課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)経営環境

 当連結会計年度の世界経済は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響やサプライチェーンの混乱など供給面の制約が景気の下押し要因となり、さらにロシア・ウクライナ情勢が悪化要因として加わったことで景気回復テンポが鈍化しました。しかしながら、年度後半においてはワクチン普及に伴い経済活動の再開が進むなど、全体的には景気回復に向けた持ち直しの動きがみられました。日本経済においても個人消費の持ち直しを中心に緩やかながら経済の回復が進みました。

 当社においては、航海気象事業では港湾混雑に伴い船舶の稼働率が鈍化したものの、年度後半にかけて徐々に正常化が進んだことで売上は堅調に推移しました。モバイル・インターネット気象事業では予報精度の向上や新コンテンツの充実によりアプリのダウンロード数が増加し、サブスクリプションサービス売上及び広告収入が堅調に推移しました。気象環境については、世界各地で極端気象や激甚災害の発生が継続しており、気象リスクに対する対応策ニーズが一層高まっています。当社は「いざというときに人の役に立ちたい」という理念を持つ企業として、気象技術をもとにした日々のサービス提供を通じ、気象リスクの低減、及び深刻化する気候変動の緩和に向けてCO₂排出量の削減など環境負荷低減への取り組みを進めています。

 

(2)対処すべき課題(中期経営計画)

1.中長期的な会社の経営戦略

 当社グループは「全世界79億人の情報交信台」という夢に向かって、サポーターとともに最多・最速・最新の気象コンテンツサービスにより気象・環境に関する社会的リスクに対応する「気象コンテンツ・メーカー」になることを基本コンセプトとしており、気象コンテンツ市場のフロントランナーとして、独創的に新たな市場を創造しながら「サポーター価値創造」と企業価値の最大化を目指します。

 また、このコンセプトの実現のため、「世界最大のデータベース・世界No.1の予報精度・あらゆる市場でのRisk Communicator」をコアコンピタンスと考え、Full Service“Weather & Climate” Companyとなることが当社のミッションであると認識しています。

 

(事業分野別の戦略)

事業分野

事業戦略

航海気象

・10,000隻へルーティングサービスを拡大

航空気象

・欧州、米州市場への展開

陸上気象

・国内向けを中心とした極端気象に伴うサービス開発及びその強化

・道路鉄道分野におけるアジア市場への展開

環境気象

・環境エネルギー市場への需要予測サービスの展開

・流通小売市場への販売量予測サービスの展開

・日本、アジア、欧州市場への展開

モバイル・

インターネット気象

・日本における圧倒的No.1の気象コンテンツプラットフォーム

放送気象

・市場の維持とともに、放送局向け新サービスの検討

スポーツ気象

・国内外のスポーツ大会の運営支援、代表チームへのサポート

・アスリート向け新サービスの検討

 

 

2.対処すべき課題(中期経営計画の概要と進捗)

 当社では、2020年5月期からの4年間(2019年6月~2023年5月)を「革新性」をテーマに交通気象のグローバル展開を目指す第4成長期のStage3として中期経営計画を策定しており、以下の4点を重点テーマとして推進することで事業の土台を一層安定させるとともに、第5成長期を見据えた新規発展事業の創出を目指します。

 

1)既存事業の継続成長による収益基盤の強化

 既存事業である航海気象、航空気象、環境気象、モバイル・インターネット気象は当社の基盤事業かつグローバルビジネスのポテンシャルを有していると認識しています。これら既存事業の収益性の強化のため、トールゲート売上を一層増加させるとともに、BtoB事業においては国内:海外のトールゲート売上比率の50:50の達成を目指します。
 

<航海気象>

 当社は海運会社を中心とした顧客に対して航海気象サービスをグローバルに展開していますが、サービス提供船数は世界の外航船約20,000隻のうち30%程度です。第4成長期ではサービス品質を改善するとともに新サービスを開始し、世界の外航船約20,000隻の50%にあたる10,000隻へのサービス提供を目指します。

 本サービスはサービスを提供する航海毎に課金することからサービス対象となる隻数をKPI(重要業績評価指標)として設定し、売上だけでなく市場占有率を含めた市場におけるポジショニングを示しています。
 

<航空気象>

 日本・アジア市場を中心にサービス展開を進め、各国における当社のブランド認知度を高めています。欧州・米州市場においてはマーケティングを推進し、市場シェアの拡大及び当社のブランド認知度の向上を目指します。

 本サービスは航空会社毎に契約を締結しサービスを提供しており、目的地となる空港数で価格が決定するためお客様の就航路線により契約金額が異なります。市場占有率など市場におけるポジショニングと進捗を明確にするため、KPIは全世界の航空会社320社の約25%にあたる85社へのサービス提供を目指します。
 

<環境気象>

 全世界的な自然エネルギー利活用へ向けた構造変革を受け、顧客の新たなニーズを認識しています。日本、アジア、欧州のエネルギー企業に対し、需要予測サービスの提供を中心として環境気象市場の立ち上げ及び新規顧客の獲得を目指します。

 新規市場においては象徴的な顧客(Symbolic Customer)と共に当社サービスを構築し拡販サービスの開発に繋ぐことから、市場展開の進捗度を示すKPIにSymbolic Customerの数を設定し、顧客数を38社まで拡大することを目指します。
 

