事業等のリスク

2【事業等のリスク】

当社グループでは、リスクを的確に把握し、対策を実施することを経営における重要課題と位置づけ、「パナソニックグループリスクマネジメント基本規程」に基づきグループのリスクマネジメントを推進しています。2021年10月、持株会社制への移行に先駆け、従来の「G&Gリスクマネジメント委員会」を発展的に解消し、グループ・チーフ・リスクマネジメント・オフィサーを委員長とし、パナソニック ホールディングス㈱(以下、「PHD」)の各機能部門のトップを委員とした「PHD エンタープライズリスクマネジメント委員会」(以下、「PHD ERM委員会」)を発足し、定期的に開催しています。具体的には、年1回、事業活動に影響を与える可能性のある外部要因・内部要因に基づくリスクを網羅的に洗い出し、共通の評価軸で評価を行い、対策すべきリスクの優先順位を決定するというサイクルでリスクアセスメントを実施しています。これに基づき重要と判断したリスクは、当該リスクを担当する部門が中心となって、対策を立案、実行し、対策状況をモニタリングし、継続的に改善する活動を実施しています。

また、PHD ERM委員会では、経営・事業戦略の立案・意思決定に際して事業目的の達成上の機会または脅威となりうる不確実な事象を「戦略リスク」として捉え、リスクの度合いに応じて適切なリスクテイクを推進し、把握したリスクの大きさに応じて、講じている対応策を適時に見直すリスクマネジメント活動を開始しました。これにより、従来から推進していたオペレーション上のリスク管理との両輪でリスクマネジメントの強化を図ってまいります。

また、PHD ERM委員会は上記のリスクアセスメントのサイクルに基づき、重要リスクや対応策等を定期的に取締役会に報告しています。

一方、各事業会社においては、自主責任経営のもと、「事業会社ERM委員会」を設置し、事業会社としてのリスクマネジメントを、PHDと同様のマネジメントサイクルで実施しています。各事業会社ERM委員会で選定された重要リスクについては、PHD ERM委員会に報告されます。このような枠組みにより、PHDは、当社グループ全体の機能推進に関するリスク管理を行うと同時に、事業会社から報告を受けたリスク情報をもとに、当社グループ全体のリスク管理を実施しています。

     [リスクマネジメント体制図]

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事業活動に影響を与える可能性のあるリスクのうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を以下に記載しています。ただし、これらは当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、記載された事項以外の予見しがたいリスクも存在します。当社グループの事業、業績及び財政状態は、かかるリスク要因のいずれによっても著しい悪影響を受ける可能性があります。

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識しているリスクは、以下のとおりです。なお、下記「(2) 当社グループの事業運営活動に関するリスク」及び「(4) 法的規制・訴訟に関するリスク」については、事業活動に影響を与える可能性の程度に応じて、「特に重視しているリスク」及び「重視しているリスク」に分けて記載しています。また、文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日(2022年6月24日)現在において判断したものです。

 

(1) 経済環境に関するリスク

経済状況の変動

当社グループの製品・サービスに対する需要は、それらの販売を行っている国又は地域の経済状況の影響を受けるため、世界の市場における景気後退及びこれに伴う需要の減少により、当社グループの事業、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。2022年度の経営環境は、原材料価格及び物流費の高騰と部材不足、世界的なインフレが継続し、新型コロナウイルス感染症による不確実性やロシア・ウクライナ情勢を含む地政学リスクも依然として高く、世界経済の先行きを見通しにくい状況が続きます。日本でも、こうした影響を少なからず受けるとみられます。

需要面については、コネクトにおける航空需要を始めとして、想定通りに需要が回復せず、新たに事業構造改革の実施が必要となった場合、それによる費用増大等の可能性があります。また、半導体や部材の不足については、代替品の調達等により当社グループの事業に与える影響は改善傾向にありますが、コネクトでは部材不足の影響が広範囲に継続する見込みです。また、原材料価格や物流費の高騰については、製品・サービスの価格改定等により軽減を図りますが、くらし事業では鉄・銅・樹脂等を中心に原材料価格の高騰と海外運賃の高騰等の影響が継続する見込みです。さらに、エナジーでは、2021年度第4四半期以降、リチウム・ニッケル・コバルト等の原材料価格が急騰しており、2022年度上期に影響が出ることが見込まれますが、下期には価格改定や合理化等で軽減を目指してまいります。

なお、新型コロナウイルス感染症による上海等におけるロックダウンの影響については、現時点では見積もることが困難です。世界経済が想定以上に悪化する場合や、急激な社会の構造的変化、消費者の消費行動変化が起こる場合等には、当社グループを取り巻く経営環境が現在の予想よりも厳しくなる可能性もあり、その結果、当社グループの事業、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。

このような経営環境の変化に対して、当社は今後も影響を見極めつつ適切な対応策を取ってまいります。

 

