業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要並びに経営者の視点による分析・検討内容は、以下のとおりであります。

 

(1)経営成績

当社グループは、総合医療システム及び医療機器を自社開発し、全国の大規模病院や中小規模医療機関へ提供すると同時に、自治体、公社や組合などへ向けたオフィスシステムの提案・導入や、ヘルステック、医療クラウド領域における新規事業に取り組んでおります。当領域では新型コロナウイルス感染症の影響により、オンライン診療の導入や医療用ロボットの活用など、これまで以上にICT(情報通信技術)やAI(人工知能)を駆使した非接触型の診療が広まりつつあります。また、日本政府による医療従事者の長時間労働の見直しや、国民全員に平等な医療サービスを提供する体制作りが注視されていることから、医療機関での最先端技術を活用したシステムの積極的な導入が益々期待されております。

このような状況のもと、当社グループの2021年度の売上高は、医療システム・オフィスシステムが共に好調だったことから、前連結会計年度に比べ24.1%増加し4,968,885千円となりました。利益については、外注費や仕入れの大きい案件が相次いだことにより予想値には届かなかったものの、営業利益は前連結会計年度に比べ44.7%増加し920,720千円、経常利益は前連結会計年度に比べ46.8%増加し944,593千円、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べ47.8%増加し636,027千円となりました。また、当社単体では、売上高は前年同期比23.7%増、経常利益31.2%増、当期純利益30.5%増となりました。

 

当連結会計年度における売上の構成は、下表のとおりであります。

当社はシステムメーカーとして、ソフトウエアの開発及び販売に主眼を置いております。従って、ハードウエアの取り扱いはソフトウエアの販売に付随して行われるものであり、ハードウエアのみの販売は原則として行っておりません。なお、サポート等の販売額は、電子カルテREMORAのライセンス料を含んでおります。

販売・サービス種類別

販売額(千円)

構成比(%)

前年同期比(%)

システム開発事業

 

 

 

ソフトウエア

(うち代理店販売額)

2,561,299

(538,879)

51.5

113.3

ハードウエア

(うち代理店販売額)

438,855

(12,104)

8.8

164.7

サポート等

1,922,485

38.7

131.7

ヘルステック事業

49,215

1.0

231.6

調整額(注)2

△2,970

△0.1

合計

4,968,885

100.0

124.1

(注)1.上記の金額には消費税等は含まれておりません。

2.「調整額」はセグメント間取引消去によるものです。

 

セグメント別の経営成績は、以下のとおりであります。

 

① 事業セグメント別の売上高                                                       (単位:千円)

セグメント

2020年12月期

2021年12月期

増減額

増減率

システム開発事業

3,986,582

4,922,640

936,057

23.5%

ヘルステック事業

21,247

49,215

27,968

131.6%

 

② 事業セグメント別の営業利益又は営業損失(△)                                    (単位:千円)

セグメント

2020年12月期

2021年12月期

増減額

増減率

システム開発事業

851,516

1,137,726

286,210

33.6%

ヘルステック事業

△215,233

△217,006

 

 

≪システム開発事業≫

システム開発事業の経営成績は、売上高4,922,640千円(前年同期比23.5%増)、セグメント利益(営業利益)1,137,726千円(同33.6%増)となりました。

 

〇 医療システム

画像ファイリングシステム「Claio」や文書管理システム「DocuMaker」に代表される当社製品は、高度な医療を提供する大規模病院において高い評価と安定したシェアを維持し、病院の中核システムとして診療に欠かせない重要な役割を担っております。当連結会計年度は、病院案件114件及び診療所・その他の案件76件の新規導入・追加導入及びシステム更新を実施いたしました。

本年度は、電子カルテや会計、物流管理、勤怠管理など30を超えるシステムからデータを集約し横断的な抽出検索を可能にすることで、診療の質の向上と病院経営の効率化を実現するシステム「Universal Searcher」(商標登録出願中)を開発いたしました。都内の大規模ナショナルセンターへ導入し、既に稼働済みです。

また、都内の大学病院へ導入済みのオンライン診療システム「On診(おんしん)」(商標登録出願中)の稼働が、本年度より開始いたしました。本製品は従来型のサービスのように市販の会議システムやビデオ通話に依存せず、クラウドのサーバを介し、一施設で同時に100を超えるオンライン診療コントロールを可能にするシステムです。

なお、クラウドソリューションの提供を主業とする子会社のフィッティングクラウド株式会社は、10-12月期に、GCP(注1)を利用したクラウドリソース提供に加え、クラウドストレージサービス、請求代行業務を開始いたしました。日本医療研究開発機構(AMED)や学会が進めるデータ収集事業のクラウド基盤構築も進んでおります。

(注1)GCP:グーグルクラウドプラットフォーム。Google社が提供するクラウドコンピューティングサービス

 

