事業等のリスク

 

2 【事業等のリスク】

以下には、当社の事業展開その他に関してリスク要因となる可能性があると考えられる事項を記載しております。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項につきましても、投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。なお、当社は、これらのリスク発生の可能性を認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針であります。
 なお、文中における将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1) 当社のプロダクト及びサービスの内容について

 当社は、人材アセスメントサービスの提供に際して、SHL社とのライセンス契約に基づき適性テスト等を国内企業向けに開発するとともに、創業以来今日まで、日本における「妥当性検証データ」の蓄積によって他社の追随を許さない優れた人材評価ノウハウを有していると自負しております。しかし、今後他社において、画期的な適性テストや人材評価手法が開発された場合、当社の競争力は弱まり、今後の事業展開及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 採用選考市場及び雇用環境の業績への影響について

 当社の独自調査では、適性テスト事業を営む事業者の主たる事業内容は、出版業、教育研修業、就職情報サービス業、コンサルティング業など多岐に亘っているため、適性テスト事業の実態を正確に把握することは困難であります。また、これらのすべてを含めた適性テスト事業の市場規模を明らかにする業界内外の統計類は整備されておりません。しかし、現状として、適性テスト事業の市場規模は小さく、かつ安定的であると思われます。これに対し、当社は、適性テスト事業については、新規学卒者等のみではなく経験者採用選考市場にも注力し、また社員や管理職を対象とした社員アセスメントサービス等を積極的に提供していく方針であります。しかしながら、各企業人事において広く適性テストの利用を考えない、自己の適性に基づく進路選択の社会環境が整わない等の理由により、当社が考えるような需要が高まらず市場が新たに創出されなかった場合、または市場規模が見込み通り拡大しなかった場合、当社の今後の事業展開及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

また、新規学卒者等の採用選考市場は、景気の変動、社会情勢の変化等の理由による国内の雇用環境の変化に左右されやすい傾向があります。今後、雇用環境の変化に伴い、採用選考市場における当社の適性テスト事業の需要が減少するような場合には、当社の今後の事業展開及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) SHL社との関係について

①SHL社との事業関係について

当社は、欧州を中心として世界主要国で人材アセスメント事業を展開するSHL社の日本法人として、1987年に設立されております。以来、当社は、SHL社の関連会社として、「OPQ」を核とするプロダクト、商標及びノウハウ等に関するライセンス契約に基づき、国内企業向けに人材アセスメント事業の分野において事業展開を行っておりました。

2007年5月18日にSHL社が所有しているすべての当社株式を、株式会社毎日コミュニケーションズ(現、株式会社マイナビ)に譲渡したことにより資本関係は解消されましたが、当社はSHL社とのライセンス契約を更新することにより、引き続きSHL社から運営のサポートを得ておりました。2013年9月にSHL社が、米国の人事関連の会員制アドバイザリー会社であるCEB社に買収され、2017年4月にCEB社が、米国ITリサーチ&アドバイザリー会社のGartner社に買収されましたが、2018年3月にGartner社は、タレントアセスメント事業(注)を英国の未公開株式投資会社であるExponent PE社に売却しました。その後、Exponent PE社はSHL Global Management Limitedを設立、同社をタレントアセスメント事業の持株会社とし、SHL社はSHL Global Management Limitedの子会社となりました。この結果、当社とのライセンス契約はSHL社に再移管され、当社はSHL社から運営のサポートを得ております。

将来、何らかの事情によって、SHL社が当社へのサポートを中止する事態が生じた場合、今後の事業展開及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

SHL社及びExponent PE社につきましては、『第1 企業の概況 3事業の内容』をご参照ください。

(注)当社の人材アセスメント事業は、タレントアセスメント事業に含まれております。

 

 

②SHL社とのライセンス契約について

当社は、SHL社との間において、1988年1月11日付で、プロダクト、商標及びノウハウ等に関するライセンス契約を締結し、以来更新を重ねておりましたが、2013年9月にSHL社がCEB社に買収されたことにより、有効期間5年(2017年4月1日から2022年3月31日まで)の現行ライセンス契約を、2017年3月にCEB社と締結しておりましたが、SHL社との間において、2021年10月に現行ライセンス契約の有効期間を1年延長して2023年3月31日とする契約を締結いたしました。現行ライセンス契約に基づくロイヤルティ料率(ライセンス供与の対象商品売上高に対する料率)は9.0%であり、2022年4月1日から2023年3月31日まで本料率が適用されます。

