業績

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の概要

 当連結会計年度においては、緊急事態宣言等の発出・延長や新たな変異株の急速な拡大等、新型コロナウイルス感染症の影響の長期化により、当社グループの事業についても、観光のご利用減、出張の抑制等の出控えや消費の減退等、引き続き非常に厳しい状況におかれました。

 当社グループにおいては、このような厳しい状況の中、鉄道の安全確保及びお客様と社員の新型コロナウイルス感染防止対策の着実な実施をはじめ、リスク管理体制の整備・運用に継続して努めるとともに、徹底したコスト削減の取り組みや、感染状況に応じた需要喚起策を実施しました。

 その結果、営業収益は前期比12.1%増の1兆311億円となったものの、営業損失は1,190億円、経常損失は1,210億円、法人税等を控除した親会社株主に帰属する当期純損失は1,131億円となりました。前期に引き続き、厳しい結果となりましたが、第3四半期連結会計期間では8四半期ぶりに黒字に転じ、業績が改善する兆しが見えました。

 財務面においては、昨年9月に公募増資を実施し、当社グループがこれまで描いてきた成長戦略や、変化する経営環境への対応力向上の実現による企業価値向上に向けた財務基盤の強化を図りました。コロナ収束後のレジャー需要、大規模開発プロジェクト等を契機とする需要を確実に取り込み、成長につなげていきます。

 今後も、お客様に安全に、安心してご利用いただくための取り組みをグループ全体で推進するとともに、新たなお客様ニーズを踏まえた価値の提供等によるご利用促進や新たな需要創出を図っていきます。

 なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しております。また、当該会計基準等の適用については、「収益認識に関する会計基準」第84項に定める原則的な取扱いに従って、新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用しているため、当該会計基準等を遡って適用した後の数値で前連結会計年度との比較・分析を行っております。

 これをセグメント別に示すと次のとおりとなります。

 なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、以下の前年同期比較につい

ては、前年同期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較分析しております。

 

① 運輸業

 当社グループは、2005年4月25日に福知山線列車事故を発生させたことを踏まえ、引き続き被害に遭われた方々への真摯な対応、安全性向上への弛まぬ努力を積み重ねるとともに、このような重大な事故を二度と発生させないとの決意のもと、「安全考動計画2022」を策定し、ハード、ソフト両面から安全性向上の取り組みや安全マネジメントの仕組みづくりを進めています。

 福知山線列車事故の反省と教訓を継承し、将来にわたって安全な鉄道を実現していくことを目的として策定した「安全の実現に欠かせない視点」を浸透させる取り組みを進め、新型コロナウイルス感染症の影響による厳しい状況下においても、最重要課題である鉄道の安全については、最終年度となる「安全考動計画2022」を着実に推進し、より高いレベルの安全をめざしていきます。

 当連結会計年度においても、ホームの安全対策として、山陽新幹線の主要駅及び在来線のご利用の多い駅等におけるホーム柵の整備等を引き続き進め、広島駅、京都駅、新今宮駅の一部ホームで使用を開始しました。

 また、激甚化する自然災害への対策として、引き続き斜面防災対策、降雨時運転規制へのレーダー雨量活用をはじめとした豪雨対策や山陽新幹線における逸脱防止ガードの整備、建物・高架橋等の耐震補強等の地震対策等を進めました。

 新型コロナウイルス感染症の拡大防止については、お客様の安全を最優先に、より安心してご利用いただくためのさまざまな取り組みを行いました。

 

(新型コロナウイルス感染拡大防止に関する主な具体的取り組み)

・マスク着用や時差出勤等への協力を依頼

・在来線車両、駅のエレベーター、券売機等への抗ウイルス・抗菌加工の実施

・新幹線駅や在来線の主要駅におけるお客様用消毒液の設置

・列車内換気に関するご案内及び窓開けの実施

・駅及び車両の消毒や入念な清掃の実施

・時間帯別の混雑状況のホームページ等での告知(主な線区・区間の列車及び主な駅)