〇 オフィスシステム

当セグメントでは、文書管理システム「DocuMaker Office」を中心とする製品販売に取り組んでおります。DX推進の流れにより各自治体が電子決裁や公文書管理システムの導入を検討し始めたことから、自治体向けパッケージ・医療機関向けパッケージ共に問い合わせや商談件数は増加しております。本製品の売上高は本年度の目標に対し順調に推移し、当連結会計年度は6件の新規導入や3件の追加導入・バージョンアップ等を実施、合計76,208千円の売上を達成いたしました。

なお、国が管轄する2つの大規模機関にて、現在当システムの導入が進行中です。自治体のみならず、自治体と同様の文書管理を行う独立行政法人や財団法人等でも、文書管理や決裁業務の電子化を支援すると同時に、総務省の自治体行政スマートプロジェクトに参加し、文書管理・電子決裁以外の新たなニーズの掘り起こしにも注力いたします。

なお、医療領域においても当社の既存ユーザーである大規模・中規模医療機関を中心に高い需要を見込んでおり、病院のバックオフィスを支援するクラウド型サービスとして、多くの引き合いをいただいております。

 

≪ヘルステック事業≫

ヘルステック事業の経営成績は、売上高49,215千円(前年同期比131.6%増)、セグメント損失(営業損失)217,006千円(前年同期のセグメント損失215,233千円)となりました。

 

〇 視線分析型視野計

当セグメントにおいては、視線分析型視野計「GAP」(注2)の国内販売や海外展開計画の策定に注力いたしました。GAPは、元来の検査手法とは全く異なるアプローチを用いて視野を測定することで可用性を高め、初期の自覚症状に乏しい緑内障などの網膜疾患の早期発見率の向上にも寄与する、安価で画期的なウェアラブルデバイスです。本製品はこれまで検査の際に必須であった暗所の確保を不要とし、検査時間の短縮や患者の負担軽減を実現いたしました。さらに、人間ドックや検診施設での利用を進めることで網膜疾患初期の視野データを取得分析蓄積し、国内外の研究開発機関と共有することで、製薬や生命保険領域など様々なフィールドでの技術・サービス革新への寄与が期待されます。設計から製造までを当社が一貫して行い、既に複数の国内医療機関にて採用済みです。海外発売に向けた準備は、薬事承認プロセスに遅延が発生したものの、現地代理店と共に販売開始時期変更に伴う戦略の見直しを実施、完了いたしました。

加えて、本製品が視野異常のみならずMCI(早期認知症)の発見にも有用であることが判明し、引き続き京都大学と共同研究を進めております。AMEDの令和3年度 医工連携・人工知能実装研究事業において「視点反応・眼球運動のデジタルフェノタイプを活用した軽度認知機能異常スクリーニングプログラムの研究開発」が採択され、今後数年をかけ新たな医療機器として医療現場に投入される予定です。

(注2)GAP:ゲイズアナライジングペリメーター。医療機器製造販売届出番号 38B2X10003000002

 

子会社・EMC Healthcare株式会社の取り組みは、以下のとおりであります。

 

〇 午睡モニタリングシステム

映像解析AI領域においては、午睡(注3)時の見守りと記録業務支援を目的としたモニタリングシステム「ベビモニ」を販売しております。本製品はカメラ映像をAIで解析することで、同時に複数乳幼児の午睡見守りを可能にいたしました。これまでの首都圏での販売に加え、第1四半期連結会計期間より全国展開を開始し、全国での販売実績を積み上げております。また、販売取次店での取り扱いや大手保育ICT事業者とのシステム連携を進めることで、本年度から引き合いが急増しております。2021年10月には次世代機を投入し、午睡時の室内環境をセンシングする機能を追加するなど、これまで以上にデータを取得・分析することで更なる付加価値向上を目指します。

(注3)午睡:保育園における乳幼児のお昼寝

 

〇 介護DXサービス

介護領域では、新たな製品であるDXサービス「OwlCare」を開発しております。昨今の介護施設では、巡回や見守りなどの夜間業務の負荷軽減と、介護の質向上の両立が喫緊の課題です。本製品を通じて様々なセンサーとナースコールシステムを統合することで、入居者の健康状態を見守りつつ、介護スタッフの負荷軽減が可能になります。併せて介護スタッフの確保や効率的なスタッフの配置といった、経営上の課題解決にも貢献いたします。「OwlCare」は、これまでEMC Healthcare株式会社が培ったセンサー技術、カメラ技術、画像解析技術、AI・データ分析技術など様々な技術を結集した製品であり、次年度以降の本格的な市場投入を目指しております。2021年11月に厚生労働省・経済産業省・文部科学省・日本学術振興会の後援で開催された日本初のエイジテック2021アワードでは、介護現場の省力化に貢献するイノベーティブな取り組みとして評価され、優良賞を受賞いたしました。

 

