当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
(1)経営成績等の状況の概要
① 業績の概要
当期における世界経済は、ワクチン接種の進展や各国政府の施策等により先進国を中心に経済の正常化が進みました。しかしながら変異を続ける新型コロナウイルスの脅威が続く中、ロシアによるウクライナ侵攻が国際秩序に大きな打撃をもたらし、多くの国々でのかつてない規模の経済・金融制裁も相まって、先行き見通しは極めて深刻かつ不透明な状況になりました。
電子部品業界において、特に当社が注力する自動車関連市場では、世界的な半導体不足やサプライチェーンの混乱等により、自動車メーカ及び部品メーカは断続的に生産計画の見直しを強いられました。一方で、脱炭素への取り組みが世界的に本格化し、電気自動車の開発加速等に伴う電子部品の中長期需要に対する期待は高まりました。
こうした中、当社グループは中期事業計画に基づき、ターゲット顧客へのパートナー戦略を推進しつつ積極的に受注活動を進めた結果、同計画完了時の7割程度の受注を確保しました。電気自動車(EV)等への取り組みについては、戦略製品である接近通報音スピーカ、警報音用ブザー、車載用ヘッドホン等が総じて売り上げを伸ばしました。またEV化で先行する中国市場においては、中国ローカル自動車メーカとの取引拡大に向け、品質・価格面等の競争力を保持し受注・製造を行う新会社を現地に設立しました。車載関連ビジネス以外では、従来の主力製品の後継を担うウエアラブル、ウェルネス等の分野で、新規ビジネスの事業化をさらに進めるとともに研究・開発ビジネスを業務提携の検討も含め強化し、より広範な顧客ニーズを取り込める体制づくりを実施しました。ESG経営の推進においては、E(環境)、S(社会)、G(ガバナンス)に関する様々な評価基準を満たした優れた取り組みが評価され、グローバルなインデックスプロバイダーであるFTSE Russell社のESG投資指数「FTSE Blossom Japan Index」構成銘柄に初選定されました。
これらにより、売上高は、車載関連製品の売上増により増収となりました。特に戦略製品である車載用ヘッドホン、接近通報音スピーカや警報音用ブザー等の売上高の伸びは総じて約30%成長となりました。一方、利益面では、国際物流運賃や原材料費・部材費の高騰、変異を続ける新型コロナウイルス感染拡大によるサプライチェーン混乱の影響等により厳しい結果となりました。特に、世界的なコンテナ物流の混乱に対応するための空輸利用の増加が利益圧迫要因となりました。
以上の結果、当期連結業績における売上高は、91,106百万円(前期比6.9%増)、営業損失は7,757百万円(前期は営業利益0百万円)、経常損失は7,473百万円(前期は経常利益219百万円)となりました。親会社株主に帰属する当期純損失は、特別退職金等の特別損失を計上したため、7,017百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失3,363百万円)となりました。
セグメント別の業績は、次のとおりです。
[スピーカ事業]
コロナ禍からの自動車販売の回復を背景に、売上高は69,676百万円(前期比22.8%増)となりました。損益面では、コンテナ船運賃や原材料費・部材費の高騰、生産拠点での新型コロナウイルス感染拡大の影響による稼働率の低下及びその後の受注回復時の海上物流の混乱長期化に伴う空輸の増加により、営業損失は6,955百万円(前期は営業利益377百万円)となりました。
[モバイルオーディオ事業]
民生用アクチュエータの出荷は計画を上回って好調に推移しました。また車載用ヘッドホンも顧客拡大を伴い増加しました。しかしながらスマートフォン同梱用ヘッドセットの販売が終息に向かっていることから、売上高は14,227百万円(前期比34.1%減)、営業損失は896百万円(前期は営業損失424百万円)となりました。
[その他事業]
小型音響部品事業や「フォステクス」ブランドの製品を含むその他事業は、戦略製品である接近通報音スピーカや警報音用ブザー等をはじめとする小型音響部品事業が堅調に推移したため、その他事業の売上高は8,330百万円(前期比15.0%増)、営業利益は94百万円(前期比100.9%増)となりました。
② 販売の状況
当連結会計年度における販売の状況は下記のとおりです。
セグメントの名称 |
販売高(百万円) |
前年同期比(%) |
スピーカ事業 |
69,676 |
22.8% |
モバイルオーディオ事業 |
14,227 |
△34.1% |
その他事業 |
7,202 |
4.2% |
合計 |
91,106 |
6.9% |
スピーカ事業 車載用スピーカ・スピーカシステム、薄型テレビ用スピーカ・スピーカシステムや、オーディオ用等のスピーカ製品の製造・販売
モバイルオーディオ事業 携帯電話用ヘッドセット、ヘッドホン、小型スピーカ、振動アクチュエータ等のモバイルオーディオ製品の製造・販売
その他事業 警報音用等のブザー・サウンダ等の小型音響部品、「フォステクス」ブランドの製品の製造・販売並びに物流サービス等の提供
(注)1 受注高、受注残高及び生産高につきましては、主として見込生産方式を採用しているため、記載を省略しています。
2 セグメント間の取引については相殺消去しています。