為替相場の変動

外貨建てで取引されている製品・サービス等のコスト及び価格は為替相場の変動により影響を受けるため、それにより、当社グループの事業、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。加えて、海外の現地通貨建ての資産・負債等は、連結財務諸表作成の際には円換算されるため、為替相場の変動による影響を受けます。当社グループでは総じて、現地通貨に対する円高は業績に悪影響を及ぼし、円安は業績に好影響を及ぼしますが、一部通貨に対する円安は、輸入商品価格の上昇を通じて、事業によっては業績に悪影響を及ぼすこともあります。2021年度は、前年度と比較して、ドルやユーロに対して円安に動いたことにより、全体として業績に対して好影響を及ぼしました。また、2024年度までの中期経営指標の設定にあたっては、ドルやユーロに対する円安が輸出に好影響を与えるものの、中国元に対する円安が輸入に与える悪影響も想定され、現時点では、当社グループ全体としての業績及び財政状態に重大な影響を及ぼすものではないと想定しています。しかしながら、為替相場に過度な変動があった場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。これらのリスクに対して、事業活動を通じて得た外貨を同一外貨建ての支出に充てる「為替マリー」や、将来における外貨の売却価格もしくは購入価格と数量を事前に契約しておく「為替予約取引」、消費地に近い地域で製品の生産を行う「地産地消型製造」等により、経営への影響の軽減を図っています。

 

金利の変動

金利の変動により支払利息、受取利息あるいは金融資産及び負債の価値が影響を受けるため、それにより、当社グループの事業、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。また当社グループは事業資金等を円及び他通貨での有利子負債等により調達しており、国際的な政情不安、新型コロナウイルス感染症拡大の影響等による経済情勢の変化や金融政策の変化等により金利が上昇した場合、資金調達コストが増加する可能性があり、それにより、当社グループの事業、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。

 

資金調達環境の変化

当社グループは、事業資金等を社債・コマーシャルペーパーの発行等により調達しています。当社グループは、国際的な政情不安や新型コロナウイルス感染症拡大の影響等、様々な外的要因により金融市場が不安定となり、又は悪化した場合、あるいは格付機関による当社の信用格付の引下げ等の事態が生じた場合、必要な資金を必要な時期に適当と考える条件で調達できない等、資金調達が制約されるとともに、資金調達コストが増加する可能性があり、それにより、当社グループの事業、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。これらのリスクに対して、当社グループでは、事業の競争力強化や運転資本の圧縮等を通じて、事業からのキャッシュ・フロー創出力向上を図るとともに、保有資産の見直し等、バランスシートからの資金創出に継続的に取り組む等、資金創出力の強化に努めています。なお、2021年6月に複数の金融機関との間で期間を3年間とする総額6,000億円のコミットメントライン契約(注)を締結しており、現金及び現金同等物の残高とあわせて十分な流動性を確保することで経営への影響の軽減を図っています。

(注)コミットメントライン契約:金融機関との間で予め契約した期間・融資枠の範囲内で融資を受けることを可能とする契約

 

株式価値の下落

当社グループは、金融資産の一部として国内外の企業等の株式を保有していますが、株価下落等の株式価値の減少により、親会社の所有者に帰属する持分が減少する可能性があります。

 

(2) 当社グループの事業運営活動に関するリスク

a. 特に重視しているリスク

国際的な事業運営における障害

 当社グループは、海外市場での事業拡大を戦略のひとつとしていますが、海外では為替リスクに加え、政情不安(戦争・内乱・紛争・暴動・テロを含む)、経済動向の不確実性、宗教及び文化の相違、現地における労使関係等のリスクに直面する可能性があります。また、投資規制、収益の本国送金に関する規制、現地産業の国有化、輸出入規制や外国為替規制の変更、税率変更等を含む税制改正及び移転価格課税等の国際課税リスク、海外での商慣習の差異といったさまざまな政治的、法的その他の障害に遭う可能性があります。

 特に、昨今の貿易規制・経済制裁に関する各国の法規制の変更は、グローバルに生産拠点を持ち、製品を供給している当社グループの事業に大きな影響を与えます。当社グループはこうした動向を注視し、日々情報収集を行うことで、当社グループの事業に影響のある新たな貿易規制・制裁を早期に把握し、グローバルポリシー、ガイダンスを適宜更新する等の対応や、新たな規制分野で対象となる貨物・技術の該非判定を徹底して実施しています。また、社内への周知徹底、取引リスク回避のための対応策の発信等、国内外の従業員啓発に取り組んでいます。

 また、経済安全保障問題については、各国の機微技術規制や管理が強化されつつある一方で、各国で産業基盤強化の支援、先端的な重要技術の研究開発、機微技術の流出防止や輸出管理強化等の施策の推進・強化が進められており、我が国でも「経済安全保障推進法」が2022年5月11日に成立しました。当社グループとしては、こうした動向が当社グループの事業に与える影響を絶えず注視しながら対応をしてまいります。

