当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりである。次の記載事項のうち将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。
(1)財政状態の状況の概要及びこれに関する分析・検討内容
当連結会計年度における当社グループの資産は、「営業債権及びその他の債権」及び「棚卸資産」の増加等により、前連結会計年度末から3,056億13百万円増加の5兆1,163億40百万円となった。
負債は、「社債、借入金及びその他の金融負債」が減少した一方で、「契約負債」及び「営業債務及びその他の債務」の増加等により、前連結会計年度末から824億73百万円増加の3兆4,538億10百万円となった。
資本は、親会社の所有者に帰属する持分が増加したことなどにより、前連結会計年度末から2,231億39百万円増加の1兆6,625億29百万円となった。
以上により、当連結会計年度末の親会社所有者帰属持分比率は30.8%(前連結会計年度末の28.4%から+2.4ポイント)となった。
(2)経営成績の状況の概要及びこれに関する分析・検討内容
当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症への対策と経済社会活動の正常化が進んだことにより、半導体不足の影響や物価の上昇圧力が強まる中でも成長を続けた。一方、年度末のロシアによるウクライナ侵攻により、先行きは不透明な状況となった。また、日本経済は、複数回の新型コロナウイルス感染症に関する緊急事態宣言等によって一進一退となりつつ、総じて緩やかに持ち直したが、ウクライナ情勢の緊迫化、資源価格の高騰、円安の加速等により下振れ懸念が強まった。
このような状況の下、当連結会計年度における当社グループの受注高は、中量産品が新型コロナウイルス感染症の影響から回復した物流・冷熱・ドライブシステムセグメントを含め、全てのセグメントで増加し、前連結会計年度を7,313億38百万円(+21.9%)上回る4兆677億30百万円となった。
売上収益は、航空・防衛・宇宙セグメントが減少したものの、物流・冷熱・ドライブシステムセグメント、エナジーセグメント及びプラント・インフラセグメントが増加したことにより、前連結会計年度を1,603億36百万円(+4.3%)上回る3兆8,602億83百万円となった。
事業利益は、エナジーセグメントが減少したものの、航空・防衛・宇宙セグメント、プラント・インフラセグメント及び物流・冷熱・ドライブシステムセグメントが改善・増加したことにより、前連結会計年度を1,061億58百万円(+196.3%)上回る1,602億40百万円となり、税引前利益も前連結会計年度を1,243億28百万円(+251.9%)上回る1,736億84百万円となった。
また、親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度を729億1百万円(+179.4%)上回る1,135億41百万円となった。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりである。
ア.エナジー
世界的に脱炭素化の潮流が加速する中、エナジートランジションの重要な役割を担うGTCCやバイオマス発電設備の新設案件の受注等により、受注高は、前連結会計年度を1,451億44百万円(+11.2%)上回る1兆4,443億58百万円となった。
売上収益は、GTCCや原子力発電システムが増加したことなどにより、前連結会計年度を1,050億83百万円(+6.8%)上回る1兆6,510億86百万円となった。
事業利益は、スチームパワーや航空機用エンジンが増加したものの、洋上風力発電システム事業関連の株式譲渡益の計上があった前連結会計年度を414億30百万円(△32.4%)下回る862億68百万円となった。
イ.プラント・インフラ
世界的な鉄鋼需要増大を背景として受注が拡大した製鉄機械をはじめ、商船やエンジニアリングも市場環境が回復傾向にあり、受注高は、前連結会計年度を3,157億円(+54.9%)上回る8,909億82百万円となった。
売上収益は、製鉄機械や環境設備が増加したことなどにより、前連結会計年度を146億27百万円(+2.3%)上回る6,518億86百万円となった。
事業利益は、一部海外工事の追加費用はあるものの、構造改革効果等によりエンジニアリングや製鉄機械が増加し、前連結会計年度から338億23百万円改善し、236億1百万円となった。
ウ.物流・冷熱・ドライブシステム
新型コロナウイルス感染症の影響から回復した物流機器や冷熱製品が増加したことなどにより、受注高は、前連結会計年度を1,242億10百万円(+14.3%)上回る9,923億5百万円となった。
売上収益は、物流機器や冷熱製品、エンジンが増加したことなどにより、前連結会計年度を1,262億26百万円(+14.7%)上回る9,865億34百万円となった。
事業利益は、材料費・物流費の高騰や半導体不足に伴う自動車メーカーの生産調整の影響を受けたものの、全体的な増収に伴う利益の増加等により、前連結会計年度を150億68百万円(+96.5%)上回る306億82百万円となった。
エ.航空・防衛・宇宙
防衛航空機や飛しょう体、艦艇等の防衛関連製品が増加したことなどにより、受注高は、前連結会計年度を1,480億5百万円(+23.6%)上回る7,742億48百万円となった。
売上収益は、民間航空機や飛しょう体、宇宙機器が減少したことなどにより、前連結会計年度を968億17百万円 (△13.8%)下回る6,052億92百万円となった。
事業利益は、固定費削減等のコストダウン施策の効果や三菱スペースジェット関連費用が減少したことなどにより、前連結会計年度から1,148億92百万円改善し、200億50百万円となった。
(3)キャッシュ・フローの状況の概要及びこれに関する分析・検討内容
