業績

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という。)等を当連結会計年度の期首から適用しております。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)及び(セグメント情報等)」をご参照ください。

 

(業績等の概要)

(1) 業績

当期の世界経済は、新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という)の世界的流行に対し各国で感染症対策やワクチン接種が進んだこと等により社会経済活動の制限が段階的に緩和され、景気は回復基調で推移しました。一方、昨年末以降、新たな変異株などによる新型コロナの感染再拡大により、景気回復のペースは鈍化しました。また、本年2月以降、ロシア・ウクライナ情勢による原油や天然ガス、各種原材料の供給不安及び価格高騰等の影響、さらには各国の対ロシア経済制裁とロシアによる対抗策の実施による影響が懸念されております。
  米国では、経済対策や雇用・所得環境の改善を背景とした個人消費の増加や設備投資の回復により、景気は底堅く推移しました。欧州では、冬場の新型コロナ感染再拡大の影響があったものの、個人消費の回復が下支えし、景気は回復傾向で推移しました。中国では、新型コロナに対する局所的な封じ込め政策が個人消費を抑制し、さらに政府の投資抑制策によるインフラ投資や不動産開発投資の減少により、景気回復のペースは緩やかなものとなりました。
  わが国の経済は、上期は緊急事態宣言の発出やまん延防止等重点措置が実施され、雇用環境や個人消費の回復は緩やかなものとなるなど、景気は概ね横ばいで推移しました。下期に入ってからは社会経済活動の制限緩和を背景に設備投資や個人消費に回復傾向が見られたものの、昨年から続く半導体等の供給制約の影響や、本年1月以降の新たな変異株などによる新型コロナの感染再拡大もあり、景気の本格的な回復には至りませんでした。
  このような環境の下、当社グループでは、引き続き注力事業である情報通信、エネルギーや自動車分野の強化に関する各施策に取り組んでまいりました。特に原材料価格及び輸送費の高騰に対処するため、情報通信分野では北米における生産性改善やコスト低減等、エネルギー分野では利益確保を重視した受注活動の推進等、また自動車分野では新型コロナによる工場の稼働率低下への対策等に取り組んでまいりました。
  また、「古河電工グループ ビジョン2030」(以下、「ビジョン2030」という)の達成に向け、ESG経営*を推進するとともに、新たな中期経営計画の実行に向けた基盤づくりとして、環境変化を先取りした事業の変革、新事業の立上げ・育成、及び資本効率を重視した経営の強化に取り組んでまいりました。
  ESG経営推進の施策としては、2050年に事業活動における温室効果ガス排出量をゼロとするチャレンジ目標を掲げた「古河電工グループ 環境ビジョン2050」の達成に向け、温室効果ガス排出量のより高い削減目標や水使用量の削減等の新たな目標を設定する「古河電工グループ 環境目標2030」の改定、人材・組織実行力の強化に向け、成果の上がるチーム作りへの取組みや変革の推進・持続に必要なスキル習得のための従業員教育等を実施し、組織風土改革を推進してまいりました。また、サプライチェーン全体での人権に関する対応を含むCSR活動を推進するため、国内外グループ会社及び当社の主要調達先に対する「古河電工グループCSR調達ガイドライン」に基づく対応等を進めてまいりました。環境変化を先取りした事業の変革では、事業ポートフォリオ見直しの仕組みの構築を図ってまいりました。また、グループ全体での新事業創出に取り組むとともに、資本効率を重視した経営の強化を図るため、資本コストをより意識した目標管理への移行を推進してまいりました。
 *ESG経営… E nvironment(環境)、 S ocial(社会)、 G overnance(ガバナンス)に配慮した経営手法

当期の業績につきましては、情報通信ソリューション事業において北米での光ファイバ・ケーブルの販売の増加等により前期の落ち込みから回復したこと、また、電装エレクトロニクス材料事業において車載及びエレクトロニクス関連製品の堅調な需要を着実に取り込んだほか、銅地金価格高騰の影響もあり、グループ全体の売上は増加しました。損益面では、生産性の向上や戦略製品の拡販をはじめとする品種構成の改善等を推進してまいりましたが、原材料価格や輸送費の高騰等もあり、前期比では改善したものの、限定的にとどまりました。

これらの結果、連結売上高は 9,305億円 前期比14.6%増 )、 連結営業利益は114億円 前期比35.6%増 )となりました。また、 連結経常利益は197億円 前期比279.0%増 )となりました。固定資産処分益など 96億円 を特別利益に、減損損失など 88億円 を特別損失として計上した結果、 親会社株主に帰属する当期純利益は101億円 前期比0.9%増 )となりました。なお、海外売上高は4,690億円(前期比24.6%増)で、海外売上高比率は50.4%(前期比4.0ポイント増)となりました。

