事業等のリスク

2【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。なお、これらは当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではなく、これら以外のリスクも存在します。また、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループ(当社及び連結子会社、以下同じ)が判断したものであります。

当社では、政治・経済・社会情勢の変化、為替変動、急速な技術革新及び顧客ニーズの変化その他の事業リスクについて、各執行役が把握、分析及び対応策の検討を行うとともに、グループリスクマネジメント責任者を委員長とするリスクマネジメント委員会において、統括的に検証を行ったうえで、適宜、取締役会、経営会議その他の会議における議論を通じて、その見直しを図っております。リスクマネジメント委員会では、当社グループのリスクの抽出、検証、経営課題となるリスクの特定及び定期的なリスク状況のモニタリングを行っております。また、当社グループの各拠点は、コンプライアンス、反社会的勢力、財務、調達、環境、災害、品質、情報セキュリティ、輸出管理、法務等に係る顕在化したリスク情報を、各業務担当部門等と、速やかに共有する体制を構築するとともに、コーポレートの各業務担当部門が、社内規則・ガイドライン等の制定、教育、啓発、事前チェック並びに業務監査等を実施し、社内の関係業務担当部門と連携することによって、リスクの回避、予防及び管理を行っております。

 

(1)製品需要及び市場環境等に係るリスク

市場分野別に想定される主なリスク

当社グループは、自動車、産業インフラ及びエレクトロニクス関連分野といったさまざまな市場分野において事業展開を行っており、またその地域も日本国内のほか、米国、アジア、中国、欧州等にわたっております。そのため、当社グループの業績及び財政状況は、これらの市場・各地域の動向によって影響を受ける可能性があります。特に直近においては、ウクライナ情勢に起因した欧州経済の減速、半導体不足による自動車生産等への影響、世界的な荷動きの急回復に伴うコンテナ不足等の物流混乱及び新型コロナウイルス変異株感染拡大によるサプライチェーン寸断の長期化の影響等により世界的な景気減速が生じた場合、当社グループの製品需要に影響を与える可能性があります。また、市場分野別に想定される主なリスクは以下のとおりですが、これらに限られるものではありません。

 

自動車関連分野

・当社では自動車分野向けに多様な製品を提供しておりますが、世界的な半導体不足等による自動車の減産の影響を受けており、当社の計画にはその影響を織り込んでいるものの、自動車メーカーによる更なる減産又は減産が長期化した場合、当社グループの業績又は財政状況に影響を与える可能性があります。また、自動車業界は従来の内燃機関(ICE)から電動化(xEV*)への変革期に差し掛かっており、当社グループでは、このような市場のニーズに応えるために製造ラインの増強や製品ラインナップの拡充等を行っておりますが、電動化(xEV)への転換が急速に進んだり、あるいは転換が想定よりも遅れるなどした場合には、当社グループの業績又は財政状況に影響を与える可能性があります。

(* 電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)を指しております。)

・工具鋼については、中国・新興国メーカーの台頭と日本市場への流入が見込まれており、競争が激化した場合には、当社グループの業績又は財政状況に影響を与える可能性があります。これに対し当社グループは、高性能製品の投入等により他社との差別化やサプライチェーンの強化を図っております。

 

産業インフラ関連分野

・航空機・エネルギー関連材料のうち航空機関連材料については、特定の顧客・製品向けの供給に依存する傾向があり、航空機産業の需要の低迷が長期化した場合は、当社グループの業績又は財政状況に影響を与える可能性があります。これに対し当社グループは、エンジンメーカーとのビジネスを強化し特殊技術で次世代新製品の投入を進めております。

・配管機器のうち継手類については、主にガス会社を顧客として製品の供給を行っておりますが、当該業界はガスの自由化により競争が激化しており、より競争が激化した場合には、当社グループの業績又は財政状況に影響を与える可能性があります。これに対し当社グループは、新型の継手製品を前倒しで投入すること等により他社との差別化を図っております。

