当社グループ(以下、当社という。)では、リスク・危機管理委員会が当社のリスクマネジメント活動を推進する役割を担っており、定期的に当社におけるリスクの識別、当該リスクが顕在化する可能性や影響度を検討し、当該リスクへの対応策の立案及び対応状況の進捗確認を行っています。リスク・危機管理委員会は、当該委員会の運営状況、直面するリスク及び対応状況を取締役会に適宜報告し、取締役会は社外取締役の専門的見地からの助言を含め監督機能を発揮しています。
経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクのうち、リスク・危機管理委員会が、特に重要と分類しているリスクは、以下のとおりです。
なお、文中における今後又は将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日(2022年6月24日)現在において当社が判断したものです。
(1)直面しているリスク
工場稼働停止リスク
現時点においては、各工場の生産は安定していますが、変異を続ける新型コロナウイルス感染拡大やサイバー攻撃等により各工場は稼働停止を余儀なくされるリスクがあります。特に中国のゼロコロナ政策に伴う行動制限が当社の属する地域で発生した場合、当該工場の稼働停止が長期間に及ぶ等のリスクがあり、当社の業績及び財務状態にさらに影響を及ぼす可能性があります。
これらに対し、従業員の安全衛生の徹底、BCP在庫や情報セキュリティの強化をさらに推進します。また、一方で工場の稼働を停止せざるを得ない場合に備え、他拠点のバックアップ生産体制及び本社によるリスクコントロール即応体制を強化します。
車載関連事業の需要予測リスク(受注予測精度の低下リスク)
新型コロナウイルス感染拡大、半導体不足の長期化及びウクライナ危機等により各自動車メーカは断続的に生産調整を強いられています。加えて物価上昇による消費者の購買意欲の減退も懸念されています。これに伴い車載関連製品の需要予測は不確実性を増しており、特に急激な需要低下が発生した場合は、受注減に加え過剰在庫をもたらす等、当社の業績及び財務状態にさらに影響を及ぼす可能性があります。
これらに対して当社は、顧客との連携をより密接にし、需要動向を的確に把握すると同時に、世界情勢を十分に勘案し、BCPの観点も含め適時・適切な生産管理・在庫管理を行っていきます。
資材費・部材費の高騰リスク
新型コロナウイルス禍の供給制約や脱炭素に伴うグリーンフレーション等による物価上昇に加えて、ウクライナ危機が資源・商品価格の急騰に拍車をかけています。当社は、鉄、レアアース(ネオジム、ディスプロシウム)、原油、銅等の市況の影響を受けますが、当該商品価格も軒並み高騰しており、引き続き資材・部材の調達価格が上昇した場合、当社の業績及び財務状態にさらに影響を及ぼす可能性があります。
これらに対して当社は、市場相場連動制の導入による価格転嫁やコスト低減に向けてのサプライヤー提案に従前以上に協働して取り組みます。また、引き続き振動系部品を中心とした主要部品の内製化を推進します。
国際物流の混乱
新型コロナウイルス禍からの経済回復を背景とする輸送コンテナの世界的な不足や人員不足により海上運賃が高騰し、これに伴い空輸運賃も高騰が続いています。さらにウクライナ危機や中国のゼロコロナ政策により国際物流混乱の深刻さが増しています。当該運賃のさらなる上昇や事態の長期化は、当社の業績及び財政状態にさらに影響を及ぼす可能性があります。
これらに対して当社は、輸送手段の最適化や物流モニタリングのシステムの構築等、グローバルロジスティクス体制を強化し影響の軽減を図っていきます。同時に、地産地消への取り組みを強化します。なお、地産地消は輸送に係るCO2削減にもつながり、環境対策面においても重要な戦略と考えています。
サプライチェーン寸断リスク
変異を続ける新型コロナウイルスの感染拡大、中国のゼロコロナ政策、ウクライナ危機、国際物流の混乱等を背景に、サプライヤー工場の稼働に大きく影響する事態が続いています。現時点において、当社の稼働に大きな影響はありませんが、今後事態がさらに悪化又は長期化すれば当社の業績及び財政状態にさらに影響を及ぼす可能性があります。