 次に、ロシア・ウクライナ情勢に関しては、現在のところ、当社グループの業績及び財政状態に直接与える影響は軽微と見込んでいますが、エネルギー・原材料価格のさらなる高騰等によって、今後、事業、業績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 また、新型コロナウイルス感染症については、感染拡大当初、各国の緊急事態宣言、ロックダウンや外出制限等が当社の事業に影響を及ぼしました。既に多くの国では制限は緩和されていますが、国・地域によって感染拡大・ロックダウンも続いており、今後の感染拡大によっては再び経済活動の制限が強化され、当社の事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

環境問題・気候変動

 当社グループは、「より良いくらし」と「持続可能な地球環境」の両立に向け、クリーンなエネルギーでより良く快適に暮らせる社会を目指し、使用するエネルギーの削減と、その使用を上回るエネルギーの創出・活用を進めています。

 特に重視しているリスクとして、環境問題への意識の高まりに伴う、国際社会での環境規制・政策の導入・拡大があげられます。これにより、環境重視の政策・環境規制に対応した新規技術・事業開発の機会の拡大が見込まれる一方、炭素税や排出権取引制度等のカーボンプライシングの導入等によりエネルギー調達コストが増加したり、排出権の購入を余儀なくされること、環境負荷の低い材質への切り替えにより製造コストが増加すること、低炭素製品のコモディティ化等により、当社グループの事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、こうした環境問題対策が遅れることにより欧州をはじめとする各国市場への事業進出機会の喪失や取引停止等による事業機会の喪失につながる可能性があります。

 また、資源不足・資源制約によるサーキュラーエコノミーの進展により、再生可能エネルギーの積極利用による企業価値の向上が図れる機会が増大すると同時に循環資源を用いた低炭素製品の需要拡大も見込まれます。一方で、循環資源(再生材・再利用原材料)の価格上昇・供給不足による生産コストの増大や生産の遅延が頻発・常態化する可能性があります。

 2021年5月に、当社グループは「2030年にグループのCO₂排出を実質ゼロ」を目標とすることを発表しました。また、2022年1月には、グループ長期環境ビジョン「Panasonic GREEN IMPACT」を発信し、私たちが提供する商品を通じてお客様が排出するCO₂も含めた自社バリューチェーン全体の1.1億トンのCO₂排出に見合う削減の責務を果たすことに加え、さらに幅広い事業領域を活かして、社会へのCO₂削減貢献量を拡大するとの方針を示しています。その目標として、2050年までにグループの事業活動を通じて、現時点の全世界のCO₂総排出量の「約1%」にあたる3億トン以上の削減インパクトを目指します。当社グループは、地球温暖化の進展による特定の商品・サービスに対する需要の変化や、環境問題への意識の高まりによる国際社会での環境規制・政策の導入・拡大を見据えながら、関連ビジネス市場を通じてこうした活動を強化し、環境問題、気候変動問題に取り組んでまいります。

 

情報セキュリティに関するリスク

 当社グループは、事業の過程で、顧客等のプライバシーや信用に関する情報(顧客の個人情報を含む)を入手することや、他社等の機密情報を受け取ることがあります。また、顧客や他社等の情報以外に、当社自身の営業秘密(当社グループの技術情報等)を取り扱っています。これらの情報は、システムの不正アクセスやサイバー攻撃を含む意図的な行為や過失等により外部に流出する可能性があります。また、当社の製品やサービス、生産設備、管理システムは、インターネットを利用するものが増加しており、製品やサービスへのネットワークを介した予期せぬ侵入、不正操作等による個人情報の漏洩、外部への情報流出、サービス停止、工程への影響等が発生する可能性があります。これらの事象が生じた場合には、それに起因して被害を受けた方に対して損害賠償責任を負ったり、多大な対策費用等が発生する可能性があります。また、当社グループの事業活動の停止・中断を余儀なくされたり、当社グループのイメージが悪影響を受けたりする可能性があります。その結果、当社グループの事業、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。

 当社グループは2021年11月11日に、当社ネットワークへの第三者による不正アクセスを確認しました。不正アクセスの確認後、緊急対策本部を立ち上げ、侵害調査と緊急対策のために外部のセキュリティアドバイザーも起用し、被害の全容解明と恒久対策に取り組んでまいりました。今後の対策として、より高度な情報セキュリティレベルを実現するために、国内のみならず海外子会社も含めてネットワーク、サーバ、パソコン等へのさらなる異常監視の拡大と、グローバルかつ一元的なセキュリティ監視体制の強化を行い、再発防止に取り組んでまいります。しかしながら、当社として最大限の防御策は講じるものの、激化・巧妙化するサイバー攻撃を完全に防御できず、その結果、当社グループの事業、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。

 

b.重視しているリスク

競合他社との競争

当社グループは、広範多岐にわたる製品・サービスの開発・生産・販売を行っており、国際的な大企業から小規模ながら急成長中の専門企業まで、さまざまなタイプの企業と競合しています。当社グループは、戦略事業への投資を推進していますが、特定の事業に対する投資を、競合他社と同程度に、またはタイムリーに、場合によっては全く実施できない可能性もあります。また、競合他社がそれぞれの競合事業において当社グループよりも大きな財務力、技術力及びマーケティング資源を有している可能性があります。