・電線については、成長分野のひとつである鉄道分野の事業拡大に向けて、車両用電線の現地生産化、製品ラインナップの拡充等に取り組んでおりますが、最大市場である中国において鉄道投資が滞っており、需要の低迷が長期化した場合は、当社グループの業績又は財政状況に影響を与える可能性があります。

 

エレクトロニクス関連分野

当社ではエレクトロニクス関連分野向けに多様な製品を提供しておりますが、当該分野は、顧客ニーズや技術が急速に変化する環境下にあります。技術革新が急速に進展し、その対応が遅れた場合には、当社グループの業績又は財政状況に影響を与える可能性があります。これに対し当社グループは、顧客ニーズ及び技術革新を早期に捉え、新製品の開発等による迅速な対応に努めております。

 

(2)競争優位性及び新技術・新製品の開発・事業化に係るリスク

 当社グループが展開する各事業においては、当社グループと同種の製品を供給する競合会社が存在しております。また、当社グループの製品の中には、技術変化や市場の成熟化が進み、既存の製品の市場が縮小する可能性のあるものがあります。そのため、当社グループの競争力は、価格・品質・納期での競争優位性や新技術・新製品の開発力とこれを事業化する能力の影響を受けており、技術や顧客ニーズの変化に適切に対応できなかった場合や新技術・新製品の開発・事業化に要する期間が長期化した場合には、当社グループの成長性や収益性を低下させ、当社グループの業績又は財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、CO2排出削減を中心とする環境対策として環境への負担を軽減する環境親和性の高い技術・製品の開発が社会的に要請されているなか、このような要請に適切に対応できなかった場合や環境親和性の高い技術・製品の開発・事業化に要する期間が長期化した場合には、当社グループの業績又は財務状況に影響を及ぼす可能性があります。これに対し当社グループでは、競争優位性を維持できるよう、新技術・新製品の開発・事業化に努めて、さらに顧客との協創による新製品の早期の市場投入による市場環境・顧客ニーズの変化への対応を図るとともに環境対策に向けた技術/製品開発を戦略的に推進していきます。

 

(3)原材料等の調達に係るリスク

当社グループでは生産活動に鉄スクラップ、銅等の種々の原材料を使用しており、産出地域や供給者が限定されているレアメタルも多く含まれます。その価格は国際的な需給状況のほか産出国における資源政策の事情、多国間の戦争等による社会的混乱等により大きく変動することがありますが、市況高騰時にこれをタイムリーに販売価格に転嫁できなければ当社グループの業績又は財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、これらの原材料については、産出地域における大きな自然災害、ストライキ、政治情勢の悪化や物流機能の障害だけでなく、多国間の戦争等による社会的混乱等のさまざまなトラブルにより供給が逼迫や遅延した場合、必要とする量を確保できない可能性があります。また、調達した原材料に紛争鉱物、児童労働等の問題が潜むことが確認された場合、原材料の変更や調達先の変更が必要となり、製品の生産や供給に影響を及ぼす可能性があります。これに対しては当社グループでは、調達ソースの多様化等による安定調達のほか、調達先に対して「日立金属グループサステナブル調達ガイドライン」を共有することでリスクの低減を図っております。

 

(4)人材確保に係るリスク

 当社グループの競争力を維持するためには、事業の遂行に必要となる優れた人材の継続的な確保が必要となりますが、そのような優れた人材は限られております。当社グループがそのような優れた人材を獲得できないあるいは雇用し続けることができなかった場合、又は人材の育成が計画どおりに進まなかった場合には、事業の遂行に必要となる人材が不足し、当社グループの業績又は財務状況に影響を及ぼす可能性があります。これに対し当社グループでは、多様な人材が活躍できるよう人事制度の整備を通じて優秀な人材の確保に努めるとともに、さらなる人材育成プログラムの充実と強化により人材の育成を推進しております。

 

