当連結会計年度の期首から「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)および「収益認識に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第30号 2021年3月26日)を適用しております。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (会計方針の変更)」をご参照ください。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度においては、進化と拡大を続けるグローバル市場に対応するため、デジタル販売の強化を主軸とした成長投資を積極的に進めてまいりました。
当社は、「遊文化をクリエイトする感性開発企業」の経営理念のもと、2021年12月16日付『カプコン コーポレート・ガバナンス ガイドライン』において、「中長期にわたる安定成長を実現し、企業価値向上を図るためにコーポレート・ガバナンス体制の持続的な充実に取り組む」こととしております。今後の事業環境の変化に対応し持続的な安定成長を実現するため、当年度では特に経営上の重要な課題の一つである人材投資戦略において、報酬制度の改定を含む具体的な施策の推進に着手し、企業価値の向上を図ってまいりました。
このような経営方針のもと、当連結会計年度において中核事業であるデジタルコンテンツ事業において、主力シリーズの大型タイトルの投入や、デジタル販売の拡大によるリピートタイトルの継続的な販売強化により、グローバル市場における販売本数が増加し、当社コンテンツの価値向上に大きく寄与しました。さらに、これらの主力コンテンツと映像、ライセンス商品やeスポーツとの連携強化を図るとともに、アミューズメント施設事業やアミューズメント機器事業との協働も進め、業績の拡大に努めました。
この結果、売上高は1,100億54百万円(前期比15.5%増)、営業利益は429億9百万円(前期比24.0%増)、経常利益は443億30百万円(前期比27.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は325億53百万円(前期比30.6%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
当事業におきましては、シリーズ最新作『バイオハザード ヴィレッジ』(プレイステーション 5、プレイステーション 4、Xbox Series X|S、Xbox One、パソコン用)が全世界で610万本を販売したほか、「モンスターハンター」シリーズのRPG作品『モンスターハンターストーリーズ2 ~破滅の翼~』(Nintendo Switch、パソコン用)も150万本を突破するなど順調に推移しました。また、前期に発売した『モンスターハンターライズ』(Nintendo Switch用)は、今年1月にパソコン向けに発売し、さらなるユーザー層の拡大に弾みをつけました。加えて、2019年発売の『モンスターハンターワールド:アイスボーン』や2017年発売の『バイオハザード7 レジデント イービル』など、シリーズの過去タイトルが安定した人気に支えられ販売本数が伸長し、業績に貢献しました。
これにより、年間販売本数は前期の3,010万本を上回る3,260万本となり、特に採算性の高いデジタル販売が続伸したことにより、収益を押し上げました。
モバイルコンテンツにおいては、既存タイトルの運営に注力したほか、協業タイトルも安定的に推移しました。加えて、中国において昨年6月に配信を開始した『Devil May Cry: Peak of Combat』は、ライセンス収益が利益に貢献しました。
この結果、売上高は875億34百万円(前期比16.2%増)、営業利益は453億59百万円(前期比22.6%増)となりました。
当事業におきましては、新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言の発動に伴い、一部店舗において休業および時短営業を余儀なくされましたが、解除以降は来店客数の回復に加え、既存店の効率的な運営と新業態での出店効果などにより、収益拡大を図りました。
当期は、「プラサカプコン ミッテン府中店」(東京都)をオープンしたほか、新たな集客展開として地域最大級の複合遊戯施設「クレイジーバネット」を併設した「MIRAINO イオンモール白山店」(石川県)の合計2店舗を出店するとともに、1店舗を閉鎖するなど、スクラップ・アンド・ビルドによる施設展開と地域密着型の店舗戦略に努めました。
この結果、施設数は42店舗となり、売上高は124億4百万円(前期比25.7%増)、営業利益は6億52百万円(前期比336.8%増)となりました。
当事業におきましては、厳しい市場環境の中、『モンスターハンター: ワールド 黄金狩猟』および『パチスロ デビル メイ クライ 5』が堅調に推移したほか、『百花繚乱 サムライガールズ』を投入し、収益の確保に努めました。また、前期に投入した『バイオハザード7 レジデント イービル』は、市場での長期稼働を受け、リピート販売が増加しました。
この結果、売上高は57億49百万円(前期比18.9%減)、営業利益は23億48百万円(前期比2.5%減)となりました。
その他事業につきましては、当社タイトルのブランド価値向上に向け、Netflixにおいて主力IPを活用したCGアニメが全世界で独占配信されたほか、映画『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』が世界各国で公開されるなど、主力IPを活用した映像化やキャラクターグッズ展開などに引き続き注力しました。
