文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、それぞれの事業において、「迅速果断」な意思決定のもと、既成概念にとらわれない強靭な経営体制を築きます。これを実現するために、事業活動を通じて適正な利益を確保し、変化を恐れず常に前向きに挑戦し続ける経営の実践に努め、ステークホルダーの期待に応えるべく「健全で信頼される企業」として社会に貢献してまいります。
ア.第2次中期経営計画(2020年3月期~2022年3月期)
当社グループは、2020年3月期から2022年3月期を対象とする第2次中期経営計画において、事業ポートフォリオの安定化、拡大化により持続的な成長を実現するべく、技術力を軸に、「研究開発と人材への積極投資」「中核事業の競争力のさらなる強化」「次世代事業の育成」等をテーマに、各施策に取り組んでまいりました。その結果、売上高および営業利益ともに、計画を上回りました。
イ.第3次中期経営計画(2023年3月期~2025年3月期)
当社グループは、第2次中期経営計画の進捗も踏まえ、2023年3月期から2025年3月期を対象とする第3次中期経営計画を策定し、取り組んでまいります。「新たな取り組みを試行しながら事業の持続的な成長を図る」「独自技術を活かした新製品の開発を進める」「上場企業としての社会的要請に応える」を基本課題として掲げ、これに基づき各分野における施策を定めています。
また計画の遂行に際し、事業ポートフォリオマネジメントとして、「事業計画、経営資源配分の検討」「各種施策の実行」「業績評価と分析」を年間サイクルで実施することにより、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図ってまいります。
当社グループは、企業価値の向上を目指すにあたり、収益重視の観点から、売上高・営業利益を経営上の目標の達成状況を判断するための指標としています。
新型コロナウイルス感染症の収束が見通せない状況に加え、ウクライナ情勢の緊迫化により、世界経済の見通しは急速に不透明感を増しています。またこれに伴い、資源、燃料や農産物をはじめとする物価上昇が加速化しており、企業活動や人々の生活に大きな影響を及ぼしつつあります。
このような環境下、当社グループの事業領域に関し、半導体分野においては、ウクライナ情勢が世界の半導体生産のサプライチェーンを揺るがす可能性も示唆されています。一方、半導体需要自体は、ライフスタイルの変化や5Gの普及等を背景に、半導体不足が叫ばれるほど拡大傾向が継続しており、当社の半導体製造向け高純度薬液も堅調な推移をみせてまいりました。また、韓国向け輸出管理の運用の見直しにより生じた影響に対しても、重点販売地域の再編により、第3次中期経営計画の最終年度には販売量が市場変化前の水準近くまで回復することを見込んでいます。決して楽観視できる状況ばかりではないながらも、半導体市場は長期的には安定した拡大が期待され、この先も当社の主力事業として、他社との差別化を図りながら注力していく分野です。
また本分野に関しては、鉄道や電気自動車、燃料電池自動車等向けには、現在の半導体材料の主流であるシリコンよりも大きな電気が扱え、電力損失が少ない新しい半導体材料を用いたパワー半導体を製造する技術開発も継続して進められています。
その他分野では、脱炭素社会へ向けクリーンエネルギーの注目が高まる中、欧州や中国をはじめとして世界的に原子力発電活用の動きが高まっており、当社製品の濃縮ホウ素は中性子を吸収する性質を有し、原子力関連施設向けとして需要が拡大しつつあります。電池関連では、EV向けを中心にリチウムイオン二次電池市場が拡大基調ではあるものの、各部材メーカーへのコストダウン要求がより一層強くなっており、事業環境を見定めながら販売活動を展開する必要があります。また、ポストリチウムイオン二次電池の開発も加速化しており、実用化に向けた取り組みが重ねられています。
当社グループで重要な位置を占める運輸事業を取り巻く環境としては、新型コロナウイルス感染症拡大の影響から脱しつつある中ながらも、燃料価格急高騰や運転手不足など、依然として懸念材料は残されており注視が必要となっています。
以上の経営環境も踏まえ、当社グループは、次の課題、施策に取り組み、さらなるグループ企業価値向上を目指してまいります。
① 事業の持続的成長
当社の主力製品である半導体用高純度薬液は、その高い品質と安定供給体制を強みとして競争力を築いてまいりました。当分野の持続的成長を遂げるため、事業環境の変化に合わせた重点販売地域の再編により、販売量の拡大を目指します。同時に、競争力の維持・強化に向け他社との差別化を図るべく、ユーザー要望に沿う機能性を付加した薬液の開発を推し進め、その販売拡大に注力いたします。また、ユーザーの一部において中小型容器での供給要望が高まる中、当該容器充填能力の増強や、複数の生産拠点間における充填・生産能力を見据えた最適な供給体制の構築などに取り組み、着実に需要を伸ばすよう努めてまいります。
エネルギー関連では、世界的なクリーンエネルギー化の動きを背景に、原子力関連施設向けの濃縮ホウ素の需要拡大が期待されており、本製品の優位性を訴求し販売拡大に繋げてまいります。またこれに伴い、生産能力が不足する可能性もあるため、需要量に応じて能力増強の設備投資要否を見極めてまいります。
この他、歯磨き粉用途のフッ化スズや、電池材料など、成長市場における販売拡大に努めながらも、原料価格高騰や価格競争激化もみられる中においては収益性を見定め、生産・販売体制を構築してまいります。
さらに、当社グループの高純度薬品事業を物流や原料調達の面から支える運輸事業では、収益性を重視した取り組みを推進し、人員や設備等の充足により安定的事業基盤の構築等に努め、着実に成長していくことに注力する方針です。
② 独自技術を活かした新製品の開発
研究開発部門では、中長期でみた成長市場を踏まえて、当社が強みを持つ要素技術を活かした研究開発に取り組みます。半導体関連では、次世代半導体の動向を見極め、製造プロセスに求められるニーズに合ったエッチング液・洗浄液の開発を進め、当社がこれまでに培った優位性を堅持してまいります。
またエネルギー分野に関しては、次世代二次電池の開発動向に合わせて、その実用化を阻む問題を解決する材料や高性能化に寄与する材料の開発に、引き続き注力いたします。この他、無機フッ素化合物の新用途の開発としてナノ粒子化による用途開発や、フッ素化技術を用いたバイオ関連など新規分野の開拓も推し進める計画です。
2023年3月期中に竣工する予定の研究開発棟において、最適かつ最新鋭の研究開発環境のもと、これらの事業ポートフォリオ拡充に向けた取り組みを加速させてまいります。
③ 経営基盤の強化
企業の持続的発展のため、またプライム市場上場企業として社会から求められる事項に対しての取り組みを実践してまいります。サステナビリティ関連を含む情報開示を一層充実させ、TCFD要請に沿った開示も準備を進めていく計画です。また、社内の業務効率化、生産性向上に繋がる業務のデジタル化を推し進め、新たな施策に取り組む土台を強化してまいります。
また、経営資源配分の観点では、資本効率・収益性・持続的成長に向けた長期視点等を意識した、成長投資や株主還元をバランスよく実施することを基本方針として掲げ、これに取り組んでまいります。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響について、当連結会計年度末現在においては当社グループ業績への影響は限定的であり、当有価証券報告書提出日現在において、事業計画等の大きな方向性の見直しには至っていません。ただし、今後の感染拡大状況等による事業環境の変化により、影響が拡大する可能性は考えられるため、引き続き経済、市場動向を注視し、慎重な検討を継続してまいります。また、当社グループでは、従業員の安全確保のための措置を講じ、事業活動継続に注力しながら、今後発生する可能性のある影響に対しても適切な対応を取るべく努めてまいります。
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