(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、患者様のQOL向上に資する経営を行うべく、「最先端の優れた医療機器の開発と販売を通じて医療に貢献する」という経営理念のもと、日米共同開発を基軸に、整形外科分野の医療機器の開発・製造・輸入・販売を通じて日本だけでなく世界の医療マーケットに真に価値ある医療機器を提供していくことで、医療に貢献することを経営方針としております。
(2) 目標とする経営指標
連結業績目標
(注)1 親会社株主に帰属する当期純利益
2 対ドル為替ルート:1ドル128円
(3) 経営環境及び対処すべき課題
日本は、2020年12月15日に「全世代型社会保障改革の方針」を閣議決定し、その中で、医療については、少子高齢化が急速に進む中、現役世代の負担上昇を抑えながら、全ての世代の方々が安心できる社会保障制度を構築すべく、「医療提供体制の改革」、「後期高齢者の自己負担割合の在り方」、「大病院への患者集中を防ぎかかりつけ医機能の強化を図るための定額負担の拡大」への取組みを進めるとしております。また、厚生労働省発表による「令和4年度診療報酬改定の基本方針」によると、国民皆保険や優れた保健・医療システムの成果により、世界最高水準の平均寿命を達成し、人生100年時代を迎えようとしている中、人口構成の変化を見ると、2025年にはいわゆる団塊の世代が全て後期高齢者となり、2040年頃にはいわゆる団塊ジュニア世代が65歳以上の高齢者となって高齢者人口がピークを迎えるとともに、既に減少に転じている現役世代(生産年齢人口)は、2025年以降、さらに減少が加速していくと予想されるため、社会の活力を維持・向上していくためには健康寿命の延伸により高齢者をはじめとする意欲のある方々が役割を持ち活躍のできる社会を実現するとともに「全世代型社会保障」を構築していくことが急務の課題であるとしております。整形外科治療領域においては、急速に進む高齢化やQOL(Quality of Life)向上ニーズの高まりにより症例数の増加が予想される一方、国の大幅な税収増が見込めない中、効率的・効果的で質の高い医療提供体制の構築に向けた取組みを進めることによる社会保障関係費の抑制は不可避であり、診療報酬改定による償還価格のマイナス改定など厳しい市場環境が継続するものと想定しております。
米国は、世界最大の人工関節市場であり、人工関節置換術を必要とする65歳以上の高齢者人口が、2030年に7千万人規模になると見込まれております。さらに肥満による変形性関節疾患の患者数も継続的に増加する見込みであることから、人工関節市場は引き続き成長が見込まれます。なお、医療ニーズに関しては、手術ナビゲーションシステムや、ロボティクス手術関連など術中のデジタルソリューションニーズが高まりつつあり新たなビジネスチャンスが生まれつつあります。一方、患者側の治療コスト負担削減ニーズの高まりに伴い、入院ではなく外来で人工関節手術を行うASC(Ambulatory Surgical Center)における人工関節手術が増加傾向にあり、低コストで効率的なインプラント・医療工具の調達ニーズに加え、術後の患者ケアにスマートフォンやスマートウオッチなどITを使った様々なソリューションに対するニーズも拡大傾向にあることから、当社グループに期待される役割も変化していくものと考えております。
また、各市場における新型コロナウイルス感染症の影響については、日本は、行動規制や入院患者数の増減による症例数への影響は一定程度あるものの、かつて手探りであった医療現場でのコロナ対策の知見が高まってきたことから、症例数に与える影響は限定的と考えております。米国では、既存顧客施設での新型コロナウイルス感染者の入院患者数が人工関節手術の症例数に影響を与える状況は継続するものの、ワクチン接種進行による新型コロナウイルス感染症の重症化率低下に伴い入院患者数が減少すると想定されることから、人工関節手術件数への影響は軽微になると考えております。
また、米国における金融引締めに端を発しウクライナ情勢の影響もあり対USドルの円安傾向が続いております。中期経営計画での想定為替レート(108円/USドル)から実勢レートが円安に大きく乖離しており、米国子会社からの製品輸入において為替変動(円安)の影響を受けると考えております。
さて、当社は、2022年3月期(第50期)から2024年3月期(第52期)の3か年を実施期間とする中期経営計画「MODE2023」を策定し、その中期経営方針として「治療成績の向上等、様々な医療現場ニーズへの対応に加え、治療価値向上(安全性・有効性、入院期間短縮による治療収益改善など)に資するサービス(インプラント・医療工具、手術支援システムなど)を、より高い専門性をもってタイムリーに医療現場に提供し患者のQOL向上に貢献する。」を掲げました。また重点施策として「海外ビジネスの拡大」、「開発・調達力の強化」、「人材・組織の専門性強化」、「デジタル化の推進」の4つを実行しております。
日本国内における償還価格引下げの影響や、為替変動(円安)による収益性低下の影響を極小化するために、自社開発新製品導入による米国ビジネスの拡大などにより自社製品の売上高比率を高め、中国において2021年5月に設立した合弁事業会社を活用した医療工具コストの低減を図ります。また、売上原価(製造原価)の更なる低減に向けた製造プロセスの見直しや、コスト競争力のあるベンダーからの調達拡大などによる売上原価低減も目指します。さらに、ITを使った在庫運用状況の可視化や業務プロセス改善による販売費及び一般管理費の効率化を図り収益性の維持・改善に努めて参ります。
(4) 中長期的な会社の経営戦略
① 海外ビジネスの拡大
米国においては、営業担当地区を変更すると同時に地区担当営業人員を増やすことにより販売体制を強化します。製品面では人工関節分野や骨接合材料分野において新製品を継続的に導入することにより二桁成長を目指します。
中国においては、2021年5月に設立した合弁事業会社Changzhou Waston Ortho Medical Appliance Co., Limited (常州華森奥斯欧医療機器有限公司(注))が、米国子会社Ortho Development Corporation(以下「ODEV社」)からの人工膝関節製品の輸入販売を開始し中国市場の開拓を図るとともに、ODEV社製人工関節製品と同等のデザイン・品質を備えた、価格競争力のある中国現地生産インプラント・医療工具の製造、販売開始を目指します。
(注)常州華森医療器械有限公司の社名は中国語簡体字を含んでいるため、日本語常用漢字で代用しております。
② 開発・調達力の強化
医療現場の様々なニーズに対応すべくODEV社との日米共同開発により、適応症例の拡大や、より高い治療効果が期待できるインプラントの開発など、治療価値向上に資する新規性のあるインプラント・医療工具の開発に加え、自社開発が困難と思われる新素材インプラントや手術支援システムなどについては、外部からの調達によりビジネスの拡大を目指して参ります。
③ 人材・組織の専門性強化
戦略実行能力を高めるため、営業だけでなく、非営業においても夫々の分野において専門性を強化して参ります。また、2021年4月に事業開発部を設立したことで新規性のある商品の調達や、治療価値向上に資するデジタル技術を使ったサービスの開発を行って参ります。
④ デジタル化の推進
整形外科分野における術前計画システムや手術支援システムを提供するなどインプラント使用だけでなく高付加価値なデジタルサービスを提供することを目指して参ります。
また、SCM本部など非営業部門を中心にITシステム強化による在庫運用や業務の更なる効率化を推進して参ります。
文中において将来について記載した事項は、当連結会計年度末日現在において当社が判断したものであります。
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