ライセンス契約において、当社はSHL社の事前の書面による同意なしに、顧客に対して類似もしくは競合商品を販売できないこと、類似もしくは競合商品を開発する場合は別途秘密保持契約を締結することが定められており、当社は事実上、類似もしくは競合商品の販売及び開発に制限が加えられております。

当社が、倒産または清算、私的整理等に該当する場合、当社の経営または所有がSHL社と競合もしくはSHL社の評判等に悪影響を与える第三者に変更される等の特別な事情がある場合に、ライセンス契約は終了する可能性があります。また、当社に契約違反があった等の理由でライセンス契約が解除されるような事態が発生した場合、SHL社の事情によってライセンス契約が更新されない場合、当社の今後の事業展開及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

SHL社とのライセンス契約の有効期間は2023年3月31日までであり、本有価証券報告書提出時点において更新契約の締結は未了であります。当社売上高の約88%がライセンス供与の対象商品であるため、ライセンス契約が更新されない場合、当社は、事業活動のみならず事業継続に重大な支障をきたすことになります。

また、当社は、ライセンス契約に基づき、SHL社の特定プロダクトのプロモーション・再販・使用及びコンサルティングサービスの提供等を行い、その売上高に対して一定のロイヤルティをSHL社に対して支払っております。2023年3月31日までのロイヤルティの料率は以下の表のとおりに決定しておりますが、その後のロイヤルティの料率は双方の交渉により決定されるため、交渉の結果、ライセンス契約が終了または大きく変更された場合には、当社の今後の事業展開及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

期間

料率

2017年4月1日から2018年3月31日まで(1年間)

5.0%

2018年4月1日から2019年3月31日まで(1年間)

6.5%

2019年4月1日から2020年3月31日まで(1年間)

8.0%

2020年4月1日から2022年3月31日まで(2年間)

9.0%

2022年4月1日から2023年3月31日まで(1年間)

9.0%

 

 

③SHL社のノウハウ等への依存について

上記のように、当社は、SHL社から当社のサービスの主要な部分についてライセンス供与を受けることによって事業展開を行っており、当社の事業展開は、SHL社のライセンス供与に大きく依存しております。このためSHL社に、業績の変動、事業の停止、または買収・合併等があった場合、当社の今後の事業展開及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 販売代理店政策について

当社は、販売代理店制度(販売委託制度を含む)を採用しており、23社との間で販売代理契約(販売委託契約を含む、以下同様)を締結し、販売代理店(販売委託先を含む、以下同様)の営業力を利用した事業展開を行っております。販売代理契約の期間は1年間または2年間であり、双方から解約の意思表示が無い場合は自動更新されることが規定されております。当社は、販売代理店との間で良好な業務関係を維持しておりますが、これらの販売代理店が、当社のサービスの取扱いを縮小した場合、あるいは他社のサービスを取扱うこととする等の理由により、今後販売代理契約の更新ができなかった場合、当社の営業活動が縮小し、今後の事業展開及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

 販売経路別の売上高及び売上高に占める割合は以下のとおりであります。

 

 

 

期別

2020年9月

2021年9月

2022年9月期 (注) 1

 

会社名

売上高

(百万円)

構成比

(%)

売上高

(百万円)

構成比

(%)

売上高

(百万円)

構成比

(%)

 

(株)マイナビ (注)2

1,352

45.6

1,549

46.9

1,593

46.0

 

(株)ディスコ

54

1.9

65

2.0

65

1.9

 

(株)ジェイ・ブロード

21

0.7

18

0.6

16

0.5

 

(株)マイナビワークス

11

0.4

9

0.3

10

0.3

 

(株)クリエアナブキ

3

0.1

4

0.2

4

0.1

 

その他の販売代理店

11

0.4

7

0.2

9

0.3

 

(販売代理店への売上高合計)

1,455

49.1

1,655

50.2

1,699

49.1

 

直販

1,509

50.9

1,644

49.8

1,764

50.9

 

売上高合計

2,964

100.0

3,300

100.0

3,463

100.0

 

 

 