そうした競合環境の中、当社グループでは、長期視点で戦略を再構築し、競争力強化を目指しています。まず、喫緊の課題である環境問題の解決に向けた取り組みを強化することで、お客様へのお役立ちを通じて競争力の強化を図ってまいります。また、キャッシュの獲得を前提として、事業会社のみならずグループとしても強みを持つ事業に戦略的に投資してまいります。

次に、競争力の強化には、事業のあらゆる現場において、ムダや滞留を撲滅し事業のスピードを高める「オペレーション力」が不可欠です。当社グループでは、正味付加価値を生まない業務のIT活用による効率化を推進すると同時に、事業の競争力強化テーマ、開発設計、製造・販売、調達等グループ共通でスケールメリットのあるテーマについてビジネスプロセスの変革に取り組んでいます。加えて、デジタル技術の活用と業務改善活動の積み重ね、職場のあらゆるムダと滞留、手戻りを排除する活動を展開することにより、コストを削減し、競争力強化を図っています。

 

他社との提携・企業買収等の成否

 当社グループは、新しい製品やサービスの提供等を目指し、他社との業務提携や合弁会社設立、他社の買収等を行っており、これら戦略的提携や企業買収の重要性は増加傾向にあります。当社グループでは、重要な戦略的提携については、検討の段階に合わせて所定の審議を実施しており、事業戦略との整合性、検討の抜け漏れの有無確認、価格や契約内容の妥当性、リスクの洗い出し、統合プラン等の検証を実施していますが、相手先とのコラボレーションが円滑に進まない可能性や、当初期待した効果が得られない可能性、投資の全部または一部が回収できない可能性があります。また、事業展開の過程で相手先が当社グループの利益に反する決定を行う可能性があります。加えて、これらの相手先が事業戦略を変更した場合等には、当社グループは提携関係を維持することが困難になる可能性があります。企業買収については、買収にかかる多額の費用が発生する可能性や、買収後の事業統合・再編等にあたり、期待した成果が十分に得られない、または予期しない損失を被る可能性があります。

 当社グループは、2021年9月にBlue Yonderの80%分の株式を追加取得し同社を完全子会社化しています。当社グループは、Blue Yonderの様々なサイバー分野でのケイパビリティを取り込むことで、現場プロセスイノベーションの実現を加速し、また、両社のシナジー最大化に取り組んでいます。しかしながら、キーマネジメントメンバーを含めた優秀な人材の保持及び従業員の士気の維持ができない場合、事業環境や競合状況の変化等により、Blue Yonderの競争力が大きく低下する場合、重要な顧客やその他関係者との良好な関係を維持できない場合等により、これらの期待した効果が十分に得られない可能性があります。また、完全子会社化に伴い、相当額ののれん及び無形資産を連結財政状態計算書に計上しており、事業環境や競合状況の変化等により期待した効果が得られないと判断され、回収可能価額が帳簿価額を下回った場合は、減損損失が発生し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります(詳細は「(6)その他のリスク」の「非金融資産の減損」を参照)。

 当社グループは、Blue Yonderの事業成長及び両社のシナジー最大化に向けて、PMI(買収後の経営統合)を着実に推進しています。具体的には、両社間において新たな経営体制・協業プランを推進し、本件取引完了後のリスク軽減を図っています。

 なお、Blue Yonderを中心としたサプライチェーンマネジメント(以下、「SCM」)事業を取り巻く環境は大きく変化しています。企業のSCMソリューションに対する期待が高まり、急激な市場拡大が見込めるとともに、研究開発活動(R&D)やM&A等の投資競争が激化しています。そのような中、SCM事業の競争力を強化するためには、資本市場の力を借りてグローバルでの成長を加速させるために株式上場を行うことが最適であると判断し、当社が議決権の過半数を保有する重要な連結子会社と位置付ける事を前提に、Blue Yonderを中心としたSCM事業の株式上場に向けた準備を開始することを、2022年5月11日に公表しています。株式上場に関しては、証券取引所その他の関係当局の承認や許認可等を得られることが前提となり、株式上場の準備過程における検討の結果次第では、当社グループの組織再編が必要な場合やSCM事業は株式上場しないという結論に至る可能性もあります。

 

事業再編の成否

 当社グループは、多くの子会社及び関連会社等を有していますが、経営の効率化と競争力の強化のため、グループ事業体制を再編(他社への事業又は株式の譲渡や、グループ内の組織または拠点再編等を含む)することがあります。しかし、現在及び将来における再編において、当初期待した成果が十分に得られない可能性があります。

