課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

  (1) 経営の基本方針

 今後の経営環境につきましては、依然としてCOVID-19の感染拡大に注意を要するものの、行動制限の発令は無くなり、徐々にコロナショック前の生活様式が戻って、景気の回復につながるものと期待しております。しかしながら一方では、資源価格上昇や円安による物価上昇圧力の高まりや、原材料や部品の仕入れ納期の長期化の継続等難しい環境が続くものと予想しております。

 また、COVID-19の影響で生じた大きな変化には「元の状態に戻る変化」と「決して元には戻らない変化」の二種類の変化があると考えられ、周辺で起こっている変化がこのいずれであるかをしっかりと見極めつつ、とりわけ後者の「決して元には戻らない変化」に取り残されることのないように、新商品、新事業、新制度等の検討を積極的に推進することが重要であると考えております。

 当社は現在、令和5年9月期末に迎える創立75周年、更には80周年を念頭においた中期ビジョンを策定中であります。そのメインテーマは「当社のCIの再構築(=リブランディング)」、「[2.4次産業](※)への展開」、「当社事業のSDGsへの貢献」の三つとしており、令和5年9月期におきましては、これらのテーマをブレークダウンして各事業の施策に反映させてまいります。

 基幹事業であるプロフェッショナルセグメントは、インテリア事業部門では、引き続き「新しい営業方式」の更なる推進と、令和4年10月に発刊した総合カタログ#.16を活用した売上アップ、新クラウドシステムサービス「Goolip」の顧客数の拡大等をはかります。畳事業部門では、引き続き各種オンラインセミナーの積極的な開催や公的補助金を活用した販売戦略等により、ライバル会社との徹底的な差別化戦略を実施し、トップシェアの更なる拡大を目指します。コンシューマセグメントは、コンシューマ事業部門では、COVID-19の影響が最も残っておりますが、感染防止対策も兼ねる防災関連商品等、時宜を得た商品の積極販売や、自社ECサイトの本格運営も含めたBtoC事業の積極推進、専門家の活用による海外市場への展開等の推進策により事業拡大をはかります。また、ソーラー・エネルギー事業部門では、SDGs対応を踏まえた脱CO2目的のビジネスへの取組を推進します。インダストリーセグメントは、産業機器事業部門では、令和4年4月に竣工した新組立工場の能力を活用して、既存の大手取引先からの引き合いへの対応力を強化すると共に、新規顧客の獲得をはかってまいります。食品機器事業部門では、自動化・省力化、品質(味、温度等)の均一化等のニーズを求められる、大手外食チェーン等への対応を強化してまいります。ニュー・インダストリーセグメントは、子会社株式会社ROSECCとの開発担当者の定期的な意見交換を通して、双方の技術力・提案力・生産力の向上をはかり、シナジー効果による業績拡大を目指してまいります。

 

(2)事業展開構想(=「2.4次産業」(※)への展開)

 創業以来のプロフェッショナルセグメントが、長年にわたって顧客・キャッシュ・技術・ノウハウを蓄積してきたいわば「畑」とすると、コンシューマセグメント、インダストリーセグメント、さらにM&Aで加わったニュー・インダストリーセグメントは、その畑から育ったいわば果実であります。

 今後とも技術力・商品力を武器として、それらが創り出す新商品が生み出す新たな顧客と市場、顧客同士のネットワークが、さらに新たな商品とサービスを生み出すという、文字通りの好循環により事業の拡大をはかってまいります。

 (※)「2.4次産業」とは、「製造業(2次産業)にはサービス産業的要素が加わり、サービス産業(3次産業)には製造業的要素が加わるビジネスモデルの転換が加速するが、それぞれの基本的性格の転換までは行かず、製造業は2→2.4で留まり、サービス産業は3→2.6で留まる」という一橋大学名誉教授伊丹敬之氏の言説

① プロフェッショナルセグメント(インテリア事業部門、畳事業部門)

 新築住宅等の住宅関連市場を主たるマーケットとするインテリア事業部門、畳事業部門は、長年の事業推進により各々の業界でNO.1シェアと考えております。ともに成熟した市場を対象としております。

 インテリア事業部門におきましては、ホームセンター・建機レンタル・防水等の近接市場への販売推進や、ラミネートマシンをはじめとするプリンティングの前後工程の自動化機器等の新商品開発に加え、令和3年10月には当社で初めてサブスクリプション方式を活用したクラウド型業務管理ソフト「Goolip」を発売しました。同ソフトは、従前は開拓できていなかった建設業界からの引き合いや、業務用システムを取扱う大手企業からも注目されており、今後の事業分野の拡大につながるものと期待しております。また営業推進施策においては、新型コロナ禍に対応した「新しい営業方式」の継続や復活し始めたリアル展示会での推進等により、一層営業力を強化してまいります。