・リアルタイム混雑状況の提供(京阪神の主な線区・区間の列車)

・インターネット列車予約サービスやみどりの券売機におけるシートマップ機能のご利用促進

・社員の感染予防策、体調管理の徹底

 

 これらの対策を行うとともに、ご利用状況や緊急事態宣言、まん延防止等重点措置の発出等の状況を踏まえて、一部の定期列車の運休、臨時列車の運休・設定本数見直しを行い、あわせて、社員の一時帰休を実施してきました。また、ご利用実態に即し、かつご利用変動に合わせて柔軟な対応が可能となるよう、ダイヤ改正を実施しました。

 今後も安全・安心に十分留意しつつ、政府等の方針、社会情勢、お客様のご利用状況等を見極めながら、各エリアの状況に応じた需要回復策、行動様式やお客様の意識の変化を捉えた新たな施策の展開に取り組んでいきます。

 

(需要回復に向けた主な具体的取り組み)

・「西なびグリーンパス」(旅行会社限定)の発売(昨年7月)

・「JR西日本 どこでもきっぷ」・「JR西日本 関西どこでもきっぷ」の発売(同10月)

・「冬休み『お子様1000円!』ファミリーきっぷ」の発売(同12月)

 

(新たな価値創造へ向けた主な具体的取り組み)

・北陸新幹線による荷物輸送サービス拡大(昨年5月)

・「SETOUCHI GLAMPING(せとうちグランピング)」グランドオープン(同8月)

・山陽新幹線車内におけるワークプレイスの提供開始(同10月)

・北陸新幹線車内におけるワークプレイスの提供開始(同11月)

・ソフトバンク㈱との共同開発による「自動運転・隊列走行BRT」実証実験の開始(同10月)

・山陽新幹線・在来線特急での荷物輸送事業の開始(同11月)

・Z世代向け情報発信プラットフォーム「アオタビ」の開設(1月)

・AIによる自動応対機能を搭載した「みどりの券売機プラスAI」の実証実験の実施(2月~3月)

 

(アフターコロナを見据えた主な具体的取り組み)

・持続可能な輸送サービスに向けた地域との対話推進、ご利用に見合ったダイヤ見直しの実施

 

 運輸業セグメントでは、感染状況の一定程度の落ち着き等による鉄道需要の回復によりご利用が増加したことから、営業収益は前期比15.8%増の5,441億円となったものの、営業損失は1,443億円となりました。

 

② 流通業

 流通業については、各業界団体において作成されたガイドライン(以下、「ガイドライン」)を踏まえ、感染症対策を十分に実施し、安心してご利用いただけるように努めています。

 昨年10月には、大阪駅の駅ナカ商業施設「エキマルシェ大阪」の第Ⅰ期リニューアルを実施しました。また、「ユニクロ」フランチャイズ店を新大阪駅(昨年4月)と芦屋駅(3月)にオープンしました。

 流通業セグメントに区分される宿泊特化型ホテル「ヴィアイン」については、新しい働き方のニーズへの対応として、「STATION WORK」との連携や(昨年5月)、「JR西日本×住まい・ワーケーションサブスク」実証実験における連携を開始しました(同6月)。

 流通業セグメントでは、感染状況の一定程度の落ち着き等による鉄道需要の回復に伴い、営業収益は前期比14.3%増の1,242億円となったものの、営業損失は86億円となりました。

 

 

③ 不動産業

 不動産業についても、流通業と同様に、「ガイドライン」を踏まえ、感染症対策を十分に実施し、安心してご利用いただけるように努めています。

 ショッピングセンター運営業では、昨年9月にライフサポート型のショッピングセンターとして「夙川グリーンプレイス」を新たに開業しました。さらに、3月には富山駅南西街区に商業施設「MAROOT」が開業し、商業施設「京都駅前地下街ポルタ」の西エリアの飲食店ゾーンが全面リニューアルしました。

