(1) 会社の経営の基本方針
当社グループの企業理念は、「より豊かな未来をひらく」ことを企業使命とし、「お客様の安心と喜びのために」を提供価値としております。当社グループは、より豊かで住みよい未来社会の実現に貢献するため、新しい技術と価値の創造にチャレンジし続けるとともに、お客様の安心と喜びのために、環境への配慮と丁寧なサポートを徹底し、品質の高い製品・サービスを通じてお客様の課題解決や夢の実現をお手伝いします。
(2) 会社の対処すべき課題
①明電グループのありたい姿・ビジョン
当社グループは、2050年の世界観を見据えたうえで、2030年のありたい姿・ビジョンを策定しております。事業環境変化の速さ・激しさが増す中、当社グループが持続的に成長していくためには、メーカという枠組みを超えて、社会が抱える課題を先回りして解決する「社会づくりに挑むソリューション・デザインができる企業」になる必要があります。こうした背景を踏まえ、ありたい姿・ビジョンを「地球・社会・人に対する誠実さと共創力で新しい社会づくりに挑む」、当社グループが果たす具体的な役割として、人々の幸せと持続可能な地球環境を実現する「サステナビリティ・パートナー」と設定しております。
当社グループの強みが活きる事業領域として、「リニューアブルエナジー」「サステナブルインフラ」「グリーンモビリティ」「スマートインダストリー」があります。創業以来120年以上培ってきた電気に関する知見と、社会の基盤を支えてきた様々な運用ノウハウを大いに発揮できる領域です。これらの領域で「カーボンニュートラル」「ウェルビーイング」といった提供価値を軸に、事業の拡大・事業基盤の変革を通じて、社会に貢献してまいります。
②中期経営計画2024
ありたい姿・ビジョンの達成に向け、2021~2024年度の4年間を対象とする中期経営計画2024を展開しております。中期経営計画2024は、ありたい姿・ビジョンからバックキャストし、「HOP」の「Ⅴ120」、「Powerful STEP」の「中期経営計画2020」の成果を元に、「質の高い成長」を実現する「JUMP」フェーズの基本方針と戦略です。初年度である2021年度は、アフターコロナを見据えて戦略を詰める期間とし、2022年度から2024年度は具体的な戦略を実行するフェーズと位置づけております。
当社グループが対処すべき課題として、①各事業の収益力向上・状況に合わせたビジネスモデルの見直し・競争力強化、②世の中でより一層重視されている環境・社会への対応、③新しい社会づくりに挑むため、社会変化に合わせたビジネスモデル変革のためのイノベーション活動の推進・事業ポートフォリオの在り方の見直し、が挙げられます。こうした状況を踏まえ、中期経営計画2024では、以下の3つの基本方針を掲げ、戦略実行・施策展開を進めております。
ⅰ基本方針1.質の高い成長
■財務目標
中期経営計画2024では、目標の実現に向けて、以下の3つのテーマを掲げました。このテーマに基づき、アフターコロナを見据えたうえでサステナビリティをエンジンに、投資回収、マネタイズ、資本効率性を意識した戦略を立案し、売上高成長、収益性・効率性向上を目指しております。
①成長事業の飛躍
EV事業や再エネ関連事業等、将来のコアとなる事業の売上・収益力の向上
②収益基盤の競争力強化
ソリューション・デザインによる価値提供などを通じたインフラ事業の競争力強化
③海外事業の収益力向上
インド及びベトナム子会社、米国子会社に関する成長投資成果の早期創出と安定的な成長の実現
●財務目標達成に向けたイメージ図
■事業の方向性
①電力インフラグループ
国内市場においては、発変電設備の新規案件が少なく、市場の拡大が見込めない中で、再エネ関連事業やスマートグリッド、分散電源といった新たな取組みを通じて収益を確保していくこと、そして成長が見込める海外市場においては、グローバルメジャーや現地メーカとの激しい競争に打ち勝ち、収益を上げていくことが課題です。特にインド、ベトナム、アメリカでのビジネスを早期に軌道に乗せ、新たな収益基盤に進化させることが、中期経営計画2024期間中の最大の経営課題の1つと考えております。
②社会システムグループ
国内における人口減少や地方自治体の財政悪化、技術者の高齢化は、本事業グループにとって非常に大きな影響を与える要因であり、海外事業においては、大型化・複雑化するEPCプロジェクトのマネジメント強化が課題となっております。また、急速に進展するデジタル化への対応を進めることも重要な経営課題と認識しております。
③産業電子モビリティグループ
本事業グループにおいては、世界的な電動化・デジタル化の流れは大きな追い風になる一方、モビリティT&Sの内燃機関向け事業は厳しい状況となっており、自社技術・製品の差別化と業界でのポジション確保が重要です。また、景気変動の影響を大きく受けるため、先行きの不透明な昨今においては、急激な変化に対応していくことが本事業グループの課題と認識しております。
④フィールドエンジニアリンググループ
事業環境としては、昨今の自然災害の頻発に伴うBCP・防災意識の向上や設備の延命化ニーズの拡大、お客様における保守技術要員不足を背景に、保守サービスに対する需要がある一方で、国内人口の減少を背景に、社会インフラ市場は徐々に縮小が予想されます。このような環境の中で、メンテナンスストックを維持していくとともに、高齢化する技術員を確保することが大きな課題です。
ⅱ基本方針2.サステナビリティ経営(ESG経営)の推進
当社グループのありたい姿・ビジョンの実現に向けて、「地球環境」「社会・人」「企業」の3つの視点からサステナビリティを捉え、中期経営計画2024で達成すべき施策の具体化及び目標指標(KPI)の設定・施策の展開を進めております。