(5)製品の品質に係るリスク

 ①不適切事案の影響

 当社は、2020年4月に当社及び子会社の一部製品に、顧客へ提出する検査成績書に不適切な数値の記載が行われていた等の事案が判明して以降、事実確認と原因究明等の調査を実施してまいりました。その結果、当社及び子会社の磁石製品、特殊鋼製品、自動車鋳物製品等において、顧客と取り決めた仕様で定められた特性について、その検査結果を書き換える等の不適切行為が行われ、顧客と取り決めた仕様を満たさない製品等が顧客に納入されていたことが確認されました。当社では、不適切行為等が確認された製品について、実際に当社が行った検査方法と顧客と取り決めた検査方法との相関関係分析、顧客立会いの下での性能確認、或いは当社にて保管している製品サンプルの再検査等の方法により検証を進めており、現時点で、性能上の不具合及び安全上の問題は確認されておりません。

 当社では、2021年4月に取締役会の諮問機関として「品質コンプライアンス委員会」を設置し、再発防止策、品質保証体制の抜本的な見直し及びコンプライアンスの一層の強化に係る各種施策の着実な実行をモニタリングすることにより、再発防止及び顧客、株主等、ステークホルダーの皆様の信頼回復に全力で取り組んでおりますが、当該事案について今後の進捗次第では、当社グループの製品に対する信用低下による販売活動への影響、新たな不適切事案の判明に伴う追加対応の発生、顧客に対する補償費用を始めとする損失の発生、品質管理体制の強化に要する費用の増加等により、当社グループの業績又は財政状況が影響を受ける可能性があります。

 

  ②製品の契約不適合・欠陥

 当社グループの製品には、重要保安部品に該当するもの等、高い信頼性を要求されるものが存在し、製品の製造に当たっては、顧客とあらかじめ取り決めた仕様に満たない(契約不適合)製品及び欠陥の生じた製品が市場に流出することのないよう厳格な品質管理体制を構築しております。しかしながら、契約不適合・欠陥のある製品が市場へ流出し、製品の補修、交換、回収、損害賠償請求又は訴訟等に対応する費用が発生した場合には、当社グループの業績又は財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)環境規制等に係るリスク

 当社グループの事業は、大気汚染、水質汚濁、有害物質の使用及び取扱い、エネルギー使用の合理化、廃棄物処理、土壌・地下水汚染等に関係する様々な環境関連法令、労働安全衛生関連法令による規制を受けており、これらの規制は年々厳しくなっております。また、近年では、従来の環境関連法令等の遵守だけでなく、気候変動リスクへの対応の観点から、温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギーの活用やバリューチェーン全体の温室効果ガス排出量のマネジメントの実施等、企業への脱炭素経営に向けた取組みに関する要請が、顧客との取引関係だけに留まらず、社会的に強まっております。当社グループでは、従前より、工程省略、省エネルギー機器の導入促進、天然ガスやLPGへの燃料転換等CO2排出量削減に取り組んでおりますが、2021年6月に2050年度カーボンニュートラルをめざす長期目標(中期目標として2030年度までにCO2排出量38%削減(2015年度対比))を掲げ、その実現に向けて、これまで以上のCO2排出量削減に加えて、排出したCO2の再利用等にまで踏み込んだ取組みの検討を進めております。また、当社はTCFD提言に賛同し、気候変動の影響評価及びその情報開示に取り組んでおります。このような大きな環境変化の中で、当社グループが製品を製造する際に使用する材料、部品またはエネルギーを調達する費用等が増加したり、上記取組みに係る研究開発投資や設備投資が増大する可能性があります。これに対し当社グループでは、環境マネジメントシステム(ISO14001:2015)に準じた環境マネジメント体制の中で環境関連法令等の規制への対応を実施し、環境リスクの低減に努め、またその環境対応の財務的な影響を把握し、影響の低減を図っております。

 

(7)為替レートの変動に係るリスク

当社グループは、海外からの原材料の輸入及び国内で製造した製品の海外への輸出を行っていることから、為替レートの変動により外貨建取引、外貨建の資産・負債が影響を受けております。そのため、為替レートの大幅な変動が生じた場合、当社グループの業績又は財務状況に影響を及ぼす可能性があります。これに対し当社グループは、外貨建の輸出入に係る為替変動のリスクに対しては、為替予約、通貨オプション等を通じてリスクの低減に努めております。また、当社グループの連結財務諸表作成にあたっては、海外の連結子会社の財務諸表を円換算しており、為替レートが変動した場合、当社グループの業績又は財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)M&A・事業再編等に係るリスク