(2)財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
経営者の視点による当社グループ(以下「当社」)の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中における今後又は将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日(2022年6月24日)現在において当社が判断したものです。
① 重要な会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この財務諸表の作成に際し、決算日における資産・負債の報告金額及び偶発債務の開示、ならびに報告期間における収益・費用の報告金額に影響を与えるような見積り・予測が必要とされます。当社経営陣は、継続的に、過去の実績や状況に応じ合理的と判断される範囲での様々な仮定に基づきその見積り・予測を評価します。その様な評価の結果は、他の方法からは即時に判定しえない資産・負債の簿価あるいは収益・費用の報告金額についての判断の基礎となります。実際の結果は、見積特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。当社は、以下の重要な会計方針が、当社の重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えています。
なお、新型コロナウイルス感染症の収束時期等を含む仮定に関する情報は、第5「経理の状況」の連結財務諸表の注記事項(重要な会計上の見積り)に記載しています。
a 投資有価証券
長期的な取引関係の維持等のために、特定の金融機関及び取引先等に対する非支配持分を所有しています。これらの株式は、価格変動性が高い公開会社の株式です。公開会社への投資の場合、決算日における株価が取得価額を50%以上下回った場合及び2期連続して取得価額を30%以上下回り、かつ、回復する見込みがあると認められない場合に評価損を計上しています。将来の市況悪化又は投資先の業績不振により、現在の簿価に反映されていない損失または簿価の回収不能が発生した場合、評価損の計上が必要となる可能性があります。
b 貸倒引当金
顧客等の支払不能時に発生する損失の見積額について、貸倒引当金を計上しています。顧客等の財務状況が悪化しその支払能力が低下した場合、追加引当が必要となる可能性があります。
c 固定資産の減損
固定資産の減損会計の適用に際し、独立したキャッシュ・フローを生み出す最小単位でグルーピングし、収益性が著しく低下した資産グループについて、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しています。回収可能価額は、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等の前提条件に基づき算出しているため、この前提条件に変更が生じた場合、追加の減損損失の計上が必要となる可能性があります。
d 繰延税金資産
繰延税金資産については、将来の課税所得を検討することによって回収可能性のある金額を検証しており、繰延税金資産の全部又は一部を将来実現困難と判断した場合は、相応の評価性引当額を計上しています。これは財務諸表上、法人税等調整額として表示され、当期純利益を減額させることとなります。
② 財政状態の分析
総資産は、主に棚卸資産の増加により前連結会計年度末に比べ8,915百万円増加して86,148百万円となりました。
主な増減の内訳ですが、流動資産は、棚卸資産の増加等により、8,103百万円増加の67,143百万円となりました。また、固定資産は主に繰延税金資産の計上等により812百万円増加の19,005百万円となりました。
負債は、主に短期借入金の増加により前連結会計年度末に比べ13,276百万円増加して34,516百万円となりました。純資産は、主に利益剰余金の減少により前連結会計年度末に比べ4,361百万円減少して51,632百万円となり、また自己資本比率は前連結会計年度末比10.9ポイント減少の54.7%となりました。
③ 当連結会計年度の経営成績の分析
当期の連結売上高は、新型コロナウイルス禍からの自動車生産の回復に伴い、車載スピーカ・スピーカシステムや戦略製品である接近通報音スピーカや警報音用ブザー等の販売が増加したことから、前期比6.9%増の91,106百万円(前期売上高85,220百万円)となりました。利益面につきましては、国際物流運賃や原材料費・部材費の高騰、変異を続ける新型コロナウイルス感染拡大によるサプライチェーン混乱の影響等を受け、特に世界的なコンテナ物流の混乱に対応するための空輸利用の増加が利益圧迫要因となり、営業損失は7,757百万円(前期営業利益0百万円)、経常損失は7,473百万円(前期経常利益219百万円)となりました。親会社株主に帰属する当期純損失は、特別退職金等の特別損失を計上したため7,017百万円(前期は、親会社株主に帰属する当期純損失3,363百万円)となりました。
④ キャッシュ・フローの分析
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ8,284百万円減少し、当連結会計年度末には12,089百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
