当社グループでは、技術の信頼、受注の拡大、利益の向上を目指して、顧客ニーズに応える技術開発をタイムリーに推進することを技術開発の基本方針とし、技術本部、土木本部、建築本部、事業開発推進本部を中心として、技術開発を積極的に進めてきました。
当連結会計年度の技術開発に要した費用の総額は、
当連結会計年度における主な技術開発成果は次のとおりです。
クラウド上に構築した当社の施工情報システムと㈱IHI及びIHI運搬機械㈱のクレーン自動化技術を連携させ、タワークレーンオペレータの運転操作を支援するシステムを開発し、超高層集合住宅の現場へ適用導入しました。また、施工情報システムと連携した吊荷回転制御システム(Roborigger International PTY. LTD社(オーストラリア)との共同開発)も導入し、揚重作業の安全性と生産性が更に向上しています。本システムは、建設現場のデジタル化を支援する次世代建設生産システム(SMile生産システム)の一部であり、今後は、これら施工時のデジタルデータを蓄積し計画データと連携しながら、施工シミュレーションや自動化をはかることで、さらなる安全性と生産性の向上を進めてまいります。
ロボットを活用した鉄筋組立自動化システム「Robotaras Ⅱ(ロボタラスⅡ/ROBOT Arm Rebar Assembly System Ⅱ)」を、当社の能登川工場(滋賀県)で製作するプレキャストPC床版 の鉄筋供給・配置・結束作業に導入しました。本システムの導入は、鉄道構造物の軌道スラブ製造に続くもので、鉄筋組立を85%自動化することにより3倍の生産性向上を実現しました。プレキャスト工場の製造ラインでの適用拡大と更なる開発を進め、自動化技術による生産性の向上を幅広く展開してまいります。
高性能コンクリート「サスティンクリート」が持つ超低収縮、超低発熱、超低炭素、高流動、高強度という特性を活かして、高い意匠性を可能にするデザインパネル「サスティンWALLゼロ」を開発し、(仮称)港区東麻布二丁目計画(発注者:三井不動産レジデンシャル株式会社)の設備機器の目隠しパネルとして適用しました。「サスティンWALLゼロ」は、ポルトランドセメントを使用しないサスティンクリートを用いており、脱炭素社会の実現に向けたカーボンニュートラル化に寄与するパネルです。今後、サスティンクリートの特性を活かして、建築物の構造部材としての適用に向けた研究開発を進め、地球環境の負荷低減に貢献してまいります。
超高耐久床版「Dura-Slab」を高速道路橋として初めて採用した中国自動車道「蓼野第二橋下り線」(発注者:西日本高速道路株式会社)の床版取替工事が完了しました。鉄筋やPC鋼材に替わり、腐食しない新材料(アラミドFRPロッド)を緊張材として用いたDura-Slabは、鋼材腐食によるコンクリート片はく落などによる第三者被害を防ぐとともに、耐久性の向上により長寿命化が図られ、維持管理、更新時のCO2削減も実現する技術です。今後は、飛来塩分や凍結防止剤散布による鋼材の腐食環境が厳しい、高い耐久性が望まれる道路橋への適用拡大を目指します。
橋梁の床版取替工事において架設機を用いる床版取替工法を新たに開発し、蓼野第四橋下り線(発注者:西日本高速道路株式会社)の一部の鋼単純合成桁橋の床版取替において初適用しました。一般的に合成桁橋における床版取替では、構造物が大型クレーンの重量に耐えられない場合には、床版取替の施工前に構造物の補強が必要なことが課題でした。本工法は、橋の両端部に設置する支持材、架設桁及び吊り装置で構成される架設機を用いて床版の撤去・架設を行う工法であり、構造物の補強が不要になります。今後は、本工法の適用範囲拡大を進め、積極的な現場展開を図ります。
超高層マンション等の主要構造体として用いるプレキャスト(PCa)部材の生産管理において、更なる高品質化と生産性向上を実現するIoT(モノのインターネット)を活用した次世代PCa生産管理システム「PATRAC(パトラック)」の開発を進めています。今般、本システムの一部としてPCa製造工場で導入している部材管理システム「PATRAC-DL」に現場受入検査機能を新たに追加し、実現場での適用を開始しました。部材に貼付したRFIDタグによる生産管理情報のトレーサビリティが製造工場から建設現場まで広がり、部材データのシームレスな一元管理によって、現場での受入検査・記録作業の効率化・省力化を実現しました。今後も次世代PCa生産管理システム「PATRAC」の更なる開発を進め、BIMデータやタワークレーンなどとの連携による幅広い生産性向上への取り組みを展開してまいります。
当社で過去に発生した災害事例のデータベースに基づき、AI技術によって、実施予定の作業や工事に対応して起こりうる災害事例を複数抽出する安全注意喚起システムを開発し、当社作業所で朝礼時に行う危険予知(KY)活動において導入を開始しました。当社ではこれまで培ってきた安全文化に加え、さらなる安全に関する残存リスクの削減を目的としてICTを導入した災害防止システムの構築を推進しており、本システムはその中の一つとして位置付けています。今後も様々な切り口からICTを活用した災害防止のソリューション開発に取り組んでまいります。
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