(注) 1

「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当事業年度の期首から適用しているため、2022年9月期の数値は、当該会計基準等を適用した後の数値となっており 、2021年9月期及び2020年9月期につきましては、収益認識会計基準等の適用のない実績値を記載しております。

 

上記以外に直販での売上高があり、(株)マイナビへの売上高は、次のとおりであります。

 

(単位:百万円)

 

2020年9月期

2021年9月期

2022年9月期

販売代理契約に

基づく売上高

1,352

1,549

1,593

直販での売上高

14

12

12

売上高合計

1,367

1,562

1,606

 

 

(5) 株式会社マイナビとの関係について

①株式会社マイナビとの事業・資本関係について

株式会社マイナビは、当社の筆頭株主であり、当社株式1,800,000株(議決権の所有割合30.60%)を所有しております。また、株式会社マイナビは、当社にとって売上高が最大の販売代理店でもありますが、取引条件につきましては、当社の販売代理店に適用している価格表に基づき決定しております。

当社としましては、株式会社マイナビとの事業及び資本関係は、今後も良好に推移するものと考えておりますが、将来、何らかの事情によって事業または資本関係が解消となる事態が発生した場合、今後の事業展開及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

②株式会社マイナビとの人的関係について

提出日現在、当社の取締役(監査等委員であるものを除く)3名のうち1名が、また、監査等委員である取締役3名のうち1名が、株式会社マイナビの出身者であり、この2名は、いずれも当社の常勤取締役(監査等委員を含む)であります。また、株式会社マイナビから出向社員1名を受け入れております。

当社としましては、株式会社マイナビ出身者の取締役就任は、株式会社マイナビとの意思疎通の円滑化及び経営体制の強化等を目的としたものでありますが、将来、何らかの事情によって人的関係が解消となる事態が発生した場合、今後の事業展開及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

③株式会社マイナビとの競合関係について

 株式会社マイナビは、現在、当社が開発した適性テスト等の人材アセスメントサービスを自社の顧客企業に提供しており、両者は相互の事業を補完する関係にありますが、将来、株式会社マイナビが、自社において適性テストを開発する等何らかの事情によって当社と競合する関係となる事態が発生した場合、今後の事業展開及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(6) 売上高の季節変動について

当社のサービスは、新規学卒者等の採用選考に利用される頻度が高いため、売上高に季節変動が生じます。

<四半期会計期間別の売上高>

(単位:百万円)

決算期

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

通期

2022年9月期

597

1,120

1,063

681

3,463

2021年9月期

472

1,375

969

482

3,300

2020年9月期

405

1,233

845

479

2,964

(注)1 「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当事業年度の期首から適用しているため、2022年9月期の数値は、当該会計基準等を適用した後の数値となっており、2021年9月期及び2020年9月期につきましては、収益認識会計基準等の適用のない実績値を記載しております。

2 当社のサービスは、新規学卒者等の採用選考に利用される頻度が高いため、売上高に季節変動が生じます。近年では、第2四半期から第3四半期会計期間に売上高が集中する傾向にあります。

 

 

当社は、社員アセスメントサービス等の売上高を増加させて売上高の季節変動の幅を縮小させる方針ですが、これらが計画通り進まない場合、売上高の季節変動が継続する可能性があります。また、新規学卒者等の採用選考時期は年によって一定していないため、通年の実績に鑑み3月に予定していた売上高が顧客企業の事情によって4月に計上されることとなるような場合、またその逆の場合には、当社の第2、第3四半期業績に影響を与える可能性があり、さらに9月に予定していた売上高が顧客企業の事情によって10月に計上されることとなるような場合には、当社の通期業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

また、採用選考活動に関するルールや規制(政府や業界団体等が、学生の学事日程に配慮し一定時期まで新規学卒者等の採用広報や採用選考を開始しないよう求めるもの)等を大手顧客企業が導入した場合、一時的に当社の通期業績または四半期業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) インターネットスクリーニング・インターネットテスティングシステムについて

①プログラム不良によるリスク

ハードウエアまたは開発したプログラムに不良箇所があることにより、サービスの中断及びデータの滅失、破損などの可能性があります。このような事態が発生した場合、顧客企業への損害賠償、社会的信用の失墜等により、当社の財政状態及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