単独の業績につきましては、売上高は 2,924億円 前期比25.5%減 )、 営業利益は5億円 (前期比74億円改善)、 経常利益は65億円 前期比15.6%増 )、 当期純損失は5億円 (前期比249億円悪化)となりました。

なお、収益認識会計基準等の適用により、連結売上高は525億円、連結営業利益、連結経常利益及び税金等調整前当期純利益はそれぞれ4億円減少しております。また、売上高は1,686億円、営業利益、経常利益及び税引前当期純利益はそれぞれ1億円減少しております。

ロシア・ウクライナ情勢や各国による制裁等による業績への影響は、当期においては限定的でしたが、引き続き注視してまいります。

 

セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。

 

〔インフラ〕

情報通信ソリューション事業では、北米子会社において光ファイバ・ケーブル工場の生産性改善や特殊ファイバを含む高付加価値製品の拡販等に取り組み、南米においてはFTTHやLANソリューション市場向け製品の売上が増加したほか、国内のネットワーク関連製品が堅調に推移しました。また、デジタルコヒーレント関連製品の需要が回復したこともあり、事業全体として増収増益となりましたが、生産性の改善の遅れや原材料価格及び輸送費の高騰もあり、前期において新型コロナの影響により落ち込んだ収益を回復するには至りませんでした。

エネルギーインフラ事業では、電力事業で再生可能エネルギー向けを含む国内地中線事業が順調に推移したほか、産業電線・機器事業においても、前期における新型コロナ等の影響から回復し、増収増益となりました。

これらの結果、当セグメントの連結売上高は2,970億円前期比14.6%増)、連結営業利益は52億円(前期比73億円改善)となりました。また、単独売上高は848億円(前期比3.9%減)となりました。

なお、収益認識会計基準等の適用により、連結売上高は72億円減少しております。

情報通信ソリューション事業では、北米光ファイバ・ケーブル市場における堅調な需要を着実に取り込むべく既存設備の生産性の改善を引き続き実行するとともに、受注が増加しているローラブルリボンケーブルのさらなる拡販に取り組んでまいります。また、需要に応じた適切な人員配置及び品質の改善やコストダウン等に努め、利益拡大を推進してまいります。エネルギーインフラ事業では、利益確保を重視した受注活動の推進や人材確保を含めた製造・工事施工能力の向上等に取り組み、今後需要の拡大が見込まれる国内の再生可能エネルギー分野や超高圧地中線案件及びアジアの海底線案件の着実な受注を目指してまいります。

 

〔電装エレクトロニクス〕

自動車部品事業では、半導体や樹脂不足等による世界的な自動車生産台数の減産等による影響があったものの、ワイヤハーネスの売上が堅調に推移し、また、車両の軽量化・環境負荷低減に寄与するアルミワイヤハーネスの新車種への搭載も進み、売上が回復しました。上期での東南アジアの一部拠点における新型コロナの影響によるロックダウンに加え、昨年秋以降は感染再拡大による工場の稼働率低下や、製品の顧客への供給責任を果たすべく実施した緊急的な輸送による費用の増加で利益が落ち込み、減益となりました。

電装エレクトロニクス材料事業では、車載及びエレクトロニクス関連製品を中心とした需要が堅調であったこと、また高付加価値製品の拡販による品種構成の改善や生産性の向上に加え、銅地金価格高騰の影響等により、増収増益となりました。

これらの結果、当セグメントの連結売上高は5,007億円前期比15.6%増)、連結営業利益は1億円前期比97.9%減)となりました。また、単独売上高は1,465億円(前期比39.5%減)となりました。

なお、収益認識会計基準等の適用により、連結売上高は388億円減少しております。

自動車部品事業では、従来から取り組んでおりますワイヤハーネスの製造拠点におけるサプライチェーン多重化を一層推進するとともに、品質のさらなる向上を目的としたワイヤハーネス製造工程の「自働化」を進めてまいります。電装エレクトロニクス材料事業では、引き続き生産性の向上に取り組み、車載及びエレクトロニクス関連製品における堅調な需要の取り込みを図ってまいります。

 

〔機能製品〕

AT・機能樹脂事業、サーマル・電子部品事業及びメモリーディスク事業では、上期はデータセンタ関連製品の売上が堅調に推移したものの、下期は顧客における半導体不足により需要が減少しました。銅箔事業においては、2019年に台湾子会社の工場で発生した火災からの復旧により回路用銅箔の受注増及び電池用銅箔の需要回復を着実に取り込んだ結果、一部輸送費及び原材料価格の高騰の影響を受けたものの、当セグメント全体では増収増益となりました。

これらの結果、当セグメントの連結売上高は1,300億円前期比13.4%増)、連結営業利益は76億円前期比20.4%増)となりました。また、単独売上高は588億円(前期比2.1%減)となりました。