一方、eスポーツにおいては、グローバル規模でのユーザー層の裾野拡大に向け、「CAPCOM Pro Tour Online 2021」を世界19地域にオンラインで実施したほか、チームオーナー制を導入したリーグ戦「ストリートファイターリーグ: Pro-JP 2021」や、「ストリートファイターリーグ: Pro-US 2021」を実施し、いずれも熱戦が繰り広げられました。
この結果、売上高は43億66百万円(前期比43.4%増)、営業利益は15億17百万円(前期比53.7%増)となりました。
当連結会計年度末における資産につきましては、前連結会計年度末に比べ236億53百万円増加し、1,873億65百万円となりました。主な増加は、「現金及び預金」360億22百万円および「ゲームソフト仕掛品」67億49百万円であり、主な減少は、「売掛金」170億93百万円によるものであります。なお、「現金及び預金」から有利子負債を差し引いたネット・キャッシュは367億50百万円増加し1,023億84百万円となり、開発投資を支える財務基盤が強化されております。
負債につきましては、前連結会計年度末に比べ20億28百万円減少し、408億90百万円となりました。主な減少は、「未払法人税等」9億47百万円、「1年内返済予定の長期借入金」「長期借入金」7億27百万円および「支払手形及び買掛金」4億94百万円によるものであります。
純資産につきましては、前連結会計年度末に比べ256億81百万円増加し、1,464億75百万円となりました。主な増加は、「親会社株主に帰属する当期純利益」325億53百万円であり、主な減少は、「剰余金の配当」87億53百万円によるものであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、469億47百万円の資金の増加(前連結会計年度は146億25百万円の資金の増加)となりました。
これは主に、税金等調整前当期純利益443億22百万円、売上債権の減少額172億8百万円、繰延収益の増加額20億8百万円等の資金の増加とゲームソフト仕掛品の増加額67億44百万円、法人税等の支払額111億55百万円等の資金の減少によるものです。
投資活動に使用された資金は、74億26百万円(前連結会計年度は42億33百万円)となりました。
これは主に、定期預金の払戻による収入179億80百万円等の増加と、定期預金の預入による支出212億97百万円、有形固定資産の取得による支出29億50百万円等の減少によるものであります。
財務活動に使用された資金は、99億80百万円(前連結会計年度は69億65百万円)となりました。
これは主に、配当金の支払額87億45百万円によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.上記の金額は、製造原価により算出しております。
2.上記の金額は、ゲームソフト開発費を含んでおります。
当社グループは受注生産を行っておりません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合
当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当社グループの当連結会計年度末現在の事業および経営環境に基づいて判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、資産、負債、収益および費用の報告額に影響を及ぼす見積りおよび仮定を用いておりますが、これらの見積りおよび仮定に基づく数値は実際の結果と異なりうる可能性があります。詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項) 3.会計方針に関する事項」をご参照ください。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積りおよび仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
(無償ダウンロードコンテンツの収益認識)および(ゲームソフト仕掛品の評価)
「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
(退職給付に係る負債)
従業員の退職給付費用については、各連結会計年度末における退職給付債務の見込額に基づき引当計上しており、退職率、割引率、昇給率、死亡率等の重要な前提条件を見積りに加味して計上しております。これらの条件が変更される場合、将来の退職給付費用に影響を及ぼす可能性があります。
(繰延税金資産)
当社グループは、将来の収益計画に基づいた課税所得が十分に確保できる可能性や、回収可能性があると判断した将来減算一時差異に基づいて、繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依拠するため、その見積りの前提とした条件や仮定に著しい変更が生じた場合、繰延税金資産を見直し、その影響額を法人税等調整額に計上する可能性があります。
(固定資産の減損処理)
当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識および測定に当たっては慎重に検討しておりますが、当社グループの事業計画や市場環境の変化により、その見積りの前提とした条件や仮定に著しい変更が生じた場合、減損処理が必要となる可能性があります。
