業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)重要な会計方針及び見積り

当社の連結財務諸表はIFRSに基づいて作成されています。また、当社は連結財務諸表を作成するために、種々の仮定と見積りを行っています。それらの仮定と見積りは資産・負債・収益・費用の計上金額並びに偶発資産及び債務の開示情報に影響を及ぼします。重要な仮定と見積りは、繰延税金資産の回収可能性、確定給付制度債務、非金融資産(のれんを含む)の減損に反映しています。なお、実際の結果がこれらの見積りと異なることもあり得ます。

重要な会計方針及び見積りの内容は、連結財務諸表の注記「3.重要な会計方針」に記載しています。

 

(2)生産、受注及び販売の実績

当社グループ(当社及び連結子会社)の生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また製品の性質上、原則として見込生産を主体とする生産方式を採っています。

なお、当社グループは製品の在庫を一定の必要水準に保つように生産活動を行っていることから、生産実績は販売実績に概ね類似しています。

 

(3)当連結会計年度の経営成績の分析

2021年度の世界経済は、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種進展等を背景に回復が進みましたが、変異株の影響で先行きが見通しにくい状況が続きました。原材料や物流費の高騰と部材不足が、年間を通じて常に景気の下押し要因となり、更に年度後半からは、インフレの加速や地政学リスク増大等による景気後退懸念が生じました。

このような経営環境のもと、当社は、事業の状況に応じた固定費管理と、新型コロナウイルス感染症による社会変化を捉えた新たな事業機会への取り組みを進めながら、2019年度からスタートした中期戦略の最終年度として、経営体質強化等を継続してきました。あわせて、全ての事業において、攻めるべき領域を定め、そこでの競争力を徹底的に高めてきました。

具体的には、成長に向けた投資として、現場プロセス事業において、2021年9月に、世界トップクラスのサプライチェーン(注)1・ソフトウェアの専門企業である米国Blue Yonderの80%分の株式追加取得を完了し、2020年7月に取得済の20%分の株式と合わせて全株式を取得、同社を完全子会社化しました。当社が長年培ってきたモノづくりのノウハウや、エッジデバイス(注)2、IoT(注)3、センシング技術等に、Blue Yonder のAI(人工知能)・ML(機械学習)が強みであるソフトウェアプラットフォームを組み合わせることで、新しい価値を創造し、両社で「オートノマス(自律的な)サプライチェーン™」を加速、お客様の経営課題を解決するとともに、エネルギーの削減、資源の有効活用を通じて、地球環境の保全やサステナブルな社会の実現を目指しています。

なお、2021年10月には、2022年度からのパナソニック ホールディングス㈱を持株会社とする事業会社制への移行に向けて新体制をスタートさせ、中期戦略を着実に推進するとともに、新事業会社による円滑な事業運営に向けた準備を進めました。

(注)1. サプライチェーン:製品や商品などが消費者に届くまでの調達、製造、在庫管理、配送、販売などの
一連の流れ

2. エッジデバイス:インターネットに接続された機器のこと

3. IoT:Internet of Things 多くのモノ(機器)がインターネットにつながること

 

①売上高

 当年度の連結売上高は、7兆3,888億円(前年度比10%増)となりました。国内売上は、産業・情報通信向け商品が好調に推移し、増収となりました。海外売上は、需要増加を受けた車載電池が伸長、Blue Yonderの新規連結の影響もあり、増収となりました。

 

②営業利益

 営業利益は、3,575億円(前年度比38%増)となりました。原材料価格高騰の影響などがあったものの、増販益や価格改定の取り組みに加え、Blue Yonderの既存持分の再評価益の計上などにより、増益となりました。

 

③税引前利益

 金融収益は221億円(前年度208億円)、金融費用は193億円(前年度186億円)となりました。この結果、税引前利益は、3,604億円(前年度2,608億円)となりました。

 

 

④親会社の所有者に帰属する当期純利益

 法人所得税費用は、950億円(前年度769億円)となりました。この結果、親会社の所有者に帰属する当期純利益は、2,553億円(前年度1,651億円)となりました。また、基本的1株当たり親会社の所有者に帰属する当期純利益は、109円41銭(前年度70円75銭)となりました。

 

