当社においては、泊発電所の停止が長期化しており、主力である電力小売で激しい競争が続いている。また、国際情勢の変化により燃料価格が高騰するなど、経営環境は厳しさを増している。このような状況のもと、当社は、電力販売におけるサービスの充実やアライアンスの拡大による販売活動の強化をはじめとする収入拡大やカイゼン活動・DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進などによる費用低減を通じた経営基盤の強化に取り組んできた。
2021年度の連結経常利益は、発電設備に係る修繕費の減少や好調な卸販売などによる増加はあったが、前年度の寒波の影響や燃料価格の上昇などにより、前連結会計年度に比べ273億20百万円減の138億30百万円となった。
2020年4月、ほくでんグループは「ほくでんグループ経営ビジョン2030」を定め、その達成に向けて取り組みを開始した。
<「ほくでんグループ経営ビジョン2030」における利益・財務・環境目標>
また、2021年4月、脱炭素化に向けた取り組みとして『ほくでんグループ「2050年カーボンニュートラル」を目指して』を公表した。「ほくでんグループ経営ビジョン2030」の取り組みをより一層深化させ、2050年の北海道におけるエネルギー全体のカーボンニュートラルの実現に最大限挑戦していく。
その実現に向けては、再生可能エネルギーの導入拡大や泊発電所の早期再稼働、火力発電所の脱炭素化などに取り組み「発電部門からのCO2排出ゼロ」を目指すとともに、カーボンニュートラルを電力需要拡大の好機と捉え、電化の流れを創出し、グループワイドでの収入拡大につなげていく。
さらに、オール北海道での幅広い連携や協働に努め、脱炭素化と経済の活性化や持続可能な地域づくりを同時に進める「ゼロカーボン北海道」の実現に貢献していく。
[2022年度の取り組み事項]
(1) 経営基盤の強化
① 収入拡大に向けた取り組み
新電力との競争が厳しさを増すなかでも多くのお客さまに「ほくでん」をお選びいただけるよう、電気と都市ガスで多様な料金プランをご用意するとともに、他企業とのアライアンスを積極的に進め、総合エネルギー企業としてお客さまのエネルギーに関するさまざまなご期待に応えていく。
ご家庭向けには、従来からお客さまのニーズやライフスタイルに合わせた多様な料金プラン(エネとくS・M・Lプランなど)をご用意している。足元ではエネルギー価格が高騰している状況であり、お客さまのご負担軽減につながることから、引き続き積極的におすすめしていく。
また、戸建住宅を新築されるお客さまを対象に、初期費用のご負担なしに太陽光発電設備を設置いただけるサービス「ふらっとソーラー」を開始した。太陽光発電と相性の良い「蓄電池」「エコキュート」「EV(電気自動車)充電設備」といった機器利用のオプションを設け、省エネ・クリーン・安心・快適な「スマート電化住宅」をご提案し、電化の拡大を図る。
法人のお客さま向けには、エネルギーの調達から運転・保守、管理までを一括して提供するESP(エネルギーサービスプロバイダ)事業や、100%再生可能エネルギー由来の電力をお届けする「カーボンFプランプレミアム」などの環境対応型料金プランのご提案により、エネルギー利用の効率化やRE100※への対応といった、お客さまのご要望にお応えするトータルソリューションサービスを展開していく。
電力卸分野においては、卸電力市場や相対卸契約の積極的な活用によって販売機会を増やしていく。
また、2022年4月からEVのカーシェアリング実証事業を実施するなど、EVの普及拡大に向けた取り組みを推進していく。
※RE100:企業が事業活動に必要な電力の100%を再生可能エネルギーで賄うことを目指す枠組み。
② 効率化・費用低減に向けた取り組み
2018年にカイゼン活動を導入して以降、ほくでんグループ全体で2,000件以上のプロジェクトを展開している。カイゼン活動による高い効果が期待できる、発電所における大型工事や大量の定型作業などのプロジェクトを確実に推進し、さらなる効率化・費用低減を実現していく。
また、2022年2月、経済産業省が定める認定制度に基づきDX認定※を取得した。デジタル技術を活用した業務の高度化・効率化を図るとともに、カイゼン活動との相乗効果を高め、デジタル化による効果の最大化を目指す。
※DX認定:「デジタルによって自らのビジネスを変革する準備ができている状態(DX-Ready)」であることが確認できた企業に与えられる国の認定。北海道に本社を置く企業として当社が初めて取得。
(2) 再生可能エネルギーの導入拡大・水素社会の構築に向けた取り組み
ほくでんグループは「ほくでんグループ経営ビジョン2030」において、2030年までに30万kW以上の再生可能エネルギー電源を新たに開発することを目標にしている。再生可能エネルギーの開発に関する専任組織を2022年5月に設置し、風力、地熱、バイオマスなどの電源開発に向けた取り組みを加速していく。