 

 畳事業部門におきましても、新型コロナ禍に対応してリアル開催していた畳店経営セミナーをリモート開催に切り替えたことで参加者が大幅に増加するなど、「新しい営業方式」が効果を発揮しました。そうしたことから、「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」(中小企業庁)及び「事業再構築補助金」(中小企業庁)における採択案件の過半数を当社関連案件が占め、他社機器から当社機器に乗り換える畳店も顕著に増加しました。

 今後、畳業界とインテリア内装業界、展示装飾業界とインテリア内装業界などの融合が加速し、業界の構造変化が予想されます。流通・小売・工事の各業者に対して、そうした環境の下での生き残り・発展のための戦略や商品を、タイムリーに提案してまいります。

    ② コンシューマセグメント(コンシューマ事業部門・ソーラー・エネルギー事業部門)

コンシューマセグメントにおいては、当社のコア技術やプロフェッショナルセグメントのお取引先を活かして新築住宅関連市場から離れた事業範囲の拡大を目指しております。新型コロナ禍の影響が続いておりますが、感染対策も兼ねる防災商品や、葬祭畳や介護用畳等の特殊機能畳、さらには畳の持つ機能を活かしながら開発したフィットネス用防音・防振床材等、当社オリジナル商品の販売を推進してまいります。また、ネットビジネスにおきましては、各地のJA・ホームセンター等を窓口とした畳替え仲介事業等において、上場企業としての信用力を活かした営業施策を展開してまいります。ソーラー・エネルギー事業部門におきましては、SDGsへの対応でニーズが高まっている企業向けソーラー発電システムや、蓄電池等周辺機器の販売に注力してまいります。

    ③ インダストリーセグメント(産業機器事業部門、食品機器事業部門)

二次電池製造装置等の産業用製造装置を中心とする産業機器事業部門、大手飲食チェーン向けマルチディスペンサーを中心とする食品機器事業部門の事業を推進しております。

産業機器事業部門は、神岡工場内に令和4年4月に竣工した新工場棟を活用して、従来組立スペースの不足から見送った大型案件の受注を推進する方針であります。また、当社の持つコア技術に加え、令和2年10月に子会社とした株式会社ROSECCの持つ、ロボット技術・ウォータージェット技術とのシナジー効果によって、受注分野の拡大を更に推進してまいります。

また、自動化・省力化設備として外食業界で高く注目されているマルチディスペンサーにつきましては、大手フードサービスチェーンの需要が復活してまいりましたので、人手不足への対応や衛生的な非接触操作等新型コロナ禍後も変わらないニーズに積極的に対応してまいります。

④ ニュー・インダストリーセグメント

 令和2年10月1日に子会社化した株式会社ROSECCを当セグメントに位置づけております。同社は、自動車業界を中心に、ウォータージェット技術、ロボット技術を活かした各種の自動化システムを企画・開発・販売するファブレス企業であります。当社産業機器事業部門との人的交流や技術面の交流を一層進め、シナジー効果の発揮に努めてまいります。

 

  (3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループでは、収益性の指標として売上高経常利益率を、安定性の指標として自己資本比率を、効率性の指標として総資本回転率を重要な経営指標と位置づけており、バランスの取れた企業価値の拡大を目指してまいります。当連結会計年度は神岡工場生産本部棟・新組立棟の竣工等、積極的な成長投資を実施したことから、売上高経常利益率は2.0%、自己資本比率は27.2%、総資本回転率は0.9となりました。

 

(4)経営環境と優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループでは、以下の項目を特に認識すべき課題として捉えております。

① 仕入れ価格の高騰及び調達納期の長期化

 原油価格の上昇や急激な円安進行により、原材料や商品の仕入れ価格が高騰したことに加え、電気・電子関連部品を中心に仕入れ納期の大幅な遅延が続いております。この状況に対処すべく令和4年10月発刊の新総合カタログでの価格改定をはじめ、各種製商品の販売価格を適正水準に見直しておりますが、仕入れ価格が一段と上昇した場合は、更なる対応を検討する方針であります。また、原材料調達の納期遅延につきましても、在庫積み増し等の対策を講じておりますが、使用部品の変更等状況に応じた抜本的な対策も検討しております。

② 新型コロナウイルス感染症への対応

 新型コロナウイルス感染症の拡大で生じた大きな変化には「元の状態に戻る変化」と「決して元には戻らない変化」の二種類の変化があると考えられ、とりわけ後者の「決して元には戻らない変化」に取り残されることのないように、新商品、新事業、新制度等の検討を積極的に推進することが重要であると考えております。そうした対応は当社グループのピンチというよりむしろ事業拡大のチャンスになるものと捉えて、積極的に対応してまいる方針であります。