 当社グループは、各事業分野の新技術や新製品の開発及び競争力の強化並びに事業分野の拡大等のため、他社の買収や合弁会社の設立、戦略的提携、事業の売却又は再編等を行うことがあります。これらの施策は、事業遂行並びに技術、製品及び人事上の統合において時間と費用がかかる複雑な問題を含み、シナジー効果の発揮までに時間を要する場合があります。これらの施策が計画通りに実行できない場合は、当初期待した効果が得られない可能性があります。また、事業提携の効果は、当社グループがコントロールできない提携先の意思決定や能力、市場の動向によって悪影響を受ける可能性があります。さらに、これらの施策に関連して、統合や買収事業の再構築、その他買収後の運営等に多額の費用が当社グループに発生し、当社グループの業績又は財務状況に影響を及ぼす可能性があります。これに対し当社グループでは、外部アドバイザーを起用する等して、市場動向、戦略、買収価格、売却価格、PMIプロセス及び潜在リスクなどM&Aや事業再編等に係る様々な視点からの分析を行い、経営会議及び取締役会において審議しております。

 

(9)情報セキュリティに係るリスク

 当社グループの事業活動において、情報システムの利用とその重要性は増大しております。当社グループは、顧客等から入手した個人情報並びに当社グループ及び顧客の技術、研究開発、製造、販売及び営業活動に関する機密情報を外部のサービスプロバイダ利用を含め様々な形態で保持及び管理しております。これらの機密情報を保護するために、情報セキュリティ強化策を推進していますが、①外部からのサイバー攻撃その他の原因によって、かかる情報システムの機能に支障が生じた場合、②外部のサービスプロバイダによるサービス停止が発生した場合、又は③メールの誤送信、機器紛失又は盗難等が発生した場合は、これらの機密情報が権限なく開示、漏洩され、当社グループが損害賠償を請求され又は訴訟を提起される可能性があるほか、当社グループの業績、財務状況、評判及び信用に影響を及ぼす可能性があります。

 これに対し当社グループでは、サイバー攻撃は完全に防げない事を前提に、リスクの影響度や頻度を踏まえた上で、セキュリティ対策に取り組んでいます。情報セキュリティ強化施策の範囲をOA環境から生産・製造現場等の様々な事業環境へ拡大し、併せて関係部門の参画を更に強めることによって情報セキュリティ委員会の体制強化を行っているほか、当社グループの情報セキュリティへの理解を深めるためのe-ラーニングによる教育を毎年実施しています。また、万一の情報漏洩の際における損害賠償請求に備え、サイバー攻撃を含む情報漏洩保険に加入しています。

 

(10)海外への事業展開に係るリスク

当社グループでは、国内市場の成熟化や顧客の海外進出に対応するため、米国、アジア、中国、欧州等海外への進出、製品の輸出等により事業展開を積極的に行っております。

当社グループが新たに海外へ事業を進出する場合、製造設備等多額の初期投資を必要とするとともに、稼動開始まで時間を要する場合が多くなっております。また、海外への事業展開では、①法律や税制上の諸規制の変更、②未整備な社会制度・社会基盤、③戦争、テロ、暴動、感染症の蔓延等の社会的混乱の発生、④その他通商に係る関税、輸入規制、保護主義等の経済的、社会的、政治的な事情等に起因する事業活動に対する障害が顕在化するリスクが内在し、これらの問題が発生した場合、海外における事業活動に支障をきたし、当社グループの業績又は財務状況に影響を及ぼす可能性があります。これに対し当社グループでは、各地域の政治・経済・社会的情勢などを定常的に把握し、当社グループの事業に及ぼす影響を分析したうえで、グループ全体での対応を実行しております。

 

