課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日(2022年6月24日)現在において判断したものです。

 

(1) 会社経営の基本方針

 当社は創業以来、「事業活動を通じて、世界中の人々のくらしの向上と社会の発展に貢献する」ことを経営基本方針の中心に据えて事業を進めてまいりました。今後も、物も心も豊かな「理想の社会」の実現に向け、社会課題に正面から向き合って、現在と未来に対する不安の払拭に挑戦し、新しい価値を創造することを目指してまいります。地球環境問題をはじめ、さまざまな社会課題に正面から向き合い、社会の発展や課題解決に大きな貢

献を果たすとともに事業競争力を強化し、株主の皆様や投資家、お客様、取引先、従業員をはじめとするすべての関係者の皆様にご満足いただけるような価値提供を通じて、持続的な企業価値の向上に努めてまいります。

 

(2) 会社の経営戦略と対処すべき課題

①2022年度の主な取り組みについて

 2022年度の世界経済は、原材料価格及び物流費の高騰と部材不足、世界的なインフレが継続し、厳しい状況が予想されます。新型コロナウイルス感染症による不確実性や地政学リスクも依然として高く、先行きは見通しにくい経営環境が続きます。さらに日本では、円安による経済への悪影響が懸念材料です。

 このような状況もふまえ、当社は、2022年度より新しいグループ体制に移行し、新中長期戦略をスタートしました。新中長期戦略では、当社の使命である「物と心が共に豊かな理想の社会」の実現に向けて地球環境問題の解決と、世界中の皆様お一人おひとりの「くらし」と「しごと」の場面での人々のウェルビーイング、すなわち快適で安心で心身ともに健康で幸せな状態への貢献を果たすことを目指します。

 

<中長期戦略のポイント>

1 Panasonic GREEN IMPACT

2050年に向けて現時点の全世界CO₂総排出量の「約1%」にあたる3億トン以上の削減インパクトを目指します。(注1)

2 中期経営指標(KGI:Key Goal Indicator)

事業の競争力を徹底強化し、キャッシュ創出力を向上。

・累積営業キャッシュ・フロー:2.0兆円(2022-2024年度)

・ROE(株主資本利益率):10%以上(2024年度)

・累積営業利益:1.5兆円(2022-2024年度)

3 中長期戦略における投資の考え方

・事業会社は、自ら稼いだキャッシュを基に、あるべき姿に向け自ら投資を行い、各事業領域でさらなる成長を目指します。

・財務規律を意識しつつも、競争力強化により得られたキャッシュで、事業会社のみならずグループとしても戦略的に2022年度から2024年度までの3年間で「成長領域」に4,000億円、「技術基盤」に2,000億円を投資します。

「成長領域」:車載電池領域、サプライチェーンソフトウェア領域、空質空調領域

「技術基盤」:水素エネルギー、CPS(Cyber Physical System)を含むグループ共通技術基盤

4 グローバル戦略

グローバルでは、地域特性に応じて現地のお客様に向き合った戦略、各地域におけるオペレーション力の強化を進め、事業を通じたPanasonic GREEN IMPACTを拡大していきます。

5 競争力強化に向けたグループ共通の重点施策

挑戦を願う従業員の声を傾聴し、個性が最大限に活きる環境づくりを推進する「一人ひとりが活きる経営」と、Panasonic Transformation(PX)(注2)や改善思想とデジタル技術を通じた現場革新によるサプライチェーン全体のオペレーション力の徹底強化を推進します。

(注1) 2019年エネルギー起源CO₂排出量336億トン(出典:IEA)、3億トンは2020年の排出係数で算出

(注2) Panasonic Transformation(PX):「デジタルと人の力で「くらし」と「しごと」を幸せにする」をスローガンに当社が推進するDigital transformation

 

②各セグメントにおける代表的な取り組み

くらし事業

 新型コロナウイルスの感染再拡大、世界的な需要急増に伴う半導体不足、原材料高騰などの影響も継続していますが、長引くコロナ禍において生活様式は多様化し、環境・省エネに対する考え方にも変化が見られるなど、今後益々、くらしにまつわるさまざまな分野において、顧客視点でくらしの質を豊かにしていく期待が高まってくると見込まれています。