なお、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う影響に対する会計上の見積りにつきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (追加情報)」および「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 (追加情報)」をご参照ください。
当連結会計年度の当社グループ事業全体および各セグメントの事業の概況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要」をご参照ください。
当連結会計年度末における自己資本比率は78.2%(前期から4.4ポイントの増加)に向上し、加えて、ROE(自己資本利益率)は24.4%(前期から1.8ポイントの増加)に向上いたしました。当社グループは、資本効率の観点からROE向上による企業価値の増大に努めており、当連結会計年度は、中核事業であるデジタルコンテンツ事業において、主力シリーズの大型タイトルの投入や、採算性の高いリピートタイトル販売が続伸したことにより、ROEを安定的に向上させることができました。
なお、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う事業環境への影響は、当連結会計年度末においては軽微であります。翌連結会計年度に与える影響を含め、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「2 事業等のリスク」をご参照ください。
③ 経営方針・経営戦略または経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社グループは経営における重要な指標として、企業の稼ぐ力の基本となる「営業利益」(成長指標)と収益性の基本である「営業利益率」(効率性指標)そして「キャッシュ・フロー」を重視しております。
当社グループの営業利益および営業利益率のこれまでの推移は次のとおりであり、営業利益の持続的な増加および営業利益率向上による効率性の改善に努めております。
キャッシュ・フローにつきましては、当社グループは、預金残高から有利子負債を控除したネット・キャッシュ残高を重視しており、当連結会計年度末の残高は102,384百万円(前連結会計年度末より36,750百万円増)となりました。当社グループは、手元流動性の拡大による財務健全性の向上を図り、経営の安定性を高めるように努力しております。
当社グループは、これらの指標を改善することにより、ROE(自己資本利益率)など関連する指標も向上し、株主価値を創出することになるものと考えております。当社グループのROEの推移につきましては、「第1 企業の概況 1 主要な経営指標等の推移 (1) 連結経営指標等」をご参照ください。
当社グループは、また、成長を継続するための必要な投資を行い、企業価値の向上に努め、株主への安定的な配当による利益還元の実施を目的とし、配当性向を最も重要な経営指標の一つと考えております。その基本方針を連結配当性向30%とし、かつ安定配当の継続に努めております。当連結会計年度におきましても連結配当性向は30.2%と安定配当を継続して行っております。
上記施策により、当期の株主総利回りは572.0%と、比較指標である配当込みTOPIXの144.3%を大幅に上回っております。当社のこれまでの株主総利回りの推移は、「第1 企業の概況 1 主要な経営指標等の推移 (2) 提出会社の経営指標等」をご参照ください。
④ 資本の財源および資金の流動性
当社は中長期的に安定した成長を遂げるため、オリジナルコンテンツを生み出す源泉となるデジタルコンテンツ事業への十分な投資額を確保することが必要不可欠であると認識しております。具体的には、コンテンツ充実によるタイトルラインナップの拡充や新たな技術に対応するため、開発者の増員や開発環境の整備への投資が必要であります。当連結会計年度における研究開発投資額および設備投資額を合わせた合計328億27百万円の88.8%に相当する291 億65百万円 を、デジタルコンテンツ事業に投資しております。なお、ゲームコンテンツの研究開発投資につきましては、「5 研究開発活動」に記載のとおりであります。
ゲームコンテンツの開発費用は、高性能かつ多機能な家庭用ゲーム機の登場に伴い増加傾向にあります。また、主力タイトルのゲームコンテンツ開発期間は2年以上を要することに加え、発売後の定期的なゲームコンテンツのバージョンアップおよびネットワークインフラの維持に継続的な投資が発生するため、相応の現預金を保有しておく必要があります。
当社は、財務基盤を強化するとともに成長のための投資資金の確保を実現するため、投資計画とリスク対応の留保分を考慮したうえで、保有しておくべき現預金水準を3年分の開発費用を目途に設定し、適正レンジの維持に努めてまいります。また、事業環境の変化や事業拡大に伴う設備投資が発生した場合には、適切な資金調達を行います。
なお、配当を含めました当連結会計年度の資金流動につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
このような状況下、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の期末残高は315億92百万円増加し956億35百万円となりました。
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