なお、収益認識会計基準等の適用により、連結売上高は62億円減少しております。

継続的な拡大が見込まれる半導体市場における需要の着実な取り込みや拡販を実施し、収益を確保する各施策を引き続き実行してまいります。

 

〔サービス・開発等〕

水力発電、新製品の研究開発、不動産の賃貸、物流、各種業務受託等による当社グループ各事業のサポート等を行っております。

当セグメントの連結売上高は345億円前期比10.9%減)、連結営業損失は14億円(前期比3億円改善)となりました。また、単独売上高は22億円(前期比6.7%増)となりました。

なお、収益認識会計基準等の適用により、連結売上高は4億円減少しております。

また、当社グループの物流機能の強化を目的として、昨年12月に当社子会社であった古河物流㈱の株式の一部をSBSホールディングス㈱へ譲渡し、SBS古河物流㈱に商号を変更するとともに、持分法適用関連会社としました。SBS古河物流㈱は当社グループに対し、より付加価値のある総合的な物流サービスを提供してまいります。

 

(2) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、 676億円 (前連結会計年度比 △196億円 )となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益+204億円、減価償却費+337億円があったものの、棚卸資産の増減額△360億円、売上債権及び契約資産の増減額△282億円などにより△133億円(前連結会計年度比△128億円)となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出△365億円、無形固定資産の取得による支出△35億円などにより、 △401億円 (前連結会計年度比 △382億円 )となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、コマーシャル・ペーパーの純増減額+240億円や長期借入れによる収入+160億円、配当金の支払額△42億円などにより +350億円 (前連結会計年度比 △1億円 )となりました。

 

(生産、受注及び販売の状況)

当社グループの生産・販売品目は、広範かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額または、数量で示すことはしておりません。

 

(財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析)

(1) 財政状態の分析

当連結会計年度末の資産の部は、合計が 前連結会計年度末に比べ1,038億円増加 して 9,359億円 となりました。棚卸資産が433億円、受取手形、売掛金及び契約資産が384億円、投資有価証券が151億円、有形固定資産が134億円増加しましたが、現金及び預金が192億円減少しました。流動資産から流動負債を差し引いた運転資本は、前連結会計年度末に比べ86億円増加して1,232億円となりました。

有形・無形固定資産は、資本的支出で 381億円 の増加、減価償却で 337億円 の減少のほか、除売却による減少等により変動しております。

負債の部では、合計が前連結会計年度末に比べ814億円増加して6,218億円となりました。借入金、社債、コマーシャル・ペーパーを含む有利子負債が3,421億円と前連結会計年度末比で515億円増加しました。

純資産の部では、合計が前連結会計年度末に比べ224億円増加して3,141億円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益の増加等により利益剰余金が58億円増加し、その他の包括利益累計額が137億円増加しました。その結果、自己資本比率は、前連結会計年度末比1.4ポイント下降し29.8%となりました。

キャッシュ・フローの概況については、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(業績等の概要)(2)キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

(2) 経営成績の分析

当連結会計年度の連結売上高は、 前連結会計年度比14.6%増 9,305億円 、連結営業利益は、前連結会計年度比 35.6 %増の 114億円 となりました。情報通信ソリューション事業において北米での光ファイバ・ケーブルの販売の増加等により前期の落ち込みから回復したこと、また、電装エレクトロニクス材料事業において車載及びエレクトロニクス関連製品の堅調な需要を着実に取り込んだほか、銅地金価格高騰の影響もあり、グループ全体の売上は増加しました。損益面では、生産性の向上や戦略製品の拡販をはじめとする品種構成の改善等を推進してまいりましたが、原材料価格や輸送費の高騰等もあり、前期比では改善したものの、限定的にとどまりました。

営業外損益では、持分法による投資損益が99億円改善しました。この結果、連結経常利益は前連結会計年度比279.0%増197億円となりました。

特別損益は、8億円の利益(純額)となりました。固定資産処分益など96億円を特別利益に、減損損失など88億円を特別損失として計上いたしました。

以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度比0.9%増101億円となりました。

なお、セグメント別の概況は、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(業績等の概要)(1)業績」に記載しております。

 

(3) 資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社グループでは、事業活動の継続及び発展のための成長投資や運転資金需要に対して、営業活動を通じて獲得したキャッシュ・フローの他、金融機関からの借入、社債やコマーシャル・ペーパーの発行等の負債性調達や、資産の流動化等により、資金調達を実施しております。具体的な調達手段については、市場環境や当社のバランスシート状況を踏まえ、経済合理性や財務構造の安定化の観点から判断しております。

また、日本、中国及びタイにおいては、CMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入し、効率的な資金活用に努めております。

手元流動性については、手元現預金とコミットメントラインにより、短期的な支払リスクをカバー出来うる水準を確保しております。

 

(重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定)

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

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