(11)安全衛生に係るリスク

 当社グループは「安全と健康はすべてに優先する」という考え方のもと、「安全文化の構築」「安全な組織づくり」「設備の本質安全化」「健康増進活動」により、国内外の製造拠点で安全で健康な職場づくりを推進しております。しかしながら、不測の事態による従業員や施設、設備に影響を与える労働災害や労働法令違反等が発生した場合、労働者の生命又は身体に重篤な被害を及ぼすだけでなく、当社グループの事業活動の中断、被災者への補償、労働法令違反に係る行政処分等によって当社グループの業績又は財務状況に影響を及ぼす可能性があります。これに対し当社グループでは、当社グループの安全衛生を管理する組織として「安全衛生推進部」を設置しているほか、従業員の危険感受性の向上や管理監督者の安全衛生意識向上のための安全衛生教育、設備の本質安全化施策の実施に向けた投資、グループ全体での生活習慣病予防や禁煙支援等の健康経営施策等を継続的に実施しております。

 

(12)地震、その他自然災害等に係るリスク

 当社グループは、地震又は気候変動に伴う風水害等の大規模な自然災害により当社グループの施設が直接損傷を受けたり、破壊されたりした場合、当社グループの事業活動が中断する可能性があります。また、当社グループの施設が直接の影響を受けない場合であっても、流通網、供給網又は通信網が混乱する可能性があります。さらに、新型コロナウイルス等の未知の感染症が流行し当社グループの事業活動が混乱する可能性もあります。自然災害その他の事象により当社グループの事業遂行に直接的又は間接的な混乱が生じた場合、当社グループの事業活動に支障をきたし、業績又は財務状況に影響を及ぼす可能性があります。これに対し当社グループでは、大規模地震などを想定したBCP(Business Continuity Plan、事業継続計画)の策定及びその訓練や見直しを継続的に実施するとともに、災害発生時における従業員やその家族の安全をインターネット経由で確認するための安否確認システムを整備しております。また、従業員の新型コロナウイルスの感染拡大防止を目的として、在宅勤務をはじめ、出勤時のオフィス内でのマスク着用の徹底、各部門の出勤率上限の設定及び定期的な従業員の体調管理等に取り組んでおります。

 

 

(13)有形固定資産やのれん等の固定資産の減損損失に係るリスク

当社グループは、事業の維持・成長又は新たな事業機会の獲得のために、継続的な設備投資を必要とし、また他社の事業買収等も必要に応じて実施しています。特にこれまでの大型設備投資のフル戦力化と効果の早期刈り取りを継続するとともに、新たな設備投資については、高成長・高収益分野に重点配分する精選投資を実行しております。また、当社グループは過去に行った設備投資や他社の事業買収等に伴い多額の固定資産を保有しております。そのため、当社グループが現在保有しているもののほか将来保有する固定資産について、外部環境の変化等により投資額の回収が見込めなくなった場合には減損損失として計上する可能性があり、当社グループの業績又は財務状況に影響を与える可能性があります。これに対し当社グループでは、重要な投資に関して、事業戦略との整合性、市場等の動向、事業リスク、技術や生産性の改善計画の妥当性、投資金額及び投資計画の妥当性等多面的かつ全社的な視点に基づき、事前に投資委員会で審査を行ったうえで経営会議や取締役会で審議しております。また、投資決定後も定期的にフォローアップを行い、市場環境や内部状況の変化を把握しながら、投資計画の加速や変更を行っております。

 

(14)親会社との関係に係るリスク

 当社の親会社である株式会社日立製作所(当連結会計年度末現在、当社の議決権総数の53.4%を保有。)は、傘下に当社を含む上場子会社のほか多数の関係会社を擁し、グリーンエナジー&モビリティ、デジタルシステム&サービス、コネクティブインダストリーズの分野にわたって、製品の製造及び販売・サービスに至る幅広い事業活動を展開しております。また、本有価証券報告書提出日現在、当社取締役5名のうち1名は同社の役員を兼務しており、同社とは製品の継続的売買、役務の提供、技術の提供及び金銭消費貸借の取引関係があります。当社は、経営の独立性を保ちながら、同社の日立グループ経営に積極的に参画し、日立グループの研究開発力やブランドその他の経営資源を当社グループ内で最大限に有効活用していくことを基本方針としておりますが、当社グループの事業展開等は、同社の経営戦略等の影響を受ける可能性があります。

