課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)経営の基本方針

 当グループは、「優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する」を企業理念として、顧客に対し、より高い価値をもたらす競争力のある製品・サービスを提供することで、一層の発展を遂げることをめざしています。当グループでは、グループ内の多様な経営資源を最大限に活用するとともに、事業の見直しや再編を図ることで、競争力を強化し、グローバル市場での成長を実現し、顧客、株主、従業員を含むステークホルダーの期待に応えることにより、株主価値の向上を図っていくことを基本方針としています。

 

(2)経営環境及び対処すべき課題

①日立グループの経営環境及び対処すべき課題

 現在の世界は、将来の予測が立てにくい時代です。気候変動や資源不足、高齢化による人口構造の変化、都市化の問題など様々な変化が生じており、さらに、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の流行やウクライナ紛争は、世界規模で社会、経済などに劇的な変化をもたらし、世界各国の経済が深刻な悪影響を受けています。一方で、このような変化により生じた社会課題を解決するためのイノベーションが世界中で起きています。

 かかる経営環境において、当グループは、2022年4月に新たに策定した「2024中期経営計画」の下、プラネタリーバンダリー(地球の限界)を超えないように地球環境を守りつつ、社会の一人一人が快適で活躍できるウェルビーイング(人々の幸せ)が保たれた、サステナブルな社会の実現に貢献していきます。

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 具体的には、以下の施策に注力していきます。

 i) グローバルな成長に向けた取り組み

 「デジタル」「グリーン」「イノベーション」の3つを成長のドライバーとして、グローバルな成長をめざします。それぞれの戦略については、以下の通りです。

デジタル

 顧客の経営課題を理解した上で、その解決方法を設計・実装し、運用・保守するとともに次の課題解決に取り組むというお客さまとの価値協創のサイクルにより、お客さまの事業価値の向上に貢献していきます。

 このようなLumada事業のサイクルを、デジタル技術を活用して回し、サイクル全体で収益を拡大することで、社会イノベーション事業の高収益化を図り、グローバルに成長を実現していきます。

グリーン

 エネルギー転換、電動化、省エネ、自動化で世界のGXをリードし、サステナブルな社会の実現に貢献します。2024年度に年間約1億トンのCO2排出削減貢献量を実現すべく、グリーン分野の投資を積極的に行うとともに、バリューチェーン全体でのカーボンニュートラルの2050年までの実現を掲げる「日立環境イノベーション2050」の達成に向け、脱炭素化を推進していきます。その過程で得られたノウハウも活用し、各事業領域・地域に合わせた環境価値を提供することで、サステナブルな社会と日立の成長を図ります。

 

イノベーション

 2050年の世界の姿を見据えて日立が取り組むべき研究開発分野を特定し、社会課題の解決に貢献する革新的な技術・製品の創生を図るとともに、有望なスタートアップ企業や官学との連携を更に加速することで、イノベーションを加速していきます。

 

 また、経営の効率化とスピードアップのため、事業特性の近い事業をまとめ、「グリーンエナジー&モビリティ」「デジタルシステム&サービス」「コネクティブインダストリーズ」の3つのセクターへと組織をシンプル化しました。これらにオートモティブシステム事業(日立Astemo)を加えた事業体制で、お客さまに価値を提供していきます。各事業における事業戦略は、「②注力分野における経営環境及び対処すべき課題」を参照ください。

 

ii) サステナブルな経営の深化

 重要な事業リスクに関する情報を集約し、リスクに先行して対応するグローバルなリスクマネジメント体制を通じてリスク発現による影響を最小化していきます。また、デジタル人財の獲得・育成や従業員のエンゲージメント強化、組織を超えた協力を支えるダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンの向上に努めます。こうした取り組みを通じ、持続可能な成長のためのサステナブルな経営を深化します。

 

 これらの施策によって、キャッシュ創出力を高め、さらなる成長のための投資も行いつつ、株主の皆さまへの還元拡大も実現していきます。

 日立グループを取り巻く経営環境の変化は目まぐるしく、世界経済の先行きは依然として不透明ですが、新しい中期経営計画の下、サステナブルな社会の実現に努めてまいります。

 

