研究開発活動

5 【研究開発活動】

当社グループは、新商品、新技術開発による新規事業の創出と展開を図るべく、国内の当社研究所等(サステナブルテクノロジー研究所、自動車・エレクトロニクス研究所、情報通信・エネルギー研究所、インキュベーター統括部、デジタルイノベーションセンター)及び海外の OFS Laboratories, LLC (米国)、 Furukawa Electric Institute of Technology Ltd.(ハンガリー)、SuperPower Inc.(米国)、 Silicon Valley Innovation Laboratories, Furukawa Electric (米国)を中心とした研究体制を有し、積極的に研究開発へ取り組んでおります。

当連結会計年度における研究開発費は、前連結会計年度比2.7 %増 20,761百万円とし、各セグメントの主な成果等は次のとおりであります。

 

(1)インフラ

①次世代の大容量光デジタルコヒーレント通信向け超小型狭線幅制御回路付信号光源(Nano ITLA)の製品化を進めております。本製品は、大幅な小型化と低消費電力化に対応し、かつ超高速光通信に用いられる多値変調の光デジタルコヒーレント通信に要求される狭線幅の特性を有しております。この技術は、Beyond 5G時代の急激なトラフィックの増大を見据えて世界的に開発が進む600Gbps超の光デジタルコヒーレント通信を支えるキーデバイスです。引き続き次世代光ファイバ通信システムの高速化・大容量化・長距離化を支える技術開発を進め、人々の生活利便性の向上に大きく貢献してまいります。

②情報通信サービスの普及にともないデータセンタにおける情報処理量が飛躍的に増大しており、次世代ネットワークスイッチ装置の実現が求められております。この次世代ネットワークスイッチ装置ではCo-Packaged Opticsと呼ばれる光電融合デバイスが中心になると見込まれていることから、2022年4月Co-Packaged Optics向け外部光源を開発しサンプル出荷を開始いたしました。今後も次世代データセンタ向けの光部品提供により大容量情報通信と高効率エネルギー社会の実現に貢献してまいります。

③光ファイバ及び光ファイバケーブルについては、長距離用途におけるさらなる高性能化・低コスト化を進めております。総務省から委託を受けている「新たな社会インフラを担う革新的光ネットワーク技術の研究開発」の成果として、マルチコアファイバによる光海底ケーブルの大容量化を実現する基盤技術を開発・実証しました。国立研究開発法人情報通信研究機構からは、新たに「Beyond 5G超大容量無線通信を支える空間多重光ネットワーク・ノード技術の研究開発」及び「Beyond 5G時代に向けた空間モード制御光伝送基盤技術の研究開発」を受託し、将来の超大容量光通信における空間多重技術の長距離幹線系・加入者アクセス系への適用に向けて、光ファイバ及び光ファイバケーブルの製造技術やこれらの性能検証、光ファイバの接続技術並びにマルチコア光増幅技術の向上にむけた検証を継続、推進しております。一方、データセンタ用途や大都市ネットワーク用途で光ファイバネットワークの大容量化・多心化が求められていることから、省スペース化が可能な「ローラブルリボンを搭載した光ファイバケーブル」のさらなる高密度化も引き続き推し進めております。

④ファイバレーザの製品群として、18kWのマルチモードファイバレーザの更なる高出力化・高輝度化の研究開発を進めております。ビーム品質を良好に維持しつつ高出力化を行うことで、金属の厚板溶接や薄板の高速溶接が可能となり、高付加価値加工の実現及び製造コスト削減に大きく貢献しております。かねてより開発を進めているビームモード制御技術を活用することで、10kW超の高出力レーザを用いた厚板溶接で課題となるスパッタ飛散の抑制、自動車用亜鉛めっき鋼板やアルミニウム合金の高速かつ高品質な溶接を可能としております。また、日亜化学工業株式会社と共同開発した高輝度青色レーザダイオードモジュールを搭載し、青色レーザ出力1kWを有する、Blue-IRハイブリッドレーザ「BRACE®X」の販売を開始いたしました。本製品は、電動モビリティ向け主要部品であるリチウムイオン電池、モータ、インバータ等の導体となる銅の溶接工程の生産性向上(品質・加工速度の向上)や製造工程の省人化に貢献することができます。これまで、光反射率が極めて高い純銅は難加工素材とされておりましたが、本製品は銅加工において高水準の品質・深度・加工速度を実現しました。さらに、溶接品質管理のためのモニタリング技術等の開発も引き続き進めております。これらの研究開発により、自動車や船舶における難接合材の溶接等、高度な加工技術でものづくり競争力を支援し、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

 