これらに対して当社は、迅速に代替サプライヤーを確保できる体制を整備・強化し、また中長期的観点からはサプライヤーを育成し、基幹部品について内製化していきます。 資材調達に関するリスクは、新型コロナウイルスのみならず、他の自然災害からももたらされるリスクです。これらに対しては、調達先の地域の見直しや基幹部品のさらなる内製化等、サプライチェーンの抜本的な見直しに着手しています。
ミャンマー拠点での事業継続リスク
当社は、ミャンマーにある連結子会社(孫会社:フォスターティラワ※)にてスピーカ生産を行っております。同国では、2021年2月以降の国軍支配の下、引き続き不安定・不透明な状況下にあり、事業活動も電力問題や為替取引等、一部制約されています。今後事態がさらに悪化又は長期化しミャンマーでの活動が大幅に制限されれば、当社の業績及び財政状態にさらに影響を及ぼす可能性があります。
これらに対しては、引き続き従業員の安心・安全を最優先に考え、他の拠点でのバックアップ体制を確保しつつ、ミャンマーにてミニマムの生産を続けていきますが、ミャンマーの位置づけを中長期的観点から再検討していきます。
※正式名称:フォスター エレクトリック (ティラワ) Co.,Ltd.
継続企業の前提に関する重要事象等
当社は、後記「経営成績等の状況の概要」に記載のとおり、親会社株主に帰属する当期純損失が7,017百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失3,363百万円)、純資産の部が51,632百万円(前期末比7.8%減)、連結貸借対照表に記載される為替換算調整勘定による調整前の純資産が48,014百万円(前期末比14.4%減)となりました。この結果、金融機関との間で契約しているコミットメントライン契約に定められている財務制限条項に抵触する状況が発生したことから、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる状況が存在しております。
しかしながら、金融機関に対し期限の利益喪失に関わる条項を適用することなく契約を継続するよう要請した結果、すべての金融機関からは、期限の利益喪失事由の発生により貸付人が取得した契約上の借入人としての当社に対する権利を放棄することについて了承を得ております。また、収益面においては、昨年7月から9月のベトナムでのロックダウンに伴う空輸費用は一時的な異常費用であり、原材料費・部材費の高騰や物流コストの上昇に対しては、市況に応じた「市場連動制」の導入等による対応策が着実に進展しており、今後は収益改善が見込まれます。また当期末の自己資本比率は54.7%と一般的に安全性に問題がない水準にあります。
したがって、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないと判断しております。
(2)注視するリスク
①経営戦略立案・遂行において特に注視するリスク
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項目 |
リスク内容 |
対策 |
1 |
経済環境及び関連市場の景況 |
グローバルで事業を展開する当社において、世界経済や関連市場の景況感は、経営戦略の遂行に大きな影響があります。 ・当社製品の最終消費地域(主に、欧米、日本を含むアジア)における景況感の悪化とそれに伴う需要減。 ・当社が生産を行う地域(中国、ベトナム、ミャンマー等)の経済発展に伴う人件費上昇。 |
・販売地域や生産地域における情報収集と分析。 ・各種リスクを低減させるグローバル・サプライチェーンの構築と高付加価値製品の提案。 ・自動化・機械化の推進と、人と機械を調和させた効率的な生産体制の構築による人員の最適化。 |
2 |
ODM・OEM得意先企業の景況への依存 |
・取引依存度の高い企業の販売・業績不振、経営合理化・リストラ、予期しない契約の変更・解除、調達方針の変更等による取引減少。 ・取引依存度の高い企業からの値下げ要求。 |
・取引依存度の高い企業の財務モニタリングや信用調査による与信管理。 ・高付加価値製品のマーケティング。 ・ビジネス・ポートフォリオの見直しによる上位取引企業への依存度引下げ。 |
3 |
人財確保・育成 |