 当社グループは、より中長期的な視点での当社事業の競争力強化に向けて、当社を分割会社とする会社分割を実施し、2022年度から当社を持株会社とする事業会社制へ移行しました。事業会社制への移行により分社化された各事業会社は、外部環境の変化に応じた迅速な意思決定や事業特性に応じた柔軟な制度設計等を通じて、競争力の大幅な強化に取り組む一方、当社は、持株会社として各事業会社の競争力強化を積極的に支援するほか、当社グループの成長戦略を立案・推進し、グループとしての企業価値向上に努めてまいります。しかしながら、事業会社制における組織の多層化による意思決定スピードの低下や、各社で独立した管理業務が発生することによるコスト増加等により、当初期待した成果が十分に得られない可能性があります。

 そのようなリスクに対し、当社では、持株会社として当社グループの中長期戦略について議論や方向づけをするとともに、事業会社が起案する重要案件については、持株会社の視点から事業会社での意思決定を支援する等、事業運営におけるリスクの低減に努めてまいります。

 ガバナンスに関しては、徹底的な事業競争力の強化に向けて、必要な権限は事業会社へ委譲し意思決定の専門性とスピードを強化して行くとともに、これまで実施してきた当社グループとしてのガバナンス強化の視点は変えずに、適切な情報収集を行い、それに基づくガバナンスを実行するため、当社取締役の一部が事業会社取締役を兼務する等の具体的な体制や制度を検討・構築しました。また、今回の事業会社制への移行に際し、間接機能の重層化や機能の重複を解消し、軽量化するため、プロフェッショナルサービス(間接部門)を担う会社を新たに設置しました。プロフェッショナル機能及びオペレーション機能として間接機能の提供価値を全社で見える化するとともに、間接業務の効率化・高度化を推進することで、間接固定費の高効率化に努めてまいります。

 

原材料等の需給・輸送の混乱、価格高騰

 当社グループの製造事業にとって、十分な品質の原材料、部品、機器、サービス等をタイムリーに必要なだけ入手することが不可欠であり、当社グループは、信頼のおける供給業者を選定しています。しかし、災害・事故、感染症の拡大や供給業者の倒産等により、供給が不足または中断した場合や業界内で需要が増加した場合には、供給業者の代替や追加、他の部品への変更が困難な場合があります。加えて、当社グループが部材を納入している取引先においてこれらの事象により生産の中断・停止、生産規模の縮小が生じた場合、当社グループの販売数量が減少する可能性があります。これらの事象により当社グループの事業、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。

 また、昨今では、原材料・燃料費の高騰に加え、コンテナ輸送費用の高騰や国内・海外双方でのドライバ-不足等が続いています。当社グループでは、原材料・部材の高騰に対しては、先物予約ヘッジを積極的に推進し、グループでの集中購買をさらに加速し、価格上昇の抑制や安定確保に取り組んでいます。また、物流価格の上昇につきましては、積載効率向上による使用コンテナ本数の削減、海上輸送ルートの複線化、中長期的なコンテナスペースの確保に取り組んでいます。しかしながら、ロシアのウクライナ侵攻による各国の経済制裁や物流の混乱が長期化すれば、さらにコストが上昇し、当社グループの事業が悪影響を受ける可能性があります。

 なお、新型コロナウイルス感染症への対応については、2020年度の流行拡大の当初、2次購入先も含め影響のある購入先、品目のすべてにわたり、一斉に購入先調査を行い、対策を実施しました。その中で、課題のある購入先や品目を洗い出し、代替購入先及び拠点の確保に取り組んでまいりました。その結果、当初は一部部品の供給難に陥りましたが、現在では供給の継続が実現できています。一方で、新型コロナウイルス感染症の更なる感染拡大による急激な需給環境の変化により、一部部品の供給に支障が生じる可能性があります。

 

製品価格の下落

当社グループは、国内外の市場において激しい競争にさらされており、当社グループにとって十分に利益を確保できる製品価格を設定することが困難な場合があります。当社グループはコスト削減、高付加価値商品の開発に取り組んでいますが、これらの企業努力を上回る価格下落圧力は、当社グループの利益の維持・確保に深刻な影響を与えるものであり、この影響は特に製品の需要が低迷した場合に顕著となります。BtoC(一般消費者向け)分野においては、新興国市場・低価格品への需要シフト等の市場構造変化が進むなか、デジタル家電機器をはじめとする当社グループの事業分野で製品価格が下落する可能性があります。他方、BtoB(企業向け)分野においては、依存度の高い特定の取引先からの企業努力を上回る価格下落圧力や製品需要の減少・設備投資圧力等により、当社グループの事業、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。

 

技術革新・業界標準における競争

当社グループは、新製品やサービスをタイムリーに開発・提供していく必要があります。当社グループの主要事業においては、BtoC(一般消費者向け)分野及びBtoB(企業向け)分野のいずれにおいても技術革新が重要な競争要因になっており、当社グループが将来の市場ニーズを把握しきれず、これに応えるための新技術を正しく予想し開発できない場合や、当社グループが開発・提供した技術が業界において主流とならず、競合他社が開発した技術が業界標準となった場合には、新しい市場での競争力を失う可能性があります。