 そのような中、白物家電を中心とするくらしアプライアンス社では、あらゆる局面でお客様と繋がり、くらしに寄り添う事業を展開するため、UX(注)起点の商品創出と流通改革で収益拡大を目指します。空調、空質事業が一体となった空質空調社では、ナノイー・ジアイーノなどの浄化技術を活かした空質空調融合商品による顧客価値向上に取り組みます。また、電気設備領域を中心とするエレクトリックワークス社では、重点地域であるインド、トルコ、ベトナムを中心にマーケティング・生産体制を強化して商品の拡大を図るとともに、件名需要や新規事業の取り組みを通した事業拡大を進めていきます。冷凍冷蔵ショーケースや厨房機器を中心とするコールドチェーンソリューションズ社では、お客様の低環境負荷や労働力不足に対応した価値を創出することで収益改善及び事業拡大を目指します。そして、持続可能な社会の実現のため、くらし事業全体を通して、CO₂排出量の削減及び社会全体のCO₂排出削減に貢献可能な事業を拡大し、サステナビリティ経営を実現していきます。

(注) UX(User Experience):生活者が商品・サービスを通じて得られる体験

 

オートモーティブ

 自動車業界は、CASE(注)に代表される技術革新の進展やEV化の加速、新型コロナウイルス感染症がもたらした人のくらしや移動の変化が相まって、より安心安全で快適な移動空間の快適性へのニーズはさらに増しています。

 当セグメントでは、「Heartmotive」~こころ動かす出会いを創り続ける~をスローガンに、パナソニックが培った技術と知見を生かし、モビリティ社会・車の進化への貢献、人の多様性に寄り添う事業に取り組みます。車の進化には、ユーザーの安全・快適な運転に効果的な情報を提供する先進コックピットの価値を提供する「コックピット統合ソリューション」とパワーエレクトロニクス技術などのデバイスでEVの普及を促進する「EVソリューション」で貢献します。人の多様性には、車室空間での当社らしい新たなUX価値の提案、商品化を進め、一人ひとりに寄り添った価値を提供します。さらに、モビリティ社会の変革を目指した新たなサービス事業を創出します。環境貢献は全ての活動基盤であり、再生可能エネルギー調達なども含め、2022年度中の自社のCO₂排出量実質ゼロ化達成を目指します。自社のCO₂排出量削減やお客様のCO₂削減に貢献するソリューションの提供等を通じ、地球環境への貢献を果たします。

(注) CASE:Connected(クルマが通信ネットワークに接続され、運転支援情報の受信やエンターテインメント等のサービスを享受)、Autonomous(自動運転)、Shared & Services(車を共有して使うサービス)、Electric(電動化)

 

コネクト

 労働力人口の減少や消費者嗜好の多様化、ニューノーマルへの対応などが進む中、製造・物流・流通における事業領域は継続的な市場拡大が見込まれています。特に、サプライチェーンにおける課題解決の需要は、世界的に増加しています。

 当セグメントは、時々刻々と変化する、複雑な問題を抱えたB2Bのお客様の「現場」にフォーカスし、現場にイノベーションをもたらすことでお客様の経営改革に貢献していきます。物流・流通を中心としたサプライチェーン領域では、倉庫業務や輸配送効率化、在庫適正化などの高付加価値ソリューションをモデル化・展開し、お客様の販売拡大やコスト削減、CO₂削減などでお役立ちを果たしていきます。そして、2021年9月に完全子会社化したBlue Yonder Holding, Inc.(以下、「Blue Yonder」)のAI(人工知能)・ML(機械学習)を活用したソフトウェアプラットフォームを加え、「オートノマス(自律的な)サプライチェーン™」の実現をさらに加速させます。現場のイノベーションにより、お客様の経営への貢献のみならず、廃棄ロスやエネルギーの削減などの社会課題の解決にもつなげ、お客様とともにサステナブルな未来の実現を目指します。

 

インダストリー

 労働人口の減少、IoT社会の進展やモビリティの進化、地球温暖化を背景に、当セグメントが重点的に向き合う「工場省人化」「情報通信インフラ」「車載CASE」領域では、安定性・安全性、自動化、ネットワーク化、カーボンニュートラルへの要求が高まっており、今後も継続的な需要拡大が見込まれています。