 不動産販売・賃貸業では、販売事業の拡大、賃貸事業の強化を進めるとともに、投資助言・代理業の登録(昨年11月)を行い、アセットマネジメント業務の受託を開始しました。また、シェアオフィス「Work PLACE COCOLO」を順次オープン(同7月~)し、「ビエラ小倉」にコワーキングスペース「DISCOVERY coworking」を開業しました(2月)。

 不動産業セグメントでは、ショッピングセンターの売上高の回復に伴い、賃料収入が増加したこと等により、営業収益は前期比6.9%増の1,511億円、営業利益は同2.6%増の300億円となりました。

 

④ その他

 ホテル業及び旅行業についても、「ガイドライン」を踏まえ、感染症対策を十分に実施し、安心してご利用いただけるように努めています。ホテル業においては、3月に宿泊主体型ホテルの「ホテルヴィスキオ富山」が開業しました。旅行業においては、非旅行部門の「ソリューション事業」として、自治体よりワクチン接種関連事業を受託しました。

 引き続き厳しい状況にありますが、行政の施策等も活用し、ご利用の回復に努めていきます。

その他セグメントでは、感染状況の一定程度の落ち着きや、非旅行部門での受注拡大等により、営業収益は前期比5.7%増の2,115億円、営業利益は29億円となりました。

 

 

 運輸業のうち、当社の鉄道事業の営業成績は以下のとおりであります。

ア.輸送実績

 

区分

単位

当事業年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

 

前事業年度比

営業日数

365

キロ程

新幹線

キロ

812.6

812.6

 

在来線

キロ

(28.0)

4,090.5

(28.0)

4,090.5

 

キロ

(28.0)

4,903.1

(28.0)

4,903.1

 

客車走行キロ

新幹線

千キロ

518,680

99.2

在来線

千キロ

737,244

95.6

 

千キロ

1,255,924

97.0

 

輸送人員

定期

千人

1,011,082

100.1

 

定期外

千人

459,846

110.7

 

千人

1,470,928

103.2

 

新幹線

定期

千人キロ

824,203

105.2

 

定期外

千人キロ

8,921,404

128.7

 

千人キロ

9,745,607

126.3

 

定期

千人キロ

15,612,590

101.5

 

定期外

千人キロ

6,276,338

113.2

 

千人キロ

21,888,928

104.6

 

定期

千人キロ

3,432,926

98.7

 

定期外

千人キロ

2,235,616

112.9

 

千人キロ

5,668,542

103.9

 

定期

千人キロ

19,045,517

100.9

 

定期外

千人キロ

8,511,954

113.1

 

千人キロ

27,557,471

104.4

 

合計

定期

千人キロ

19,869,720

101.1

 

定期外

千人キロ

17,433,359

120.6

 

千人キロ

37,303,079

109.4

 

乗車効率

新幹線

24.0

18.9

 

在来線

29.9

27.4

 

28.1

24.9

 

(注)1 キロ程欄の上段括弧書は、外数で第三種鉄道事業のキロ程であり、それ以外は第一種鉄道事業及び第二種鉄道事業のキロ程であります。また、前事業年度比は、前事業年度末の数値を記載しております。

2 客車走行キロ数には、試運転、営業回送を含めておりません。

3 輸送人キロ欄の近畿圏は、近畿統括本部の地域について記載しております。

4 乗車効率欄の前事業年度比は、前事業年度の数値を記載しております。

なお、乗車効率は次の方法により算出しております。

乗車効率 =

輸送人キロ

客車走行キロ × 客車平均定員(標準定員)

 

イ.収入実績

 

区分

単位

当事業年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

 

前事業年度比

新幹線

定期

百万円

10,635

104.3

定期外

百万円

201,004

129.4

 

百万円

211,640

127.8

 

定期

百万円

97,875

101.7

 

定期外

百万円

112,846

115.2

 

百万円

210,722

108.5

 

定期

百万円

21,256

100.7

 