 

有能な人材確保における競争

当社グループの将来の成功は、研究、開発、技術、製造、管理等の分野で才能のある人材を引き付け、維持する能力に大きく依存しています。当社グループでは、グローバルに幹部人材の選定基準・プロセス・ITプラットフォームを統一し、年齢・性別・国籍等の属性に関わりなく、最適任者を発掘し、計画的なキャリア開発と登用を実現すべく取り組んでいます。特に、役員を含む経営者候補については、育成方針や選定の観点を明確化し、早期からの人材の発掘と多様な経験を通じたキャリア開発を進めています。

一方で、各分野での有能な人材は限られており、人材確保における競争は激化しています。こうした状況下、在籍している従業員の流出の防止や有能な人材の獲得ができない場合は、当社グループの事業、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。

 

労働安全・労働時間管理

当社グループは、職場作業環境や作業手順の不備、不適切な労務管理により社員や関係者が肉体的、精神的な被害を被る可能性があります。また、不適切な労働時間管理により、従業員の健康被害、職場における士気の低下等の可能性もあります。

当社グループは、各種法令や当社の経営基本方針に基づき、労働安全衛生ポリシーや安全衛生管理規程を制定し、従業員の安全と衛生の確保、快適な職場環境の実現と労働災害防止の基準を定め、安全衛生活動を展開しています。また、グループ安全衛生管理部門を責任者とした中央安全衛生委員会を設置し、その傘下に事業会社・事業場の安全衛生組織を設置し、安全衛生管理に係る重要な方針や政策を審議・決定し、活動やモニタリングを実施しています。また、適正な労働時間の把握・管理については、昨今のリモートワーク拡大も踏まえ労働時間に関する客観的データの収集・活用方法を刷新するとともに、従業員に対する継続的な意識啓発、勤務管理システムの拡充等により過重労働の防止に努めています。

 

(3) 将来の見通し等の未達リスク

 当社グループは、2022年4月にグループ新中長期戦略を発表し、また、同年6月には各事業会社による戦略を発表し、これらの実現に向けた具体的な施策を推進しています。これらの戦略は、設定時において適切と考えられる情報や分析等に基づき策定しています。

 2022年度の世界経済は、原材料価格及び物流費の高騰と部材不足、世界的なインフレが継続し、新型コロナウイルス感染症による不確実性やロシア・ウクライナ情勢を含む地政学リスクも依然として高く、世界経済の先行きを見通しにくい状況が続いています。今後、こうした世界経済の影響、その他の要因により、期待される成果が実現に至らない可能性があります。中長期戦略の推進にあたっては、世界経済や事業環境の動向を踏まえ、定期的な進捗管理と課題の見極めや適時適切な対策の検討・実践等を通じて、未達リスクの最小化に努めてまいります。

 

(4) 法的規制・訴訟に関するリスク

a. 特に重視しているリスク

コンプライアンスリスク

 当社グループでは、「パナソニックグループ コンプライアンス行動基準」において、「社会の公器」として公正な事業慣行に取り組むことを定め、法令と企業倫理の順守を明記して、当社の基本姿勢を全取締役・社員に共有・徹底するとともに、「独占禁止法・競争法違反」や「贈収賄・腐敗行為」等の重大なリスクに対しては、グローバル規程に基づくコンプライアンスの徹底に取り組んでいます。また、従業員に対しては、年間を通じて、各種リスクに対応したコンプライアンスの取り組みを実施し、倫理・法令順守意識の強化に努めています。さらに、一元的な内部通報窓口として、国内外の拠点や取引先からも通報ができるグローバルホットラインを設け、適切な社内調査を通じて問題の早期発見と是正を図っています。

 また、「パナソニックグループ コンプライアンス行動基準」では、「人権を尊重し、各国・各地域において法令を順守するとともに、文化・宗教・価値観等を正しく理解・認識することに努め、それらに対し敬意をもって接し、誠実に行動」することを明記しています。また、「人権・労働コンプライアンス規程」を制定し、人権を尊重するという企業の社会的責任を果たすため、国際連合や国際労働機関が提唱する人権に関する国際規範や法令の順守に取り組むと共に、多様な人材がそれぞれの力を最大限に発揮できる働き甲斐のある労働環境を実現するため、基本方針と取締役や社員等が果たすべく役割について規定しています。当社は、国連の世界権宣言、労働の基本原則及び権利に関する国際労働機関(ILO)宣言、OECD多国籍企業行動指針の基本原則を支持し、権・労働に関する重要な法的要請の変更等については、情報を収集して各拠点に徹底し、コンプライアンス強化に努めています。

 これらのコンプライアンス強化に向けた取り組みについては、追加的な費用や支出が生じることにより当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があるほか、このような取り組みに関わらず、万一、当社グループにおいてコンプライアンス違反行為が発生したり、コンプライアンス上の問題に直面した場合には、当社グループが、課徴金等の行政処分、刑事処分または損害賠償訴訟の対象となり、また当社グループの社会的評価が悪影響を受ける可能性があります。