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ688億36百万円増加し、3,142億57百万円となった。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりである。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、2,855億63百万円の資金の増加となり、前連結会計年度に比べ3,805億11百万円増加した。これは、前連結会計年度に大幅に増加した運転資金が減少したことや、「税引前利益」が増加したことなどによるものである。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、163億6百万円の資金の増加となり、前連結会計年度に比べ1,985億55百万円支出が減少した。これは、「事業の取得による支出」が減少したことに加え、「投資(持分法で会計処理される投資を含む)の売却及び償還による収入」が増加したことなどによるものである。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、2,557億74百万円の資金の減少となり、前連結会計年度に比べ4,775億11百万円収入が減少した。これは、「短期借入金の純増減額」及び「長期借入金による収入」の減少等によるものである。
(4)生産、受注及び販売の状況
① 生産の実績
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
|
金額(百万円) |
前連結会計年度比(%) |
|
エナジー |
1,664,693 |
+7.7 |
プラント・インフラ |
628,572 |
+8.6 |
物流・冷熱・ドライブシステム |
1,039,286 |
+22.2 |
航空・防衛・宇宙 |
602,181 |
△13.9 |
全社又は消去 |
13,784 |
― |
合計 |
3,948,517 |
+7.1 |
(注)1.上記金額は、大型製品については契約金額に工事進捗度を乗じた額、その他の製品については完成数量に販売金額を乗じた額を基に算出計上している。
2.セグメント間の取引については、各セグメントの金額から消去している。
3.「全社又は消去」の区分は、報告セグメントに含まれない生産高である。
4.上記金額には、消費税等は含まれていない。
② 受注の実績
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
|||
受注高 (百万円) |
前連結会計年度比 (%) |
受注残高 (百万円) |
前連結会計年度比 (%) |
|
エナジー |
1,444,358 |
+11.2 |
3,114,441 |
△3.5 |
プラント・インフラ |
890,982 |
+54.9 |
1,243,418 |
+25.8 |
物流・冷熱・ドライブシステム |
992,305 |
+14.3 |
43,264 |
+18.3 |
航空・防衛・宇宙 |
774,248 |
+23.6 |
1,087,165 |
+21.8 |
全社又は消去 |
△34,164 |
― |
309 |
― |
合計 |
4,067,730 |
+21.9 |
5,488,599 |
+6.7 |
(注)1.受注高については、「エナジー」、「プラント・インフラ」、「物流・冷熱・ドライブシステム」及び「航空・防衛・宇宙」にはセグメント間の取引を含んでおり、「全社又は消去」でセグメント間の取引を一括して消去している。また、「全社又は消去」の区分は、報告セグメントに含まれない受注高を含んでいる。
2.受注残高については、セグメント間の取引を各セグメントの金額から消去しており、「全社又は消去」の区分は、報告セグメントに含まれない受注残高である。
3.上記金額には、消費税等は含まれていない。
③ 販売の実績
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
|
金額(百万円) |
前連結会計年度比(%) |
|
エナジー |
1,651,086 |
+6.8 |
プラント・インフラ |
651,886 |
+2.3 |
物流・冷熱・ドライブシステム |
986,534 |
+14.7 |
航空・防衛・宇宙 |
605,292 |
△13.8 |
全社又は消去 |
△34,516 |
― |
合計 |
3,860,283 |
+4.3 |
(注)1.「エナジー」、「プラント・インフラ」、「物流・冷熱・ドライブシステム」及び「航空・防衛・宇宙」にはセグメント間の取引を含んでおり、「全社又は消去」でセグメント間の取引を一括して消去している。また、「全社又は消去」の区分は、報告セグメントに含まれない販売金額を含んでいる。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりである。
相手先 |
前連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
||
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
防衛省 |
400,723 |
10.8 |
391,057 |
10.1 |
3.上記金額には、消費税等は含まれていない。
(5)資本の財源及び資金の流動性に係る情報
ア.資金需要の主な内容
当社グループの資金需要は、営業活動については、生産活動に必要な運転資金(材料・外注費及び人件費等)、受注獲得のための引合費用等の販売費、製品競争力強化・ものづくり力強化及び新規事業立上げに資するための研究開発費が主な内容である。投資活動については、事業伸長・生産性向上及び新規事業立上げを目的とした設備投資並びに事業遂行に関連した投資有価証券の取得が主な内容である。
今後、成長分野を中心に必要な設備投資や研究開発投資、投資有価証券の取得等を継続していく予定である。
イ.有利子負債の内訳及び使途
2022年3月31日現在の有利子負債の内訳は下記のとおりである。
(単位:百万円) |
|
合計 |
償還1年以内 |
償還1年超 |
短期借入金 |
67,324 |
67,324 |
― |
長期借入金 |
462,609 |
90,249 |
372,359 |
社債 |
205,000 |
10,000 |