■地球環境のサステナビリティ
当社グループでは気候変動問題を企業として取り組むべき重要な課題と認識し、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に沿ったリスク・機会の検討・戦略への織込みを実施しております。TCFD提言に基づき、「ガバナンス体制」「リスク管理」「戦略」「目標指標」の4項目に沿って、体制・内容の一層の強化及び積極的な情報開示を進めてまいります。
<2021年度からの取組み>
2021年度は、社内環境負荷低減の観点から、生産拠点における再エネ調達を進めております。太田事業所では、群馬県内の水力発電所を由来とするCO2フリー電力調達を開始し、順次再エネへの切り替えを進めております。また、社内設備の環境負荷低減を目指し、環境投資を促進するインターナルカーボンプライシングの導入・運用を開始しております。
■社会・人のサステナビリティ
当社グループでは、新しい社会の姿の1つとして「安心・豊かさ・ワクワクを感じられる社会」「様々なコミュニティや人が共生できる社会」を目指しており、その実現に向け、各種取組みを進めております。
①安心・豊かさ・ワクワクを感じられる社会の実現
品質の高い製品・システム・サービス・保守のシナジーを活かしつつ、地域が直面する課題に対し領域横断で解決策を提示する「ソリューション・デザイン」を通じて、レジリエントでサステナブルな地域の基盤づくりに取り組んでおります。コロナ禍においても、ものづくりのQualityを落とさずに出荷・納入できるよう、リモート技術を活用したラインの構築などの取組みを進めております。また、沼津版スマートシティ「X-Tech NUMAZU」の推進に携わり、再エネの活用や能動的市民の育成を通じた住み続けたいまちづくりに挑んでおります。
②様々なコミュニティや人が共生できる社会の実現
企業価値の向上・事業拡大をしていくうえで最も重要な資産が人財であり、従業員一人ひとりの多様な個性・価値観を尊重し、能力を最大限に発揮できる土壌を作ることが、中期経営計画2024の目標達成には不可欠です。
この考えのもと、当社グループでは、国籍・人種・宗教・性別・年齢・障がいの有無などによる差別は認めず、児童労働や強制労働の一切を排除することを支持しております。また、グループ内のダイバーシティ&インクルージョン促進を進めており、今後は女性活躍推進のロールモデルとなる人財の早期育成、グローバル化促進の礎となる外国籍の役員候補の育成に注力してまいります。
従業員が安全・健康な状態で生き生きと働くことができるよう、働き方改革や労働安全衛生の向上、健康経営の推進にも力を入れております。その結果、前年に引き続き、経済産業省が認定する「健康経営優良法人~ホワイト500~」に認定されております。
■ 企業のサステナビリティ
あらゆる変化に素早く対応し、透明・公正な意思決定を行うこと、そしてステークホルダーの利益を高める経営をすることが、コーポレートガバナンスの本旨だと考えており、意思決定・監督機能の強化、透明性の向上、取締役会の活性・充実化といった観点で、コーポレートガバナンス・コードへの対応強化を引き続き行ってまいります。2021年度は、監査等委員会設置会社移行後のモニタリング型の取締役会を志向する取組みとして、取締役会における重要な業務執行決定の一部を常務会に委任し、「経営の基本方針に関する事項」を中心とした「協議事項」を新設しました。
また、リスクマネジメント・内部統制の取組みも強化しており、改正個人情報保護法への対応強化や、昨今話題となった品質不正に関して、実査と潜在リスクの観点から再点検を改めて実施するなど、変動する重要リスクに応じた柔軟な活動を展開しております。
そして、事業を推進するうえで、様々なステークホルダーとの良好な関係・信頼関係が必要不可欠です。独りよがりでない関係性構築に向け、中期経営計画2024においてステークホルダーロイヤリティを数値化する指標(NPS®(注):ネット・プロモーター・スコア)を導入し、明らかになった課題を迅速に改善させることで、ロイヤリティの向上を目指してまいります。
(注) NPS®は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックスシステムズの登録商標です。
ⅲ基本方針3.両利きの経営の推進
新しい社会づくりに挑むため、社会変化に合わせたビジネスモデル変革のために、持続的にイノベーション創出ができる組織になること、そして事業ポートフォリオの見直しが必要不可欠です。中期経営計画2024ではイノベーションを支える人と組織、両輪の強化を目指し、①イノベーションプロセスの整備、②イノベーション人財の確保・育成、③新たな社会ニーズの探索・共創、の重点実施事項に取組み、成果創出を目指してまいります。
2021年度は、同年に設置された「イノベーション戦略委員会」を中心に、上記重点実施事項の施策検討・展開に取り組んでまいりました。組織・個人から出てきた新規事業テーマの育成・加速をするとともに、社内研修展開やベンチャーキャピタルファンド等と連携した人財育成施策の展開により、イノベーション活動の核となる人財の育成に取り組みました。
事業ポートフォリオの在り方につきましては、社長をリーダーとする役員で構成された検討チームを組成して検討を開始いたします。そこで10年後、20年後の時代の変化を見据えながら、自社のコアコンピタンスをどう進化させていくかを中心に、現状に縛られないフラットな視点で検討を進めてまいります。
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