③ コーポレートガバナンス・コードへの対応

 令和4年4月に東京証券取引所スタンダード市場に移行いたしました。同市場の上場企業にはコーポレートガバナンス・コード全項目への適切な対応が求められておりますが、引き続き経過的な対応状況の項目も含め、各項目への対応を一層充実させてまいります。

④ SDGsへの対応

 令和4年4月に竣工した神岡工場新工場棟の建設資金調達にSDGsシンジケーションを活用いたしましたが、その際、当社のSDGsの取り組みについて大手コンサルティング会社から、(事業1)二次電池製造装置の製造・販売による省エネ・畜エネへの貢献、太陽光発電事業を通じた再生可能エネルギーの拡大、(事業2)地域の畳店の事業継承、特殊機能畳の提供を通じた安全で快適な空間づくりへの貢献、の2点についてSDGsの目標に合致しているとの評価を受けたところであります。今後も「経営理念にある『豊かな生活空間の創造』そのものがSDGsの基本理念にかなうものである」との基本認識のもと、各種事業の推進を通じて、SDGsに貢献することとし、令和4年10月に「SDGs対応基本方針」を制定いたしました。

⑤ 開発力の強化

 畳製造装置やインテリア内装施工機器等の従来開発してきた機器の他、当社のコア技術を活かした顧客仕様による工場生産設備等の機器開発において、IoTやロボット技術等の新技術に対応した製品を開発することが求められております。この課題に対処するため、技術者の育成、自由度の高い研究開発体制の構築等の開発環境を整備し、「真似はされても真似するな」の信念に基づいた「オンリーワン製品」の開発を目指してまいります。

⑥ 子会社とのシナジー効果の発揮による事業拡大

 令和2年10月に子会社化した株式会社ROSECCは、ウォータージェット技術、ロボット技術を活かした各種の自動化システムを企画・開発・販売するファブレス企業であります。子会社化後、研究開発部門を中心に、同社との技術面や人材面での交流を進めており、今後、同社とのシナジー効果を発揮した引き合い対応と受注促進に努め、着実な事業拡大に結びつけてまいる方針であります。

⑦ マーケティング力の向上

 各セグメントにおいて、技術力と商品力を活かしつつ新商品と新市場を拡大していくためには、顧客ニーズを的確に捉え迅速に対応するマーケティング力の向上と、上場企業としての知名度を活かした新規購買先の開拓が課題となってまいります。この課題に対処するため、営業部門での幅広い情報収集とともに、マーケティング担当部署、購買担当部署、担当人員の充実をはかってまいります。

⑧ 生産体制の強化

 特に産業機器事業の拡大を目的として、令和4年4月に神岡工場の新組立棟を竣工させ、生産能力を強化したところであります。今後は既存の建物・設備の刷新を進めて、一層の労働生産性の向上と労働環境の改善等をはかるとともに、新卒社員の育成や外注の一層の活用によって、人的対応についても強化をはかってまいります。

⑨ 原価管理の充実

 インテリア内装施工機器・工具・コンピュータ式畳製造システム、特殊機能畳、顧客仕様の生産設備やディスペンサー等の厨房機器等の多様な製品を、見込生産又は受注生産により、ロット又は単品で生産しており、その製造工程に応じた適切な原価管理が必要であります。この課題に対処するため、それぞれの製品特性を踏まえた標準原価を設定し、毎月定期的に原価検討会議を開催して改善策を継続的に検討することにより、原価管理の充実に努めてまいります。

⑩ 経営体制の充実

 取締役会においては、中途採用者の取締役への登用や複数の独立社外取締役の選任等により人材の多様化を進め、幅広い観点から充実した審議が可能となる体制整備をはかっております。今般も昨年同様に取締役の多様性マトリックスを作成いたしております。また、令和元年10月には執行役員制度を導入し、事業推進及び社内連携体制の強化とともに、経営層の人材育成に努めております。

⑪ コンプライアンスの徹底、内部監査、監査等委員会監査、ISOの充実

 企業行動規範や内部統制システム基本方針を定めて、コンプライアンスの重要性を周知徹底するとともに、内部監査室による内部監査の実施と、常勤監査等委員の選定による監査等委員会監査の充実により、経営方針、経営計画の実現のための円滑な業務運営を徹底しております。また、ISO9001とISO14001のマネジメントシステムに基づき、メーカーの原点である品質向上と環境対応の向上に努めております。

⑫ 人材育成

 社員一人ひとりの能力向上を通じた組織力の強化で、従来の市場でのシェア拡大とともに新市場を開発し、売上、利益の拡大をはかってまいる方針であります。その課題に対処するため令和4年10月に人事部を新たに設置いたしました。今後、経営戦略と連動した人事戦略の構築等、人材の育成と更なる活力向上をはかってまいります。

 

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