定期外

百万円

44,069

115.3

 

百万円

65,326

110.1

 

定期

百万円

119,132

101.5

 

定期外

百万円

156,916

115.2

 

百万円

276,049

108.9

 

合計

定期

百万円

129,768

101.8

 

定期外

百万円

357,921

122.8

 

百万円

487,689

116.4

 

荷物収入

百万円

2

70.9

 

合計

百万円

487,691

116.4

 

鉄道線路使用料収入

百万円

4,660

87.8

 

運輸雑収

百万円

58,988

105.4

 

収入合計

百万円

551,340

114.8

 

(注) 旅客収入欄の近畿圏は、近畿統括本部の地域について記載しております。

 

(2) 資産、負債及び純資産の状況

 当連結会計年度末の総資産額は、3兆7,024億円となり、前連結会計年度末と比較し、2,250億円増加しました。これは主に、現金及び預金の増加によるものです。

 負債総額は、2兆6,282億円となり、前連結会計年度末と比較し、1,070億円増加しました。これは主に、社債の増加によるものです。

 純資産総額は、1兆742億円となり、前連結会計年度末と比較し、1,179億円増加しました。これは主に、資本金及び資本剰余金の増加によるものです。

 

(3) キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ1,095億円多い3,195億円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 税金等調整前当期純損失が改善したことなどから、営業活動において支出した資金は前連結会計年度に比べ168億円少ない864億円となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 固定資産の売却による収入が増加したことなどから、投資活動において支出した資金は前連結会計年度に比べ229億円少ない1,887億円となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 社債や借入などの長期資金の調達に加え、公募増資を実施したことなどから、財務活動において得た資金は3,846億円となりました。

 

(4) 生産、受注及び販売の実績

 当社及びその連結子会社(以下「当社グループ」という。)の大多数は、受注生産形態を取らない業態であります。このため、生産、受注及び販売の状況については、「3[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析]」における各事業のセグメント別経営成績に関連付けて示しております。

 

(5) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 文中における将来に関する事項は、当有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1) [連結財務諸表][注記事項](重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループは、基幹事業である鉄道事業において安全性の向上に全力で取り組むとともに、その他のグループ事業においては、各事業の特性を活かした様々な施策の展開及び保有資産の有効活用等に努めてまいりました。

 当連結会計年度においては、新型コロナウイルス感染症の影響の長期化によるご利用減により、徹底したコスト削減の取り組みや、感染状況に応じた需要喚起策を実施したことにより営業収益は増加したものの、営業損失、経常損失、親会社株主に帰属する当期純損失となりました。

ア.営業収益

 営業収益は、前連結会計年度に比べ12.1%、1,110億円増加の1兆311億円となりました。

 運輸業セグメントについては、当社の運輸収入が新型コロナウイルス感染症の感染状況の一定程度の落ち着き等による鉄道需要の回復によりご利用が増加したこと等により、営業収益は前連結会計年度に比べ15.8%、743億円増加の5,441億円となりました。

 このうち、新幹線については、前連結会計年度に比べ27.8%、460億円増加の2,116億円となりました。

 在来線については、前連結会計年度に比べ8.9%、225億円増加の2,760億円となりました。

 流通業セグメントについては、新型コロナウイルス感染症の感染状況の一定程度の落ち着き等による鉄道需要の回復等により、前連結会計年度に比べ14.3%、155億円増加の1,242億円となりました。

 不動産業セグメントについては、ショッピングセンターの売上高の回復に伴い、賃料収入が増加したこと等により、前連結会計年度に比べ6.9%、98億円増加の1,511億円となりました。

 その他セグメントについては、感染状況の一定程度の落ち着きや、非旅行部門での受注拡大等により、前連結会計年度に比べ5.7%、113億円増加の2,115億円となりました。

イ.営業費

 コスト構造改革による固定費の削減を実施したことなどから、前連結会計年度に比べ1.3%、153億円減少の1兆1,501億円となりました。

 

