL)関連、独占禁止法関連、環境関連やその他に関して訴訟を提起される可能性があります。これらの訴訟に対応すべく、損害保険への加入等のリスク対策を講じておりますが、訴訟が発生した場合、当社グループの業績および財政状態に重要な影響を与える可能性があります。

 

(14)自然災害に関するリスク

当社グループの製品に係る原薬、製剤工場は神戸市西区に集中しております。

地震、風水害には強い立地条件ではあるものの、大規模停電、想定を超える事象が発生した場合は一定期間操業できなくなることで当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(15)筆頭株主との関係

当社グループは、筆頭株主である株式会社メディパルホールディングスとの間で、複数のパイプラインに関する開発投資契約を締結しており、今後、両社が出資し米国に設立した合弁会社を通じて各種医薬品候補物質の臨床開発を行うほか、より広範囲な業務提携を行うことについて合意しております。当社グループは、同社との戦略的提携関係を維持し、両社の更なる企業価値の向上に努める所存でありますが、何らかの理由により同社との戦略的提携に変更があった場合、当社グループの業績および財政状態に重要な影響を与える可能性があります。

 

(16)金融市況の影響について

株式市況、為替相場および金利の動向によっては、保有する有価証券等の時価の下落、原材料等の輸入価格上昇、退職給付債務および支払利息の増加等、当社グループの業績および財政状態に重要な影響を受ける可能性があります。

 

上記のほか、環境保全上の問題の発生、製品を取り巻く環境の変化、ライセンスまたは提携の解消、システム障害および情報流出等、様々なリスクがあり、ここに記載されたものが当社グループの全てのリスクではありません。

 

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