⑤情報/エネルギー/モビリティが融合した次世代の新しいインフラを考案し社会実装を目指す組織として設立した次世代インフラ創生センターでは、「古河電工グループ ビジョン2030」を具現化するため、安全・安心・快適で地球環境にやさしい社会基盤の創出、さらに社会的受容性のあるコストでのスマートコミュニティの実現を目指し、パートナーの皆様との共創により活動を行っております。再生可能エネルギーにより発電した電力の安定供給に貢献するため、バイポーラ型蓄電池の開発を推進しております。本製品は、シンプルな構造のため電池の高容量化が実現でき、稼働時に空調レスとすることも可能であり電力貯蔵用リチウムイオン蓄電池と比してトータルコストを2分の1以下に抑制できる高い経済性も持ち合わせた電力貯蔵用蓄電池です。「ゼロカーボン社会に向けた共創」を目的とした「EVを中心としたまちづくりプロジェクト」へ賛同し、本製品を活用した災害などの緊急時における電力レジリエンスの強化等に貢献します。また、総務省から5.9GHz帯におけるV2X通信用の実験試験局免許を取得し、グリーントラフを地表面に配置して歩車共存の実現に貢献する「インテリジェント歩道®」の実証環境を当社平塚事業所内従業員駐車場に構築しました。本実証環境はパートナーの皆様との共創フィールドとして活用されており、今後も社内、社外で実証実験を進めてまいります。また、横浜未来機構に参画し、5Gエリアの拡大、まちを活性化する歩車共存空間の実現、無電柱化コストの低減など、新しい街づくりをコンセプトとする実証実験を予定しております。

 

  以上、当該事業に係る研究開発費は 10,850百万円であります

 

(2)電装エレクトロニクス

①自動車用部品においては、カーボンニュートラルに向けた電動車市場の拡大に対応して、高圧ハーネス・高圧部品の開発に注力しております。電動車用コネクタ・電線については、次世代製品の開発や表面処理を含む端子材料の開発も進めております。自動車用ワイヤハーネスについては、車両軽量化へのニーズに応えるため、大電流用途のα端子のバリエーションを増やし、アルミ電線のさらなる適用部位拡大を進めております。今後予想される車両内外でのデータ通信の増加に対応した高速通信用ケーブルの開発にも取り組んでおります。

②BSS®(鉛バッテリ状態検知センサ)は、過充電抑制による燃費向上及び過放電によるバッテリ上がり防止等に貢献しており、拡販及び受注活動を行うとともに、鉛バッテリ交換タイミングの通知といった高機能化に向けた開発を継続しております。また、今後予想される車載電子機器の増加やソフトウェアアップデート、自動車の電動化、自動運転化に対して、電源品質を維持する電源マネジメントシステムに関連した製品の開発を行っております。

③雨、雪等の環境下でも安定して物体検知可能な車載用の24GHz帯周辺監視レーダの量産を行っております。先進安全運転支援システム高度化に適応するため、後方監視だけでなく前方監視まで機能を拡張し、体積と重量をそれぞれ約30%削減した次世代品の量産を開始しました。また汚れやホコリに強い特長を生かして建機・農機等向け周辺監視レーダの量産を開始しております。今後も、小型・高性能・高機能化を進め安全・安心・快適な社会の実現に貢献してまいります。

④新しいワイヤレス電力伝送方法として期待され、軽量かつ金属異物を加熱し難い特徴を有する電界共振結合方式を用いて、世界で初めて4.7kWの電力の伝送に成功しております。2021年12月には本方式を採用した電動キックボードのワイヤレス充電ポートシステムを株式会社大林組とともに開発し、実証実験を行っております。引き続き、小型・軽量化と大電力・高効率化を実現させ、モビリティの電動化に貢献してまいります。

⑤シミュレーション技術及び分析技術を有効活用し、研究開発の効率化を推進しております。ワイヤハーネスなどの自動車用部品は変形・応力シミュレーション、電子機器開発は振動・熱流体・電磁界シミュレーションを活用したほか、車載ソフト用のアルゴリズム構築についてのモデルベース開発等を行いました。先端分析装置や手法を活用した解析を行っており、合金中の析出相の解析では日本銅学会で論文賞を受賞しました。Furukawa Electric Institute of Technology Ltd. (ハンガリー)では、先進的なシミュレーション技術開発に取り組んでおり、触媒構造解析のための分子動力学シミュレーションを実施しました。引き続き、シミュレーション技術及び分析技術を活用し、メカニズムの解明や設計の最適化に加え、試作代替による環境負荷低減への取組みを推進してまいります。