〇 健康管理サービス

健康管理領域においては、新型コロナウイルス感染症対策向け健康管理サービス「Wellness Passport」を開発、販売を開始いたしました。本製品は、スポーツ大会や各種イベントの開催前から参加者各自が健康データを登録・管理し、当日の本人確認や直近の健康データを非接触でチェックする管理システムです。本製品を通じてイベント参加者や運営スタッフ、地域の方々など、様々な関係者の安全に配慮すると共に、スムースなイベント運営を実現いたします。既に複数の大会にて採用され好評をいただいており、ニューノーマルに対応する製品として、今後も更なる開発及びユーザーの獲得を行ってまいります。

 

(2)財政状態

(資産)

当連結会計年度末における資産の残高は4,556,563千円となり、前連結会計年度末より759,649千円増加しました。

① 流動資産

流動資産は、現金及び預金の増加70,644千円及び受取手形及び売掛金の増加511,959千円を主たる要因とし、当連結会計年度末残高3,705,601千円(前連結会計年度末比554,629千円増)となりました。

 

② 固定資産

固定資産は、ソフトウエアの償却による減少42,918千円による無形固定資産の減少42,918千円と、投資有価証券の増加56,700千円及び出資金の増加115,610千円、敷金の増加54,608千円による投資その他の資産の増加250,200千円を主たる要因とし、当連結会計年度末残高850,961千円(前連結会計年度末比205,019千円増)となりました。

 

(負債)

当連結会計年度末における負債の残高は1,044,029千円となり、前連結会計年度末より320,401千円増加しました。

① 流動負債

流動負債は、買掛金の増加198,991千円及び未払法人税等の増加100,406千円を主たる要因とし、当連結会計年度末残高825,726千円(前連結会計年度末比291,578千円増)となりました。

 

② 固定負債

固定負債は、株式給付引当金の増加21,210千円を主たる要因とし、当連結会計年度末残高218,303千円(前連結会計年度末比28,822千円増)となりました。

 

(純資産)

当連結会計年度末における純資産の残高は、3,512,533千円となり、前連結会計年度末より439,248千円増加しました。これは主に利益剰余金の増加429,767千円によるものであります。

 

(3)キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、2,045,974千円(前連結会計年度末比3.7%増)となり、前連結会計年度末に比べて73,644千円増加しました。各キャッシュ・フローの状況と増減要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は、前連結会計年度に比べ207,803千円増加し、750,353千円となりました。これは主として、税金等調整前当期純利益が944,593千円、市場販売目的のソフトウエアの償却費231,991千円に対し、売上債権の増加による減少511,959千円によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は、前連結会計年度に比べ347,100千円増加し、493,367千円となりました。これは主として、無形固定資産(主に市場販売目的のソフトウエア)の取得による支出199,976千円、出資金の払込による支出105,220千円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は、前連結会計年度に比べ18,615千円減少し、183,341千円となりました。これは主として、配当金の支払による支出206,341千円によるものであります。

 

(4)資本の財源および資金の流動性に係る情報

当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

主な資金需要は、研究開発に係る人件費のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。

運転資金は原則として営業活動によるキャッシュ・フローにより賄われておりますが、状況に応じて直接金融並びに間接金融を利用していく方針であります。

① 有利子負債

当連結会計年度末の有利子負債残高は短期借入金20,000千円となっております。

 

② コミットメントライン

当社は、取引銀行との間でコミットメントラインの設定はしておりません。

 

(5)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。

 

(6)経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、成長性・収益性については売上高経常利益率を、資本効率についてはROE(株主資本利益率)を経営の重点指標としており、これらの改善及び向上を行うことを目標としております。

当社グループの経営陣は、現在の事業環境及び入手可能な情報に基づき最善の経営方針を立案し、企業価値を最大限に高めるべく努めております。

今後も当社グループでは、「価値ある技術創造で社会を豊かにする」という企業理念のもと、経営の効率性、健全性及び透明性を確保し、事業資本の最大化及び株主の皆様や顧客をはじめ社会から高い信頼と評価を得る会社の実現を目指してまいります。

 

(7)生産、受注及び販売の実績

① 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(千円)

前年同期比(%)

システム開発事業

1,496,826

107.4

ヘルステック事業

177,701

139.9

合計

1,674,527

110.1

(注)1.生産高は、当期総製造費用によっております。

2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

② 受注実績

当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

システム開発事業

3,577,485

125.8

806,310

86.5

ヘルステック事業

89,103

40.0

27,888

合計

3,666,589

119.6

834,198

89.4

(注)上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

③ 販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(千円)

前年同期比(%)

システム開発事業

4,922,640

123.5

ヘルステック事業

49,215

231.6

調整額(注)1

△2,970

合計

4,968,885

124.1

(注)1.「調整額」は、セグメント間取引消去によるものであります。

2.最近2連結会計年度における主な販売先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2020年1月1日

  至 2020年12月31日)

当連結会計年度

(自 2021年1月1日

  至 2022年12月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

日本電気株式会社

591,114

11.9

3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

4.前連結会計年度の日本電気株式会社については、販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため、記載を省略しております。

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