②注力分野における経営環境及び対処すべき課題

 注力分野であるデジタルシステム&サービス、グリーンエナジー&モビリティ及びコネクティブインダストリーズの3セクター並びにオートモティブシステムにおける経営環境及び対処すべき課題は、以下のとおりです。

 

デジタルシステム&サービス

 不確実な社会・経済情勢においても、AI、IoT等のデジタル技術で企業経営やビジネスモデルなどの変革を図るデジタルトランスフォーメーション(DX)及び環境問題やSDGsへの取り組みは加速し、グローバルで大きく市場が拡大しています。

 デジタルシステム&サービスセクターでは、そのようなグローバルDX市場において、2021年7月に買収を完了したGlobalLogicのデジタルエンジニアリング力を活用し、日立のOT×IT×プロダクトを組み合わせて価値を創造し、お客さまや社会の課題解決を加速するとともに、日立グループ他セクターのLumada事業成長を牽引していきます。また、お客さまとの価値協創の深化、実績あるソリューションの横展開、お客さまやパートナーとのエコシステム構築の3つのアプローチでLumada事業のスケールを加速させます。

 デジタルシステム&サービスセクターは、これらの取り組みを支えるデジタル人財の育成・拡充など経営基盤の強化にも取り組みながら、「社会インフラDXのグローバルリーダー」をめざし、社会や国内外のお客さまの課題解決パートナーとして継続的に価値を提供し、Lumada事業のサステナブルな成長を実現します。

 

グリーンエナジー&モビリティ

 人口増加や経済成長に加え、AIやビッグデータの利活用などによるデータセンターの規模拡大や脱炭素化に向けた産業の電動化、EV(Electric Vehicle)導入の拡大などの社会イノベーションを背景に、世界のエネルギー需要は拡大し続けています。また、気候変動への対応を背景に、CO2排出量の削減や脱炭素化へ向けた動きが世界的に加速し、再生可能エネルギーの普及の加速や脱炭素モビリティとしての鉄道への期待が高まっています。また、COVID-19の拡大を経て、経済の低迷・設備投資の減退による産業構造の変化(電動化・デジタル化)や、グリーン政策と連動した経済回復政策の推進、SDGs経営への変革の動きが加速しています。

 グリーンエナジー&モビリティセクターでは、世界トップの製品とインテグレーション力でサステナブルな社会インフラの実現に貢献し、地球環境に優しいグリーンなエネルギーとモビリティで世界中の人々の幸せを支えていきます。具体的には、パワーグリッド、再生可能エネルギーシステム、原子力発電システム、鉄道システムなどにおいて、「OT×IT×プロダクト」の強みを生かした製品やサービス、ソリューションを提供していきます。エネルギー分野では、日立エナジー(旧日立ABBパワーグリッド)の持つパワーグリッド技術とLumadaを活用したデジタル技術との融合を通じた新たなソリューションの提供やクリーンエネルギー事業の推進により、脱炭素社会の実現に貢献するサービス・ソリューションの提供を拡大していきます。鉄道システム分野では、交通ネットワークをデジタルでつなぎ、データを活用した鉄道運行サービス等の展開を加速させていきます。

 これらの取り組みを通じ、グリーンエナジー&モビリティセクターは、2024中期経営計画の3つの成長の柱であるグリーン価値の創出の中核をなす事業として、脱炭素社会の実現やエネルギーの安定供給、安全・安心・快適な鉄道システムの提供など、QoLの向上に貢献していきます。

 

コネクティブインダストリーズ

 COVID-19インパクト、自然災害や地政学リスクの増加など社会環境の不確実性が急増していることに加え、デジタル技術の急速な進展に伴い、人々の生活様式や企業活動は大きく変容し、新たなDXへのニーズがこれまで以上に高まっています。こうした中、組織や企業間、さらには分野を越えたトータルな「際」の課題解決が求められています。

 コネクティブインダストリーズセクターでは、産業機器や昇降機、計測・分析装置、医療機器、家電などの競争力の高いプロダクトを集結させ、それらをデジタルでつなぎ、ソリューションとして提供し、サステナブルな価値を創出していきます。