ウ.営業損益

 営業損益は、前連結会計年度に比べ1,264億円改善し、1,190億円の損失となりました。

エ.営業外損益

 営業外損益については、雇用調整助成金の受入などにより、前連結会計年度に比べ98億円改善し、19億円の損失となりました。

オ.経常損益

 経常損益は、前連結会計年度に比べ1,362億円改善し、1,210億円の損失となりました。

カ.特別損益

 特別損益については、固定資産の売却収入などにより、前連結会計年度に比べ328億円改善し、154億円の利益となりました。

キ.親会社株主に帰属する当期純損益

 親会社株主に帰属する当期純損益は、前連結会計年度に比べ1,199億円改善し、1,131億円の損失となりました。

 

③ 経営成績に重要な影響を与える要因

ア.収益に影響する要因

[運輸業]

 運輸業セグメントは鉄道運輸収入が大宗を占めております。鉄道運輸収入は、主に鉄道利用者数により左右され、航空機を含めた他の輸送モード、同業他社との競争や、経済情勢、少子高齢化等、多くの要因により影響を受けます。また、鉄道利用者は、安全性、信頼性をベースに、所要時間・ネットワーク性・運賃・快適性を基準として選択を行うと考えております。

 新幹線の収入は、主として、ビジネスや観光旅行客の数に左右され、経済環境や航空機との競争、訪日観光客の動向などに影響を受けます。

 近畿圏の収入は通勤・通学客が多いことから、経済情勢の影響を受けにくいと考えておりますが、少子高齢化や都市化等の人口推移による影響を受けると考えております。

 その他在来線のうち、都市間輸送の収入は経済情勢や高速バス、自家用車との競争による影響を受けます。また、ローカル線の収入は自家用車との競争や地域の経済情勢及び人口の推移による影響を受けます。

[流通業]

 流通業セグメントの収入は、主に百貨店業、物品販売業及び飲食業からの収入で構成されております。当セグメントの収入は、経済情勢及び他の百貨店、物販店舗、レストランとの競争に左右されます。当セグメントの事業の多くが駅やその周辺で行われているため、鉄道輸送量も影響を受ける要因です。しかし、駅は比較的安定したご利用があるため、当セグメントの収益は同業他社に比べ、これらの影響は少ないと考えております。また、新規店舗の開発や既存店舗の廃止によっても左右されます。

[不動産業]

 不動産業セグメント収入は、主に駅やその周辺施設の賃貸収入、沿線におけるマンションの分譲販売により得られます。当セグメントは、経済情勢の影響を受けることや、マンション分譲事業の販売数の増減により業績が変動するものの、賃貸事業において、駅は比較的安定したご利用があり、テナントは立地の利便性から駅構内及びその周辺オフィスを好むことから、同業他社に比べ、経済情勢による影響は少ないと考えております。

 

[その他]

 その他セグメントの収入は、主としてホテル業及び旅行業によるものです。ホテル業の収益は、経済情勢や宿泊料金、他ホテルとの競争、訪日観光客の動向に影響されます。また、旅行業による収入は主に他旅行業者との競争、経済情勢やテロなど旅行を妨げる状況により影響を受けます。

 その他セグメントには、ホテル業、旅行業のほか、建設事業、広告業等がありますが、そのほとんどが基幹事業である鉄道事業の顧客基盤、駅及びその他の施設の強化を目的としたものであります。

 

イ.費用に影響する要因

[人件費]

 当社は、年齢構成等により退職者数が多い状況にある中で、構造改革を推進しつつ、新規採用等により事業運営に必要な社員数を確保してきております。当事業年度の人件費は1,807億円となっております。

 なお、高年齢層の人材を確保し、一層円滑な技術継承を図ること及び高年齢者雇用安定法など法令への対応の観点から、定年後の再雇用制度を設定しております。また、将来にわたり事業を運営しうる体制を構築するという視点で、長期雇用を前提とした新卒採用を中心に採用を行うほか、多様な人材確保等の観点から、契約社員からの採用、中途採用等を実施しており、当事業年度においては約650名の採用を行いました。