 

(15)資金調達に係るリスク

当社グループでは、成長投資に必要な資金については、事業から創出する資金及び手元資金で賄うことを基本方針としていますが、成長の機会を逃さないために金融機関からの借入のほか、資本市場から長期の資金調達を行っております。そのため、金融市場の悪化に伴い有利な条件で資金調達ができない場合、又は当社グループの業績悪化やキャッシュフローの悪化等により資金調達コストが上昇し、あるいは機動的な資金調達が困難となった場合には、当社グループの業績又は財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

なお、当社グループでは、金融機関との間において貸出コミットメント契約を締結する等により安定的な資金調達に努めております。

 

(16)法令・公的規制に係るリスク

当社グループは、日本国内及び事業展開する各国において、通商・貿易・為替、租税等の経済法規その他の関連する様々な法令及び公的規制の適用を受けております。当社グループは、内部統制体制の整備・改善を図りこれらの法令及び公的規制の遵守に努めておりますが、これらの法令及び公的規制を遵守していないと判断された場合には行政処分を課されたり、民事訴訟等により関連する違反に起因する損害の賠償を請求されたりする可能性があります。また、これらの法令又は公的規制が改正された場合には対応費用の増加等の可能性があります。これら行政処分や損害賠償請求、対応費用の増加等は、当社グループの業績又は財務状況に影響を及ぼす可能性があります。これに対し当社グループでは、全役員及び従業員へのコンプライアンス意識の醸成並びに法令遵守の徹底を図るため、判断の拠り所や取るべき行動を定めた「日立金属グループ行動規範」を策定し、「法を守り正道を歩む」を基本とした事業活動を進めています。さらに競争法遵守や贈収賄防止などを定めた規則体系である「日立金属グローバル・コンプライアンス・プログラム」を全グループ会社に整備しており、その理解を深めるためにCSRガイドブックの作成・配布、各種研修やeラーニングなどによる教育などを継続的に取り組んでいます。

 

 

(17)知的所有権に係るリスク

 当社グループは、多数の知的財産権を保有し、事業戦略に基づき他社に対して権利行使やライセンス供与を行い、一方で他社の知的財産権を尊重し、必要と認める場合には知的財産権のライセンス取得を行っております。それらの権利行使、ライセンス供与又はライセンス取得が予定どおり行われなかった場合は、当社グループの事業遂行や競争力に影響を及ぼす可能性があります。また、知的財産権に関する訴訟等の紛争が発生した場合、外部弁護士等の専門家と連携するなど適宜対応しますが、紛争の解決に係る費用が発生し、当社グループの業績又は財務状況に影響を及ぼす可能性があります。これらのリスクの発生を抑制するために、当社グループでは、研究、開発又は設計等において、事前に他社の特許等を調査し、予防措置・対策を講じることとしているほか、当該リスクへの理解を深めるため、各種研修による教育を継続的に取り組んでおります。

 

(18)退職給付債務に係るリスク

当社グループは、数理計算によって算出される多額の退職給付費用及び債務を負担しております。この評価には、死亡率、脱退率、退職率、給与の変更、割引率、年金資産の期待収益率等の年金費用を見積る上で重要な前提条件が含まれております。当社グループは、人員の状況、現在の市況及び将来の金利動向等多くの要素を考慮に入れて、主要な前提条件を見積る必要があります。主要な前提条件の見積りは、基礎となる要素に基づき合理的であると考えておりますが、実際の結果と合致する保証はありません。金融市場の悪化によって年金資産の評価が目減りすることで期待収益率が低下し、場合によっては年金資産への追加拠出等が必要となる可能性があります。また、割引率の低下は、数理上の退職給付債務の増加をもたらします。そのため、主要な前提条件の変化により、当社グループの業績又は財務状況に影響を及ぼす可能性があります。これに対し当社グループでは、投資顧問会社からの資産配分や投資案件の選定等のアドバイスを踏まえながら、定期的に開催する退職給付委員会において適切な運用を審議、決定しております。

 

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