 具体的には、Lumadaを活用し、リアル空間とサイバー空間をデジタルでつなぐことで、経営から現場、サプライチェーン、異分野の間に存在する「際」の課題を解決し、全体最適化を実現するトータルシームレスソリューションをさらに進化・拡大しています。また、コネクテッドプロダクトの拡大・機能強化により、データを活用した保守や予防保全などのサービスを継続的・循環的に提供していくリカーリングビジネスを強化します。

さらに、グローバル成長に向けて、特に注力地域である北米では、買収したJR AutomationによるロボティクスSIとデジタルの融合を強化するとともに、買収したSullairによる空気圧縮機や、半導体製造・計測装置、粒子線治療システムなどのプロダクト事業のコネクテッド化により、現地でのトータルシームレスソリューションを立ち上げ、さらに事業を拡大していきます。

 コネクティブインダストリーズセクターでは、「つないでいく。データを、価値を、産業を、そして社会を。」をパーパスとして定め、お客さまとの協創を通じて「サステナブル バリュークリエーター」をめざしていきます。

 

オートモティブシステム

 日立Astemo㈱及びそのグループ会社で構成されるオートモティブシステム事業が手掛ける自動車・モーターサイクル業界では、環境負荷の低減や快適性のさらなる向上、安全性向上による交通事故の低減等の社会ニーズの高まりを背景に、100年に一度と言われる大変革時代を迎えており、CASE(「C: Connected(つながる)」「A: Autonomous(自動運転)」「S: Shared(共有)」「E: Electric(電動化)」)の各分野で、競争がさらに激化しています。

 こうした中で、オートモティブシステム事業では、パワートレイン&セーフティシステム事業をはじめ、シャシー事業、モーターサイクル事業、ソフトウェア事業、アフターマーケット事業の5つの事業ポートフォリオを軸に、お客さまのニーズにお応えし、世界をリードする先進的なモビリティソリューションの提供を通じて、持続可能な社会とQoLの向上に貢献していきます。

 具体的には、「グリーン」、「デジタル」、「イノベーション」の社会課題に対する解決手段の提供において、排出ガスを低減する高効率な内燃機関システムと電動システムでより良い地球環境に貢献し、自動運転や先進運転支援システム、先進シャシーシステムで安全性・快適性を向上させていきます。また、Lumadaを活用することで、高度化するお客さまのニーズに応えるコネクテッドソリューションを提供することはもちろん、将来、クルマの機能をソフトウェアが担うソフトウェア・ディファインド・ビークル化に対応していくため、ソフトウェアの開発力も強化していきます。

 これらの取り組みとともに、モビリティ業界のグローバルメガサプライヤーとして、経営基盤と企業体質をより一層強化し、更なる収益拡大をめざしていきます。

 

(3)気候変動による財務関連情報開示

 日立は、2018年6月、金融安定理事会(FSB)「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に賛同を表明し、TCFDの提言に沿って気候変動関連の財務関連の重要情報を開示しています。

 なお、本項目は抜粋のため、詳細は日立サステナビリティレポートをご参照ください。

 

①ガバナンス

 日立は、気候変動を含む環境課題への対応を重要な経営課題の一つと認識しています。

 取締役会では経営戦略にかかわる重要事項として、気候変動対策も含む「サステナビリティ戦略」についての審議を行っています。CO2排出量削減目標を含む環境長期目標「日立環境イノベーション2050」は、策定及び改訂の際にも、取締役会への報告を経て策定、公表されています。

 また、年1回、社外取締役によって構成される監査委員会が、サステナビリティ関連業務についての業務監査を実施し、気候変動に関する重要事項についても担当執行役から報告を行っています。

 

②戦略

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 日立は、2016年度に「環境ビジョン」を策定し、このビジョンのもと、IPCC 第5次評価報告書の「RCP2.6シナリオ(注)」「RCP8.5シナリオ(注)」などを踏まえて、世界全体で求められるCO2削減量を参考に、グローバル企業に求められる脱炭素社会実現への貢献を果たすため、環境長期目標「日立環境イノベーション2050」を策定しました。さらに、IPCC「1.5℃特別報告書」を踏まえて気温上昇を1.5℃以内に抑えるため、2020年度に、日立の事業所(ファクトリー・オフィス)において2030年度までにカーボンニュートラル達成、2021年度には、バリューチェーンにおいて2050年度までにカーボンニュートラル達成、という目標に改訂しました。グローバルでの脱炭素社会の実現に向けて、より高い目標を表明し、脱炭素社会の実現に貢献していきます。