⑤セグメントの経営成績

 2021年10月1日にそれまでのカンパニー制を廃止し、事業再編を実施したことに伴い、従来のセグメント区分から、「くらし事業」「オートモーティブ」「コネクト」「インダストリー」「エナジー」の5つの報告セグメントと、報告セグメントに含まれないその他の事業に再編しています。2020年度のセグメント情報については、2021年度の形態に合わせて組み替えて算出しています。

 

a くらし事業

 当セグメントの売上高は、前年度比で3%増加し、3兆6,476億円となりました。

 当年度は、国内はルームエアコンなど空質空調事業が減収となりましたが、海外は中国の美容家電・洗濯機・冷蔵庫や欧州のヒートポンプ式温水暖房機などが好調に推移し、為替影響もあり、全体では増収となりました。

 主な事業部の状況としては、空調冷熱ソリューションズ事業部では、国内のルームエアコンの需要減はありましたが、欧州のヒートポンプ式温水暖房機やアジアのルームエアコンが堅調に推移し、増収となりました。

 エナジーシステム事業部では、海外を中心とした電設資材の販売が好調に推移し、増収となりました。

 キッチン空間事業部では、国内の冷蔵庫・調理家電の販売が減少しましたが、中国の冷蔵庫や北東アジアの電子レンジなどの販売が好調に推移し、増収となりました。

 ライティング事業部では、国内は照明用部品などを中心に増収となりましたが、中国の照明機器の販売落ち込みなどにより、全体では減収となりました。

 当セグメントの営業利益は、1,136億円となりました。中国や欧州での増販益はありましたが、国内家電の減販、原材料価格の高騰、輸送費用の増加などの影響があり、前年度から533億円の減益となりました。

 

b オートモーティブ

 当セグメントの売上高は、前年度比で5%増加し、1兆671億円となりました。

 当年度は、主に東南アジアなどにおける新型コロナウイルス感染症再拡大や、世界的な半導体及び部材のひっ迫などにより、自動車生産が当年度年初の見通しに比べて減少し、当セグメント売上高への影響がありました。しかしながら、上期において前年度に自動車生産が大きく減少したことからの回復があり、また、為替影響なども加わり、車載コックピットシステム事業、車載エレクトロニクス事業ともに増収となりました。

 当セグメントの営業利益は、13億円となりました。半導体などの部材のひっ迫などによる価格高騰や輸送費用の増加がありました。さらに、前年度の上期に、新型コロナウイルス感染症拡大による一時的な工場稼働停止など企業活動が停滞していた結果、当年度はその反動などによる固定費の増加もありました。しかしながら、コストダウン効果や、車載エレクトロニクス事業において前年度に一時費用を計上したこともあり、前年度から131億円の増益となりました。

 

c コネクト

 当セグメントの売上高は、前年度比で13%増加し、9,249億円となりました。

 当年度は、パソコン・サーバー関連の需要増を受けた実装機や、米国や欧州を中心に市場が回復傾向であったプロジェクターがけん引し、増収となりました。

 主な事業部の状況としては、プロセスオートメーション事業部では、サーバーやスマートフォン関連の設備投資及び電気自動車関連投資が好調だったことにより、実装機の需要が増加し、増収となりました。

 モバイルソリューションズ事業部では、欧州を中心に堅牢PCの需要が好調に推移し、国内法人向けノートパソコンの需要も増加したものの、新型コロナウイルス感染症拡大による部材調達の問題が影響し、減収となりました。

 メディアエンターテインメント事業部では、リモートカメラの需要拡大に加え、欧米・中国のプロジェクターが好調に推移し、増収となりました。

 パナソニック アビオニクス㈱では、航空需要や機体生産の回復遅れの影響はありましたが、旅客機の運航便数の回復基調により、機体メンテナンス・リペアサービス事業が増販となり、全体でも増収となりました。

 当セグメントの営業利益は、517億円となりました。実装機やプロジェクターの増販益に加え、Blue Yonderの新規連結による既存持分の再評価益を計上したことなどにより、前年度から717億円の増益となりました。

 

d インダストリー

 当セグメントの売上高は、前年度比で15%増加し、1兆1,314億円となりました。

 当年度は、原材料価格の高騰や半導体不足の影響はありましたが、産業用モーターやリレーに加え、情報通信インフラ・車載用コンデンサーを中心に増販となり、増収となりました。