195,000 |
合計 |
734,933 |
167,574 |
567,359 |
当社グループは比較的工期の長い工事案件が多く、生産設備も大型機械設備を多く所有していることもあり、一定水準の安定的な運転資金及び設備資金を確保しておく必要がある。当連結会計年度においては、当社グループは継続的に資金創出に努め、事業拡大局面においても運転資金を抑制しつつ、期限の到来した借入金を返済してきた結果、当連結会計年度末の有利子負債の構成は、償還期限が1年以内のものが1,675億74百万円、償還期限が1年を超えるものが5,673億59百万円となり、合計で7,349億33百万円となった。
これらの有利子負債により調達した資金は、事業活動に必要な運転資金、投資資金に使用しており、具体的には火力発電システムのほか、物流機器・冷熱製品を含む中量産品等の伸長分野及び「2021事業計画」で掲げている成長分野が中心である。
ウ.財務政策
当社グループは、運転資金、投資資金については、まず営業キャッシュ・フローで獲得した資金を投入し、不足分について有利子負債による調達を実施している。
長期借入金、社債等による長期資金の調達については、事業計画に基づく資金需要、金利動向等の調達環境、既存借入金の償還時期等を考慮の上、調達規模、調達手段を適宜判断して実施していくこととしている。
一方で、有利子負債を圧縮するため、キャッシュマネジメントシステムにより当社グループ内での余剰資金の有効活用を図っており、また、営業債権、棚卸資産の圧縮や固定資産の稼働率向上等を通じて資産効率の改善にも取り組んでいる。
自己株式については、事業計画の推進状況、当社の業績見通し、株価動向、財政状況及び金融市場環境等を総合的に勘案して取得を検討していくこととしている。
(6)経営方針・経営戦略及び経営指標等に照らした経営成績等の分析・検討
「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1)経営方針・経営戦略等」に記載のとおり、当社グループは、中期経営計画「2021事業計画」において、「収益力の回復・強化」及び「成長領域の開拓」を優先的に取り組み、長期安定的に企業価値を向上させることを目指して事業を遂行している。
「2021事業計画」においては、2023年度末の目標として、「事業利益率7%」、「ROE12%」及び「有利子負債0.9兆円維持」を設定しているところ、初年度にあたる当連結会計年度における各財務指標の実績は「事業利益率4.2%」、「ROE7.7%」及び「有利子負債7,349億円」となった。初年度経過時点における進捗としては、収益性は概ね想定どおり、財務健全性は想定以上の改善であった。
収益性については、材料費・輸送費の高騰、半導体不足の影響を受けたものの、各種対策と収益力回復に向けた施策の実行により利益が増加し、前連結会計年度に対し事業利益率、ROEとも向上した。
財務健全性については、営業キャッシュ・フローの回復や投資有価証券・不動産の売却による収入等により、前連結会計年度に対し有利子負債が大幅に減少した。
一方で、TOPの実績は、0.8:1:0.3となった。資産効率性の改善に向けて、投資有価証券の売却等の資産圧縮を進めたものの、新型コロナウイルス感染症の影響からの回復による収益獲得機会の増加に伴う売上債権・棚卸資産の増加や、円安影響による外貨建て営業債権及び在外営業活動体の資産の増加により、総資産は前連結会計年度末よりも増加した。これによりTOPは前連結会計年度に比べ概ね横ばいとなった。資産収益性の更なる改善や、時価総額の向上が今後の課題である。
このような評価を踏まえ、2024年度以降の飛躍とTOP達成に向けた基盤づくりに取り組んでいく。
(7)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成されている。この連結財務諸表の作成に当たり、見積りが必要となる事項については、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っている。
詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表」の注記「2.作成の基礎 (5)見積り及び判断の利用」及び「3.重要な会計方針」に記載している。
なお、会計上の見積り等に関する新型コロナウイルス感染症による影響については、「第5 経理の状況 1 連
結財務諸表等 (2)その他 ③新型コロナウイルス感染症拡大の影響」における以下の記載のとおりである。
新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、当社グループの民間機事業や中量産品事業等で需要減少に伴う売上収益の減少、工場の生産調整等が生じている。当連結会計年度においては、資産の評価等に当該影響を織り込み、決算数値等に反映させている。本感染症は経済や企業活動に広範な影響を与える事象であり、また、今後の広がり方や収束時期等を予想することは困難なことから、当社は外部情報等を踏まえて、事業計画への影響の検討等を行い、製品特性・関連する市場環境等に即した仮定のもと、資産の評価等の会計上の見積りを行っている。
この影響がさらに長期化する場合には、新たな生産調整や、顧客への販売の減少が追加的に生じる可能性もあり、翌連結会計年度以降の当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性がある。
なお、新型コロナウイルス感染症の今後の広がり方や収束時期等を含む仮定について、前連結会計年度から重要な変更を行っていない。
また、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (2)その他 ④ウクライナをめぐる国際情勢の影響」のとおり、ウクライナ情勢に起因するロシアへの経済制裁を受け、当社グループが遂行するロシア向け工事で中断等の影響が出ているが、当社は外部情報等を踏まえて、事業計画への影響の検討等を行い、資産の評価等の会計上の見積りを行っている。
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