企業価値を高め持続的な成長を実現するためには、多様な価値観や専門性を持った人財が必要不可欠であり、人財戦略は重要な経営戦略です。当該経営戦略に伴い主に以下のリスクがあります。 ・少子高齢化や雇用環境の変化等により、当社の求める人財の確保やその定着・育成が計画通りに進まない。 ・労働市場の状況により、必要なタイミングに必要な能力を有する人財を確保できない。 ・優秀な人財の社外流出。 ・人財育成がうまくいかず、技術の承継ができなくなる。 |
・個々人の価値観を尊重し、多様性を受け入れる文化を醸成するため、Foster Rhythm(行動基準及び大切にする価値観)を整備し、普及させる活動を継続。 ・「働き方改革」の推進により、ワークライフバランスを実現できるさまざまな勤務形態や休暇制度の選択肢を提供。 ・モチベーション向上につながる人事処遇制度の確立。 ・専門性を重視した中途採用。 ・幹部人財の育成と後継者計画プログラムの強化。 ・ダイバーシティの推進。 ・国籍を問わないグローバル人財の登用。 ・健康経営の推進。 ・ハラスメント教育や内部通報制度の整備。 ・技術マイスター制度の運営。 |
4 |
製品の品質 |
車載関連ビジネスを中心におく事業変革・意識変革を推進している当社において、車載向け製品の品質を高めることは経営戦略の根幹です。当該経営戦略に伴って、以下のリスクがあります。 ・顧客品質要求を充足できないリスク。 ・大規模な製品クレームやリコール、製造物責任に繋がるような重大な欠陥リスク。 ・原材料の品質不良を原因とする完成品の欠陥。 |
・品質人財育成と品質を重視した組織風土の醸成。 ・一般車載品質管理から「より高度な品質管理」へ転換するための体制・仕組みの構築。 ・各拠点を含むクロスファンクショナルチームによるグローバル品質改善活動。 ・仕入れ先の品質管理モニタリング。 ・戦略的パートナー(仕入れ先)との関係強化。 ・新規の仕入れ先や業務委託先の調査。 |
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項目 |
リスク内容 |
対策 |
5 |
新商品の開発 |
当社は、継続して価値ある新製品を開発し、より付加価値のある製品をタイムリーに市場に提供することを重要な経営戦略として位置付けています。当該経営戦略に伴い主に以下のリスクがあります。 ・マーケット・ニーズの予測が外れるリスク。 ・急速な技術変化により、当社製品が市場ニーズの流れに乗り遅れるリスク。 ・新技術の製品化遅延により、市場ニーズにマッチしなくなるリスク。 |
・顧客や消費者からの情報収集と分析。 ・提案型マーケティングと開発へのフィードバック。 ・振動アクチュエータをはじめ新技術・新製品の開発体制の構築。 ・社会的ニーズの把握と環境配慮型製品の開発。 ・M&A候補の継続的調査と産学連携など他社との協業。
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6 |
気候変動に関するリスク |
気候変動への取組みは地球規模での課題であると同時に企業の使命です。持続的な成長に向け環境に配慮したモノづくりは当社の重要な経営戦略です。当該経営戦略に伴い主に以下のリスクがあります。 ・脱炭素社会に向けたコストの増加及び企業ブランドの毀損による販売機会の逸失。 ・異常気象による原材料の高騰。 ・異常気象による罹災への対処が遅れ工場操業停止やサプライチェーンの寸断による製品サービス供給停止。 |
・サステナビリティ委員会、環境委員会を中心とする対策強化。 ・国際要請の確認及び環境目標の適宜見直し及び推進。 ・「(1)直面しているリスク 資材費・部材費の高騰リスク」及び「災害等による影響」参照。 |
7
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情報セキュリティに関するリスク |
事業の円滑・効率的な運用等を目的として、ITシステムの利活用及びDXの推進は重要な経営戦略です。当該経営戦略に伴い主に以下のリスクがあります。 ・サイバー攻撃等によるシステム障害、業務停滞リスク。 ・個人情報・機密情報等の情報漏洩等のリスク。 ・サプライチェーン情報セキュリティ脆弱リスク。 |
・情報セキュリティ規程の整備・適宜更新。 ・外部機関によるネットワークの脆弱性検査と対策。 ・セキュリティシステムの強化。 ・従業員に対しての標的型攻撃メール訓練。 ・従業員への研修やモラル教育等による情報管理の重要性の周知徹底。 ・サプライチェーン全体の情報セキュリティ体制のモニタリング強化。 |