 主な事業の状況としては、制御機器・FAソリューション事業では、半導体製造装置市場の好況や生産設備の自動化など、設備投資需要拡大による産業用モーターやFAセンサーの増販に加え、車載用を中心にリレー・電源・モジュールユニットなどが好調に推移したことにより、増収となりました。

 電子デバイス・電子材料事業では、サーバー・データセンターなどの情報通信インフラや車載用コンデンサーに加え、車載・産業用の基板材料の増販で、増収となりました。

 その他、半導体や液晶パネル事業は、事業譲渡や事業縮小などの影響により、減収となりました。

 当セグメントの営業利益は、832億円となりました。原材料価格の高騰や半導体不足の影響を受けましたが、情報通信インフラ・車載用コンデンサー、産業用モーター、電源、リレーなどの増販益に加え、生産性向上などの合理化を推進し、前年度から425億円の増益となりました。

 

e エナジー

 当セグメントの売上高は、前年度比で27%増加し、7,644億円となりました。

 当年度は、世界的に旺盛な電気自動車需要やIoT・社会インフラの需要拡大を背景に、車載電池や蓄電システムなどの増販により、増収となりました。

 主な事業の状況としては、車載事業では、世界的な環境規制の強化を背景に、旺盛な電気自動車需要が車載用リチウムイオン電池の販売をけん引しました。加えて、前年度の新型コロナウイルス感染症拡大による影響からの需要回復や、北米電池工場の新ラインが2021年8月から稼働を開始したことなどから、大幅な増収となりました。

 産業・民生事業では、データセンター向けバックアップ電源用蓄電システムに加え、電動アシスト自転車などの動力向けにリチウムイオン電池の販売が好調に推移しました。また、中南米など重点市場向けの乾電池や、インフラ・医療向けのリチウム一次電池の販売も伸長し、増収となりました。

 当セグメントの営業利益は、642億円となりました。増産に伴う固定費増加や原材料価格高騰などの影響はありましたが、車載電池や蓄電システムなどの増販益や材料合理化の取り組みなどによりカバーし、前年度から307億円の増益となりました。

 

f その他(報告セグメントに含まれない事業)

 その他の事業については、ハウジングが堅調に推移し、売上高は、1兆488億円(前年度比7%増)、営業利益は、前年度に比べ増益の177億円(前年度比98%増)となりました。

 

(4)経営成績に重要な影響を与える要因について

「2 事業等のリスク」に記載しています。

 

(5)財政状態及び流動性

①流動性と資金の源泉

 当社グループでは、事業活動に必要な資金は自ら生み出すことを基本方針としています。また、生み出した資金については、グループ内ファイナンスにより効率的な資金活用を行っています。その上で、運転資金や事業投資などのため所要の資金が生じる場合には、財務体質や金融市場の状況を踏まえた適切な手段により外部からの資金調達を行っています。

 

(資金)

 当年度末の現金及び現金同等物の残高は1兆2,059億円となり、前年度末に比べ3,873億円減少しました。2021年9月には、Blue Yonderの80%分の株式追加取得に際し、手元現預金(約35億米ドル)を活用するとともに、残額をブリッジローンにて調達しました。その後、同年10月に円建無担保ハイブリッド社債(劣後特約付社債)(注)4,000億円を発行し、当該ブリッジローンの返済を完了しています。また、円建無担保普通社債を2021年9月に2,000億円、2022年3月に800億円、それぞれ償還しました。

 これらの結果、当年度末の円建無担保普通社債の残高は6,000億円、円建無担保ハイブリッド社債(劣後特約付社債)の残高は4,000億円、米ドル建無担保普通社債の残高は25億米ドルとなりました。

(注)ハイブリッド社債(劣後特約付社債):
資本と負債の中間的性質を持ち、利息の任意繰延、超長期の償還期限、清算手続き及び倒産手続きにおける劣後性等、資本に類似した性質及び特徴を有した社債

 

(有利子負債)

