当社グループにおける経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 会社の経営の基本方針、経営環境
当社グループは、2019年に策定した長期ビジョン「2030年の将来像」の実現に向けて、「新しい価値で『ひと』と『まち』をささえてつなぐグローバル建設企業」を目指しています。「2030年の将来像」へのファーストステージとなる「中期経営計画2019-2021」では、「変革の加速」をテーマに各施策を推進してまいりましたが、新型コロナウイルス感染症の拡大によって、当社グループを取り巻く環境は大きく変化しました。
今般、当社グループは、「2030年の将来像」に向けたセカンドステージとして「中期経営計画2022-2024」を策定し、テーマを「新たな成長へ~サステナブル社会の実現に向けて~」と設定しました。社会が大きく変化する中、その要請に技術とサービスで応え続けることで、持続可能な社会の実現、そして当社グループの持続的な成長を目指してまいります。
また、2021年12月には、当社グループがサステナビリティ経営を目指すことを表明するサステナビリティ基本方針の制定、2022年3月には、当社として優先的に取り組むべき重要課題(マテリアリティ)の見直しを行っており、より一層、社会課題への解決への取組みを強化してまいります。
気候変動リスクに関する情報開示につきましては、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に基づき、ガバナンス、戦略、リスク管理、目標・指標の開示内容の充実に努めてまいります。
<理念と経営計画の体系>
(2030年の将来像)
『新しい価値で「ひと」と「まち」をささえてつなぐグローバル建設企業』
国内建設需要の縮小懸念、新興国のインフラ需要の拡大、建設産業の担い手不足の深刻化、ICTをはじめとした技術革新、デジタル化の進展といった当社グループを取り巻く中長期的な事業環境の変化に対し、当社グループの強みを活かして、社員一人ひとりが未来志向を持って行動し、持続可能な社会の実現と当社グループの持続的な成長を遂げるために2018年に定めた将来像です。
①建設生産革命の実現 ~次世代建設生産システム~
BIM/CIM、自動化技術、データ活用などによって、「SMile生産システム(3次元の設計・施工計画とIoT、AI、ロボットなどのICTを実装してデジタル化され建設現場が連携する、次世代の建設生産システム)」を実現し、生産性を向上する。
②建設から広がる多様なサービス
M&Aの活用も視野に、持続可能社会に寄与するサービスやソリューションの提供を通じて事業領域を拡大する。
③サステナブルな技術
サステナビリティ基本方針に基づき、気候変動や人権など環境や社会の持続性に寄与する技術を社会に提供する。
④グローバルな人材
世界中で活躍する多様な人材を育成し、成長ドライブである海外事業の拡大を支える基盤を構築する。
(2) 中期的な経営戦略と目標とする経営指標
長期ビジョンの「2030年の将来像」へのセカンドステージとして、「中期経営計画2022-2024」を策定し、テーマには「新たな成長へ~サステナブル社会の実現に向けて~」を掲げました。社会が大きく変化する中、その要請に技術とサービスで応え続けることで、持続可能な社会の実現、そして当社グループの持続的な成長を目指してまいります。
①受注力の強化
・デジタル技術の積極活用や協力会社組織との連携強化などにより競争優位性を創出し、優位技術、得意分野を軸に需要拡大が見込まれる分野に注力。
②現場力の強化
・現場管理体制の強化
現場が「コア業務(安全・品質・工程・原価管理)」に集中できる体制を構築し、工事リスクへの対応力を向上すべく、現場業務のバックアップ体制を強化。
受注前の検討体制の強化を目的としたフロントローディング体制を構築し、早期に工事リスクを把握することで、対策を施工計画に反映。
・技術者教育の強化
リスク検知能力や課題解決力の向上、若手技術者の早期育成。
・デジタル化の推進
①サステナブル社会に向けた取り組みの強化
・新たに生まれる社会ニーズに対し、技術とサービスで応え続けることで成長を実現。
②海外事業の拡大~拠点の自立とネットワーク強化~
・事業を通じて持続可能な地域社会の発展に貢献し、地域とともに成長を実現。
③建設生産システムの深化
・デジタル化の推進を中心とした取り組みにより、建設現場の工業化や自動化を推進し、当社グループの競争力を強化。
①ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の実現
・D&Iの実現を通じて、社員の幸福度の向上を企業の成長につなげる。
②エンゲージメントの向上
・「社員の幸福」「企業の成長」と社員のエンゲージメントがお互い高め合う関係性を構築。
③人材の育成
・「新たな成長」の実現を牽引するデジタル人材、グローバル人材など多様な人材育成、確保に注力。
(経営数値計画)
事業環境の変化に対応できる強固な経営基盤を構築し、計画最終年度である2024年度の経営数値計画を下記のとおりとしました。また、株主還元については、財務体質の健全性を維持しつつ、総還元性向50%を目安に、自己資本配当率(DOE)3%を下限値として、安定した株主還元を実施します。
経営数値目標(2024年度目標)
・業績目標
・財務目標
・非財務目標
※「組織診断サーベイ」におけるワークエンゲージメントに関する指標
参考:2030年イメージ(業績・財務目標)
M&Aや、新たな事業の創出による事業領域の拡大も視野に、成長のための投資を継続的に実行し、海外事業の飛躍的な成長と、国内事業の堅実な成長によって、将来像の実現を目指してまいります。
(事業戦略)
1.国内土木事業戦略