②システム障害によるリスク

アクセス数の増加や人為的過失などの原因で、システムダウンやデータの不通等のトラブルが発生する可能性があります。当社では、サーバやネットワーク機器の二重化など、不測の事態に備える体制を敷いておりますが、このような事態が発生した場合、顧客企業への損害賠償、社会的信用の失墜等により、当社の財政状態及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

③地震・火災・停電等によるリスク

 地震等の天災、火災や停電などの予期できない障害により、サービス続行が不可能に陥る可能性があります。当社では、クラウド化を含むデータセンターのロケーションの複数化を進めておりますが、このような事態が発生した場合、当社の財政状態及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

④ハッキング及びコンピュータウイルスによるリスク

 当社は、インターネット経由でサービスの一部を提供しておりますので、ハッカーによる侵入とデータの滅失、破損やコンピュータウイルス感染による被害の可能性があります。当社では、ネットワーク機器によるプロテクションを施し厳重な注意を払っておりますが、このような事態が発生した場合、当社の財政状態及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(8) 顧客企業情報の管理について

当社は、人材アセスメントサービスを提供しているため、機密情報たる顧客企業の社員ならびに受検者に関するプライバシー情報を扱っております。当社は、これら機密・個人情報の管理に厳重な注意を払っておりますが、万一、機密・個人情報の漏洩等が発生した場合には、顧客企業やその受検者等の個人から損害賠償請求を受けるほか、社会的信用の失墜等による営業活動への影響等から、事業展開及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 創業者である前社長の逝去に伴う影響について

当社の代表取締役社長であった清水佑三氏は、2008年4月10日に逝去いたしました。清水佑三氏が所有しておりました当社株式1,800,000株は、相続人(3名)が相続し、その内550,000株につきましては、当社が自己株式として取得後に消却しております。現時点において、相続人が所有する残りの当社株式1,250,000株(議決権の所有割合21.25%)についての方針は具体化しておりませんが、将来、何らかの事情によって、相続人が所有株式を当社の想定しない第三者に譲渡し、かつ当該第三者が当社と敵対または競合する関係である場合、あるいはその可能性をもつ場合には、当社の事業展開及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) 会社組織について

①内部管理体制について

当社は、従業員116名(2022年9月30日現在)の小規模組織であり、内部管理体制も規模に応じたものとなっております。今後も、内部管理体制を強固なものにするために、社員教育や人材の拡充を図る所存ですが、要員の社外流出や突発的な疾病等で業務遂行上の支障が生じた場合、あるいは当社の業務が内部管理体制の拡充を上回る速度で拡大した場合、適切な代替要員の不在や人員増強の遅延等により、当社の内部管理体制に支障が生ずる可能性があります。

 

②人材の確保について

 当社は、新規顧客や販売代理店の開拓、社員アセスメントサービスやインターネット関連サービス等の新サービスの販売を拡大する事業計画を進めており、この事業計画を達成するため、営業職、コンサルタント職及びシステムエンジニア職の人員増強及び教育等による営業体制と開発体制の強化を図っております。しかしながら、いずれも労働市場において希少性をもつ分野の人材であり、計画通りの営業体制及び開発体制の強化が実現できない場合には、当社の事業展開に影響を及ぼす可能性があります。また、人員の増加による営業体制及び開発体制の強化の効果が期待通り現れず、計画通りの販売拡大とならない場合は、人件費等のコスト増加により、当社の業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(11) 競合激化によるリスクについて

当社の競合会社は、出版業、教育研修業、就職情報サービス業、コンサルティング業などの事業の兼業として適性テスト事業を行っており、適性テスト事業の実態を正確に把握することは困難であります。当社は、今後、さらに質の高い人材アセスメントサービスを提供することで、適性テスト市場での競争力を維持・強化すべく、継続的に努力していく所存でおりますが、将来、競合会社における画期的な商品の開発や、顧客獲得をめぐる競合が激化等した場合には、当社の財政状態及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(12) 自然災害や感染症等の拡大によるリスクについて

大規模地震、津波、台風等の自然災害や重大な感染症の拡大等の予期できない事象によって、顧客企業の新規学卒者等の採用選考計画の中止や延期等が余儀なくされるような事態が発生した場合、また、その影響が長期化するような場合には、当社の財政状態及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

なお、新型コロナウイルス感染拡大につきましては、引き続き、当社事業への影響を注視してまいります。

 

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