⑥高強度・高導電な銅合金及び貴金属めっきの開発を引き続き行っております。本開発により、電子機器における小型化・大容量化に伴う接続部品(コネクタ、端子等)の多極化・高密度化、発熱の制御、電装品(ワイヤハーネス等)の高電圧化・大電流化への対応を進めてまいります。

 

  以上、当該事業に係る研究開発費は 4,021百万円であります。

 

 

(3)機能製品

①セルロース繊維の高剛性及び軽量性の特長を活かし、自動車分野など様々な用途での活用が期待されるセルロース繊維強化樹脂の高効率製造法の実用化に向けた検証を行っております。また、プラスチック海洋汚染の対策やCO2排出量削減に取り組むべく、プラスチックパッケージごみをセルロース繊維強化材料にし、当社ケーブル関連商品に使用しております。さらに一般消費財の原材料にも使用し、環境省の「プラスチック・スマート」に参加しております。当社は経済産業省が公表した「GX(グリーントランスフォーメーション)リーグ基本構想」に賛同しており、本研究開発を通して、カーボンニュートラル実現への取組みを推進してまいります。

②高熱輸送量、高発熱密度に対応するヒートパイプ技術を継続的に開発しております。本技術により、情報/エネルギー/モビリティ分野の高発熱化、薄型化、軽量化への対応が可能となります。当社は引き続き、データセンタの高発熱密度に対応した製品や、エレクトロニクス機器の高発熱化、軽量化に対応する製品や、次世代モビリティに向けた熱技術を応用した製品の開発に注力してまいります。

③5Gの運用が本格化して、通信ネットワークの高速化、高周波数化に対応するインフラ用大型高速サーバー・ルーター向けのプリント基板の需要の高まりから、さらなる高速化に対応した次世代高周波基板用銅箔F0X-WSを開発いたしました。今後、高周波基板用銅箔の製品群を拡充し、高速通信ネットワークの需要に対応してまいります。

 

  以上、当該事業に係る研究開発費は 2,112百万円であります。

 

(4)サービス・開発等

①超電導製品部では、高機能低温超電導線材の開発・量産化を進めており、お客様のコイル製造プロセスを効率化する新商品の量産化を開始し、上市しております。また、SuperPower Inc.(米国)と連携し、低温超電導線材及び高温超電導線材の新製品の開発を進めております。

②研究開発子会社である SuperPower Inc.(米国)において、イットリウム高温超電導線材の研究開発を継続しております。高温超電導線材は、当社製低温超電導線材と併せて用いることにより、次世代エネルギー源と期待される核融合炉や、新素材や先端医薬の開発に欠かせない高磁場マグネットなど、各方面への応用が期待されます。また、2020年8月より稼働した新工場で、本製品の増産体制の構築を行っております。また、国立研究開発法人科学技術振興機構からの委託により開発を行う未来社会創造事業において、京都大学と連携した共同研究グループでは、交流損失の低減を達成しました。標準的な薄膜高温超電導線と比較し、交流損失が約20分の1になることを実証しております。

③新事業創出を目的としたソーシャルデザイン統括部にて、VOC(Voice Of Customer)から顧客ニーズを捉え、自社技術開発のみならずOI(オープンイノベーション)による他者連携も積極的に活用し、迅速にコンセプトサンプルを作製し、新たな価値を提案する活動を推進しております。新事業の創出に繋げるべく、社会インフラ維持管理・ライフサイエンス・宇宙分野などにおいて、当社の技術を活かした実証実験を行うと共に、一部社会実装を進めております。

④米国カリフォルニア州のシリコンバレーに開設しているSilicon Valley Innovation Laboratories, Furukawa Electricでは、「古河電工グループ ビジョン2030」の実現につながる新技術を獲得することを目的として、スタートアップ企業とのオープンイノベーションを積極的に推進しております。シリコンバレーを拠点とするアクセラレータや各種イベントを通じて、スタートアップ企業情報や最新の技術及び市場動向を調査し、当社グループの製品やコア技術と、AIを中心としたソフトウェア技術やサービスとの結合による新たな価値創出に向け、実証検証を進めております。シリコンバレーを拠点とする企業との戦略的なパートナーシップ構築を視野にいれ、新技術獲得と新事業創出に取り組んでおります。

⑤地球規模の社会課題である温室効果ガス削減に向けて北海道大学との共同研究を進めており、バイオガスなどの持続可能な資源をLPガスに変換する技術の開発に取り組んでおります。地域の資源から貯蔵・輸送しやすいLPガスへの創出により、一般家庭や一次産業等のエネルギーとしての利用や、災害時用のエネルギーとしての利用も可能となります。脱炭素社会への貢献が期待される本技術を社会実装すべく、今後も実証実験を進めてまいります。

 

  以上、当該事業に係る研究開発費は 3,777百万円であります

 

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