<モバイル・インターネット気象>

 気象庁から提供される観測データ(Observation)だけでなく、独自の衛星、レーダー、小型観測機、ライブカメラ等に加え、サポーターから送られてくる膨大な写真や体感データに代表される“感測”データ(Eye-servation)をAI・Deep LearningなどのIT技術を活用して解析し、他社には模倣できないコンテンツを創造していきます。これらの独自コンテンツを自社以外の多様化する様々なプラットフォームにも展開することでアプリ利用者数を伸ばし、アプリのサブスクリプションサービス売上及び広告収入を増加させます。

 アプリ「ウェザーニュース」の利用者数の増加が有料会員数の増加や広告事業のブランド向上に繋がると分析しており、継続的なサービス利用者を示す指標である月間利用者数(MAU)をKPIと設定し、MAU5,500万人の到達を目指します。

 

2)世界最高品質の予報精度の追究とコンテンツ生産力の飛躍的向上

 当社ではこれまで整備してきたWNI衛星・レーダーなどの独自インフラで観測した気象データ、顧客とコミュニケーションを交わす中で蓄積されてきた各市場のビジネスデータ、サポーターから送られる感測データ等から構成される世界最大規模の気象・気候データベースを保有しています。このデータベースと独自AIによる解析・予測等のIT技術を駆使することで90%以上の予報精度を維持し、当社の気象予報におけるブランド価値を高めるとともに、画一的ではない、市場毎のニーズに合わせた「世界No.1の予報精度」の実現を目指します。また、RC(Risk Communication)サービスの提供においても、従来の人による予測値の修正やコミュニケーションの一部をIT技術によって代替し、品質とコンテンツ生産力を高めて利益率の向上に繋げます。

 

3)マーケット展開を加速するITサービス基盤の整備

 全世界79億人がデバイスなどの環境に関わらず迅速かつグローバルに気象情報を活用できるインフラの整備を進めます。同時に、「事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)」を踏まえた事業の継続性の確保を目指して物理サーバからクラウドサーバへの移行を推進し、サーバの一極集中による災害時のシステム障害リスクに対するレジリエンスの強化を進めます。また、ITインフラのクラウド化を通じてサービス開発の高速化と迅速な顧客へのサービス提供及び気象情報の外部連携を可能にし、市場展開や他業種・グローバルでのコラボレーションなどマーケットへの価値創造サイクルを加速します。

 

4)気候変動に対応した新規発展事業の創出

 市場におけるビジネスリスクの調査と詳細分析、極端気象や気候変動による事業リスクに適応するサービスの創造等、気象リスクに対するあらゆる角度からのサービスの開発・提供を目指します。また、気象環境による事業運営リスクに対する従来型の支援に加え、継続的に経済的損害が発生するような事業構造リスクへの対応へと事業領域を拡大することで長期的な成長を実現します。

 

(3)今後の見通し

 次期2023年5月期においては、新型コロナウイルスワクチンの普及により感染拡大の勢いが一段落し、経済活動が正常化に向かうと見られる一方で、インフレの進行に加え、ロシア・ウクライナ情勢など不確実性が高まっています。

 このような事業環境において、売上面では、モバイル・インターネット気象事業の自社配信コンテンツの充実の継続と、広告事業の拡大による更なる成長を見込んでおります。また、航海気象事業では沿岸部の座礁リスクに対応するサービスであるNAR(Navigation Assessment & Routeing)の本格的な展開を見込むと同時に、環境運航支援を目的とした新たなサービスの開発を進めています。航空気象事業ではエアライン市場において需要回復の兆しがあるものの、不透明さが継続すると見ています。一方、国内ヘリコプター市場に関しては引き続き堅調に推移すると見込んでいます。利益面では、モバイル・インターネット気象事業における積極的な広告投資及び既存事業の海外展開推進に関する投資の継続や、全社的なソフトウエア開発の効率化を一層推進します。

 これらの結果により、2023年5月期は、売上高21,000百万円、営業利益3,200百万円、経常利益3,300百万円、親会社株主に帰属する当期純利益2,400百万円と見込んでいます。

 

(当期の進捗)

事業分野

KPI

進捗

23.5期末

目標

22.5期末

実績

BtoB事業全体の

トールゲート

売上比率

(国内:海外)

50:50

59:41

航空気象において新型コロナウイルス感染拡大の影響が継続したものの、海外売上をけん引する航海気象において売上が増加し海外比率が上昇。

1)既存事業の継続成長による収益基盤の強化

航海気象

(隻数)

9,200

6,300

運賃高騰で海運市況は活況。座礁リスク対応サービスであるNARが隻数増加をけん引するも、欧州での顧客獲得遅れの影響で計画を下回る。

航空気象

(顧客数)

85

65

新型コロナウイルス感染拡大の影響継続で東南アジアのエアライン顧客を中心に獲得計画数を下回る。

環境気象

(顧客数)

38

24

日本顧客の獲得が進むも、欧州において獲得計画数を下回る。

モバイル・インターネット気象

(MAU:万人)

5,500

4,516

開発効率向上によるコンテンツの充実や広告投資の効果で順調に推移。

2)世界最高品質の予報精度の追究とコンテンツ生産力の飛躍的向上

予報精度

(%)

90.0

以上

90.7

日本での予報精度90%維持を達成。

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