 

サプライチェーンに係るリスク

 当社グループは、グローバルで約10,000社以上の購入先様と取引をしています。近年、サプライチェーンにおける企業の社会的責任の要請は日増しに強くなっており、こうした流れは法規制の動きにも表れ、特に人権分野を中心に新たな規制の制定や発動が行われています。当社グループでは、「サプライチェーン・コンプライアンス規程」を制定し、グループの調達活動及びサプライチェーンにおけるコンプライアンスに関する基本的事項並びに各組織の役割及び責任を明確にし、取締役並びに従業員が果たすべき役割を定め、責任ある調達活動を推進するための体制並びに基本方針を規定しています。また、購入先様に順守頂きたいCSRの要請項目(人権・労働、安全衛生、地球環境保全、情報セキュリティ、社会貢献等)をまとめた「パナソニック サプライチェーンCSR推進ガイドライン」を発行し、国際基準や業界での標準的な考え方を参照し、さらにNGO・顧客企業からのCSR要請も考慮した形でパナソニックグループのCSR調達の考え方をお伝えし、共に実践をしています。

 しかしながら、サプライチェーンにおける責任ある調達活動への取り組みによって期待した成果が得られない場合、当社グループのイメージ・評判の低下、顧客の流出等を惹起し、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

b. 重視しているリスク

製造物責任や補償請求による直接・間接費用の発生

 当社グループでは、製品安全に対する知見や不安全事象の未然防止策を、全社の安全規格へ盛り込むと共に、日々のリスク管理を行っています。しかしながら、製品の欠陥による品質問題(不安全事故等)が発生した場合、欠陥に起因する損害(間接損害を含む)に対して、当社グループは生産物賠償責任保険で十分補償しきれない賠償責任を負担する可能性や多大な対策費用を負担する可能性があります。また、当該問題が生じることにより、当社グループのイメージ・評判の低下、顧客の流出等を惹起し、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

知的財産権に関連した損害

当社グループは、自らが出願する特許に対して権利が付与されない場合もあり、知的財産権による十分な保護が得られない可能性があります。加えて、国によっては知的財産権の一部またはすべてが保護されない場合があります。また、第三者が保有している知的財産権については、その技術を利用したい場合でも利用できないことや不利な条件で利用せざるをえないこともあり得ます。現状、第三者からのライセンスを受けて第三者の特許その他の知的財産権を使用しているものがありますが、将来使用できなくなったり、ライセンス条件が不利に変更されたりする可能性があります。加えて、当社グループが知的財産権に関し訴訟等を提起されたり、当社グループが自らの知的財産権保全のために訴訟等を提起しなければならない可能性があります。かかる訴訟等には、多額の費用と経営資源が費やされる可能性があり、また当社グループが第三者の知的財産権を侵害しているとの申し立てが認められた場合には、当社グループが重要な技術を利用できない可能性や多額の損害賠償責任を負う可能性があります。

 

その他の法的規制等による不利益及び法的責任

当社グループは、日本及び諸外国・地域の規制に従って事業を行っています。法規制には、商取引、独占禁止、知的財産権、製造物責任、環境保護、消費者保護、労使関係、金融取引、内部統制及び事業者への課税に関する法規制に加え、事業及び投資を行うために必要とされる政府の許認可、電気通信事業及び電気製品の安全性に関する法規制、国の安全保障に関する法規制及び輸出入に関する法規制等があります。より厳格な法規制が導入されたり、当局の法令解釈が従来よりも厳しくなったりすることにより、技術的観点や経済的観点等から当社グループがこれらの法規制に従うことが困難となり、事業の継続が困難と判断される場合には、当社グループの事業は制限を受けることになります。また、これらの法規制等を順守するために当社グループの費用が増加する可能性があります。さらに、当社グループがこれらの法規制等に違反し、または法令遵守のための内部統制体制が不十分であったと当局が発見または判断した場合には、当社グループが、課徴金等の行政処分、刑事処分または損害賠償訴訟の対象となり、また当社グループの社会的評価に悪影響を受ける可能性があります。

 

(5) 災害・事故等に関するリスク

a.自然災害

当社グループは、製造、販売、研究開発等の活動をグローバルに展開しており、世界中に拠点を有しています。地震、津波、洪水等の自然災害(気候変動によって発生するものも含む)や火災・爆発事故、戦争、テロ行為、感染症の流行等が発生した場合に、当社グループの拠点の従業員、設備、情報システム等が大きな損害を被り、その一部の操業が中断し、生産・出荷が遅延する可能性及び損害を被った設備等の修復費用が発生する可能性があります。加えて、これらの災害・事故等が、部品等の供給業者や製品納入先等といった当社グループのサプライチェーンにおいて発生した場合には、供給業者からの部品等の供給不足・中断、製品納入先における生産活動の休止または低下等により当社グループの生産活動・販売活動等が大きな悪影響を受ける可能性があります。