 「工場省人化」領域では、独自の商品力と提案力を生かし、さまざまな生産設備向けに導入が容易なデバイスやパッケージ商品でお客様の生産性向上や労働力不足解消への貢献を目指します。「情報通信インフラ」領域では、データ通信量の増大にも対応可能な高速性や社会基盤としての安定性が求められている5G基地局やデータセンター向けに、低損失・長期保証可能なデバイスやシステムを提供します。「車載CASE」領域では、モビリティの安全性や環境性能の向上に資する小型高効率・高信頼なデバイスを展開していきます。これらの高成長領域へ経営資源を集中し、商品のカスタム開発や材料・プロセス技術の強化により競争力を鍛えるとともに、お客様へのお役立ちの最大化を図ります。

 

エナジー

 近年、地球環境問題が深刻化するなか、世界各国で環境規制の強化を背景に、自動車の電動化や再生可能エネルギーの活用などカーボンニュートラルへの取り組みが加速しています。

 当セグメントは、これらの環境問題に真摯に向き合い、これまでの電池事業で培ってきた技術開発力や高い品質力といったエナジー領域の強みを活かし、「安心」「安全」「低環境負荷」という提供価値を最大化させ、「車載」と「産業・民生」の両輪で持続的成長を図ります。車載では、モビリティの電動化を通じて、CO₂排出量・環境負荷の低減に貢献します。そのために、現行セルのさらなる生産性向上を図るとともに、新しい「4680セル」の量産化に向けた開発と事業化を推進します。産業・民生では、乾電池やデータセンター向けバックアップ蓄電システムなど、電池及び応用システムの提供を通じて、安心・安全な社会づくりに貢献します。また、これらの事業推進に際し、ESGを基軸とした事業基盤の確立・強化を徹底的に進めていきます。これらの取り組みにより、豊かなくらしと環境が矛盾なく両立・調和する持続可能な社会の実現に貢献します。

 

③持続的成長を支える基盤

コーポレート・ガバナンス

 当社は、コーポレート・ガバナンスを中長期的な企業価値向上のための重要な基盤と位置付け、取締役会と監査役・監査役会体制のもと、実効性のあるコーポレート・ガバナンス体制の強化に継続して取り組んでいます。取締役会での当社グループのガバナンスや中長期戦略に関する継続的な議論を通じて、監督機能、コーポレート戦略の意思決定機能としての実効性を高めています。また、指名・報酬諮問委員会や取締役会実効性評価の仕組みの活用などにより、経営の機動性や透明性を高める活動を進めています。

 

環境

 2017年に策定した「パナソニック環境ビジョン2050」では、当社が使うエネルギーの削減と、それを超えるクリーンなエネルギーの創出・活用を推進してきました。2022年4月、こうした自社の使う・創るエネルギーの比較から、グループの長期環境ビジョンとして社会全体のCO₂削減という課題に対する当社グループの貢献に視点を改め、「Panasonic GREEN IMPACT」に移行しました。

 それに伴い、指標についても、当社グループが向き合うべき地球環境課題とその貢献価値をより明確にするため、自社の使う・創るエネルギーの比較から、社会へのCO₂削減インパクトに置き換えることとしました。グループのCO₂排出を減らし、くらしやビジネスにおけるCO₂削減に貢献するさまざまなインパクトを拡げることで、社会とともにカーボンニュートラルを目指します。具体的には、グループのバリューチェーンにおける排出削減とともに、既存事業、並びに、新事業・新技術による社会への排出削減貢献によるインパクトの拡大を目指します。これらの取り組みにより2050年にグローバルで3億トン(≒世界のCO₂排出量の1%)以上のCO₂削減インパクトを目指し、気候変動課題解決に貢献してまいります。

 

人事戦略

 当社グループは、社会からお預かりしている大切な「人」を育て、活かすことが経営の根幹であると考えています。この「人間大事」の考え方に基づき、「The Best Place to Work where diverse talents work at their best」(多様な人材がそれぞれの力を最大限発揮できる最も働きがいのある会社)というビジョンを掲げています。物も心も豊かな「理想の社会」を実現するための人・組織・文化を創出する人事戦略を推進してまいります。具体的には、人材育成やDiversity, Equity & Inclusion(以下、「DEI」)の推進を重要な経営施策の一つとして位置づけています。DEIの推進については、前述のポリシー策定を皮切りに、「トップコミットメント」「インクルーシブな(個性を活かし合う)職場環境づくり」「一人ひとりへのサポート」の3つの視点で新たな取り組みを進めてまいります。

 

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