(注)RCP2.6シナリオ:産業革命前に比べて21世紀末に世界平均気温の上昇幅が2℃未満に抑えられるシナリオ

   RCP8.5シナリオ:産業革命前と比べて4℃前後上昇するシナリオ

 

気候変動関連のリスク(日立グループ)

 当グループ全体の、①1.5℃シナリオにおけるリスクと、②4℃シナリオにおけるリスクは以下のとおりです。日立の業態では、これらの気候変動に関するリスクは、対策が可能なものであることが分かります。

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気候変動関連の機会(日立グループ)

 環境長期目標や「2024中期経営計画」に掲げたCO2排出量の削減目標を達成するには、事業所の脱炭素化はもちろん、バリューチェーン全体の排出の多くを占める、販売された製品・サービスの使用に伴うCO2排出の削減が重要です。使用時にCO2を排出しない、またはなるべく排出しない製品・サービスの開発・提供は、お客さまニーズへの対応であり、社会が求めるCO2排出量削減への貢献です。これは、日立の経営戦略として推し進めている「社会イノベーション事業」の大きな柱であり、短・中・長期にわたる大きな事業機会になります。

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③リスク管理

 日立は、気候変動関連リスクについて、3年ごとに策定する「環境行動計画」に基づき、環境に関するリスクと機会の影響評価の中で、BU及びグループ会社ごとに、評価・査定しています。評価結果は、当社サステナビリティ推進本部にて集約し、サステナビリティ推進委員会で重要性を確認します。日立全体として特に重要と認識されたリスクと機会がある場合には、経営会議で審議・決定され、必要に応じて取締役会で審議されます。

 

④指標と目標

 日立は、中・長期の指標と目標は、環境長期目標「日立環境イノベーション2050」で定めており、さらに、短期の指標と目標を、「環境行動計画」で詳細に定めて管理しています。

 気候変動の緩和と適応に関する指標は、CO2排出量総量や、CO2排出量原単位削減率を採用しています。お客さまや社会に対し、よりCO2を排出しない製品・サービスを提供する指標を設定し、その推進に重点を置いています。併せて、自社の事業所で発生するCO2排出量については、CO2削減に寄与する設備投資にインセンティブを与える「日立インターナルカーボンプライシング(HICP)」制度を活用しながら、削減を進めていきます。

 

(4)中期経営計画における経営指標

 2024中期経営計画においては、以下の指標を経営上の業績目標としています。

 

2024年度目標

選定した理由

売上収益年成長率(2021年度-2024年度 CAGR)(注)1、2

5-7%

成長性を測る指標として選定

Adjusted EBITA率(注)3

12%

収益性を測る指標として選定

EPS成長率(2021年度-2024年度 CAGR)(注)1、4

10-14%

収益性及び株主価値を測る指標として選定

コア・フリー・キャッシュ・フロー

(3年間累計)(注)5

1.4兆円

キャッシュ創出力を測る指標として選定

投下資本利益率(ROIC)(注)6

10%

投資効率を測る指標として選定

(注)1.CAGR(Compound Average Growth Rate)は、年平均成長率です。

2.上場子会社を除いて算出しています。

3.Adjusted EBITAは、「Adjusted EBITA=調整後営業利益-買収に伴う無形資産等の償却費+持分法損益」により計算しています。Adjusted EBITA率は、Adjusted EBITAを売上収益の額で除して算出した指標です。

4.EPS(Earnings Per Share)は、一株当たり当期利益です。

5.コア・フリー・キャッシュ・フローは、フリー・キャッシュ・フローから、M&Aや資産売却他に係るキャッシュ・フローを除いた経常的なキャッシュ・フローです。

6.ROIC(Return on invested capital)は、「ROIC=(税引後の調整後営業利益+持分法損益)÷投下資本×100」により算出しています。なお、「税引後の調整後営業利益=調整後営業利益×(1-税金負担率)」、「投下資本=有利子負債+資本の部合計」です。

 

 また、上記の経営目標の他、お客さまや社会への価値提供と人的資本の充実に向け、以下の項目を中期経営計画の重点項目として取り組んでいきます。

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