[物件費]

 当社は、鉄道事業の特徴である、(ⅰ)多くの設備を有し、安全の確保のために必要なメンテナンスに係るコストの比重が大きい、(ⅱ)収益に連動しない「固定費用」の割合が高いなどの事情から、安全性の確保を大前提として、メンテナンスが容易な車両及び設備の導入、機械化、既存のインフラの改良などにより、これらの経費を構造的に削減する取り組みを行っております。

 しかしながら、福知山線列車事故の責任とその重大性及び新幹線重大インシデントを重く受け止め、安全で安心・信頼していただける鉄道を築き上げるために全力で取り組んでいるところであり、当分の間、安全性の向上に必要となる費用の増加が想定されます。

 また、対抗輸送機関との競争力向上のため、サービスレベルの向上、販売促進のためのIT化、効率化に寄与する外注化などによる費用の増加も想定されます。

 さらに、電気料金の値上げによる費用の増加が想定されます。

[線路使用料等]

 当社は、JR東西線を関西高速鉄道株式会社から借り受けており、2004年度以降の線路使用料の年額については、3年度毎に協議し、金利変動等を勘案して決定することとなっております。また、2021年度以降の線路使用料については減額を行い、当事業年度の費用は105億円となっております。

[支払利息]

 営業外費用のうち、重要なものとして支払利息があります。当社グループとしては、経営の安定性を保つために長期債務残高や支払利息の水準を注視しております。当連結会計年度の当社グループの支払利息については214億円となり、前連結会計年度に比べ9億円増加しております。

 

④ 流動性と資本の源泉

ア.キャッシュ・フロー

当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析については、「第2[事業の状況] 3[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析] (3) キャッシュ・フローの状況」に記載の通りです。

 

イ.資本需要と設備投資

 当社グループは、当連結会計年度において総額2,369億円の設備投資を実施し、そのうち運輸業では1,684億円、流通業、不動産業及びその他では、19億円、613億円及び52億円をそれぞれ実施しました。運輸業に関する設備投資においては、安全性の向上を中心とした鉄道インフラの整備や、老朽車両の更新等を目的とした新型車両の購入を行っております。流通業、不動産業及びその他における当社グループの設備投資においては、新設備の建設や老朽設備の改築等を行っております。

 さらに、福知山線列車事故の責任とその重大性及び新幹線重大インシデントを重く受け止め、安全で安心・信頼していただける鉄道を築き上げるために全力で取り組んでいるところであり、安全をより一層高めるために必要な運転保安設備の整備等ハード対策を盛り込むとともに、今後も様々な検討を行うこととしております。

 

ウ.資金調達

 資金調達については、既存債務の返済資金や設備投資資金等のうち当社グループのフリー・キャッシュ・フローで賄いきれない分の調達を主としており、その調達手段は社債及び銀行等からの長期借入金等、市場動向や金利動向等を総合的に勘案しながら決定しております。

 また、短期的に資金を必要とする場合には、主として短期社債やコミットメントライン等で賄うことを基本としております。

 なお、コミットメントラインの一部については、地震が発生した場合でも、あらかじめ定めた条件によって資金調達が可能な契約内容となっております。

 

エ.流動性

 新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、資金調達を進めた結果、当連結会計年度末現預金残高は3,198億円となり、流動性資金は十分な水準を確保しているものと考えております。

 また、新型コロナウイルス感染症の長期化等により資金需要が増加した場合においても、社債及び銀行等からの長期借入金に加え、短期社債やコミットメントライン等による短期借入も活用し、流動性資金を十分に確保できるものと考えております。

 一方で、資金効率向上は企業経営にとって極めて重要と認識しており、その一環として、2002年10月からキャッシュ・マネジメント・サービス(CMS)を導入し、グループ内資金の有効活用を図っております。

 

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