当社グループでは、こうしたリスクを低減するため、サプライチェーンも含めたBCP(事業継続計画)の見直しを定期的に実施しています。また、「グループ緊急対策規程」を制定し、緊急事態発生時に速やかに対応できるよう、対応方針、組織体制やそれぞれの機能の役割等を具体的に規定しています。

特に、自然災害については、平時における備えを強化するとともに、緊急事態時には迅速に緊急対応体制に移行できるよう、当社グループ全体で「災害・事故対策委員会」を設置しています。「災害・事故対策委員会」では、地震、津波、洪水の分科会を設置し、災害別の対策強化を図っています。特に、過去の災害時には電力需給のひっ迫が生じたことも踏まえ、事業継続のための非常用電源設備等をBCPに取り入れています。また、緊急時を想定した「全社緊急対策本部」訓練を毎年実施しており、2022年1月には南海トラフ地震を想定した全社防災訓練「全社緊急対策本部」演習を実施しました。特に、新型コロナウイルスの感染拡大以降は、従業員の感染防止のため、テレワークを推進していますが、2021年度の訓練についても、災害発生時に在宅勤務者が多数いることを前提とした、リモート会議での訓練を実施しました。

 

b.感染症リスク

前述の一部業界の需要減による影響を除き、これまで新型コロナウイルス感染症による、当社グループ全体への大きな悪影響は発生していませんが、相次ぐ変異株の発生により、依然として本感染症が当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、前述の「グループ緊急対策規程」に基づき、新型コロナウイルス感染症についてはWHOの緊急事態宣言を受け、2020年1月31日に全社緊急対策本部を発足しました。対策本部の中で職能を中心とする経営、調達、広報等のチームを編成し、それぞれの課題に専門的に対応することにより、事業の安定継続に取り組んでいます。また、これに合わせて、事業を運営している各事業会社においても対策本部を設置し、全社緊急対策本部と連携し対策にあたっています。初動対応が終了している現時点においても、従業員の健康維持と事業の継続の観点から、国内外の感染状況や各国の行政のガイドラインをふまえ、きめこまかくグループ通達を行う等の対策を実施しています。

また、当社グループは全従業員の安心・安全の確保はもちろんのこと、安全に事業を運営できる体制を維持するとともに、日本国内のワクチン接種を加速させ、感染拡大防止に寄与するという社会的責任を果たすために、2021年6月よりワクチンの職域接種を実施しています。現時点で3回目の職域接種を実施しており、今後も感染状況や行政のガイドラインを踏まえながら、対応してまいります。

 

(6) その他のリスク

退職給付に係る負債

当社グループは、一定の受給資格を満たす日本国内の従業員について外部積立による退職年金制度を設けています。当社及び一部の国内子会社は、確定給付年金制度から、各々の移行日以降の積立分(将来分)及び移行日以前の積立分(過去分)の一部について確定拠出年金制度へ移行していますが、確定拠出年金制度に移行していない部分については、今後も金利の低下により確定給付制度債務に関する割引率を引き下げる必要が生じる可能性や、株価の下落により制度資産の公正価値の減少をもたらす可能性があり、その結果、退職給付に係る負債が増加し、親会社の所有者に帰属する持分が減少する可能性があります。

 

非金融資産の減損

 当社グループは、有形固定資産、のれん、無形資産及び使用権資産等、多くの非金融資産を保有しています。非金融資産(棚卸資産及び繰延税金資産等を除く)については、当該資産または資金生成単位(以下、「当該資産」)の減損の兆候の有無を判定し、減損の兆候がある場合には、当該資産の回収可能価額を見積り、減損テストを実施しています。なお、のれん及び耐用年数を確定できない無形資産については、減損の兆候の有無にかかわらず、毎期減損テストを実施しています。減損テストの結果、当該資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、減損損失を認識する可能性があります。なお、回収可能価額の見積りには、新型コロナウイルス感染症の影響に関する一定の仮定が含まれており、今後の状況によっては、事後的な結果との間に乖離が生じる可能性があります。

 

繰延税金資産の認識

当社グループは、繰延税金資産について、将来課税所得に対して利用できる可能性が高いものに限り認識しています。認識された繰延税金資産については、期末日に見直しており、税務便益が実現する可能性が高くなくなった部分を減額することにより、法人所得税費用が増加する可能性があります。なお、将来課税所得の見積りには、新型コロナウイルス感染症の影響に関する一定の仮定が含まれており、今後の状況によっては、事後的な結果との間に乖離が生じる可能性があります。

 

持分法適用会社の業績・財政状態

当社は、複数の持分法適用会社の株式を保有しています。各社は各々の事業及び財務に関する方針のもとで経営を行っており、当社はその方針決定に関与することができる重要な影響力を有していますが、支配には至らないため、通常、方針そのものの決定は行いません。これらの持分法適用会社の業績・財政状態の悪化により、当社グループの業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。

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