8 |
国内外の競合状況と価格競争の動向 |
製品価格は、当社製品の需要を決定する重要な要素であり、経営戦略において重要な要素です。当該経営戦略に伴い、主に以下のリスクがあります。 ・競合会社による競争力ある製品の発売。 ・競合会社との価格競争激化。 ・低価格品への需要シフト。 ・商品のコモディティ化による価格の低下。 |
・VE/VAによる継続的なコスト削減。 ・高付加価値製品の開発とマーケティング(「音と振動によるソリューション」の提供)。 ・価格・品質・納期・技術・サービスでの差別化。 ・知財活動による企業価値の維持と向上。 ・基幹部品の内製化によるコストダウン。 |
②注視する重要なリスク
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項目 |
リスク内容 |
対策 |
9 |
為替の変動 |
・海外拠点における現地通貨の下落により、子会社の業績や企業価値が下がるリスク。 ・海外拠点における現地通貨の上昇により、現地人件費など製造コストが上昇するリスク。 ・外貨建債権・債務のアンバランスにより、換算差損が生じるリスク。 ・円高進行により輸出用在庫の粗利益が減少するリスク。 |
・各国為替相場のモニタリングと為替予約やデリバティブの活用。
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10 |
海外展開・進出の潜在リスク |
・予期しない法令や規制の変更。 ・予期しない政治的経済的変動。 ・人財の採用・確保・育成難。 ・社会的共通資本(インフラ)の整備遅れ。 ・テロ・争乱・その他の社会的混乱。 |
・専門的な能力を備えた現地スタッフの採用。 ・現地弁護士等、外部専門家からのアドバイス。 ・現地ソサエティ等を活用した情報収集と分析。 ・事業活動を通じた地域貢献と納税。 ・拠点間の連携によるバックアップ体制の整備。 |
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項目 |
リスク内容 |
対策 |
11 |
公的な規制への対応 法的規制・制限 |
・事業・投資に関する各国の法改正、安全保障貿易その他の輸出規制、関税その他の輸出入制限(保護主義政策に伴う関税の引上げ)等。 ・通商、独占禁止、特許等知的財産権、消費者、租税、為替管理、情報セキュリティ、環境・リサイクル関連の法規制の適用。 |
・コンプライアンス委員会、安全衛生委員会等による教育研修。 ・内部通報制度の整備と運営。 ・先願調査、侵害調査の周知徹底による知的財産権侵害リスクの低減。 ・環境マネジメントシステムに基づき、定期的なアセスメントによる環境関連法の順守徹底と規制変化への対応。 ・サイバーセキュリティリスクを想定した情報セキュリティの構築。 ・生産拠点の変更及び価格転嫁交渉による関税引き上げリスクの低減。 |
12 |
金利上昇リスク |
・金利上昇に伴う支払利息の増加リスク。 ・取引先の与信リスク。 ・資本コスト上昇リスク。
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・長期短期資金調達の最適化。 ・売上債権、棚卸資産及び仕入債務の回転期間の最適化。 ・与信管理の強化。 ・最適資本負債構成の検証と対応。 |
13 |
災害等による影響 |
・地震、洪水、停電等の災害の発生。 ・重大事故の発生。 ・感染症の拡大。 |
・地域や事業に応じたBCP(事業継続計画)を策定。 ・早期復旧体制の整備(被災時の初期対応、報告、方法、各種対策本部の設置、役割の明確化等)。 ・ウイルス感染を防止する職場環境の整備と新しい勤務体系の提供。 |
14 |
減損会計の適用による影響 |
・減損損失の計上。 |
・設備投資委員会の運営(投資回収性等の審査や経過管理)。 ・各子会社の業績モニタリングと兆候の有無の確認。 |
15 |
税務に係るリスク |
・追徴課税 |
・税務アドバイザー等、外部専門家からの助言。 ・BEPS文書の整備と更新。 ・移転価格ポリシーの整備や移転価格契約の締結・更新。 ・バイラテラルAPAの締結。 |
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