 有利子負債は、円建無担保普通社債の償還を行ったものの、円建無担保ハイブリッド社債の発行や金融機関からの一時的な借入もあり、前年度末の1兆4,474億円から当年度末には1兆8,973億円へ増加しました。なお、当社は、後述のコミットメントライン契約(注)とは別に、2022年4月1日の持株会社化に伴う吸収分割実施にあたり、金融機関から3,000億円の借入を実施していますが、当該借入は各事業会社へ借入債務として分割継承されたうえで、2022年4月1日に全額の返済を完了しました。また、当社は不安定な金融経済環境における資金調達リスクに備え、2018年6月に複数の取引銀行と締結したコミットメントライン契約(総額7,000億円)が満期を迎えたことに伴い、2021年6月に契約を更新し、期間を3年間とするコミットメントライン契約を締結しています。当該契約に基づく無担保の借入設定上限は総額6,000億円ですが、借入実績はありません。

(注)コミットメントライン契約:
金融機関との間で予め契約した期間・融資枠の範囲内で融資を受けることを可能とする契約

 

(格付け)

 当社は、㈱格付投資情報センター(R&I)、S&Pグローバル・レーティング・ジャパン㈱(S&P)及びムーディーズ・ジャパン㈱(ムーディーズ)から格付けを取得しています。当年度末の当社の格付けは、次のとおりです。

 R&I:A (長期、アウトルック:安定的)、a-1 (短期)

 S&P:A-(長期、アウトルック:安定的)、A-2 (短期)

 ムーディーズ:Baa1 (長期、アウトルック:安定的)

 

②キャッシュ・フロー

 当社グループは、事業収益力強化によりフリーキャッシュ・フローを向上させ、中長期的に事業を発展させていくことが重要と考えています。同時に、継続的な運転資本の圧縮、保有資産の見直しなどによるキャッシュ・フローの創出にも徹底して取り組んでいます。

 当年度の営業活動により増加したキャッシュ・フローは2,526億円、投資活動により減少したキャッシュ・フローは7,961億円となり、両者を合計したフリーキャッシュ・フローは、マイナス5,435億円(前年差1兆2,241億円の悪化)となりました。

 なお、キャッシュ・フローの分析の詳細は、次のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当年度の営業活動により増加したキャッシュ・フローは2,526億円(前年度は5,040億円の増加)となりました。前年差の主な要因は、当期純利益の増加はありましたが、棚卸資産の増加や、法人所得税の支払額が増加したことなどによるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当年度の投資活動により減少したキャッシュ・フローは7,961億円(前年度は1,766億円の増加)となりました。前年差の主な要因は、Blue Yonderの子会社化に係る支出や、前年度に資産譲渡等の一時的な収入があったことなどによるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当年度の財務活動により増加したキャッシュ・フローは589億円(前年度は1,777億円の減少)となりました。前年差の主な要因は、Blue Yonderの有利子負債の返済などはあったものの、円建無担保ハイブリッド社債を発行したことなどによるものです。

 

 これらに為替変動の影響等を加味した結果、当年度末で現金及び現金同等物の残高は1兆2,059億円となり、前年度末に比べ3,873億円減少しました。

 

③設備投資額と減価償却費

 当社グループでは、将来の成長に向けて、重点事業を中心に投資を着実に行っていくという考え方に基づき設備投資を行った結果、当年度の設備投資額(有形固定資産のみ)については、前年度の2,310億円から61億円増加し、2,371億円となりました。主要な設備投資は、「くらし事業」における家庭用電化機器・電設資材等の生産設備、「インダストリー」における電子部品・制御機器等の生産設備、「エナジー」における車載用のリチウムイオン電池(米国)等の生産設備、「オートモーティブ」における車載機器等の生産設備、「コネクト」におけるB2Bソリューション事業関連機器等の生産設備です。

 減価償却費(有形固定資産のみ)は、前年度の1,794億円から15億円増加し、1,809億円となりました。

 

④資産、負債及び資本

 当年度末の総資産は8兆236億円となり、前年度末に比べ1兆1,765億円の増加となりました。これは、主に棚卸資産の増加に加え、Blue Yonderの子会社化によるものです。

 負債は、前年度末に比べ5,978億円増加し、4兆6,764億円となりました。これは、主に円建無担保ハイブリッド社債の発行によるものです。

 親会社の所有者に帰属する持分は3兆1,650億円となり、前年度末に比べ5,710億円増加しました。これは、主に親会社の所有者に帰属する当期純利益及びその他の包括利益の計上などによるものです。また、親会社の所有者に帰属する持分に非支配持分を加味した資本合計は3兆3,472億円となりました。

 この結果、親会社所有者帰属持分比率は前年度末の37.9%から増加し、39.4%となりました。

 

 

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