a 営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動による資金の減少は、棚卸資産の増加等により12,767百万円(前年同期は、739百万円の資金の増加)となりました。
b 投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動による資金の減少は、設備投資等により3,071百万円(前年同期比56.7%増)となりました。
c 財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動による資金の増加は、短期借入金の増加等により6,771百万円(前年同期は、2,624百万円の資金の減少)となりました。
当社のキャッシュ・フロー関連指標の推移は、次のとおりです。
|
2018年 3月期 |
2019年 3月期 |
2020年 3月期 |
2021年 3月期 |
2022年 3月期 |
自己資本比率 |
61.5% |
59.5% |
66.5% |
65.6% |
54.7% |
時価ベースの自己資本比率 |
66.0% |
41.1% |
31.2% |
37.6% |
18.6% |
キャッシュ・フロー対有利子負債比率 |
1.4 |
0.8 |
0.6 |
7.0 |
△1.0 |
インタレスト・カバレッジ・レシオ |
35.6 |
95.9 |
86.3 |
10.9 |
△163.6 |
(注)1.自己資本比率:自己資本/総資産
2.時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
3.キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
4.インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
※各指標は、いずれも連結ベースの財務指標により計算しています。
※株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式総数により計算しています。
※キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しています。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としています。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しています。
⑤ 資本の財源及び資金の流動性
a 資本政策の基本方針
当社は、持続的な成長による企業価値及び株主価値の向上を図るため、資本効率の向上と財務の安定性のバランスを考慮し、資本政策を実施します。
また、適時適切な情報開示や投資家との積極的な対話等のIR活動を通じて資本コストの低減に努めると同時に、資本と負債の最適な構成に鑑み資本効率を高めていきます。
b 利益配分に関する基本方針
当社は、利益配分について、企業価値の向上を経営課題としつつ、業績に対応した利益配分と長期的な視野に立った内部留保の充実との調和を図りながら、総合的に株主利益の向上を図ることを基本的方針とし、連結ベースでの配当性向20%以上を目標としています。
C 資金の流動性
2023年3月期の設備投資は約35億円、研究開発費は約28億円を予定しており、所要資金については自己資金及び借入金を充当する予定です。また、(連結貸借対照表関係)及び(貸借対照表関係)に記載のとおり、コミットメントライン契約を締結しております。(当連結会計年度末融資枠設定金額14,000百万円。提出日現在融資枠設定金額14,000百万円、当連結会計年度末借入実行残高1,991百万円)
事業展開に伴う所要資金に対する機動的な対応のため、また不確実性が高まる環境下での不測の事態に備えて、十分な現金及び現金同等物を保有しています。現金及び現金同等物の保有額については厳密な目標水準を定めていません。
⑥ 経営方針・経営戦略・経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当連結会計年度の連結業績目標の達成状況は以下のとおりです。
当社は、中期財務目標として売上高1,200億円、営業利益50億円、営業利益率4.2%を目標としています。当期におきましては、国際物流運賃や原材料費・部材費の高騰、変異を続ける新型コロナウイルス感染拡大によるサプライチェーン混乱の影響等により厳しい結果となりました。特に、世界的なコンテナ物流の混乱に対応するための空輸利用の増加が利益圧迫要因となりました。当社は、前期から続く懸念材料に適時適切に対応し、中期事業計画を着実に実行することで拡大するビジネスチャンスを確実に捉え、企業価値・株主価値の向上に努めていきます。
|
2018年3月期 |
2019年3月期 |
2020年3月期 |
2021年3月期 |
2022年3月期 |
売上高(百万円) |
184,800 |
140,303 |
107,298 |
85,220 |
91,106 |
営業利益(百万円) |
9,307 |
3,937 |
2,064 |
0.7 |
△7,757 |
営業利益率(%) |
5.0 |
2.8 |
1.9 |
0.0 |
- |
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