(1)収益力強化 (2)新たな価値の創出
2.国内建築事業戦略
(1)受注力の向上 (2)現場力の向上 (3)社員教育・人材活用の強化
3.海外事業戦略
(1)海外建設事業の成長 (2)成長を支える事業基盤の強化 (3)社会変化に対応した取り組み推進
4.周辺領域事業戦略
(1)既存周辺領域事業(再エネ発電、エンジニアリングサービス等)の拡大による収益貢献
(2)新規周辺領域事業創出への取り組み
(3)周辺領域事業の裾野拡大のための「新規事業創出プロセス」の構築
(4)M&A・アライアンスを活用した戦略的なポートフォリオ変革の実現
(基盤戦略)
1.安全・品質
2.人材(=人財)戦略
3.技術開発戦略
4.グループ経営戦略
5.ガバナンス及び内部統制
(環境、社会面における取り組むべき事項)
1.環境面
(1)気候変動、カーボンニュートラル (2)資源循環 (3)生物多様性
2.社会面
(1)人権 (2)ダイバーシティ&インクルージョン
(3) サステナビリティへの取り組み
環境・社会・経済的価値を同時に実現するため、当社の姿勢を示すサステナビリティ基本方針を制定しました。「カーボンニュートラル」や「人権尊重」、「ダイバーシティ&インクルージョン」への取組みを通じ、当社グループ持続的な成長に加え、持続可能な社会の実現に向け積極的に貢献してまいります。
①カーボンニュートラルロードマップ
当社では2050年カーボンニュートラルに向け、意欲的な目標を掲げ、その実現に向けた積極的な取り組みを進めています。
②人権方針
当社は、人権を尊重し、人を大切にする企業を実現するため、人権方針を制定し、人権への取り組みを進めてまいります。
本方針の制定により、今後、バリューチェーンにおける人権デュー・デリジェンスのプロセスを通じて、事業活動における人権への影響を特定・評価するとともに、リスクの回避・軽減に向けた対策を講じてまいります。
また、実効的な苦情処理メカニズムの構築、適切な情報公開を進めるほか、継続的な人権教育等を通して、人権尊重の企業風土を醸成してまいります。
③ダイバーシティ&インクルージョン
ダイバーシティ&インクルージョンの実現を通じて、多様な考えや価値観を尊重する企業風土を作り、社員の幸福度の向上を企業の成長につなげてまいります。
(特定した重要課題(マテリアリティ)の見直し)
2022年3月、当社及びステークホルダーにとって重要な影響を及ぼす課題を見直し、以下のとおり、重要課題(マテリアリティ)を特定しています。
(気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同)
気候変動によるリスクと機会に関連した事業インパクトの評価・対策等の立案が、持続可能な社会の実現及び事業の持続可能性に必要であると認識し、2021年5月にTCFD提言への賛同を表明しました。当社グループにおける土木、建築、海外、新規領域の各事業に影響を及ぼす気候変動ドライバーを認識し、シナリオ分析に基づいて、リスクと機会の特定をしています。
(注)「ZEB」とは、Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の略称で、快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物のことです。
(環境方針“GreenChallenge2030”)
当社は全社をあげてSDGsに取り組んでいくにあたり、理解促進のための役員・社員教育を展開するとともに、当社が事業として目指す方向性と関わりが深い「注力するSDGs目標」を設定しています。
また、SDGsの中でも全世界中の人々の生活に特にインパクトのある環境面に関しては、SDGsが目指す2030年の持続可能な社会の実現への貢献に向け、『環境方針“Green Challenge 2030”』を策定しています。「生活の質の向上」と「環境負荷低減」が両立した2030年の理想の姿を見据え、「持続可能な社会の実現」に貢献してまいります。
(4) 対処すべき課題
① 新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する中、当社としましては、引き続き、社員及び関係先の安全、メンタル面を含めた健康を最優先に対応しつつ、社会情勢の推移を慎重に見極め、適時的確な判断と速やかな対策実施により、事業計画の確実な遂行を目指してまいります。
② 当社施工の横浜市所在マンションの事案につきましては、2017年11月28日付にて、本件マンションの発注者の1社である三井不動産レジデンシャル株式会社(以下、「レジデンシャル社」といいます。)が、本件マンション全棟の建替え費用等の合計約459億円(その後2018年7月11日付にて約510億円に増額)を当社並びに杭施工会社2社に対し求償する訴訟を提起していますが、レジデンシャル社の請求は、根拠、理由を欠くものであると考えており、引き続き裁判において、当社の主張を適切に展開してまいります。
③ 当連結会計年度において、大型建築工事における採算悪化により大幅な損失を計上しました。原因としては、想定外の要因が複合し、大幅な工法変更を余儀なくされたことにより、今後想定される損失を当連結会計年度に一括して処理したことによるものであります。当社としましては、事前の技術上の検討が不十分であったことが主要因であることを踏まえ、受注前の審査を厳格にするための体制の強化、受注後における作業所支援体制について、組織体制及び人員体制をより強化しました。
加えて、フロントローディング体制の構築による工事リスクの早期把握と施工計画への反映等、速やかに具体的な対策を講じています 。
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