2021年10月、道南地域の水力発電所を効率的にリプレースし、その後の発電事業を長期安定的に行うため、三菱商事株式会社とのアライアンス事業を実施することとし、貴重な水資源の有効活用に努めていく。加えて、2022年3月、苫小牧東部地域における木質バイオマス発電事業に参画した。
水素の利活用に向けては、2021年7月、当社の提案により「北海道水素事業プラットフォーム」を設立した。また、2022年3月、水の電気分解による水素製造装置に関する事業が、経済産業省資源エネルギー庁の補助事業として採択された。この装置は、再生可能エネルギー電源の出力変動を吸収する技術として注目されている。当社は、道内外の企業と連携し、水素サプライチェーン構築の早期実現、将来的には北海道が国産クリーン水素活用のパイオニアになることを目指していく。
(3) 泊発電所の早期再稼働と安全性向上
原子力発電は、燃料供給の安定性、長期的な価格安定性を有するとともに、技術的に確立した脱炭素電源としてカーボンニュートラルの実現に向けて貢献する重要な基幹電源である。
2021年7月、泊発電所の新規制基準の適合性審査において、当社が最優先課題と位置づけてきた「発電所敷地内断層の活動性評価」について、原子力規制委員会から「おおむね妥当な検討がなされている」との評価をいただいた。引き続き、その他の主要な審査項目も含めて、総力をあげて取り組み、安全性の確保を大前提とした泊発電所の早期再稼働に向け対応を進めていく。
福島第一原子力発電所のような事故を決して起こさないとの強い決意のもと、地震や津波などの自然現象によって、電源や冷却設備などの原子力発電所の安全を守る機能が失われることのないよう、多重・多様な安全対策を進めていく。また、それでも炉心が損傷するような、設計の想定を超える重大事故は起こりうるとの考え方に立ち、重大事故発生に備えた設備の設置やそれらの設備を用いた継続的な訓練にも取り組んでいる。「世界最高水準の安全性」の実現に向け、自らの活動の評価・改善を重ね、北海道のみなさまから信頼していただける発電所を目指していく。
(4) 電力の安定供給確保に向けた取り組み
S+3E(安全性の確保を大前提に、エネルギーの安定供給、経済効率性、環境適合)の観点からバランスの取れた、競争力のある電源構成の構築に取り組むとともに、2050年のカーボンニュートラルを見据えた電源構成の検討を進めていく。
送配電事業を担う北海道電力ネットワーク株式会社においては、レジリエンス(災害等に対する回復力・復元力)を強化し、安定供給の確保と再生可能エネルギーの接続拡大を両立する次世代型電力ネットワークの構築に向けて取り組んでいくとともに、北海道と本州を結ぶ長距離海底直流送電に関する国の検討についても、技術的課題などの検討に協力していく。
(5) ESG(環境・社会・ガバナンス)に関する取り組み
ほくでんグループは「人間尊重・地域への寄与・効率的経営」の経営理念のもとで持続的な成長を続けていくために、あらゆる業務執行においてESGをより重視していく。
発電における脱炭素化、エネルギー需要における電化拡大による需給両面の取り組みにより、カーボンニュートラルの実現に向けて最大限挑戦するとともに、CO2排出量の削減方策など環境関連情報を積極的に開示し、ステークホルダーのみなさまとの対話を推進する。
北海道の発展こそがほくでんグループの事業基盤になるとの認識に立ち、地域課題の克服や経済活性化などに取り組み、自治体や地域の企業と連携する「共創」の取り組みを通じて新たなビジネスにつなげていく。当社は、大樹町がロケット射場に関連する製造・研究開発、観光業など、幅広い産業の集積を目指して推進する「北海道スペースポート(HOSPO)構想」へ、出資などを通じて参画している。
2022年3月、道内企業としては初めて経済産業省と東京証券取引所による「健康経営銘柄2022」に選定された。また、女性活躍推進をはじめとするダイバーシティ推進の取り組みなどを通じて、従業員の能力を最大限発揮できる職場環境づくりに取り組んでいく。
「コーポレートガバナンス・コード」の趣旨に則り、ステークホルダーのみなさまに適時・適切な情報開示を行うとともに、グループを取り巻く環境変化への的確な対応を念頭に、業務執行の機動性に優れ、経営プロセスの透明性が向上するなどの利点がある「監査等委員会設置会社」へ、2022年6月の株主総会の決議により移行し、透明・公正かつ迅速果断な意思決定を支えるコーポレートガバナンスのさらなる充実に努める。
当社は以上の取り組みを通じて、総合エネルギー企業として、企業価値の向上を図るとともに、北海道の発展と持続可能な社会の実現に貢献していく。
なお、当該事項は当連結会計年度末現在において判断したものである。
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